プレイレポート
本日発売「グランド・セフト・オートV」のプレイフィールをお届け。人生観を変えかねない,未曾有のゲーム体験がここにはある
本作は,同シリーズで初めて,3人の登場キャラクターを自由に切り替えながらプレイできるシステムを採用しており,主人公達の行動が複雑に絡み合ってストーリーが展開していく。
日本中のプレイヤーが待ちに待った日本語字幕版の発売日ということで,本稿ではゲームのプレイフィールをガッツリお伝えしていこうと思う。本作が気になっている人にはぜひとも参考にしてほしいが,多少のネタバレも含まれているので,そのあたりはご了承いただきたい。
シリーズ初,複数の主人公が織り成すクライムストーリー
シリーズ史上,最も美しいグラフィックス,そして空前のスケールで描かれるオープンワールドの「ロスサントス」の街並み。あらゆる面で高水準な仕上がりとなっているGTAVだが,やはり最大の特徴と言えるのは“3人の主人公”の存在だろう。前作「GTAIV」でも本編と追加ダウンロードコンテンツ2本で異なる主人公,異なる物語を楽しむことができたが,メインストーリーで複数の主人公を操作できるというのは同シリーズ初のアプローチとなる。
さえない現状に不満を抱えながら悪徳カーショップの回収屋として生計を立てている「フランクリン」。元銀行強盗だが,証人保護プログラムを受けて裕福な暮らしを送っている「マイケル」。かつてマイケルと共に銀行強盗を企て,現在は武器や麻薬の密売を生業としている「トレバー」。3人の主人公は,それぞれ性格も普段の生活環境もまったく違っているが,金のためなら犯罪行為に手を染めることを厭わない“悪党”だという,根っこの部分では共通している。
なお,個人的な印象として,3人の中で最も若く悪党としても発展途上なフランクリンは,従来のシリーズ作品の主人公に割と近いパーソナリティを持っており,対してほかの2人はかなり特殊なキャラ付けをされているように感じられた。
地元ギャングでいることをよしとせず,現状を打破して大きな成功を収めたいと考えているフランクリン。いけ好かない叔母との同居も,彼にとって大きなストレスとなっている |
GTAシリーズの主人公と言えば,恵まれない環境から徐々に成り上がっていくというパターンがお決まりだったが,ゲーム開始時から豪邸に住んでおり,家庭まで持っているマイケルは成り上がりを目指すまでもなく,すでに“成功者”だ。「もうお前,『GTA』的にはエンディング迎えてるじゃん……」と言いたくなるようなキャラクターなのである。そんな彼が,いろいろあって再び犯罪行為に手を染めてしまう“返り咲き感”が面白いところ。
冷え込んだ夫婦関係や子供の教育について悩みを抱えるという父親の面を持ちながら,悪党としては大胆不敵。シリーズ初の妻子持ち主人公は実にいいキャラをしている。
家庭を愛し,良き父になりたいと願うもなかなかうまくいかないマイケル。裕福ではあるが刺激の足りない生活にウンザリしており,それもまた悪党の道へと舞い戻る大きなきっかけとなる |
そしてトレバーは……本作で最も“濃ゆい”存在だと断言したい。残忍酷薄を絵に描いたようなサイコパスで,その行動は完全に予測不可能。普通なら笑って済ますような他愛もない揉め事が,彼にかかると酸鼻極まる大殺戮に発展するなど,すべてにおいて常軌を逸している。そのキ○ガ○っぷりを表現するのに,どのような言葉を使えばいいのかさえ分からないほど。なんだかんだ悪党ではあっても,どこかに理知的な面を持ち合わせていた,これまでの主人公達とはあまりにも違いすぎているのだ。
禿げ上がった頭に不潔な服装,そして明らかにアブナイ目つき。トレバーは,シリーズ史上で最も狂気に満ち溢れた主人公だ。ただでさえ危険な性格なのに,元戦闘機パイロットで戦闘センスもピカイチというから始末におえない |
