インタビュー
ゲームを売るために必要なのは認知と宣伝――カプコンのパブリシティ業務を牽引する萩原良輔氏に,Ustream番組や雑誌の自社出版など,異彩を放つ戦略の真意を聞いてきた
IPをブランドとして育てるにはアフター展開が重要。コラボなどの仕掛けを徹底的に行い,一般への認知を高める
4Gamer:
ここからは,カプコンにおける宣伝という仕事について,話を聞かせてください。
萩原さんが室長を務めているパブリシティ企画推進室は,一般的には広報と呼ばれる部署に相当すると思いますが,カプコンには別に広報IR部という部署もありますよね。この二つの部署には,どのような違いがあるんですか?
パブリシティも広義で言うと広報なんですけど,カプコンは特殊なんですよ。
広報IR部は,基本的に投資家・株主向けのリリースといったIR情報が専門で,企業としてのカプコンの情報発信を担当しています。ゲームの内容を紹介するようなリリースは,パブリシティで作っています。
ゲームタイトルの宣伝をするのがパブリシティとプロモーションのチームですが,こちらもカプコンでは完全に別の部署になっています。ここまで宣伝と広報がはっきり分かれているところって,あまりないんじゃないですかね。
4Gamer:
パブリシティとプロモーションの違いを,具体的に教えてもらえますか。
萩原氏:
どちらもテレビ・雑誌・Webといった媒体でゲームの宣伝をすることが目的ですが,分かりやすく言うと,プロモーションはお金を使って広告を載せる,パブリシティはお金を使わないで媒体の皆さんに宣伝をお願いする,という違いですね。
パブリシティとしては,会社がお金を使っているところに便乗しないと損をするときがあるので,どういう動きをするか常に把握しておく必要があります。ですから,プロモーションのチームとは随時ミーティングをして,情報を共有しています。
4Gamer:
ちなみに,便乗するというのは,どのようなときなんでしょうか?
たとえば,「モンスターハンターフェスタ」のような,一般のユーザーさんに来てもらうイベントなどが,それにあたります。
こういったイベントは,プロモーションの部隊が主導して開催しているので,僕らの役割は,メディアの皆さんに「取材に来て記事にしてください」とお願いすることです。僕らはアフターパブとして,つなげてもう1回広げていくことを念頭に置いています。
4Gamer:
もう1回広げていくというのは,具体的にはどのようなことですか?
萩原氏:
たとえば,ゲームの発売後に開催されるイベントなら,記事を見た人への宣伝になりますよね。4Gamerさんで「イベントがありました,これだけ盛り上がっていました」という記事が載ったら,そのあとの日程で開催されるイベントで,もう1回,盛り上がりが期待できるじゃないですか。
また,コラボイベントであれば,期間中に記事が掲載されて盛り上がったら,コラボした企業・団体さんが延長を検討してくれたり,開催が終わってからでも「もう1回やりましょう」となったりする可能性もあります。ですから,そういった部分を大切にしているんです。
「モンスターハンターポータブル 3rd×信州渋温泉〜ユクモノ気分で、狩り・釣り・祭りだ、ドンドコドーン!!〜」より(関連記事)。2010年12月〜2011年1月に開催されたコラボイベントが好評だったことから,2011年7月〜8月に第2弾が開催された |
4Gamer:
手広いというか,パブリシティの仕事は多岐にわたっているんですね。メディア向けのリリース作成や,「ハギとこ!」のような自社コンテンツでの宣伝が主な仕事だと思っていました。
萩原氏:
外から見ると,カプコンのパブリシティという部署って,何をしているかよく分からないですよね。本来なら,ゲームの情報を雑誌に載せてもらうのがパブリシティの仕事なんです。
4Gamer:
いわゆる宣伝の仕事ですよね。
萩原氏:
ただ僕は,それだけで終わってしまうのはつまらなかったから,いろいろなことをやるようになったんですよ。
プロモーションのような仕事も,イベントのようなことも,出版のライセンスアウトのようなこともやるようになって,IR以外の宣伝は,全部うちのチームが請け負っている感じです。今や何でも屋みたいになっているので,本来のパブリシティの枠は超えているのではないでしょうか。
そういったこともあって,常に人が足りない状況ですが,仕事はさらに楽しくなっていますね。胸を張って「宣伝をやっています」と言えますから。
4Gamer:
パブリシティの役割というのは,どのようなものだと考えていますか?
