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  • アトラス
  • 発売日:2012/06/14
  • 価格:パッケージ版:7329円(税込)
    ダウンロード版:5980円(税込)
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いま一度“もうひとりの自分”と向き合おう――JRPG史上最高のリメイク作「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」のレビューを掲載
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印刷2012/07/21 00:00

レビュー

アニメ版ファン/コアなシリーズファンの両方を満足させる究極のリメイク作

ペルソナ4 ザ・ゴールデン


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 アトラスは6月14日,PlayStation Vita用ソフト「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」(以下,P4G)を発売した。本作は2008年に発売され好評を博したPlayStation 2用ソフト「ペルソナ4」に,さまざまな新要素を追加した作品だ。
 「ペルソナ」といえば「真・女神転生」と双璧をなすアトラスの看板RPGシリーズだが,中でも「ペルソナ4」は,昨年10月にTVアニメ化が実現しており,そのほかにもコミック,舞台など多岐にわたるメディアミックスでヒットを飛ばしている超人気タイトルだ。
 さらに2012年3月には,アークシステムワークスと共同開発した2D対戦格闘ゲーム「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」アーケード版)が稼働しており,そのコンシューマ版(PS3 / Xbox 360)も7月26日に発売予定となっている。なおコンシューマ版では,シンプルながら奥深い駆け引きが楽しめる格闘部分はそのままに,30時間以上楽しめるボリュームのストーリーモードを搭載。「ペルソナ4」で描かれなかった物語が展開されるということで,大きな注目を集めている。

 このように,現在進行形でブームが継続していると言っても過言ではない「ペルソナ4」。「P4G」もリメイク作ながら,PS Vitaタイトルとしては異例の13万7000本(メディアクリエイト調べ)という初週販売本数を記録した(関連記事)。
 さまざまな追加要素とシステムのブラッシュアップにより,“リメイク”の一言で片付けられないほどの進化を果たした「P4G」の魅力を,本稿では存分にお伝えしていこうと思う。

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「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」公式サイト



日常と非日常が交錯する世界観

濃度の高い青春の日々を過ごそう


連続殺人事件を追う“自称特別捜査隊”の面々。ストーリーが進行するほどに,個性豊かなメンバーが増えていく
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 本作の舞台となるのは,とある田舎町“八十稲羽”。この町へと引っ越してきた主人公は,引っ越し早々「死体が吊るされる」という猟奇的な連続殺人事件に遭遇する。また,「雨の日の深夜0時にテレビを見ると“運命の人”が映る」という“マヨナカテレビ”の都市伝説を試したことがきっかけで,“テレビの中の世界”と,そこに跋扈する異形の怪物“シャドウ”の存在を知る。
 そして,心の力を具現化するという“ペルソナ”能力に覚醒した主人公は,やがて,同じくペルソナ能力に目覚めた仲間達と共に,連続殺人事件の真相へと迫っていくことになる。

サブイベントやクエストなども豊富な本作。自分の好きなように時間を使えるのが大きな魅力だ
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 勉強,部活,怪物,バイト,推理,迷宮,殺人,恋愛,心の闇……本作のストーリーは,日常と非日常が交錯した世界観の中で,人間的に成長していく少年少女達の姿を描いた青春群像劇だ。ゲームシステム的にも,日常生活パートとマヨナカテレビ探索パートを交互に進めていく流れとなっており,日常と非日常のギャップを楽しめるのが大きな特徴となっている。

 日常パートでは,勉学や部活に励み,友人達と遊び,趣味に没頭し,アルバイトでお金を貯め……まさに,“青春”と呼ぶにふさわしい日常を謳歌することができる。やれることが非常に多く,日々「今日は何をしようか」と悩んでしまうほどだ。

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家庭菜園で育てた野菜は,収穫すれば実際にアイテムとして使用可能。植える苗によって,さまざまなアイテムが得られる
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 こういった経験は主人公の成長につながっており,例えば勉強をすれば“知識”が深まり,アルバイトをすれば“根気”や“寛容さ”が高まる。各ステータスは5段階評価(通知表みたいだ)になっており,ランクが高くなれば行動の幅が広がったり友人とより仲良くなれたりと,さまざまな好影響があるというわけだ。
 ちなみに「P4G」では,オリジナル版にはなかったイベントやアニメシーンも多数新録されている。サブクエストでも行動の幅が広がっており,家庭菜園で野菜を育てたり,神社で虫取りをしたりおみくじをひいたり,夜の町へと繰り出したり,さらには原付免許を取得することで,隣町である“沖奈市”や“七里海岸”まで行けるようになったりする。
 本作の良い所は,ストーリー序盤からこういった新たな楽しみに触れられるという点で,おかげでオリジナル版をクリア済みの筆者でも,完全新作を遊んでいるような気持ちでプレイできた。

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本作では夜釣りができるようになったほか,さまざまな人物と交流を深めることができる。限られた時間をより有意義に過ごせるようになったわけだ
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PS Vita版ならではの新機能として,同じ場面でほかのプレイヤーがどんな行動をとったのかをチェックできる「みんなの声」が搭載。やれることが多すぎて悩んでいる人は,攻略の参考にしてみよう