ちなみにトレバーのエピソードでは,GTAIVの追加DLC「ザ・ロスト・アンド・ダムド」の主人公「ジョニー」が登場するという,ファンならニヤリとしてしまう一幕がある。だが,その笑みはすぐに凍り付くことになるだろう。ここはネタバレを避けたいので詳しくは語らないが,ザ・ロスト・アンド・ダムドが最もお気に入りだった筆者はあまりにショックでしばらくゲームを進めることができなかった。とにかくトレバーの“ヤバさ”は,とても文章で伝えきれるものではないので,ぜひとも自身の目で確かめてほしい。
このようにまったくタイプの違う3人の主人公を,基本的には任意のタイミングでスイッチ(切り替え)しながらゲームを進めていくことができる。特定のミッションではキャラクタースイッチを活かして,それぞれの役割をこなしていくような場面もあり,アクション面においてもこれまでのGTAとはちょっと違ったプレイ感覚が味わえる。
また,操作していないキャラクターはその間,それぞれ自由に生活を送っているため,切り替えた際に思わぬ状況に遭遇することもしばしば。筆者の場合はトレバーに切り替えた瞬間,半裸で噴水にゲロを吐き散らしているというクッソ汚い光景が目に飛び込んできて,ひどく驚かされたことがある。この演出についてはかなり多彩なパターンが用意されているようで,なかには何をやらかしたのか“警察に追われている真っ最中だった”ということまであるらしい。
ちょっと気分を変えたいときや,移動が面倒になったときなどにキャラクターをスイッチすれば,新鮮な感覚で楽しめる作りになっているので,とにかく飽きることがない。さらにはミッションを一定回数失敗すると,スキップできるようになるという機能まであり,“難しすぎて詰む”という事態がなくなった。ゲーム内のスマホからのクイックセーブにより,いつでもゲームを中断することも可能で,ストレスフリーなゲームデザインを実現していると言える。
プレイアビリティだけでなく,バカバカしさもグレードアップ
キャラクタースイッチのほかにも,本作はシステム面でさまざまな要素がブラッシュアップされている。マップからして前作の舞台「リバティーシティ」の約10倍とのことで,さらに今回は海中にまで活動範囲が広がっている。地上同様に海底の地形も念入りに作り込まれ,さまざまな生き物が生息しているのはもちろんのこと,ダイビングスーツや潜水艇で海底を目指せば「何だコリャ!?」と声を上げたくなるような物が沈んでいるのを発見できる。そのほか自転車から戦闘機まで,ありとあらゆる乗り物を駆使して,ロスサントスの陸・海・空を散策できるようになっているのだ。
リアルになったのは街並みだけではない。思い思いの日常生活を送るNPCや,街のあちこちでランダムに生成されるミッションなどがロスサントスに確かな命を吹き込んでいる。ロックスター・ゲームスのファンならば,2010年にリリースされた「レッド・デッド・リデンプション」を思い浮かべてもらえば分かりやすいと思うが,同作のように次から次へと事件が街中で発生するのだ。ひったくり,車泥棒,酔っぱらい,変質者……プレイヤーは困っている人を助けてクソッタレな街に小さな正義をもたらしてもいいし,あるいはひったくり犯をブチ殺してその稼ぎを横取りしてもいい。このゲームにおいて,プレイヤーに与えられた“自由”という権利を阻害するものは何もない。
戦闘システムに関しては,従来のシリーズ作品と大きく変わっていないが,銃撃しながら車から降りたり,そのままスムーズにカバーアクションへと移行できるなど,アクション面での改善が多く施されている。さらに,ガンショップで銃器にサプレッサー(消炎器)やロングマガジンを取り付けるなどのカスタマイズが可能だったり,主人公3人がそれぞれ“耐久力の上昇”や“時間の流れをスローモーションにする”などの固有スキルを使えたりと,ワンパターンになりがちだった銃撃戦にメリハリが生まれているのも好印象だ。