萩原氏:
日本をはじめ,世界に向けてカプコンのゲームを広めていくことです。
情報を出す責任があるのはもちろん,どの部署よりも早くスタートを切らなきゃいけないし,先頭に飛び出したら抜かれちゃいけないし,ほかの部署がゴールしても止まれないしと,すごく難しい部分があると思います。
4Gamer:
発売されたらゴールというわけではないんですか?
「モンスターハンター3(トライ)G」 (C)CAPCOM CO., LTD. 2009, 2011 ALL RIGHTS RESERVED. |
「戦国BASARA3 宴」 (C)CAPCOM CO., LTD. 2010, 2011 ALL RIGHTS RESERVED. |
区切ったら商品が終わってしまうんですよ。
昔は,ゲームを発表したあとに発売日まで情報発信をして,発売後はゲーム雑誌に3〜4週間にわたって攻略記事が掲載されたら終わり,という手法が多かったですよね。僕は,ゲーム業界が今のような状況に陥った原因の一つは,それだと思っているんです。
だからカプコンでは,4〜5年前からアフター展開にも注力してきました。その典型的な例が「モンスターハンター」や「戦国BASARA」なんです。
ゲームの発売後も話題を提供し続けるのはリスクも大きいので,すべてのタイトルでできるわけではありませんが,ゲーム自体の魅力に加えて,アフター展開をやってブランドを一般に認知できるところまで持っていけたことで,これらのIPを育てきれたと思うところはあります。
4Gamer:
確かに,「モンハン」も「戦国BASARA」も,発売後にコラボなどでの露出が多いタイトルですね。アフター展開にもいろいろあると思いますが,成功させるためには何が重要なんですか?
萩原氏:
雑誌やテレビCM以外にも,「話題になること」や「話題に触れること」を仕込んでおくことです。要は,とくに一般誌で「今,こんなゲームが盛り上がっているんですよ」という風に書いてもらうには何をしたらいいか,という部分ですね。
4Gamer:
ただ,一般誌というかゲーム誌以外の媒体だと,記事でゲームを取り上げてもらうのは難しいですよね。
萩原氏:
そうですね。やはり,認知されていないものでは一般誌は動いてくれません。なので,一般誌で取り上げてもらえるように,ゲーム誌でしっかりと記事を作成してもらい,そして一般誌の方々にも興味を持ってもらえるようにしていくんですよ。
たとえば,地方でのイベントであったり他業種とのコラボであったりという目につきやすいところで,発売後にどういう風な動きをするかを仕込んでおくんです。
確かに,「カラオケパセラと『モンハン』がコラボ」「富士急ハイランドに『戦国BASARA』のアトラクション登場」といったネタなら,一般誌でも取り上げられやすそうですね。
萩原氏:
ゲームをあまり知らない人がコラボのことを知ったとき,「今やっているのって,あのゲームが元ネタなんですね」というような会話につながりますし,実際に行ってもらったら,ゲームにも興味を持ってもらえる可能性も出てきます。
4Gamer:
ちょっと気の長い話ではありますが,ゲームに興味を持たせるために段階を踏んでいく,といったところでしょうか。
萩原氏:
極端な話,どこにゲームと接点があるのか分からないような仕掛けでもいいんです。僕は,衣食住すべてに訴えかけることが大切だと思っているので。
ただ,どこで誰に見てもらえるかは分からないので,パセラさんだけでも富士急さんだけでもなく,いろいろなところでやっていかないと絶対にダメですね。
4Gamer:
可能性を見据えて,手広くやっていく必要があると。
そういった他業種とのコラボは,どうやって話を進めるんですか?