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オマケ要素として,さまざまなコンテンツを鑑賞できる“番組表”が登場。ダンジョン以外の自由行動中ならばいつでもアクセス可能で,とくに“マヨナカ横断ミラクルクイズ”は一見の価値アリ

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 本作には,友人達と交流することで絆を深める,“コミュ”という独特のシステムがあるのだが,これは近年のペルソナシリーズにおいて,最も重要かつ魅力的な要素だと言っても過言ではない。
 コミュには,対応キャラクターごとに“魔術師”“隠者”“悪魔”などといった“アルカナ”が設定されており,対象となるキャラクターと楽しい時間を過ごしたり,悩みを聞いてあげたりすることでコミュイベントが進行し,ランクが上昇していく。
 コミュイベントの内容は多種多様だが,どれもプレイヤーの心に響いてくる“青春濃度”の高いシナリオで,感情移入度の高さがハンパじゃない。コミュをメインストーリーと共に進め,各キャラクターとの絆を深めていくことで,RPGタイトルの中でも屈指の濃厚なゲーム体験が得られるのである。
 「P4G」での要注目ポイントは,“永劫(マリー)”と“道化師(足立 透)”の追加で,マリーに至っては完全な新キャラクターだ。コミュイベントを通じて彼女のことを知れば知るほど,そのコケティッシュな魅力にメロメロになっていくだろう。一般的な性癖の持ち主である筆者がそうだったので間違いない。
 一方の足立は,役割的にかなり意外なコミュキャラクターとなった。オリジナル版では描かれなかった彼の内面に迫るエピソードがふんだんに盛り込まれており,ある意味「ペルソナ4」ファン的には必見だ。

1日に一緒に過ごせる相手はひとりだけ……誰のコミュニティを優先して上げていくか,それが悩みどころだ。ちなみに筆者は主に女の子を優先するので,コミュニティの育ち具合に大きな偏りが出る。仕方ないね
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 なおパーティメンバーに関しては,コミュランクを上昇させることで戦闘力が増強したり,(一部の女性キャラクターは)MAXランクに到達した時点で特別な関係になれたりもする。どれくらい特別かというと,運動後シャワーも浴びていないのに抱きしめられたり,主人公の部屋へ遊びに来たあと“なぜか”靴下を忘れていってくれたり……というくらいに特別な関係だクンカクンカスーハースーハー!


人格の鎧を纏い困難に立ち向かえ

大切な町と人々を守る“凄春”の戦い


通常戦闘のBGMは「P4G」用の新曲になっているが,バックアタックに成功するとオリジナル版のBGMが流れるという,ファン心理を分かりすぎている工夫が非常に好印象だ
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 続いて,探索パートについて解説しよう。本作では連続殺人事件に巻き込まれ,テレビの中に放り込まれた人々を助けるために,テレビ内のさまざまなダンジョンを攻略していくことになる。テレビ内に閉じ込められた人物は,現実世界で霧が出る日に必ず殺害されるので,天気予報で霧が出るとされる期日までに救い出さねば,ゲームオーバーになってしまうのだ。つまり本作では,日常パートで青春ライフを送りつつも,定期的にテレビに入ってシャドウと戦い,ダンジョンを攻略しなければならないというわけである。
 ゲーム開始時に選択する難度次第ではあるが,本作の戦闘はかなり歯応えのあるバランスになっており,ノーマル以上だと,たとえザコ敵が相手でも一瞬で全滅する可能性があるほど。もはやアトラスのタイトルにおいては伝統とも言えるが,「敵の弱点を突き,自分の弱点は守る」という戦術が生死を分けるゲームバランスになっている。
 これだけ聞くと,コアゲーマー向けのタイトルにありがちなツラい長期戦を連想してしまう人もいるかもしれないが,とんでもない。本作では,敵の弱点を突くことで発生するダウン効果と“1 MORE”チャンスによって連続行動が可能となっており,すべての敵をダウンさせれば“総攻撃”チャンスが発動。敵全体に万能属性のダメージを与えることができるのだ。

戦闘に勝利すると,ランダムで“シャッフルタイム”が発生。カードを選ぶことで体力を回復したり,ペルソナやスキルを入手したりできる。敵の弱点を突く総攻撃を発動するなどして,戦闘を有利に運べば運ぶほど,シャッフルタイムが発生する可能性が高くなるのが面白い
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 このシステムによって,数あるRPGの中でも随一と言えるほどの,スピーディでテンポの良いバトルが実現されている。例えるならば,パズルゲームをサクサク解いていくような感覚に近い。慣れてくれば高確率で,一度も敵に行動順を回さず完封勝利できるようになるので,その爽快感が病み付きになること間違いなしだ。
 さらに,オリジナル版ではナビ役に徹していた“久慈川りせ”が,戦闘にも参加してくれる“チアーアップ”や,ダウンした敵に控えのメンバーがバイクで特攻してくれる“バイク追撃”,特定メンバーの組み合わせで発動する“同時攻撃”などが追加されており,戦闘面のシステムはさらにスリリングかつ爽快になっている。とくにオリジナル版をプレイ済みの人にとって,これらは特筆すべきポイントだろう。

