レビュー
ドイツ生まれの,ユニークな建造物解体系シミュレーション
デモリッション カンパニー
ゴールド エディション 日本語版
いろいろな道具や重機を使って,建造物を解体しよう
ビル解体会社のオーナーとなり,油圧式重機などを操作して建造物を破壊/解体するというシミュレーション,「デモリッション カンパニー ゴールド エディション 日本語版」が,2011年6月24日にズーから発売された。
本作の開発は,「ファーミング シミュレーター」シリーズや,フォークリストのシミュレータなど,一風変わったテーマの作品を作り続けるドイツのデベロッパ,astragon softwareで,本作もまた「ビルの破壊/解体」という,たぶん同じテーマのゲームは1つもないんじゃないかという通好みのジャンルを選んでいる。
会社周辺や工事現場のあるエリアは徒歩で自由に行動できる。落ちているクズ鉄を拾うと資金が増えるので,ときどき歩きまわるのも悪くない |
本作では,そんな謎めいた解体作業を実際に体験できるという,ビル解体ファンにはたまらない作品だ。しかも,プレイしてみると,建物を豪快に解体する行為が猛烈に気持ち良かったりするから,なんかクセになりそう。
また,舞台が海外となっているので,日本ではまずお目にかかれない「爆薬を使った解体」なども体験できる。爆破によってガラガラと崩れ落ちる建物は,物理エンジンのおかげか,なかなかリアル。その様子をノンビリ眺めていたら煙突がこっちに倒れてきた……なんてことも起こるから,現場で油断は禁物だ。
ローカライズは,ゲーム中のテキストが日本語で表示されるというもので,もともとセリフなどはないので,英語が苦手な人も安心してプレイできる。
実在するものをモデルにしているかどうか不明だが,登場する重機は細かいところまで再現されている印象。重機マニアの人は動かしてみたくなるはず |
重機の役割や操作が分からなくても,詳しいチュートリアルが用意されているから安心だ。チュートリアルでも経験値がもらえるので,まずは挑戦してみよう |
海外版ではダウンロードコンテンツとして配信されている,ブルドーザーなど4種類の追加車両や追加ミッションが,日本語版では最初から入っていてお得 |
ゲーム中のテキストはすべて日本語化されており,どんな作業をすればいいのか一目瞭然だ。英語が苦手という人でも,安心して解体作業に専念できる |
「デモリッション カンパニー ゴールド エディション 日本語版」
公式サイト
バリエーションに富んだ30種類の解体ミッションに挑戦だ
ゲームのメインとなる「キャリアモード」では,解体会社の新人として解体現場に出向き,さまざまな道具や重機を使いこなしながら一生懸命に働くことになる。仕事を行う現場は,レベル1〜7まで7か所あり,各現場は4〜6種類のミッションで構成されている。こんな感じで,ゲーム全体のミッション数は30種類だ。最初に挑戦できるのはレベル1の簡単な仕事だが,ミッションをクリアすることで得られる経験値でレベルがアップし,さらに難度の高い仕事に挑戦できるシステムだ。
ミッションとしては,古くなった警察署や映画館の取り壊し,立体駐車場の階段の撤去,空港の格納庫の撤去など,さまざまなものが用意されている。
具体的な解体作業の内容としては,建物の壁をハンマーで崩したり,破片を削岩機で細かく砕いて運搬したり,爆薬や重機を使って建物を破壊したり,壁を壊さずに天井だけを取り除いたりといったものがある。
ホイールローダーを使って瓦礫をダンプカーに積むという割と普通っぽいものから,ビルの爆破をビデオに撮って広告キャンペーンに使いたいという風変わりな建築主の依頼に応えるものまで,ミッションのバリエーションもなかなか豊富だ。
基本的には建物を壊す仕事ばかりだが,適当にやっていても大丈夫なのは一部のミッションだけで,ほとんどのものにはやるべき課題が用意されている。つまり,制限時間内に課題をクリアできなければ,報酬が減ってしまうというわけだ。