萩原氏:
人の記憶にどれだけ残るかが勝負なので,最初に認知されるということが絶対に必要です。
たとえば,「一緒にやってください」とコラボのお願いをしても,先方に「知りません」と言われたらアウトで,ビジネスチャンスにはつながりませんよね。ですから,「名前くらいは聞いたことがある」という状態になるように,発売前に徹底していくんです。
認知が固まれば,いろいろなことが宣伝に使えるようになりますから,さまざまな場所でいかに宣伝するか,という勝負ができるようになります。
4Gamer:
では,「聞いたことがある」という状態に持っていくために,どのようにしているんですか?
萩原氏:
まずは,ゲーム誌にしっかりとカプコンのゲームを扱ってもらえるよう,徹底的に情報を提供していきます。これは,発売日直前までが勝負ですね。どんどん広がって認知されてきたと感じたら,今度は一般誌に「扱ってください」と話を持っていきますし,それができないようなときは,できないなりの仕掛けをやっていますね。
4Gamer:
その「できないとき」は,どうアプローチしていくのでしょうか?
萩原氏:
ゲームをプレゼンするイベントや,メディア合同ゲーム大会といったイベントを,タイミングを見計らって開催して,盛り上げていくんです。
カプコンのゲームをメディアの皆さんに認知してもらうための仕掛けでもあるので,一般誌の皆さんには,来てもらってゲームのことを知ってもらうことが一番の目的です。4GamerさんのようなWeb媒体には,イベントの記事を書いてもらうことも期待していますが(笑)。
4Gamer:
直接ではなくとも,その後の記事展開の可能性を上げるために,認知が目的のイベントを開催する,というわけですね。
ただ,イベントは足を運んでもらうことが前提です。メディアの皆さんに「面白かった」と印象付けることを最低限心がけているので,内容については毎回,試行錯誤しています。
どうやってもゲーム大会ができないようなタイトルでは,印象付けることだけを目的にすることもあるんです。たとえば「ゴースト トリック」のときは,キャラメルマシーンのお二人にマジックを披露してもらいましたけど,ゲームとはまったく関係なかったですし(笑)。
4Gamer:
“トリック”つながりだけですもんね(笑)。あのイベントでは“してやられた”ので,いまだに覚えています……。
※このイベントのビンゴ大会では,“全員を同時にビンゴにする”というマジックが仕掛けられていて,来場者が揃いも揃って引っかかっていた(関連記事)
萩原氏:
いまだに「またマジックショーやらないの?」とか聞かれますからね(笑)。印象付けるという点では,大成功だったと思います。
4Gamer:
そういえば,発表会とは違う形で,メディアだけを呼んでプレゼンやゲーム大会のイベントを行うのは,カプコン独特の取り組みですよね。ほかのメーカーでもメディア向けの体験会などがありますが,会場を借りてイベント仕立てにまですることはあまりないですし。
萩原氏:
パブリシティが独自でやるのは珍しいと言われますね。メディアに向けたイベントは,ほかのメーカーでいったら,たぶんプロモーションがやったり,違う部署がやったりするものが多いでしょうから。
前から不思議に思っていたんですが,発表会ではない,メディア関係者だけが参加するイベントを,タレントを呼ぶといったコストをかけてまで開催するのは何故なんですか?
萩原氏:
たとえば,普通のゲーム大会だけだと,つまらなそうに書いている記事って少なくないと思うんです。もちろん,分からないように言葉を選んでいるとは思いますけど,そういうのって,読む人にはバレバレですよね。
4Gamer:
分かります。メディアとしては気にかけているところなのですが……。
萩原氏:
だから僕らは,そういったゲーム大会のときなどには,メディアさんがいいテンションで記事を書けるようにすることだけ考えているんです。そうすると,たとえ同じ日に別のイベントがかぶっていても,書いてもらえる記事の内容もボリュームもぜんぜん違ってきますから。
雑誌もWebも同じだと思いますけど,やっぱり書いている人が「面白かったな」と思ってもらえたときの記事のほうが,記事のテンションが高くて人気もあるんですよ。実際,「カプコンのプレス向けイベントが一番面白いから,毎月やって」って言ってくれる方もいるくらいで(笑)。
4Gamer:
そういう取り組みを重ねて認知度を上げて,一般誌でもアフター展開できる可能性を上げているわけですね。
萩原氏:
出版社に向けた取り組みで,もう一つ僕がやっているのが,「モンスターハンター」シリーズのコラボ装備のような,ゲームと雑誌のコラボです。これは,とくに一般誌に向けて,編集部の人達のテンションが上がるようなことをカプコン側から提供しよう,という意図なんですよ。
4Gamer:
カプコン側からの提案なんですか。てっきり,コラボしたいと手を上げてきた媒体の中から選んでいるものだと思っていました。
萩原氏:
一般誌だとやっぱり,発売前か,発売後しばらく経って世間で話題になってからじゃないと,ページを取るのは難しいんです。
4Gamer:
雑誌にゲーム紹介コーナーがあっても,多くても1号に数ページですからね。競争率も高いと思います。
萩原氏:
だから,ゲーム雑誌だけじゃなく,一般誌でもコラボを仕込んでおくんです。先にお話ししたように,カプコンのゲームを認知してもらったうえでの話になるんですけど,そうすると,発売後に2回も3回も載せてもらうための戦略を考えられるんです。
また,スタート地点もゲーム誌と一緒になるので,発売日近辺の認知も一気に高まるという効果もあるんですよ。
4Gamer:
なるほど。コラボする媒体は,どういった基準で選んでいるんですか?
