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[TGS 2013]パズドラを越えるためにパズドラを破壊する――ガンホーCEO森下氏が語るゲームを作るということ。「TGS 2013基調講演【第2部】」レポート
講演は,日経BPヒット総合研究所 研究員の品田英雄氏が聞き手になり,ガンホーという会社や森下氏に関するさまざまな疑問を聞いていくというものとなった。
日経BPヒット総合研究所 研究員 品田英雄氏 |
ガンホー代表取締役CEO 森下一喜氏 |
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パズドラを越えるために,パズドラを「破壊」する
最初のテーマは,「パズル&ドラゴンズ、大ヒットの秘密」。すでに1900万ダウンロードを越える大ヒットになり,ゲーマー層以外の幅広い層にもガンホーというゲーム会社を認知させた本作。その大ヒットの理由については,森下氏がたびたび聞かれているであろうテーマだが,氏によるとヒットの理由は分析していないのだという。むしろ,失敗したときの分析が大切だと話す。
そのうえで,成功したタイトルについては,やはり「運」だと改めて述べた。リリースのタイミングや,いいチームとめぐり会えたこと,そして応援してくれるプレイヤーがダウンロードしてくれたことも含め,成功によって自らが驕らないために,あえて「運」という言葉を使っているのだという。
パズドラの開発に関しては,GDC 2013でも語っていた「5か条」の話や,横持ちで企画していたパズドラを縦持ちに変えたことが,面白いゲームになったターニングポイントだったというエピソードを紹介。女性の心を掴むためにどんな工夫をしているのかという質問に対しては,こちらもCEDEC 2012でプロデューサーの山本大介氏が話していた「嫁レビュー」の例を出しながら,森下氏は小学生の子供に遊んでもらっているという,自身のエピソードを語った。
というのも,子供はつまらないと思ったら2度とそのゲームを遊ばないし,すぐに手放してしまう。そのため,直感的な部分が理解できるかどうか,チュートリアルを子供に遊ばせてみるのがいいのではないか,とのこと。なお,森下氏のお子さんは,小学6年生だそうで,反抗期に入ったら,それができなくなるかも……と冗談交じりに話していた。
また,CEDEC 2013において,ヒットの方程式は「やっぱ,ない」と話していた森下氏。「本当のところはどうなんですか」という質問に対して,「誰もがいろいろと方程式を考えるけど,時代によって(方程式が)変わっていくから“ない”んです」と改めて説明した。とくに,今は時代の流れが速く,方程式どおりに何かをやってもヒットするわけがない,革新的なチャレンジを続ける必要があるのだと話を続ける。
そんな森下氏が大切にしているのが,「破壊と創造」だという。そして,“パズドラ”というフォーマットを早く壊していきたいという,驚きの発言が。その理由を森下氏は,「そうしないと,パズドラを越える作品が作れないから」だと話す。
森下氏は,「ラグナロクオンライン」が成功したあと,それを越えるオンラインゲームはできなかったと過去を振り返る。成功の体験が邪魔をしてしまい,ROの場合はこうだった,こうでなくてはいけないと,過去の成功を例に出して決めつけてしまうことが問題で,それはパズドラにも当てはまる。最近では,こうした意識が開発スタッフのあいだにも浸透しつつあるのだという。
ゲームに触れてこなかった人に,コンシューマゲームの本当の面白さを提供したい
2つめのテーマ「ガンホーって、どんな会社」では,森下氏本人がビデオカメラを回し,開発室を撮影した動画を公開。スタッフと友だち口調で話していたり,社長とはあまり呼ばれず,「森下さん」や「カズキング」と呼ばれていたりなど,かなり自由な社内の様子が見られた。ガンホーが急成長する中で,チームワークを維持するために心がけていることは? という質問に対しては,浅草サンバカーニバルへの参加の様子を紹介していた。
続いて,「森下社長って、どんな人」という3つめのテーマでは,自身のいたずら好きな一面を披露した。森下氏は今年で40歳になったものの,大人になったという実感がないそうで,スタッフの椅子の背もたれをいじって驚かせようとして,「怪我をするから」と周りから止められてみたり,幽霊の噂を流して怯えさせようとしたりしているのだとか。なるほど,森下氏のこの自由さがあってこその,ガンホーの自由さなのかと,妙に納得してしまう。
また,話題は森下氏の学生時代にもおよび,高校の先生から言われて「漫才師」を目指していたというエピソードを披露。しかし,親に内緒でやっていた相方が,親にバレて解散したのだという。その後,内装工事の仕事に就いたものの,ほかの人がスーツを着ている姿を電車で見て,スーツ姿は「モテるのでは?」と思い,ソフトウェアの開発会社に入社。のちに,その会社にいた2人と,いまに至る会社を作ることになったのだという。
これに対して森下氏は,自分達で作っているスマートフォン作品はともかく,純粋にプレイヤーの気持ちになると,自分が好きで遊ぶのはコンシューマゲーム機だと答えた。そんなこともあり,森下氏個人としては,コンシューマゲーム機の市場がもっと大きく発展してほしいという思いがあるのだという。
その一方で,スマートフォンの登場により,ゲームに触れたことのない人達にも“ゲームというもの”が浸透し,ゲーム市場全体が大きくなっているとも話す。そうした人達に,映画のようにどっぷりと浸かれるゲームの本当の面白さを提供できればとも思っており,その意味で,基調講演の第1部で語られた,PlayStation 4のようなスマートフォンとのライフサイクルにおける連携は,非常に興味深いと語っていた。
森下氏は最後に,いまのガンホーがあるのは,多くのゲーム業界のみなさんに支えられたからであり,ガンホーもゲーム業界の発展を支えていけるように貢献していきたいとコメント。これからも切磋琢磨していいゲームを作り,いろいろな形で他社とのコラボをしていければとして,基調講演を締めくくった。
ガンホー 東京ゲームショウ2013特設サイト
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