また,壊してはいけない部分を壊してしまうと危険度が上がり,危険度を示すゲージが一杯になるとミッション失敗だ。失敗すると,半分の経験値しか得られないので,慎重かつ迅速に必要な場所を壊せるかがポイントになる。ちなみに,失敗したミッションに再挑戦してクリアすると,残り半分の経験値が獲得できる。失敗を次のプレイに生かしてクリアを目指せるのが嬉しいところで,ゲームオーバーはない。
プレイヤーのレベルが上がれば,よりハイレベルのミッションに挑戦できるわけだが,そのためには道具も必要になってくる。最初はハンマーしか持っていないが,仕事で得られる報酬を貯めて,さまざまな機械や道具を買い揃えよう。
道具は「Destruct Mart」という店で購入できるが,お金だけでなく,購入するために必要なレベルも設定されており,レベルアップするまで購入できない道具もある。最初こそ資金不足で欲しいものが買えないこともあったが,短時間で終わる報酬の多いミッションを繰り返しプレイするだけで簡単にお金が貯まるため,道具が買えずに苦労することはないと思う。
難度は,キャリアモード開始時に「イージー」「ノーマル」「ハード」から選択できる。難度が上がるにつれて制限時間内に課題をクリアするのが難しくなったり,報酬が少なくなったりするのだが,なぜか自信があり,最初にハードを選択した筆者は,レベルが上がるにつれて大変な思いをすることになった。なんでハードを選んじゃったのか反省したのち,イージーを試してみると,かなり楽勝で仕事を進められた。しかし,なんか物足りないのも事実。プロ顔負けの迅速で正確な解体作業を身につけたいなら,ノーマルかハードでのプレイをオススメしたい。
キャリアモードのほかに,「ミッションモード」が用意されている。ミッションモードはキャリアモードでアンロックされた仕事を自由に選んでプレイできるものだ。キャリアモードでは,それぞれの仕事に使う重機や道具が決まっているのだが,このモードでは自分で使いたいものを自由に選べるのだ。さらに,課題の時間制限もないため,お気に入りの解体を思う存分に楽しむことができるのも嬉しい。ただし,当然ながら報酬はない。
ビルの屋上の小屋を壊すミッション。削岩ドリルでガガガッ! しかし必要以上に破片を地上に落とすと,ミッション失敗だ |
こちらは,余計なところを壊したり,瓦礫を大量に落下させたりすると危険度を示すゲージが増え,満タンになればミッション失敗 |
1つずつ確実にミッションをこなしていけば,自然にレベルアップして,新たな工事現場に挑戦できるようになるはずだ。もちろん,仕事内容はだんだん難しくなる |
道具や重機は「Destruct Mart」で購入。一度購入するとメンテナンス不要で,ずっと使い続けられる。たまに壊れて修理が必要,とかならもっと面白かったかも |
道具や重機を臨機応変に使い分けて,
迅速かつ正確に解体作業を進めよう
仕事は道具や重機がないと始まらない。本作にはさまざまな道具や重機が登場するが,普段の生活では使わないものばかりだし,ここでどんな道具や重機が登場するのか,そして,どのように使うのかを簡単に紹介していこう。
まず,手持ちの道具としてハンマー,ツルハシ,削岩ドリル(2種類)が登場する。ハンマーやツルハシの説明は要らないと思うが,破片に振り下ろして細かくするというのがメインだ。ゲームの中の人は,どんなにハンマーを振り回しても疲れないので,ガンガンいってみよう。思う存分にハンマーやツルハシを振り回すとスッキリするので,日頃のストレス解消にもってこいだ。
削岩ドリルはセメント壁などを壊す際に,両手で持ってガガガガガとやる,工事現場などでたまに見るあれだ。手持ちで使うため,壊したくない部分の周辺で慎重に作業するときに便利。また,爆薬や重機で大まかに解体したあと,破片を細かくしていく作業に使うことも多かった。
日本ではめったに見ないが,海外では頻繁に行われているのが爆破解体で,ゲームには破壊力の異なる3種類の爆薬が用意されている。爆薬をセットしたのち,スイッチを押すと仕掛けた爆薬が同時に爆発する仕掛けになっており,実際に行われている爆破解体のように,爆破のタイミングを変えることで倒壊を制御できないのがちょっと残念だ。
とはいえ,破壊力の異なる爆薬を組み合わせることもできるので,場所によって使い分けることで,ある程度は狙いどおりに倒壊をコントロールできるかもしれない。
