インタビュー
「カオス ヒーローズ オンライン」は,ライト層でも楽しめる遊びやすいゲームとして2013年夏に生まれ変わる。その施策の数々をプロデューサーの遠藤峻亮氏に聞いてきた
セガでは,本作のジャンルをAOS(the real Action Oriented Strategy)と呼んでいるが,いわゆるMOBA(Multi-player Online Battle Arena)系と呼ばれるジャンルに属するゲームである。
一般的なRTSでは,リアルタイムに進行するゲーム進行に合わせて多数のユニットを操作するためハードルの高い印象があるが,本作では「ヒーロー」と呼ばれる強力なユニット1体のみを操作すればいいので,気軽にプレイを始められる。
またヒーローは,敵を倒してレベルアップしたり,武器や防具を購入してパワーアップしたりと,成長要素も導入されている。ただし,RPGとは違って経験値などの蓄積はされず,レベルが上昇するのはそのバトル1回限りとなる。そのため,プレイ時間の累積がなくとも,プレイヤースキルさえ磨けば,既存プレイヤーと対等に戦えるわけである。
また,2013年7月9日からは「ヒーロー強化月間」と題して,毎週2体ずつ全16体のヒーローを追加するなど,コンテンツのさらなる拡充にも力を入れていくという。
今回4Gamerでは,「カオス ヒーローズ オンライン」のプロデューサーを務めるセガの遠藤峻亮氏に,2013年夏に実施される一連の展開を紹介してもらうとともに,同タイトルの現状と今後の予定についての話を聞いてきた。
「カオス ヒーローズ オンライン」公式サイト
4Gamer「カオス ヒーローズ オンライン」サテライトサイト
怒涛のヒーロー追加と初心者向け施策で,万人が遊びやすいゲームに
「カオス ヒーローズ オンライン」では,2013年4月のサービスイン以降,「League of Legends」や「DOTA2」など,海外のMOBA系タイトルをプレイしているコアなゲーマーを対象としたプロモーション施策を展開してきた。
その結果,「カオス ヒーローズ オンライン」の登録アカウント数は,日本国内における,こうしたMOBA系タイトルのプレイ経験者の多くが,一度はプレイしたと言っていい数に達したと遠藤氏は語る。
遠藤氏:
これまでの展開で,コアなオンラインゲームプレイヤーの皆さんの多くに,「カオス ヒーローズ オンライン」を認知してもらえたと捉えています。
セガとしては,AOSというジャンルをより多くの人に認知してもらうことを目標としていますので,これからは今まで「カオス ヒーローズ オンライン」を遊んでいなかった方々にも訴えかけていかないといけません。
そこで2013年夏以降は,既存プレイヤーの皆さんのニーズを満たし,新規の方にもプレイしていただけるよう,「生まれ変わる」をコンセプトにしたアップデートとプロモーション両方の展開を進めていきます。
その施策の一つとして7月9日から実施されるのが,ヒーローの追加である。
現状の「カオス ヒーローズ オンライン」では,神聖連合と不死軍勢で合計38体のヒーローが実装されているが,プレイヤーからは,もっと多くのヒーローを追加してほしいとの声が上がっているとのこと。
7月9日からの「ヒーロー強化月間」では,8月末まで毎週2体のペースでヒーローが追加されることで,8月末の時点でのヒーロー数は合計54体となる。現在は,勝つための“テンプレ”構成が多くのプレイヤーの間で定着している傾向にあるが,その状況の打破にもつながりそうだ。
遠藤氏:
8月末に,神聖連合と不死軍勢の合計で54体のヒーローが揃うことで,ようやく一段落つけることになります。とくに8月の最終週に追加されるヒーローは,ゲームのストーリー上でも重要な位置を占める存在となりますので,ご期待ください。
また現状では,チームが勝つための構成や戦術が固定化されがちな傾向があります。それがゲームの遊びの幅を狭めていることを危惧しているのですが,ヒーローの追加で状況に変化も出てくるでしょう。新しい戦術が生まれることで,今まであまり人気のなかったヒーローが日の目を見るようになるのではと期待しています。
もちろん,ヒーロー強化月間以後も,続々とヒーローを追加していき,現時点の計画では,2013年末に両陣営合計で70体まで増やす予定です。
