テストレポート
Qualcomm製新世代SoC「Snapdragon 845」の実力が明らかに? 開発機によるベンチマーク結果レポート
そんなMWCを控えた2月上旬,Qualcommは,米国・サンディエゴにある本社キャンパスへ報道関係者を集め,「Snapdragon 845のリファレンス端末でベンチマークテストを行える」というイベントを開催した。筆者もそこに参加できたので,本稿では,実行したテストの結果をお伝えしてみたい。
それに先だって,2017年12月に製品概要が発表済みのSnapdragon 845を簡単に振り返っておこう。
Snapdragon 845は,Qualcomm製の新世代CPUコア「Kryo 385」を8基と,同じく新世代のGPUコア「Adreno 630」を中心に,いずれも新世代となるDSP「Hexagon 685」,ISP(Image Signal Processor,画像処理プロセッサ)「Spectra 280」,そしてLTEモデム「Snapdragon X20 LTE」などを統合したSoCだ。ハイエンドSoCの前モデルとなる「Snapdragon 835 Mobile Platform」(以下,Snapdragon 835)に比べてGPU性能は最大30%,CPU性能は最大25%向上すると,Qualcommは主張している。
さて,イベントは,Qualcomm側が用意したリファレンス端末を用いて,インストール済みのベンチマークアプリで性能を検証できるというものだったが,報道関係者には追加でアプリをインストールすることも許可されていた。いずれにせよ,計測結果は外部へ送信されないよう,あらかじめ設定してあったそうだ。
筆者は今回,比較対象として,Snapdragon 835搭載の「Galaxy Note8」と,HiSilicon Technologies製SoC「Kirin 970」を搭載する「HUAWEI
なお以下,Snapdragon 845のリファレンス端末は,グラフ中に限り「Snapdragon 845」と表記するので,この点はお断りしておきたい。
AnTuTu Benchmark
まず,メジャーなAndroid用総合ベンチマークアプリの「AnTuTu Benchmark v7.0.4」による計測結果をグラフ1にまとめてみた。Snapdragon 845リファレンス端末の総合スコアは「266186」で,Snapdragon 835搭載のGalaxy Note8と比べて約37%高いスコアだ。
CPUやGPUの結果も良好だが,なぜかメモリのテスト結果のみ,Mate
Geekbench
続いて使用したのは,スマートフォン用のCPUベンチマークアプリである「Geekbench v4.2.1」だ。結果はグラフ2のとおり。Galaxy Note8比で,Snapdragon 845のリファレンス端末は,「Single-Core」スコアは約37%,「Multi-Core」は約30%,それぞれ高いスコアを示した。
3DMark
定番の3Dグラフィックスベンチマークアプリの「3DMark」では,Qualcommが指定した「Sling Shot Unlimited」で計測を行った。ただし,スコアの比較には多少問題がある。
というのも,筆者が持ち込んだ端末は,テスト時点で最新版となるバージョン「2.0.4574」を使っていたのだが,Snapdragon 845のリファンレンス端末にプリインストールされていた3DMarkは,「1.5.3074」とかなり古い――おそらく2年ほど前の――バージョンだったのだ。うかつにもテスト時には気付かなかったのだが,これだけバージョンが異なると,スコアに互換性がない可能性もある。そのため,今回のスコアは,あくまでも参考程度のものであることをお断りしておく。
それを踏まえたうえで,総合スコアをまとめたグラフ3を見ていくと,リファレンス端末は,処理負荷の高いOpenGL ES 3.1プリセット(※現行の3DMarkでは「Sling Shot Extreme Unlimited」という名称)において,Galaxy Note8比で約26%,やや処理負荷の低いOpenGL ES 3.0プリセットでは約24%のスコア差を付けているのが見てとれよう。
グラフ4はOpenGL ES 3.1プリセットでのフレームレートをまとめたもので,Snapdragon 845のリファレンス端末はGalaxy Note8より28〜32%程度高いスコアを示している。
同様に,OpenGL ES 3.0プリセットにおけるリファレンス端末のフレームレート(グラフ5)は,Galaxy Note8比で22〜32%程度高い結果となった。
大雑把に言うと,Snapdragon 845は,Snapdragon 835よりも2〜3割高いグラフィックステスト結果だ。Qualcommの主張する「前モデル比で30%の向上」というのは,大袈裟ではなさそうに思える。
GFXBench
最後は,これまた定番の3Dグラフィックスベンチマークアプリ「GFXBench」(v4.0.13)でのテストを行った。テストに使用したプリセットは,Qualcommが指定した以下の4種類である。処理負荷の高いプリセットの順に並んでいるという理解でいい。
- 1080p Car Chase Offscreen(以下,Car Chase)
- 1080p Manhattan 3.1 Offscreen(以下,Manhattan 3.1)
- 1080p Manhattan 3.0 Offscreen(以下,Manhattan 3.0)
- 1080p T-Rex Offscreen(以下,T-Rex)
グラフ6がその結果で,GFXBenchでは,3DMark以上にSnapdragon 845とSnapdragon 835のスコア差が開いた。Galaxy Note8との比較では,最もスコア差の小さい「T-Rex」でも約42%,最もスコア差の大きな「Manhattan 3.1」ではなんと約58%も高い値を示した。
今回は限られたベンチマークアプリしか実行できなかったが,これを見る限り,
Qualcomm社内ラボでSnapdragon 845によるVRやゲームのデモを体験
VR HMDを使ったデモでは,「Space Dog」というシューティングゲームをプレイできた。宇宙基地に襲いかかってくるエイリアンを,手に持ったリモコンで狙いを付けて,レーザーを撃って倒すという,よくあるゲームだ。
デモで使ったVR HMDは,PCやスマートフォンに当たる機能を内蔵したスタンドアロンタイプのようだった。Qualcommのスタッフいわく,外部のPCやセンサーを使うことなく,ゴーグル部分に備えた2つのカメラによるインサイドアウト方式のトラッキングで,自由な動きを可能にしているとのことだ。
Qualcommによれば,2016年に,モバイルゲームの総プレイ時間は,PCゲームのそれを超えたそうで,これは「重要な点」だと,Qualcommのスタッフは強調していた。ゲームスタジオには,より高度なモバイル向けゲームが求められており,それを実現する要素の1つが,グラフィックスAPIのVulkanであるという。
そしてSnapdragon 845では,Vulkanを用いて,従来よりも高精細で高度なグラフィックス表現のゲームが可能になるとのことだ。
Vulkan対応ゲームとして披露されたのは,Android版の「リネージュ2 レボリューション」(以下,リネレボ)だった。
リネレボはVulkan対応が特徴の1つなのだが,なぜか既存のSnapdragon 835搭載端末では,Vulkanを用いたグラフィックス設定を選べないことがある(関連記事)。しかし,Snapdragon 845搭載のリファレンス端末では,きちんとVulkanが機能するようで,今回のデモでは,リアルタイムレンダリングよる影や反射光などがあるシーンで敵キャラクターが大量に登場しても,描画は遅くならず,快適にプレイできることを確認できるようになっていた。
Qualcommは,ゲーム開発者に向けてVulkan用のソフトウェア開発キット(以下,SDK)や「Snapdragon VR SDK」なども提供しており,今後もゲーム開発者に対してのサポートをさらに強化していくとのこと。それにより,モバイルゲームの分野においても,さらなる市場拡大を目指していくそうだ。
QualcommのSnapdragon 845製品情報ページ(英語)
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