爆薬を仕掛ける位置を微妙に間違えて,狙った方向に崩れなかったり,爆薬道はなかなか奥が深いが,海外では一種のイベントとして行われることがあるビルの爆破解体だけに,建物がガラガラと崩れ落ちる気持ち良さは十分味わえる。
大まかに解体し,残りの細かい作業は削岩ドリルを使うことが多かった。爆薬でダメージを与え,削岩ドリルで丁寧に壊すパターンは非常に使える |
重機は外部視点のほか,運転席視点と実際に解体作業を行っている部分をアップする視点が用意されており,それらを適宜切り替えながら作業を進める |
レッキングボールは対象物に鉄球をぶつけて解体する。ブームの角度と鉄球の進む速度がなかなか分かりにくくて,使いこなすまでかなり苦労した |
ミッションはクリアしたものの,爆薬を大量に使ったため費用がかさんだ。効率よく,大きな利益を得られるやり方でミッションクリアを目指そう |
プレイヤーが乗り込んで操縦するタイプの重機も多数登場する。可動するアームの先端に削岩ドリルが付いた掘削機は,大きさの異なる3タイプがあり,大型についてはロングブームタイプとバケツタイプの2種類がある。ほかには,アームの先端に削岩ドリルがつき,それが垂直に動くスキッドステアローダー,そしてワイヤーに吊された鉄球をぶつけて破壊するレッキングボール(小型と大型)など,普段あまり目しない重機が操作できるので,重機ファンは喜んでほしい。
それが原因で倒壊することもあるので,そんなときに思わず悲鳴をあげてしまう筆者を許してほしい。
また,レッキングボールはブームを前後に倒したり,ワイヤーの長さを調整して鉄球のぶつかる強さを調節するのだが,勢いをつけすぎて反対側の壁まで突き破ってしまったということも多発する。また,通常以外の方法として,キャビン(運転席やブームの付いている部分)を旋回させた反動で鉄球を目標に叩きつけるといった使い方も可能だ。これを使いこなすと,気持ちいいほど豪快な解体ができるので,ぜひミッションモードで思う存分練習を積んでおいてほしい。
解体が終われば,解体作業で出た瓦礫の撤去を行うことになる。ブルドーザーで瓦礫を集め,ホイールローダーやダンプカーに乗せて瓦礫置場に運んだりする仕事もこなさなければならないから,割と大変だ。
ちなみにゲームの操作はキーボード+マウスで行うが,Xbox 360のコントローラにも正式対応している。キーボードに比べてコントローラの操作は少々ややこしく,複数のボタンを同時に使うことも多いので,慣れるまでに時間がかかりそうだ。だが,使い慣れると直感的な操作が可能になり,そうなると面白さが増してくる。バイブレーションにも対応しているので,削岩ドリルを使った場合の雰囲気は抜群だ。ガガガガガ。
重機ファン,解体ファン,爆破ファンの人なら,
絶対にやらなきゃ損
本作の魅力は,個性的なジャンルをテーマにしていることと,建物の破壊という行為の持つプリミティブな面白さが味わえるところだ。重機を操作して多少乱暴かつ豪快に作業することもできるし,例えば,「ここは削岩機で大まかに壊して,ここはスキッドステアローダーで作業してから削岩ドリルで細かく壊そう」などと,効率よく解体作業するための戦略を立てるのも面白い。
解体してから瓦礫を撤去する必要のあるミッションなどでは,作業の流れをイメージして挑戦しないと,ミッション失敗を繰り返すことになるだろう。こうしたことに頭をひねるのも面白い部分だ。
薄々気づいている人もいるだろうが,筆者のオススメは爆薬による解体。多数の爆薬を仕掛け,少し離れてスイッチを押したときの快感は何ともいえず,最小限の爆薬で建物を倒壊させられるかなど,勝手な課題を作って楽しんでしまった次第だ。
というわけで,シミュレーションとはいえ,プレイ感覚はかなりゲーム寄りの本作。ぜひ,建物を解体する気持ちの良さを多くの人に味わってもらいたい。4Gamerの「こちら」に英語版の体験版を掲載しているので,興味のある人はプレイしてみよう。
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