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[COMPUTEX]低価格帯にもLTEをもたらすSnapdragon 400が主役? 自社の強みを存分にアピールしたQualcomm基調講演レポート
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印刷2013/06/10 19:48

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[COMPUTEX]低価格帯にもLTEをもたらすSnapdragon 400が主役? 自社の強みを存分にアピールしたQualcomm基調講演レポート

Steve Mollenkopf氏(President兼COO,Qualcomm Incorporated)
画像集#002のサムネイル/[COMPUTEX]低価格帯にもLTEをもたらすSnapdragon 400が主役? 自社の強みを存分にアピールしたQualcomm基調講演レポート
 COMPUTEX TAIPEI 2013期間中の6月5日,Qualcommは台北市にて基調講演を開催し,Qualcomm Incorporated※1のCOOであるSteve Mollenkopf氏により,同社の戦略と最新SoCに関する情報が披露された。
※1 Qualcomm Incorporatedは持株会社で,Snapdragonを製造しているQualcomm Technologiesは同社の子会社。以下では区別せずにQualcommと記述する。
 また,講演に先立つ6月4日には,QualcommのSystem-on-a-Chip(以下,SoC)「Snapdragon 800」シリーズで,ARM版次世代Windowsとなる「Windows RT 8.1」をサポートすることが表明されたほか,LTEに対応したSoC「Snapdragon 400」シリーズも発表され,Mollenkopf氏による講演でも取り上げられた。
 本稿ではMollenkopf氏の講演と,そこから見える同社の強みについてレポートしたい。


自社開発の要素技術をSoCに統合し

用途や地域に合わせて提供する戦略


 講演の冒頭でMollenkopf氏は,IT業界のトレンドとして3つを挙げて,それぞれについて説明した。
 まず第1のトレンドは,モバイルデバイスのほうがPCより明らかに売れているという状況だ,今日(こんにち)でもモバイルデバイスの出荷台数は,PCの2倍に達しているが,2017年にはこれが6倍に達するという。
 また半導体業界の売り上げも,すでにモバイルデバイス向けがPCを上回っているうえ,その伸び率も異なる。PC向け半導体は現在の510億ドルを売り上げているが,これが2016年には560億ドルと,約10%増の50億ドルしか増えない一方で,モバイル向けはこれが220億ドルも増えると予測されているそうだ。

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Qualcommが定義するIT業界3つのトレンドをイメージしたスライド
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モバイルデバイスとPCの出荷台数の差は,今後さらに拡大するというスライド

 売り上げが上がる一方で,モバイルデバイスのデザインは,今よりももっと難しい要求が突きつけられると,Mollenkopf氏は指摘する。たとえば,薄型化や発熱の抑制といった要求がその代表だが,これは根本的に性能向上と相反する要求だから,厳しい要求であることは言うまでもない。

 こうした要求に対して,Mollenkopf氏が挙げるQualcommの戦略はシンプルだ。同社がこれまでSnapdragonシリーズで実現してきた方法論。つまり,自社で開発した高機能な要素技術を統合して,それを使ったSoCのデザインを提供し,それを用途や地域に合わせて,さらに変化させていくという手法であり,それを今後も継続していくというわけだ。

Qualcommが手がけるモバイルデバイスの要素技術。すべてでNo.1であると主張しているが,競合他社から見れば異論がありそうではある
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 Qualcommは10年以上前から,モバイルデバイスに専念した製品を提供してきており,この結果として3G/4G/LTEといったモデムから,無線通信機能,アプリケーションプロセッサ(いわゆるCPU),グラフィックス,そしてDSPなど,主要な要素技術は全部自社で開発してきている。しかも,それらはいずれも業界ナンバーワンのポジションにあると,Mollenkopf氏は誇らしげに語った。