PS Vitaならではの通信機能は探索パートにも活かされている。「P4G」では画面をタッチして救援要請を出し,ほかのプレイヤーに応援してもらうことで,HPとSPを回復できる。また,自己紹介用のメッセージカードも編集可能だ
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テレビ内では“衣装”を装備することで,キャラクターのグラフィックスやモーションが変化する。「P4G」では防具と別カテゴリで装備できるように変更され,性能を気にせずオシャレが楽しめるようになった。痒いところに手が届く嬉しい変更だ
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コミュの拡張に伴い,新たに永劫と道化師のペルソナが追加されている。全ペルソナのコンプリートを目指すしかない
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 そして,戦闘において最も重要な役割を果たすのが,シリーズのタイトルにもなっているペルソナの存在だ。ペルソナは,前述したコミュニティと同じくアルカナで区分されており,世界中の神話/民話に登場する神や悪魔をモチーフとした姿をしている。
 ペルソナのステータスや所持しているスキルは多種多様で,仲間達のペルソナは各人の“心の力”として固定されているが,主人公は“ワイルド”の特殊能力によって,多種多様なペルソナを装備することができる。敵の弱点を見極め,状況ごとに主人公のペルソナを変更しながら戦えるのが本作のキモなのだ。

合体で生み出せるのは主人公のレベル以下のペルソナのみ。しかし合体予報の効果次第では,序盤から強力なペルソナを生み出すことも可能だ
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 また,ペルソナは“ベルベットルーム”で合体させることで強化が可能。合体により生み出されたペルソナは,素材となったペルソナのスキルを一部引き継げるほか,アルカナに対応したコミュのランクに応じて経験値ボーナスが入る。つまり,合体させればさせるほど強力なペルソナを生み出すことができるというわけだ。
 なお「P4G」では,“検索合体”で簡単に目的のペルソナが生み出せるようになっているなど,合体システムがブラッシュアップされている。日によってペルソナにさまざまなボーナス効果が発生する“合体予報”や,お目当てのスキルを合体なしで覚えさせられる“スキルカード”など,便利なシステムが追加されたことで,プレイアビリティが大幅にアップした。
 従来の「ペルソナ」シリーズでは,アトラスのタイトルに不慣れなプレイヤーからすると,合体システムが少々難しかったかもしれないが,本作ではそれがずいぶんと改善されている。しかも,決してヌルくなったわけではなく,ちゃんとやりこみ要素の増強にもつながっている点が見事だ。携帯ゲーム機向けのタイトルではとくに重要視されるストレスフリーなシステムを,「P4G」は高水準で実現していると言えるだろう。

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一度手に入れたペルソナは,お金を払うことで“ペルソナ全書”から再召喚できる。惜しまずどんどん合体していこう
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シャッフルタイムで入手したスキルカードは,ベルベットルームにいるマリーに渡すことで,以後何枚でも購入できるようになる。多少値は張るが,有用なペルソナをスムーズに生み出すためにどんどん利用していきたい


“傑作”が“超傑作”に進化

コアなファンも納得のリメイクタイトル


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 「ペルソナ」シリーズならば寝食を忘れて語り続けることができる筆者からすると,まだまだ書き足りない部分はあるが,最低限伝えるべき「P4G」の魅力についてはこんなところだ。ミステリー性が高い作品の特性上,ネタバレは厳禁だし,今回はこの程度で勘弁しておいてやろうと思う(本当はクマが怖い)。

 思い返せば,同じくPS2タイトルから携帯ゲーム機に移植された「ペルソナ3ポータブル」は,PSPというハードのスペック的な限界から,さまざまな要素をスポイルしつつ,アレコレと工夫をこらして新要素を盛り込んでいた。しかし,「P4G」に関してはそのようなことが一切なく,PS2版よりもすべての面においてパワーアップしているのだから驚きだ。

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 これまで数多の名作タイトルが携帯機向けにリメイク/移植されてきたが,本作はその中でもトップクラスの完成度を誇っている。筆者のようにオリジナル版からのファンならば,100%に近い満足度を得られるだろうし,本作から新たにマヨナカテレビを覗く転校生も,その魅力の虜になってしまうこと間違いなしだ。
 個人的には,「PS Vitaを持っているならこれだけは必ずやっとけ!」と断言できるほどオススメの「P4G」。ちょうど主人公達と同年代の学生諸君には,ぜひとも腰を据えてプレイしてほしい。そして過ぎ去りし日々を懐かしく想う大人達も,ロマンと冒険に満ちた“2度目の青春”を,かけがえのない仲間達と共に過ごそうじゃないか。あの頃に置いてきた“もうひとりの自分”と再び向き合うことができるRPG,それが「P4G」なのだから。

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