レビュー
2Dと3Dを融合させ,“原点回帰”を感じさせるコンセプト
スーパーマリオ 3Dランド
この数年,スーパーマリオシリーズは「New スーパーマリオブラザーズ」(NDS)や「New スーパーマリオブラザーズ Wii」(Wii)といった2Dアクションと,「スーパーマリオギャラクシー」「スーパーマリオギャラクシー2」(ともにWii)といった3Dアクションの2系統がリリースされてきた。しかし,今回リリースされた「スーパーマリオ3Dランド」は,いわば2Dと3Dを融合させた作品になっている。
さすがというべきか,「3Dランド」の販売本数は発売初週で34万3492本,それ以降もコンスタントに週販5万本以上を記録し続け,2011年12月15日時点では累計販売本数72万本を突破している(数字はメディアクリエイト調べ)。
今回は筆者が,本作をじっくり遊び込んだレビューをお届けしよう。
「スーパーマリオ 3Dランド」公式サイト
しかしゲームの基本ルールは,ジャンプとダッシュで敵を避けたり倒したりしながら,制限時間内にゴールを目指すという,2Dアクションタイプのシリーズを踏襲したもので,ベルトスクロールアクション色が強い。いわば,3Dアクションのシステムで2Dアクションの感覚を再現した,といったところだろうか。
ゲーム内に登場するコースも,たとえば,ワールド1-1はカラフルなブロックが置かれた緑の草原,ワールド1-2は,土管に入る効果音とともにスタートする地下コースといったように,2Dアクション型のシリーズを彷彿させるものになっている。
そしてワールド1の最後に控えるのは,ハンマーブロスやカロンなど,手強い敵が現れるクッパの城だ。城の最深部にいるクッパの攻撃をくぐり抜け,スイッチを押して橋から落とせば,見事ワールド1はクリアとなる。
……まるでファミコン時代のマリオシリーズを紹介しているように見えるが,もちろんここで挙げたのはほんの一部で,以降に用意されているワールドは,オリジナリティに溢れたものになっているのでご安心を。
また,コース内には,隠し通路や1UPキノコなどが隠されていることがある。しかも,かつて「スーパーマリオブラザーズ」をプレイしたことのある人なら,“なんとなく”想像がつく場所に仕込まれているのがニクいところ。ゴールを目指しつつも,余裕があるときは,気になる場所を意識しながら探索してみると,楽しさも倍増するだろう。
敵キャラクターもクリボーやノコノコなど,お馴染みの顔ぶれが登場する。面白いのは,“しっぽの木”の葉っぱの力を持つ敵の存在で,彼らはタヌキマリオに変身したときのマリオと同様に,シッポを使ってジャンプしたり攻撃をしたりする。見慣れたレギュラーの敵や新しく登場する敵だけでなく,こういったアレンジを加えた敵の存在が,ゲームのちょっとした味付けにもなっているわけだ。
飛び出しと奥行き,プレイ中に切り替えられる2通りの3D立体視
とはいえ,そのあたりはさすが任天堂というべきか,プレイしていれば自然にゴールに向かえるようなレベルデザインになっている。分かりやすいところでいえば,一部コースには行き先を矢印で示す看板もあるのだが,大半はコース形状や道中の仕掛け,そしてカメラアングルで“なんとなく”どちらに進めばいいのか,分かるようになっているのだ。
なお,カメラワークはによって自動的にアングルが決まっており,十字ボタンで左右に多少動かせる程度だが,プレイしていてストレスを感じるほどではない。また,“フレーム外”に隠されている秘密の通路やスターメダルなどを発見する楽しみは,カメラワークが限定されているからこそ味わえるものだろう。
もう一つ,「3Dランド」で注目すべき点は,3D立体視に“おすすめビュー”と“ディープビュー”の2種類が用意されていて,プレイ中にいつでも切り替えられる点。簡単に説明すると,おすすめビューは,画面から手前に飛び出す演出,ディープビューは奥行きを感じさせる演出といったところだ。ちなみに公式サイトの情報によれば,前者のほうが画面がブレにくいとのこと。
本作では,3D立体視を実感しやすい演出が多々採り入れられている。例えば高所から落下するシーンであったり,画面奥からキラーやトゲだらけの棒が迫るシーンなどは,3D立体視をONにしてプレイするとかなりの迫力だ。視点が真上からになるコースや,画面の手前側や奥側に移動するコースでは,2D表示よりも3D立体視のほうがプレイしやすく感じられる。
ゲームに詰まったら,すれちがい通信をやってみよう
本作はすれちがい通信に対応していて,ゲームプレイをサポートをしてくれる。「3Dランド」のプレイヤー同士がすれ違うと,ワールドの各所にあるボーナスステージ的な“ミステリーボックス”が交換され,それをお互いにプレイできるのだ。
ミステリーボックスは,パワーアップアイテムや1UPキノコなどが手に入る至れり尽くせりの小空間。スターメダルも入手できるので,ワールドを進められないという人は,ニンテンドー3DSを持ち歩いて,すれちがい通信をするといいだろう。
また,エンディングまで進めていれば,すれちがい通信で,クリア済みコースのベストタイムがやり取りされる。自分よりすれちがい通信相手のタイムのほうが速い場合,コースセレクト画面に“ライバルタイム”が表示されるので,タイムトライアルにチャレンジしてみるのも面白いだろう。