モバイル分野で競合圧倒するSnapdragon

強みはモデムにあり


Snapdragonシリーズを採用する顧客企業の数(写真左)と,採用製品数(写真右)。そのうち40社,200製品以上は,同社が提供するデザインサンプル「Qualcomm Reference Design」をベースに製品開発しているとのこと
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 戦略の次に語られたのは,Snapdragonシリーズの話題だ。現在Snapdragonを利用している顧客は85社以上で,製品数で言えば850以上もあるとのことで,これは間違いなく最大勢力である。
 Mollenkopf氏はそうした代表的パートナー企業のひとつとして,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)を紹介。ゲストとして登壇したASUS CEOのJerry Shen氏は,Qualcommとの共同開発事例として,タブレット型ドックと合体するスマートフォン「PadFone 2」や,タブレット端末「MeMO Pad FHD10 LTE」などを披露した。
 ちなみにASUSは,IntelのAtom Z2560を搭載した「MeMO Pad FHD10」を3日に発表しているが,MeMO Pad FHD10 LTEはそれのSnapdragon版で,LTE通信機能を内蔵する点が大きな違いだ。

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PadFone 2を披露するJerry Shen氏(左)。右はMeMO Pad FHD10 LTEを説明しているところ

 話をSnapdragonに戻そう。Mollenkopf氏はSnapdragonのおおまかな内部構成を説明し,「シリコンエリアのうち,CPUは40%のみ」にすぎず,残りはモバイルに必要な機能(たとえばモデム)に使われていると述べた。とくにモデム技術に関しては業界随一であり,次世代のLTEとして開発中の規格「LTE Advanced」や,後述する「Carrier Aggregation」にいち早く対応したモデムも開発しているという。

Snapdragonを構成する要素のイメージ図。CPUやGPUは左上にある一角だけで,同じくらいの割合をモデムが占めている
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 LTE Advancedとは,最大ピーク速度は1Gbpsと言われる次世代の無線通信技術だ。今でこそ,「4G」と言えばLTEを指すものとなっているが,規格そのものは本来,「3.9G」と呼ばれていたものをベースとしている。真の4Gとは,このLTE Advancedのことだ。そして,LTE Advancedの肝となる技術のひとつが,Carrier Aggregationである。
 Carrier Aggregationの考え方は,複数の周波数帯域(CC:Component Carrier)を同時に利用することで,帯域を広げようというものだ。無線LAN技術の「IEEE802.11n」が,複数のチャンネルを同時に使うことで転送速度を引き上げているのと,イメージ的には同じものである。

 Qualcommのモデムは,こうした最新技術にいち早く対応しているのみではない。モデム自体が全世界の周波数帯域に対応しているので,たとえば,ある地域に投入した製品を別の地域に投入するときにも,モデムを別のものに交換する必要がなく,対応キャリアに合わせて設定を変えるだけでいいという点も,大きな強みだとMollenkopf氏は主張する。たしかに,このモデムこそがスマートフォン分野でのQuallcommの強みであることは,以前からよく知られているおり,NVIDIAやIntelといった競合他社が追いつけないポイントでもある。

Qualcommのモデムは,38種類の周波数帯と6種類の変調方式に1チップで対応していることを示すスライド
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普及が進む第5世代Snapdragon

LTE内蔵Snapdragon 400で低価格スマホをLTE対応に


最新のSnapdragonラインナップ。Snapdragon 600/400/200はすでに搭載製品が多数存在する。ハイエンドのSnapdragon 800は2013年1月に発表された製品で,2013年後半には搭載製品が出てくる予定。
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 Mollenkopf氏は続けて,Snapdragonの最新ラインナップについて説明した。現在Snapdragonは,Snapdragon 800,同600,同400,同200の4製品がラインナップされている。800はプレミアクラス製品向けのハイエンドSoCであり,600がメインストリームのやや上に位置するもの。400と200は,大量に出荷される低価格製品向けのSoCに位置付けられている。
 やや余談となるが,Snapdragon 800,600,400,200は,“第5世代のSnapdragon Processor”にあたる。初代から第3世代は「Snapdragon S1,S2,S3」と呼ばれ,ラインナップを増やした第4世代が,名高い「Snapdragon S4」となる。S4世代では4種類のサブラインナップを用意して,性能や用途に応じて「S4 Play,S4 Plus,S4 Pro,S4 Prime」に分かれていた。ところが,これはむしろ分かりにくいと判断されたのか,第五世代ではシンプルな3桁の数字で分類されたというわけだ。