萩原氏:
会ったときに僕が一緒にできるなと思ったら,仮にそれが飲み会の席であったとしても,「一緒にやりましょう」とすぐに話をしちゃいますね。何事も面白いと思ったときが最高の盛り上がりで,その瞬間を逃したら,次はないと思うので。
4Gamer:
ということは,媒体とのコラボは,開発ではなく萩原さんが決めているんですか?
萩原氏:
もちろん,開発やほかの部署で進めているものもありますけど,出版社さんとのコラボは,基本的に僕が全部決めさせてもらっています。中には,開発に聞かないで話を持っていってしまうこともあるんですけど,開発も僕の性格を分かっていて,「やりたいならいいよ」って言ってくれるんです。社内でそういった信頼関係を築けているから,その場その場で即決できるんですよ。
「ハギとこ!」や「カプ本」,「カプコンバー」でユーザーコミュニティを拡大。「ゲームの楽しさ」を広めて新しいゲーム世代を作りたい
4Gamer:
萩原さんは,パブリシティの仕事をやるようになって,何年目になるんですか。
萩原氏:
カプコンに入ったのは1994年で,営業を3年間やってからパブリシティに配属されたので,パブリシティの仕事でいえば14年になります。
4Gamer:
パブリシティの仕事は,この14年間でどう変わったと感じていますか?
萩原氏:
10年くらい前までは,Webがそんなに浸透していなくて,まだ紙媒体がすべてといっていい状況でした。なので,ユーザーもターゲットも,両方が見えていました。ゲームを買う人はゲーム雑誌を読むわけだから,ターゲットの年齢層に合った雑誌で宣伝すれば,ストライクゾーンに放り込めたんですよ。
4Gamer:
宣伝の対象はゲームユーザーに絞っていたんですね。当時はそれで良かったと。
萩原氏:
ただ,僕はあまのじゃくだったから,当時からゲーム誌だけじゃなくて,ジャンプ,マガジン,サンデー,チャンピオンといった雑誌の編集部も訪問していたんです。自分が大好きな雑誌が,どのような作業で作られるかを見たかった,というのもありましたけど(笑)。
名前を覚えてもらうところから始まって,仕事の話ができるようになるまで,週に3回も4回も,編集部さんにおじゃまさせてもらっていました。宣伝の前には営業をやっていたこともあって,そのあたりは全然苦になりませんでしたね。
4Gamer:
それが,今のカプコンのパブリシティの特色にもつながったとも言えますよね。では,最近はどういう傾向なんですか?