ちなみに,フランクリンは飼い犬「チョップ」を敵にけしかけたりもできる。このチョップ,主人の命令そっちのけで隙あらばメス犬の尻を追いかけるという,どうしようもない駄犬なのだが,配信中のスマホアプリ「Grand Theft Auto: iFruit」で世話をしたり,しつけを行ったりすることで本編にも反映されるようだ(関連記事)。
街のさまざまな施設で寄り道を楽しむのも,GTAシリーズの大きな魅力の一つ。美容院で髪を整えたり,オシャレをしてみたり,愛車をガリガリにチューンしてみたりといった要素は健在で,さらにテニスやヨガ,狩猟をはじめとした新たなミニゲームも追加されている。それぞれガッツリ熱中できる時間泥棒なクオリティに仕上がっているだけでなく,驚くことに株の売買で収入を得るといったことまで可能なのだ。しかも,プレイヤーの行動によって株価を操作することもできる。例えば,ノリにノっているIT企業のやり手社長をテレビの生中継の真っ最中に暗殺したら……あとは分かるよね(ゲス顔)。
それにしても,GTAIVが比較的シリアス路線だった反動なのか,本作ではかなりバカバカしいネタが目立つ。錯乱状態のマイケルがガトリングガンでエイリアンと銃撃戦をおっぱじめたり,トレバーが「インポマン」とかいうワケの分からないスーパーヒーロー(?)を愛好していたり,極めつけには家で何気なくテレビを観ていたら,未成年の喫煙を推奨するCMをはじめ,人種差別や女性蔑視,ステルスマーケティングといったヤバいネタにまみれたカートゥーンを放送していたりとめちゃくちゃである。
しかしながら,このテレビ番組が意外と良くできていて,どれもしっかり観られる内容になっている。ヘタをすれば,実際に放送されているテレビ番組よりも面白いんじゃないかと思うほど。もちろん好みの問題はあるだろうが,ブラックジョークやお下劣なネタを笑えるタイプならば,間違いなく夢中になるはずだ。実際,筆者はちょっと確認しようとテレビをつけたつもりが,気が付けばそのまま番組終了まで見入ってしまっていた。ゲーム内でテレビを観ているキャラクターを,さらにモニターの前で観ているプレイヤーという冷静に考えたら奇妙にもほどがある状況だが,それが成立してしまうのがGTAVなのである。
ありとあらゆる欲望をロスサントスは満たしてくれる
以上,今回プレイして感じたことを書き連ねてきたが,正直に言ってこの程度では本作の魅力を1/10も語り切れていないと思う。最大16人でオープンワールドを大暴れできるオンラインモード「グランド・セフト・オート:オンライン」はまだサービスが始まっていないし,一つの世界が丸ごと詰め込まれていると言っても決して過言ではないGTAVのことなので,とことん書くと本当にキリがなくなってしまう(〆切的な意味でも限界突破してしまう)。そこのところはご容赦いただきたい。
あとは,ぜひその手で,その目で本作の素晴らしさを体感してほしい。……熱心なシリーズファンなら,こんなことを言われるまでもなく,筆者の記事になど目もくれずゲームを遊び倒している真っ最中かもしれないが。
あとは,まだ買っていないそこの君! どうしようか迷いながら最後まで読んでしまったそこの君だよ! 今すぐゲームショップに走るか,ネットでポチることをオススメする。ともすれば人生観を大きく変えてしまうような,未曾有のゲーム体験が味わえることを保証しよう。金! 暴力! SEX!……ありとあらゆる暗い欲望を,ロスサントスの街が満たしてくれることだろう。
「グランド・セフト・オートV」公式サイト
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(C) 2013 Rockstar Games, Inc.
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- グランド・セフト・オートV (2013年秋発売予定) 【CEROレーティング「Z」予定】
- ビデオゲーム
- 発売日:2013/10/10
- 価格:¥5,000円(Amazon) / 5200円(Yahoo)