インタビュー
進化を続けるビジュアルとサウンド。「ルミネス エレクトロニック シンフォニー」の魅力を水口哲也氏ら開発陣に聞いた
本作は,まるでプレイヤー自身が音楽を演奏しているかのような感覚でプレイできるパズルゲーム「ルミネス」シリーズの最新作。タッチパネルによるシンプルな操作性に加え,グラフィックスやサウンドなど,すべてにおいてアップグレードされ,また,世界中のプレイヤーとスコアを競い合ったり,プレイヤー同士で課題のクリアを目指す「World Block」 など,PS Vitaのオンライン機能を生かした要素もふんだんに盛り込まれている。
今回は,本作のプロデューサーを務めるキューエンタテインメントの水口 哲也氏と,ディレクターのデイン ドン氏に話を聞いてきたので,その模様をお届けしよう。
「ルミネス エレクトロニック シンフォニー」公式サイト
すごくシンプルな気持ちで
「新しいルミネスを作ろう」と思った
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず最初に,ルミネス エレクトロニック シンフォニーをPS Vitaで出すことになった経緯を聞かせてください。
水口 哲也氏 |
以前から言ってるんですけど,PSPを初めて見たとき「これはインタラクティブ・ウォークマンだ」って思ったんですよ。それ以前の携帯型ゲーム機では,音楽を楽しみながらプレイする環境としては,まだまだ不十分でした。ですのでPSPが発表されたときは,凄く嬉しかったのを覚えています。同じようにPS Vitaでも,すごくシンプルな気持ちで「新しいルミネスを作ろう」と思いましたね。
4Gamer:
実際にルミネスをPS Vitaで制作をされてみていかがでしたか。
デイン ドン氏 |
面白かったですね(笑)。時間があればもっと面白いビジョンもいろいろ浮かんだと思います。
4Gamer:
実際の開発期間はどれくらいですか?
水口氏:
昨年の3月にスタートしているので,丸1年くらいですかね。過去のルミネスシリーズも1年かかってないくらいですし,今回もだいたい同じくらいの期間になりました。
4Gamer:
エレクトロニック シンフォニーはタッチパネル操作がウリの1つだと思うのですが,iOS向けに発売した「ルミネス - Touch Fusion」の開発ノウハウは,本作の開発に生かされているのでしょうか。
水口氏:
基本的な考え方は同じですので,一つの試金石にはなっていますよ。今回は大きなチャレンジとして背面タッチパネルを使った操作も取り入れていますので,Touch Fusionの経験を生かしつつも,総合的には大きく進化しています。あと,PS Vitaはソーシャル機でもあるので,その部分に対する議論もかなりありましたね。
ドン氏:
今回はPS Vitaのネットワーク機能を使ったフレンド同士の繋がりを重視していていますので,プレイ中にフレンドのスコアが常に表示されているんです。
水口氏:
「繋がり感」はすごく重視していますね。「あっ,あいつここまで行ったのか!」みたいな感じで,友達同士競い合える楽しさを感じていただければなと。
クオリティが高い楽曲によって
作品自体にも「力」が出てくる
4Gamer:
PS Vitaはサウンド面での性能も非常に高いと思うんですけど,本作を開発する際は,その部分を生かすため,さまざまな試行錯誤をされたかと思います。その辺はいかがですか。
本作には34曲の原曲を収録しているんですけど,それをルミネスで表現するためには,音のクオリティはもちろん,実際に曲を演奏しているかのようなサウンドデザインが必要なんです。
ですので,その部分は非常に気を使って制作していますし,最初のルミネスより格段に進化しています。シリーズも8年間やってきてますから,スタッフのスキルも相当上がってきているのでしょう。初代ルミネスではスキンが変わるときに少し時間がかかってたんですけど,本作ではかなりスムーズに変わっていくんですよね。楽しくプレイし続けられる大きな要因にもなっているので,単純にプレイフィールにもいい意味で影響を与えていると思いますよ。
4Gamer:
原曲で表現できるからこそ,1回1回のプレイで聞こえる音が価値のあるものになると。
水口氏:
そうですね。あと,有名な楽曲って基本的にクオリティが高いから,感情に訴えるものがありますよね。気分を盛り上げたり刺激する力を,楽曲それぞれが持っています。そういった楽曲を収録することによって,作品自体にも「力」が出てくるんだなって思いましたね。また,本作のアーティストリストを見てニヤッとする人もいるでしょうし,収録曲をまったく知らない人でも,プレイしたら好きになる可能性がありますよね。そういう楽しみ方ができるのもルミネスの魅力だと思います。
4Gamer:
今回参加されたアーティストは,過去に組んだことのある方達なんですか?
水口氏:
そうですね。「Child of Eden」(PS3 / X360)にも参加していた若いアーティストが多いんですけど,シナスタジア(共感覚)の演出も含めて,すごくいい仕事をしてくれました。そのうちの1人なんて,高校生のときに「REZ」をプレイして「ぜひ一緒に仕事がしたい!」と追いかけてきてくれたほどです。なので情熱も人一倍ありますよ。
ちなみに本作では,プレイする毎にアバターが増えていきますが,アバターは何種類くらい用意されているのでしょうか。
ドン氏:
アバターは51種類で,スキンは43種類です。レベルが上がるたびにコンテンツが開放されていきますので,レベル50まで新しい要素がどんどん増えていく,という感じですね。
4Gamer:
アバターやスキンを発売後にDLCで追加していく予定はありますか?