最近は,ゲーム雑誌を見る人がタイトルを選んじゃうんですよね。
以前は,広告なり記事が一度載れば,買ってくれるという声が上がりやすかったんです。また,お店の人からも「注文がいい感じで入っているよ」と直接言われるなどして,ターゲットがつかめて,本当に気持ちが伝わってきていた感じだったんです。
でも今は,よく聞く話なんですけど,ユーザーさんが一つの記事を読んで,それが面白くなかったら,すぐ「もう買わない」「買うのやめた」ってなっちゃうんですよ。
そういうときは,その誤解を解くために,僕らはもう1回違う言い方で「そうじゃないんですよ」という内容を含めたリリースを用意しないといけないので,すごく手間がかかるようになりました。
4Gamer:
反響が即座に見られるから軌道修正ができるというメリットがある半面,手間が増えるというデメリットも出てくるんですね。
萩原氏:
やっていること全体の労力は,今も昔もあまり変わらないですけど,そういう部分に労力を割かないといけなくなったというのが,10年前と違うところですね。要するに,「昔のほうが楽だった」ということなんですけど(笑)。
4Gamer:
最近では,Twitter,mixi,FacebookといったSNSサービスや,ニコニコ動画,Ustreamといった動画投稿サイトなど,宣伝にさまざまなツールを使うようになってきましたよね。あれもこれもやるというのは,大変じゃないですか?
萩原氏:
それはもう,大変ですよ(笑)。
ただ,宣伝する立場としては,ユーザーさんがどこで情報を得るか分からないので,新しいサービスが出てきたらそこで宣伝しなきゃいけない,始めたらそれを継続しないといけない,という部分があります。戦略はあるんですけど,あらゆることに手を出していると,だんだん収拾がつかなくなってくるのが難しいところですよね。
4Gamer:
中でも,萩原さんがメインパーソナリティの“ハギー”として出演しているUstream番組「ハギとこ!」は,型破りというか,ひときわ異彩を放っていますよね。
失礼ですが,ゲームでやられまくっている絵面を見て,メーカーの人がこんなプレイしているのを放送してもいいのかなと思いましたし(笑)。
萩原氏:
ゲームができる広報は前からいますけど,ゲームができない宣伝マンがいても面白いじゃないですか(笑)。
真面目な話をすると,「ハギとこ!」では,ゲームってやっぱり面白いものだと,もう1回ユーザーさんに思わせることから始めようと考えていたんです。
きっかけは「モンハン」だったんですけど,ゲームで遊ぶときに肩肘をはる必要はなくて,「誰でもできる」という感じをうまく見せたほうがいいんじゃないかなと思ったんですよ。
4Gamer:
「モンハン」のどんなことがきっかけだったんですか?
あの「モンハン」でさえも,よく「難しそう」って言われるんです。でも,僕みたいにゲームが下手な人間が遊んでいるのを見て,「あいつでもできるんだから,自分もできそう」と思ってくれる人が多かったんですね。
上手な人のプレイを見てハードルが高いと思われることもありますし,下手な人間でも下手なりに,楽しんでいる姿を見せることで伝わるゲームの面白さもあるんじゃないかなと。
実際に「ハギとこ!」を始めてからも,視聴者の意見やアンケートでは“ハギーでもできる”というのが,購入の動機につながったという意見が多かったんですよ。
4Gamer:
なるほど。
萩原氏:
僕は,ゲームはいいものだと思っているけど,ゲーマーというほどプレイはしませんし,上手でもないから,サンプルとしてちょうどいいんです(笑)。
4Gamer:
ちなみに,「ハギとこ!」以降,ほかのメーカーでも,Ustreamやニコニコ動画を使った番組を放送するようになりましたよね。
ほかのメーカーもWebの番組を始めていますが,コストに見合った視聴者数が取れていないという印象ですね。
「ハギとこ!」も,ほかと比べて飛び抜けて視聴者数が多いというわけではありませんが,ほぼすべてを内部スタッフで制作しているので,出演者のギャランティのような部分には,ほとんどお金がかかっていないという違いがあります。労力はすごくかかっていますけど,それはパブリシティの別の部分でも活かせるものですから。
今,徹底的に仕込みをしているところなので,もう少ししたら,それが見て分かるものになってくると思います。
4Gamer:
どんな展開を予定しているのか,教えてもらってもいいですか?
