レビュー
悪いエイリアンと戦うターンベースのストラテジー
XCOM: Enemy Unknown
エイリアンの地球侵略を阻止する
名作ストラテジーゲームをリメイク
20XX年,世界中でUFOが目撃され,エイリアンによるものと思われる誘拐事件が続発する。なんとエイリアンが,我々の住まう地球を侵略するためにやってきたのだ。そこで人類は,悪いエイリアンに立ち向かうための国際秘密機関「XCOM」(Extraterrestrial Combat Unit)を結成した。プレイヤーはXCOMの司令官となり,部隊を送ってエイリアンどもをぶちのめしたり,ときどきエイリアンの武器をパクッて新たな武器を開発したり,たまにエイリアンをさらって尋問したり解剖したりしながら,ヤツらの地球侵略を防ぐ……なんだかこっちが悪者みたいだが,それが,2K Gamesのターンベースのストラテジー「XCOM: Enemy Unknown」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だ。
「XCOM: Enemy Unknown」公式サイト
ちなみに本作のPC版はパッケージのほか,SteamおよびAmazon.co.jpからもダウンロード可能。今回はSteamのPC版をプレイしたが,Steamが日本語に設定されていれば,ゲームもバッチリ日本語テキストになるという嬉しい仕様なので,ピュアなジャパニーズである筆者も安心だ。
というわけで,さっそく紹介していこう。
XCOMの司令官となり
基地運営と戦闘の指揮を執るのだ
本作には,メインストーリーを追うミッションが用意されており,それらを軸としてゲームが進んでいくが,エイリアンによる拉致事件などの突発的なミッションも発生するので,それらにも対応していくことになり,割と忙しい。
基本的なゲームシステムは,XCOMの拠点である基地を舞台にした「基地運営パート」と,エイリアンとの「戦闘パート」の2つに分かれている。流れとしては,基地運営を行いつつ,エイリアンによる問題が発生したら現場に飛んでエイリアンと戦い,基地に戻って基地運営を行うといったことを交互に繰り返すわけだ。
スーツを着込たエイリアンや,ロボットタイプのエイリアンなど,さまざまな敵が登場する。後半になるほど強いエイリアンが登場してくる |
UFOを発見したら戦闘機で迎撃だ。指示を出すこともあるが,基本的に眺めているだけでオッケー。撃墜したら部隊を墜落地点に派遣せよ |
それぞれのパートは基本的に独立しているが,例えば戦闘パートの結果によって基地運営パートに必要な資金が得られたり,新しいテクノロジーが発明できたりするので,バラバラな感じはしない。エイリアンを殺さずに気絶させて連行すれば,基地運営パートで尋問などもできるし,墜落したUFOからテクノロジーを回収して研究し,完成した新たな武器や装備を戦闘パートで使えたりする。
研究開発,設備投資,軍隊の管理,外交対応
……基地運営も大変だ
また,研究をするにも施設を建てるにも,あるいは傷を負った兵士を治療するにも,お金だけでなく時間が必要になる。例えばエイリアンの尋問に2日,武器の開発に3日,施設の建設に7日,重傷兵士が復帰できるまでに8日といった具合に時間がかかるのだ。
研究で,エイリアンの技術を取り入れた武器,装備,アイテム,設備を開発することも重要だ。研究が完了したら導入しよう |
基地地下に施設を建設していくのも司令官の任務。隣接させて同じ施設を建設すると,効果がアップするものもある |
ミッションを遂行するとユニットは昇進し,新たなスキルを割り当てられるようになる。二択の場合,どちらを選択するか非常に悩んでしまう |
事件が起きているのに放置したり,ミッションに失敗したりすると,各国のパニックレベルが上がる。頑張って対応しているのに,ヤバイ国が多い |
ゲームでは,XCOMに参加している全16か国のどこかでエイリアン絡みの事件が発生した場合,そこに部隊を派遣することになるのだが,このとき,部隊を派遣させなかったり,事件を解決できずに部隊が壊滅したりすると,その国のパニックレベルが上がり,最悪の場合はXCOMから脱退してしまったりする。
そうなると資金援助がなくなり,こちらも一段と厳しい戦いを強いられる。さらに,8か国が脱退するとXCOMは存続不可能となりゲームオーバーになってしまうから,パトロンである彼らの機嫌を損ねないようにするのも重要な任務なのだ。
というわけで,時間が足りず,新たな武器の開発が間に合わなかったり,優秀な兵士の怪我が治っておらず新米しかいない状況だったりしても,頻繁に発生するエイリアンによる拉致事件やUFO墜落事件などには対応していかなければならない。つまり,時間を常に意識している必要があるわけだ。
他国からエイリアンの死体やアイテムなどをリクエストされることもある。報酬を得られるだけでなく,パニックレベルが減ることもある |
怪我人続出なものの,死亡者や重傷者はおらずひと安心。新米兵も無事に昇進したが,負傷で次のミッションには参加させられない |
ときには数件の事件が同時に発生することもあるが,部隊を派遣できるのは1か所だけ。そのため,エジプトは報酬はいいけど,メキシコとインドを放置するとパニックレベルが厳しくなるし,うう,どうしよう……と頭を抱えることになる。あなたにもこの司令官の苦悩,ぜひ味わってほしい。人気者はつらいのだ。
頭を使った戦略や戦術を駆使した
エイリアンたちとの駆け引きが熱い
部隊を現地に派遣すると,戦闘パートに切り替わる。戦闘フィールドは斜め見下ろし型で,最初は限られた部分しか見えないが,ユニットを移動させることで視界が開けていくという,RTSではオーソドックスなシステムだ。調子に乗って移動させていたら,いきなりエイリアンと遭遇して,先制攻撃を食らって全滅寸前なんてことになるから,慎重に行動しよう。