オリジナルの韓国版では,片方の陣営のヒーローが寝返った「リバースヒーロー」を含めると100体以上のヒーローがいますから,早く追いつきたいと考えています。
ちなみに遠藤氏によれば,「ヒーロー強化月間」では,獣人やクリーチャーのような外見のヒーローの追加が中心となるという。また,最近追加されたヒーローは“敏捷タイプ推し”の傾向が強かったが,他タイプの拡充も図られるそうだ。
なおヒーロー強化月間と並行して,ゲームにログインすると,魔力石や期間限定のアバターチケットなどがプレゼントされるキャンペーンが実施されるとのこと。
本作では,ゲーム内通貨を消費して“永久契約”を行うことで,プレイヤーが使用できるヒーローの数を増やしていくのだが,魔力石を使うことで,永久契約していないヒーローを1日1回使えるようになる。ゲーム内通貨を使って永久契約する前に,自分のプレイスタイルに合っているかどうかを確認できるいい機会なので,これから始める人は,このキャンペーンを活用してほしい。
6月25日のアップデートを皮切りに,ユーザーフレンドリーな改革を進める
修練戦は,ゲームのシステムや戦術の基本を理解するまで,初心者同士でのみマッチングを行う試合だ。修練戦で対戦を20回行い,「昇格戦」で10対戦中5回勝利すると“卒業”となり,上級者も参加するノーマル対戦やランキング対戦に参加できるようになる。
対戦型のゲームでは,実力差のあり過ぎるプレイヤーが同じ試合にマッチングされると,ゲームが成り立たなくなる可能性がある。修練戦の実装によって,ミスマッチがより生まれにくくなるわけである。
遠藤氏:
マッチングに関する配慮は本作でも当然行っていましたが,それでも初心者と上級者がマッチングしてしまう状況をゼロにはできませんでした。
初心者は,何が何だか分からないまま負けてしまうと,ゲームの面白さを理解する前に投げ出してしまうでしょうし,上級者は初心者と戦っても歯ごたえがありません。初心者と上級者が同じ試合にマッチングされても,双方にとって良いことはないと言っていいでしょう。
今回,チュートリアルを追加したことと合わせて,修練戦を卒業するまでは同程度のプレイヤー同士でのみマッチングする形を作れたことで,初心者と上級者がマッチングしてしまう状況をかなり減らせました。
おかげさまで,初心者と上級者のプレイヤー双方から,好評をいただいています。
なお,昇格戦で一定の条件を満たすと,すぐにノーマル対戦やランキング対戦に参加できる「早期卒業システム」も用意されている。
修練戦の卒業は,昇格戦で10戦中5勝以上することが条件のため,パーティを組むプレイヤーの実力にも左右される部分があるが,早期卒業システムでは,試合の勝敗ではなくプレイヤーの“実力”で判定される。そのため,ほかのMOBA系タイトルのプレイ経験がある人など,腕に自信のある人が修練戦に留まり続けるようなことは,起きにくくなっている。
ちなみに,修練戦を卒業する前でもカスタム戦はいつ誰とでも楽しめるが,基本的にノーマル対戦を行えない。しかし,修練戦クリア済みのプレイヤーとパーティを組めば,ノーマル対戦に参加することができる。したがって,たとえば友人に誘われてプレイし始めたケースでも,修練戦を卒業するまで一緒に遊べないような状況にはなりにくいだろう。
UIについても,ヒーローの外見や使用可能スキルなどを把握しやいようにステータス画面を一新した。以前は文章での説明のみだったが,ヒーローのアクションや所持スキルの効果など,視覚的に確認できるようになっている。
遠藤氏:
今までのようにステータス画面にデータが列挙されているだけだと,どんなヒーローかイメージできるのは,ゲームをやり込んでいる方だけでしょう。
初心者にとってはとっつきにくいですから,開発元のNEOACTさんと相談して,どんなヒーローなのか理解しやすくなるよう,イラストや動画を使って視覚に訴えかける形に変更しました。
また,アバターカードを装備している場合には,アバターイラストがステータス画面に反映されるように変更しています。
遠藤氏曰く,UIの改修や修練戦の実装にとどまらず,初心者向け施策は今後も引き続き検討しているとのこと。まだアイデアレベルのものも多いが,教則動画の配信,短時間で決着がつくモードなどが候補として挙がっているそうだ。
遠藤氏:
サービスイン当初は,神聖連合と不死軍勢のバランスが今一つで,制限時間50分を使い切る前に,途中で降伏して対戦が終わるケースも少なからずありました。しかし,バランス調整を重ねた結果,神聖連合と不死軍勢の勝率は52:47程度と,ほぼ互角まで近づけることができました。
お陰様で,ログインしたプレイヤーの平均接続時間は3時間程度と非常に上がっているのですが,その半面,制限時間いっぱいまで勝負の行方が分からないというように,1試合にかかる時間も伸びている傾向にあります。
とくに初心者の方は,1試合あたりの時間が長いと尻込みしてしまうこともあるでしょうから,制限時間短めでマップが小さく,ルールもデスマッチに近いモードを,イベントとして近日中に配信する予定です。
相手を倒したキル数を競うモードなら気軽にプレイできるでしょうし,チームとしての基本的な動き方も学べると思いますので,初心者の方にはもってこいなんじゃないでしょうか。
ちなみにこのモードは,運営チームのテストプレイでも非常に盛り上がっているので,ベテランプレイヤーの方々も楽しめると思います。期待して実装をお待ちください。
リプレイファイルはムービーではなくプレイログをベースにしているため,ゲームのバージョンが上がるとリプレイを見られなくなってしまうとのこと。現在,バージョンが上がっても過去のリプレイファイルを再生できるようにならないか,検証を進めている最中とのことだ。
遠藤氏:
以前から観戦モードとリプレイ機能のご要望をいただいていましたが,先にリプレイ機能が実用レベルに達したので,先行して実装することになりました。
この機能では,自分自身の作成したリプレイファイルだけでなく,ほかのプレイヤーから受け取ったリプレイファイルを再生することも可能です。ただ,申し訳ないのですが,β版ということもあり,バージョンが上がると,過去のリプレイファイルは見られなくなるという制限があります。
アップデート後も過去のリプレイファイルを再生できる方法を検討中ですので,実現できそうなら,またあらためてご報告したいと思います。
もちろん,観戦モードも引き続き開発を進めています。こちらも,進捗があったらあらためてお知らせしたいと思います。
トッププレイヤーが競うオンライン大会の開催で,対戦へのモチベーションを生み出す
「カオス ヒーローズ オンライン」では,運営チームとプレイヤー,あるいはプレイヤー同士の交流を重視しており,サービスイン以降,すでに4回のオフラインイベントを開催している。
参加者は,初回開催時は20名程度だったが,第3回開催では60名前後に増加し,イベントに参加する女性プレイヤーの姿も見られるようになってきている。また初の地方開催となる福岡大会では,近隣各県のプレイヤーも参加し,予想以上の盛り上がりとなったとのこと。
遠藤氏:
オンラインでも,動画サイトを利用して対戦やヒーローの解説動画,リプレイファイルを集めて“今週のKILLトップ10”動画を作ったり,あるいはそれらを見て研究する方がいたりと,プレイヤーの皆さん同士での交流が非常に盛り上がっていると感じています。
また,ニコニコ生放送で毎週配信している公式番組も好調です。1番組あたりの累計視聴者数は平均で2000〜3000人で,新ヒーローの紹介時には4000人を超えていますし,コメント数も1万を記録することが多いです。番組を観て面白そうだと思ったら,ぜひプレイしてみてください。
そうしたプレイヤー数の増加と盛り上がりを受けて,2013年8月に,初のオンライン大会が開催される。
この大会は,5人一組のチームでトーナメント戦を行うという内容で,エントリーできるのは全16チームとなる。とはいえ,純粋な空き枠は12チーム分で,選出方法に関しては,後日詳細が発表される予定だ。残り4枠のうち3枠は,7月16日まで行われるイベント「第1回 クランバトル」の上位3クランのチームが選ばれ,もう1枠は,毎週交流戦を行っている「CHO JP Community」の代表チームに参加権が与えられる。
なお,この大会の優勝チームには,チームメンバーお揃いのリングが贈られる。
遠藤氏:
優勝チームにプレゼントするリングは,中心に魔力石をモチーフとした赤い石をはめ込み,左右に神聖連合と不死軍勢の旗をイメージさせるカレッジリング風のデザインを施しました。内側には“CHO”の刻印も入れています。