萩原氏:
僕の中で,2012年のキーワードの一つは動画なんです。今後は展開をがらりと変えて,徹底的に動こうと思っています。あと,媒体ごとにパブリシティの差別化をしていこうとも考えています。やはりそこに労力をかけていかないと,Webを見る人も減っていくと思うので。
4Gamer:
差別化ですか。
萩原氏:
言い換えると,今まで出会った人達と「何か一緒にやろう」と話してきたことを実現するためです。
今までは「何かやろう」と話しても,なかなか実現できないことが多かったんですけど,自分で「ハギとこ!」をやってきたことで,足りないところがようやく見えてきたんです。
変な言い方ですけど,メディアの皆さんをもうちょっと楽にしてあげたいし,仕事に追われずにカプコンのことをもっと詳しく書いてもらいたいので,その仕掛けは,こちらから提供させてもらおうと思っているんです。
4Gamer:
……なんだか,申し訳ない気持ちでいっぱいになってきました。
萩原氏:
以前から考えていたことですし,すでに2年前から準備を進めてきているんです。
「ハギとこ!」を始めてから,映像関係のディレクションをやっていた人間を採用したんですが,これまでの経験が生きてきて,僕が注文したことに,プラスαを加えた仕掛けができるようになってきたんです。今では映像関係で自分の考え方を一番理解できるようになっています。
4Gamer:
ちなみに萩原さんは,何年くらい先までを見据えているんですか?
萩原氏:
いろいろと先のことは考えていますが,3年後だと周期が変わっている可能性もあります。考えていることがそのとき通用しなかったら路頭に迷うので,仕掛けも含めて決めるのは,2年先くらいまでですね。
僕が一番力を入れなきゃいけないのは,新しい宣伝スタイルである「ハギとこ!」と,今回お話しさせてもらった「カプ本」なんです。
「ハギとこ!」については,この1年間でユーザーコミュニティを作ることを目標にしてきました。ユーザーさんとのパイプをうまく作れているかという部分では,「カプ本」を世に出すとき,最初に「ハギとこ!」の視聴者に宣伝したんですけど,多くのユーザーさんが購入してくれたことから,第一段階としては成功したと考えています。これからは,両方とも,もっとパワーアップさせていきたいですね。
4Gamer:
萩原さんは,宣伝という仕事の醍醐味はどこにあると思っていますか?
萩原氏:
アイデア次第でなんでもできて,いろいろなチャレンジができることですね。
これまでもいろいろな手法を経験して,できることが増えてきましたが,時代が進化していく中で新しいものもどんどん生まれてくるし,それらを使うことで,新しい自分の宣伝スタイルも生まれてきます。そのたびに楽しくなってきていますし,まだまだやりたいことはたくさんあります。
宣伝という仕事を通じて,この年齢になっても自分がまだ進化していることが実感できますし,進化しているからこそ新しいお客さんも増えて,いろんな仕掛けができるんだなと。
4Gamer:
なるほど。
萩原氏:
お客さんとも,お金がからんでいないから対等の立場だし,だからこそ本音で話せることがあって,一緒にできることがあってと,飽きることはないし終わりがないので,面白いんだと思います。
問題点を挙げるとしたら,カプコンの宣伝スタイルは間違ってはいないけど,全部僕が考えているから“古い”というところでしょうか。
インターネットを使った宣伝などは,ほかのメーカーに及ばないところもあって,見習わなきゃいけないこともたくさんあると思っています。ただ,そういった新しい宣伝スタイルは,僕よりも若い世代のメンバーに考えていってほしいんです。
4Gamer:
新しい取り組みといえば,1月にオープンした「CAPCOM BAR」も,ゲームメーカーとしては珍しいアプローチですよね。
ええ。パセラさんとのコラボで,2012年1月25日にオープンした「CAPCOM BAR(カプコンバー)」は,一つの空間の中でゲームというエンターテインメントを楽しみ,ゲームの魅力を伝えるという,エンターテイメントコンセプトバーです。
「カプコンバー」は新しいユーザーコミュニティの構築が目的で,食事をしながら気軽にゲームを楽しんでもらえる空間作りをしています。また,グッズの展示も行っているんです。
4Gamer:
飲食店でグッズを展示するのは,どういった理由からなんですか?