さて,戦闘パートはターンベースなので,まずはプレイヤーターンで,最大6名の部隊ユニット(兵士)を操作する。それが完了するとエイリアンターンに切り替わり,これを交互に繰り返して戦闘パートを進めていくのだ。
それぞれのターンでは,各ユニットにアクションポイントが2つずつ割り当てられており,1ポイント使って移動または攻撃,さらに1ポイント使って武器のリロードやアイテム使用といった具合に割り振っていく。とはいえ,場合によっては,最初から2ポイント消費して遠方までダッシュといったことも必要になるので,ポイントの使い方は非常に重要だ。
2ポイント使って遠方までダッシュしたものの,エイリアンターンで背後を取られてこちらのターンを前に殺された……なんて戦いは避けたいところだ。とくに後半になればなるほど,状況に応じて戦術を考えないと部隊の損害が増える一方になる。
基本は1ポイント使って背後をとり,残り1ポイントで攻撃する。スキルがあれば2ポイント使ってダッシュしたあとで攻撃することも可能だ |
遮蔽物があり,エイリアンの横や背後から狙える位置に移動して攻撃するのが基本。ただし,なかなか思いどおりの展開にならない |
それぞれのユニットは,接近戦などに優れた「アサルト」,援護射撃などを得意とする「サポート」,破壊力の高い重火器を扱う「ヘビー」,遠方からの狙撃をする「スナイパー」のどれかのクラスに属しており,戦いを積み重ねて経験を積むことで,一等兵から大佐まで昇進する。昇進の際に特殊な攻撃を行えるスキルが与えられるため,激戦をくぐり抜けてきたユニットが多いほど強い部隊となるのだ。しかし,ユニットは死んでしまうと復活はできない男らしい仕様なので,いかに殺されずに戦っていくかがポイントになる。育ててきたベテランユニットが殺されたときのガッカリ感は半端なく,それこそホントに泣きそうになる。
もちろん,エイリアンも遮蔽物を利用したり,さまざまな特殊攻撃を駆使したりして,こちらと同じように戦ってくるから油断ならない。おそらく最初は筆者と同じように,適当にユニットを突っ込ませることになるだろうが,激戦を繰り返すうちにユニットを動かす順番やポジショニング,ユニット同士の連携,そして,スキルを有効に使ってダメージを最小限にするといった戦い方ができるようになる。そうなると,本作の面白さは一段とアップするはずだ。
攻撃の際は命中率が表示されるが,遮蔽物や高低差の関係もあり,命中率が高くても外すことがある。経験を積んだ兵士ほど確実に当てる |
プレイヤーもエイリアンも命中率には高低差が影響する。高いところから狙うと当てやすく,低いところから狙うと外しやすい |
エイリアンも「監視」を使うが,敵の前を横切らなければならないときは,2ポイント使ったダッシュ移動をするとダメージを受けにくい |
せっかく育てた優秀な兵士も,司令官の指揮如何で簡単に殺されてしまう。ダメージを受けたら,回復キットでライフを回復させよう |
筆者のお気に入りは,スナイパーを離れた場所に配置しておき,アサルトなどをオトリに使ってエイリアンをおびき寄せる。そして,次のターンでスナイパーの射程内に入ってきたエイリアンを狙撃するパターンだ。
また,スナイパーのショットがうまく命中すると,もう一度撃てる「超反応」が発動することがあるので,うまくいけば二回の攻撃も可能になる。ほかには遮蔽物から敵を追い出す「洗浄」や,逆に遮蔽物に留まらせる「制圧」という機能もあるので,それらを利用して,別ユニットに背後から回り込ませて攻撃させることができる。各ユニットの特性や遮蔽物を利用して,エイリアンを撃退していこう。
ストラテジーゲーム初心者でも楽しめる
SFファンにはたまらない作品
最後に,マルチプレイモードにも簡単に触れておこう。マルチプレイにはランクマッチ,クイックマッチ,カスタムマッチが用意されており,1vs.1のマルチプレイということもあって,どのモードでも対戦者は簡単に見つかる。割り当てられたポイントを使用して,最大6ユニットの部隊を編成できるが,兵士とエイリアンのいずれも使えるようになっており,二者を混在させた構成も可能だ。
対戦前に武器や装備などを各ユニットに割り振らねばならず,これにはちょっと時間がかかる。設定の時間制限などはないので,相手に猛烈に待たされることもあった。ただし,ゲームが始まってしまうと,プレイヤーによってさまざまなテクニックを使ってくるので,シングルプレイよりもさらに戦略的な戦いをしなければならず,人間同士の奥深い駆け引きが楽しめるはずだ。
冒頭でも触れたとおり,筆者は今回初めてXCOMをプレイしたのだが,宇宙人の存在を信じ,未確認飛行物体も大好きな矢追ラブということもあって,エイリアンvs.国際的秘密部隊というシチュエーションにはかなり燃えるモノがある。画面の雰囲気も非常に良く,エイリアンはもう,エイリアンにしか見えないデザインだ。
「XCOM: Enemy Unknown」公式サイト
筆者は思わずどっぷりはまりこんでおり,ミッション開始前にセーブして,同じミッションをさまざまなやり方で再挑戦したりしている。ストラテジーゲームは好きだが,本作は,これまでプレイしてきた作品の中でも最も熱くなったゲームかもしれない。中毒性があるし,基本はシンプルなゲームなので,ストラテジー未経験者でも楽しめるはず。あなたもぜひ,筆者と一緒にエイリアンの侵略から地球を守ってほしい。
- 関連タイトル:
XCOM: Enemy Unknown
- 関連タイトル:
XCOM: Enemy Unknown
- 関連タイトル:
XCOM: Enemy Unknown
- この記事のURL:
キーワード