なお本作は,「3Dランド」を持っていない人とすれちがい通信をした場合でも,プレゼントとしてパワーアップアイテムをもらえる。すれちがい通信をした回数に応じて,プレゼントの内容は良くなっていく。同じゲームをプレイしていない人とのすれちがい通信でボーナスがあるという仕様は珍しいが,今後のタイトルでも積極的に採り入れていってほしい要素だ。
最初のエンディングまではそこそこの難度。しかしそのあとに待つコースは……
それぞれのコースは,寄り道をしなければ5分程度でクリアできる長さで,ミスが続いたときの救済策も用意されている。セーブもステージをクリアしたときに自動的に行われるので,外出中の電車などでも手軽に遊べる。
本作では,1コースにつき3つの“スターメダル”が存在するが,一定枚数以上のスターメダルを集めないとプレイできない(=先に進めない)コースもある。しかし,とくにスターメダル集めを意識しなくても,先に進めないといった状況にはならなかったし,先に説明したすれちがい通信などで,簡単に入手できるようになっている。
さらに,コースクリアをサポートするためのシステムが用意されている。たとえば,同一コースで連続で5回以上ミスをすると,リスタート地点に“アシストブロック”が登場する。アシストブロックから出現する“無敵このは”を取ると,マリオはどんな敵や障害物に当たっても平気な,文字通り無敵(しかも制限時間なし)の状態になる。 制限時間や落下によるミスは,無敵このはでも防げないので,この状態でもクリアできない可能性はあるのだが,さらなるアシストとして用意されているのが“パタパタの羽”だ。同じコースで連続10回以上ミスをすると出現するこのアイテムを取ると,ゴール地点近くまで一気にワープできる。
この“お助け機能”は,親切過ぎるといえるほど至れり尽くせりなので,硬派なゲーマーは使うのを躊躇するかもしれない。ただ言い換えれば,根気よくプレイすれば,ほとんどのプレイヤーがエンディングまでたどり着けるともいえる。
スペシャルコースは,アシスト機能が欲しくなるほど超ハード
スペシャルコースは,ワールド8までクリアすると出現する,いわゆる“裏面”的な存在で,コースは“表”のワールドを再構築したもの。スペシャルコースでは,先に挙げたアシストブロックが出現しないようになっているのをはじめ,難度が格段に向上している。また,スーパーこのはのパワーアップ版となる“地蔵このは”が出現する点が異なっている。
ちなみに,スペシャルコースでゲームを進めると,プレイヤーキャラクターとして,マリオよりもちょっとジャンプ力が高く,滑りやすい特徴を持つ,ルイージも選択できるようになる。
スペシャルコースの中でも,とくに手強いのが“マネック”が出現するコースだ。マネックは,「スーパーマリオギャラクシー2」で初めて登場した,マリオの挙動をトレースしながら追いかけてくる,やっかいな相手。しかも,スターを取った無敵状態でしか倒せないので,基本的に逃げ回るしかないのだ。
ほかにも,コースの制限時間が30秒しかなく,時計アイテムを取りながら進まなければいけなかったり,強制スクロールのコースであったりと,ゆっくりプレイする暇がないものばかりになっている。
“表”をプレイ中にはアシスト機能を不要だと思っていた筆者も,スペシャルコースに挑戦し始めたら,アシスト機能が存在しないことを悲しく思うほど,たくさんのマリオを犠牲にした。
とはいえ,筆者程度の腕でも,かなりの時間を費やしはしたが,すべてのスターメダルを集めたうえで,スペシャルコースを最後までクリアすることができた。ミスを重ねながらも,攻略の糸口が少しずつ見えてくるという難易度設定は,絶妙なバランスに落とし込まれているといえるだろう。
ちなみに,ゲーム内容自体には関係ないのだが,本作のパッケージに入っているのは基本操作が書かれたガイド紙のみで,いわゆる「取扱説明書」は入っていない。取扱説明書は,HOMEメニューから「説明書」で呼び出す電子化されたものになっている。
プレイヤーの一人としては,ソフトを買ってパッケージを開けたときのワクワク感が減ってしまったことは,なんとなく淋しく感じたが,いつでもどこでも見られるという携帯ゲーム機にマッチした利便性や,紙資源の節約など,ポジティブな要素も多いため,今後は主流となっていくのではないだろうか。
ニンテンドー3DSを持っているならプレイしておきたい,
携帯ゲーム機と3D立体視にふさわしい「マリオ」
アシストボックスなどのお助け機能には賛否両論あるだろうが,使うかどうかの判断はプレイヤーの選択に委ねられているし,アクションゲームが苦手でも先に進めることができるというのは,個人的には評価すべきポイントだと考えている。
エンディングを迎えたあとも,すれちがい通信でやりとりした相手のクリアタイムを目標にタイムトライアルをしたり,すべてのコースでルイージ(マリオより高くジャンプ可能で滑りやすい)でもプレイできるようになったりと,やり込み要素も充実している。
ニンテンドー3DSを持っているのであれば,確実にお勧めできるタイトルなので,まだプレイしていないという人は,ぜひ手に取ってみてほしい。
「スーパーマリオ 3Dランド」公式サイト
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