実はこれ,僕がデザインしたのですが,普段使いのアクセサリーとしても身に着けてもらえるよう,いろいろと考えたので,結果として,ちょっといいお値段になってしまいました(笑)。
皆さんの頑張りに報いるであろう仕上がりだと思いますので,ぜひ大会で優勝して手に入れてほしいですね。
人気のヒーローは「セドリック」。「メデューサ」は水着アバターが好評
「カオス ヒーローズ オンライン」では,「アバターカード」を装備させると,ヒーローの外見を変えることができる。水着や野球のユニフォームなど,本来の世界観とはかけ離れたというか,ヒーローによっては原型を留めないほど見た目が変わることもあるのだが,それを許容する“器の大きさ”も本作の魅力といっていいだろう。
詳細は随時発表される予定だが,2013年夏以降も,特徴的なデザインのアバターカードが続々と登場する模様だ。
ちなみに,2013年6月時点における一番人気のヒーローは「セドリック」だ。最初に敵陣に切り込み,究極スキルを発動して攻撃の起点となるという,現在の戦術における定番メンバーの一人であることが影響しているのだが,実はアバターカードの人気も高いそうだ。
遠藤氏:
セドリックは,先日実装した水着アバターも,女性ヒーローより人気が高いんです。正直な話,男性ヒーローの水着は,ゲーム内通貨でも買ってもらえないんじゃないかと思っていたのですが,なぜか売れ行きが一番いいんですよ。発売初日のデータも,何かの間違いじゃないかと思ったくらいです(笑)。
ルックスで人気が高いのは,メデューサの水着アバターですね。本来の姿は,ヘビがモチーフのおどろおどろしい姿であまり可愛くなかったのですが,水着アバターで一変して美人になったことで,ゲーム内でもよく見かけるようになりました(笑)。
セドリック(水着アバター着用時) |
メデューサ(水着アバター着用時) |
なお,セガキャラクターとのコラボ企画第1弾として2013年5月に実装された「戦場のヴァルキュリア」シリーズの「アリシア」と「セルベリア」に関しては,非常に好調とのこと。アリシアはとくに人気が高く,神聖連合のチームで利用するプレイヤーがかなり多いという。
遠藤氏:
アリシアとセルベリアは,実装後に「強すぎる」という指摘をいただいたこともあり,クールタイムを調整するなどの修正を行いました。今でも人気は高いですが,実装直後ほどではなくなりました。
それでも,アリシアは神聖連合のヒーローと相性がいいこともあってか,体感ですが2試合に1回はメンバーに組み込まれているほどです。
こうしたコラボは,社内外を問わず続けていきます。バランス調整が一番の課題なので,少し期間が開いてしまいますが,次の企画も喜んでいただけると思いますので,発表を楽しみに待っていてください。
ちなみに,このようなコラボ企画のヒーローは,条件さえ整えば,「カオス ヒーローズ オンライン」のサービスが展開されている各国で利用できるようになるそうだ。日本以外の国でアリシアとセルベリアが使えるようになったり,海外でのコラボ企画が日本で展開されたりする可能性は十分あるという。
余談だが,韓国では「戦場のヴァルキュリア」の人気が高く,アリシアとセルベリアの実装が心待ちにされているそうだ。
なお遠藤氏は,セガ社内でのコラボは今後も展開していく予定だと話していたので,続報に期待したいところである。
最後に,遠藤氏から「カオス ヒーローズ オンライン」やMOBAというジャンルに興味を持っている人達に向けてのメッセージを掲載して,本稿の締めとしよう。
遠藤氏:
AOSやMOBAのことを最近知ったという方も多いかと思いますが,現在,AOSは世界を席巻していると言っていいほど,人気の高いジャンルです。
『カオス ヒーローズ オンライン』は,2013年夏にさまざまな機能を実装して,今までよりさらに遊びやすくなっています。AOSの入門としては最適のゲームだと自負していますので,ぜひ遊んでみてください。
これまで遊んでくださった皆さんに向けては,今後もさまざまな課題をクリアし,ゲームを改善していきますので,ぜひ今後もお付き合いをお願いします。一緒に『カオス ヒーローズ オンライン』を盛り上げていきましょう。
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