 ハイエンドのSnapdragon 800がWindows RT 8.1に対応したという話題は,Mollenkopf氏の講演でも言及された。講演ではSnapdragon 800のリファレンス機を使って,画面を等分して2つのWindowsストアアプリを表示するWindows RT 8.1の新機能が披露されたが,実のところWindows RT 8.1やSnapdragon 800の話題はこの程度。最新ハイエンドSoCにしては,いささか淡泊な扱いだ。

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Snapdragon 800を搭載したタブレットのリファレンス機(左)と,その上で動作していたWindows RT 8.1による画面分割表示のデモ(右)。左側がWebブラウザで右側は動画を再生していた

 Mollenkopf氏の講演で最も力が入っていたのは,ハイエンドのSnapdragon 800ではなく,低価格製品向けのSnapdragon 400だったように思う。Snapdragon 400そのものはすでに出荷開始されており,採用スマートフォンも存在するが,冒頭で触れたLTEモデムを内蔵したSnapdragon 400の登場が,今回の大きなトピックであった。新興市場向けの普及価格帯から低価格帯のスマートフォンでも,LTEへの対応を可能にするための製品であるからだ。
 普及価格〜低価格帯向けということもあってか,CPUコアこそQualcomm独自の「Krait」ではなく,ARMが開発したCPU「Cortex-A7」を4コア搭載する構成になっているのだが,モデムのほうは相対的に高機能で,LTE AdvancedやCarrier Aggregationにも対応する点が強くアピールされた。

Snapdragon 400の特徴。CPUコアはCortex-A7だが,LTE対応や急速充電対応など,新興市場向けスマートフォンに適した製品となっているようだ
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Intelに近づいていくQualcommのビジネスモデル

モデムの優位性は当分揺らがず


 講演の締めくくりでMollenkopf氏は,「携帯電話の技術は今後も広く使われるようになってゆく」と強調した。これは要するに,Qualcommのビジネスモデルが,かつてのIntelのビジネスモデルに近づいたことを示している。

 Intelは高性能なCPUを安価かつ大量に供給することで,「用途ごとに専用プロセッサを作るより,Intel CPUをベースにシステムを組む方が,短期間に安価で高性能な製品を実現できる」というエコシステムを作り,これでPCとサーバー分野では一大帝国を築いた。このビジネスモデルが崩壊しつつあるのは,スマートフォンやタブレットに組み込めるレベルの製品投入が遅れたことと,モデムの技術を持ち合わせなかったことにある。

 一方のQualcommは逆に,スマートフォンに導入できる低消費電力プロセッサと,全世界の主要通信キャリアに対応したモデムという組み合わせを武器としながら,Intelと同じようなビジネスモデルで世界を席巻しようともくろんでいる。
 とくに「IoT」(Internet of Things,機器同士をネットワーク化するといった意味)の時代に最先端のモデム技術を持っているのは大きな強みであり,ほかのARMベースSoCメーカーが,SoC側にはWi-FiやBluetoothなどの近距離無線のソリューションしか組み込めず,これに単体モデムチップを組み合わせる構成しか提供できないのとは大違いだ。

 そうした弱点を理解しているからこそ,NVIDIAやIntelは相次いでモデムの開発や提供を表明しているわけであるが,今のところこの分野で,Qualcommの優位性を揺るがすものが現れる様子は当分なさそうだ。Qualcommの基調講演は新鮮な話題には欠けたものの,自社が優位にある現状を的確に反映した内容だった,と筆者には感じられた。

Qualcomm 日本語公式Webサイト

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