水口氏:
DLCに関しては現在検討中です。
初代ルミネスを遊び倒した人にも
「また面白く仕上げたね」って言ってもらえる作品
4Gamer:
ルミネスとは少し離れますが,プレイヤーのアクションとリズムがシンクロする感覚というのが水口さんの作品の特徴だと思います。それって技術的には難しいことだったりするんですか?
技術自体が大変というよりは,その発想をロジックにして設計することのほうが大変ですね。なので,最初は結構苦労しました。スタッフにその発想を話したときは,「何言ってるの?」って感じでしたよ。
4Gamer:
確かに,普通すぐには理解できないですよね(笑)。
水口氏:
すごく抽象的な感じですよね。「イメージをどういう風に伝えていくか」,ということについてはボンヤリ見えているんですけど,それがなかなか伝わらない。でも何回か話しているうちに,だんだん自分の中の霧は晴れてくるんですよ。
作業的にはかなり苦しいので,1回経験すると,みんな「もういい!」ってなるんです。でも,それがまた快感に変わっていくんですよね。まだ誰も経験したことのないものを作る楽しさというのが,やはりあるんでしょう。
最近はソーシャルゲームとかも増えてきてますけど,やっぱりコンシューマゲームはまだまだ進化していく余地があるでしょうし,僕らが進化させなきゃいけないなって思いますね。
4Gamer:
ルミネスが,奇をてらわずに正統進化を続ける理由というのはどの辺にあるのでしょうか。
水口氏:
普通に面白いからですね。ルミネスシリーズがDLを含めて200万本売れたと言っても,まだまだプレイしていない人はたくさんいるわけです。であるならば,面白い要素をいろんな形で調理して,もっと大勢の人に遊んでもらえるようにすることも,僕らの使命だと思いますしね。
でもエレクトロニック シンフォニーに関しては,初代ルミネスを遊び倒した人にも「また面白く仕上げたね」って言ってもらえる作品になっていると思いますし,自信もあります。“ビジュアルとサウンド”,この2つの要素は常に進化を続けているので,ルミネスシリーズの進化も止まることはないでしょう。
ちなみに,水口さんの提唱するルミネスのコンセプトがスタッフ全員に伝わるまで,それなりに時間がかかったと思うんですが,現在,コンセプトの共有はスムーズに行われているのでしょうか。
ドン氏:
ゲームを作る際は,個人個人のパーソナリティが非常に大切だと思います。ですので,考え方や意見を一つにまとめないほうが,逆にいいものが出来るかもしれないですね。
4Gamer:
なるほど。一人一人の個性を尊重するということですね。
水口氏:
それは共感できますね。味が単一になるよりは,いい意味で綺麗になりすぎていない状態のほうが魅力的なんですよね。揺らぎを起こすのに,別の波長を入れたほうが良いときってあると思うんですけど,ゲーム作りにも同じことが言えると思います。
ドン氏:
柔軟性があれば結果としてバリエーションも出せるし,ルミネスの開発にとってはそういうスタイルも合っていると思います。
水口氏:
エレクトロニック シンフォニーのチームは一体感がありつつ,それに加えて各々の個性もありますからね。Child of Edenに関わったメンバーも多くいましたので,シナスタジアの気持ちよさも理解してくれていました。
本作にて追加された楽曲は,どのようにして決められたんですか?
ドン氏:
楽曲に関しては,僕とプロデューサーで決めました。
水口氏:
楽曲を決める際はだいぶやりあったと思いますよ(笑)。曲を選定するのって楽しい作業ではあるんですけど,レベルデザインに波がありますから,それをシンクロさせるのがすごく大変なんです。DD(ドン氏)からすると,レベルデザイン的にもうちょっとスローで暗くないのがいい,とかね。でも……(ドン氏の方を向いて)楽しかったよね?
ドン氏:
ええ。楽しかったですね。
水口氏:
音楽とストーリーとレベルデザインのすべてが一体化して化学反応を起こす。それがゲーム作りの面白さだと思います。
4Gamer:
本作は全世界にプレイヤーがいるということで,やはり選曲もさまざまな文化圏のプレイヤーを意識したものになっているのですか?
もちろんです。どの国の人からも「面白い」って言ってもらえる内容じゃないとルミネスではありませんので。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,読者にメッセージをお願いします。
ドン氏:
ルミネスはこれからも進化していきます。本作ではVoyage(フランス語で航海,旅という意味)という言葉を使っていて,その言葉通り,「旅」を強く打ち出しています。僕自身,次の旅も非常に楽しみにしています。
水口氏:
本作は,開発チームを本当に信頼して,預けた作品なんですね。なので,上がってきたものを見て安心しましたし,プレイしていて非常に完成度が高いなって思いました。手前味噌ではあるんですけど(笑)。
でも,すでにルミネスをプレイ済みの人でも,「これは新しい!」って言ってくれていますし,ルミネスシリーズ未経験であっても簡単に楽しめる作品になっていると思います。誰にでもお勧めできる内容ですので,ぜひプレイしていただきたいですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
「ルミネス エレクトロニック シンフォニー」公式サイト
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