萩原氏:
書籍やグッズは,年間で数多くの商品が世に出されますが,残念なことに,良い商品であっても,ユーザーさんに認知されていないものもあるんです。「カプコンバー」で実際に商品を手に取って見てもらうことで,商品を認知してもらい,魅力を伝えることで今後の購買に繋がればいいなと考えています。
もちろん,ゲームや書籍・グッズを宣伝するだけではなく,「カプコンバー」に来店されたユーザーさんには,思い出に残る時間を作ってあげたいとも思っています。
将来的には,ユーザーさんからいろいろな声を聞き,その要望にも応えられるようにしたいので,「あの本読みたい!」「あのグッズを触ってみたい!」といった要望があれば,どんどん言ってほしいですね。
4Gamer:
なるほど。それでは最後にあらためて,今後の抱負を教えてください。
まず4月から,ニコニコ生放送でも「ハギとこ!」をスタートしました。Ustreamとは異なるであろうユーザー層へ向けて,幅広くタイトルをアピールできればと考えています。
さらに,ラジオも始めました。ニッポン放送さんの「ミュ〜コミ+プラス」内の「サポーターズ・プラス」で,カプコンコーナーが放送中です。
こちらは「カプ本」との連動を軸に,誌面企画などをリスナーと共に作っていこうという試みです。音声のみで“聞いてもらう”ということもあり,ゲームサントラの紹介なども考えています。もちろん,番組には僕が毎回ゲスト出演しています(笑)。
先にもお話ししましたが,これまで僕らが作ってきたユーザーコミュニティをもっともっと拡大させていきたいですし,「ハギとこ」で培ってきた映像の宣伝手法を,それ以外の方面にも活用して,新しい宣伝スタイルを作っていきたいです。
そして,「カプ本」も成長させて,読者の人達と一緒に遊べるようにしたいですし,出版業界の活性化もしたいので,ゆっくり成長を見守ってほしいと思います。
カプコンでは,家庭用ゲームもソーシャルゲームも取り組んでいるので,そのどちらもですが,もう一回「ゲームって楽しい」ということを広めて,新しいゲーム世代を作っていきたいと思っています。
4Gamer:
ありがとうございました。
カプコンちょっぴり公認 ハギーのカプコンゲームをとこトンやってみよう!
配信先:ニコニコ動画チャンネル「ニコジョッキー」 ※無料です
5月配信スケジュール:5/14(月)、5/28(月) 毎月2回、21:00〜22:00放送予定
ニコジョッキーHP:http://ch.nicovideo.jp/channel/nicojockey
ミュ〜コミ+プラス(サポーターズ・プラス コーナー)
配信先:ニッポン放送(AMラジオ1242)
毎週月曜日〜木曜 24:00〜24:53
番組HP:http://www.allnightnippon.com/mcplus/
カプコンコーナー放送日時:4/5(木)〜6/28(木)毎週木曜 24:30〜24:37放送!
(生放送のため、放送時間が若干異なる場合がございます)
今回はカプコンのパブリシティ企画推進室という,“宣伝”の立場にある萩原氏に,パブリシティ面からの宣伝活動について話を聞いてみたが,いかがだっただろうか。
筆者は,失礼ながら「ハギとこ!」や「カプ本」は,半ばノリで始めたものだと思うところがあったのだが,実は深い意図が込められていることを知り,自らの浅はかさを恥じることになった。
ゲームの販売数を増やすためには新規層の取り込みが必要だということは,どのメーカーも理解しているだろうし,どのようにして取り組むかに,苦心しているところだろう。カプコンの場合は,そのビジョンがすでに明確な形になりつつあるようだ。「方向の見えない道を模索」を脱し,成功に向けての試行錯誤を重ねているといったところだろうか。
萩原氏が仕掛けている取り組みは,4Gamer読者のようなゲームファンからすると異質なものに感じられるかもしれない。しかし,それはすなわち「今のゲームファン以外の層に訴えかけている」ことに成功しているという事実の裏返しではないだろうか。
これを読んだ読者の皆さんがどう思うかは分からないが,筆者は,ゲーム業界に携わる者として,「ゲームファン層を拡大したい」という萩原氏の考えと,その実行力に大いに賛同した。萩原氏の「次の一手」にも期待したい。
「ハギーのとこトンやってみよう!」公式サイト
カプコン公式サイト内「カプ本」紹介ページ
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