レビュー
独自SoCと側面がカーブした曲面ボディを採用するスマートフォンの実力を検証
Samsung Galaxy S6 edge SCV31
NTTドコモは,Galaxy S6 edgeとGalaxy S6の両機種を(関連記事),KDDIはGalaxy S6 edgeの内蔵ストレージ容量64GBモデルと32GBモデルを発売する予定(関連記事2)となっている。
この2機種,デザインは異なるものの,スペック的にはほぼ同じ製品だ。そのため,ソフトウェアや性能面の評価もほぼ共通と考えてよさそうである。今回は,発売に先駆けてKDDI版Galaxy S6 edge SCV31(以下,S6 edge)の64GBモデルを試用する機会を得たので,ベンチマークテストでその実力を詳しくチェックしてみよう。
両端が曲がった曲面ボディが特徴的なビジュアル
スマートフォンの形状は,大きく分けて2つに集約されつつある。1つは側面から背面にかけて緩やかに湾曲したラウンドフォルムを採用したもので,もう1つは前面と背面の両方が平らなフルフラット形状だ。これ以外の形状を採用する製品はほとんどない。
レイアウトはもっと画一的で,前面上部にインカメラや各種センサー,ノイズキャンセル用マイク孔を配置して,前面下部にはボタン類が並ぶといった形に収束されつつある。ディスプレイの上辺と左右辺を極端に細く絞り込んだ「3辺狭額縁仕様」を採用して,インカメラを前面下部に配置するシャープのAQUOS Phoneのような製品は,例外といってもいいだろう。
光学手ぶれ補正機能付きのアウトカメラ部が突出していることを除けば,背面はほぼフラットになっている。
カメラやボタン類のレイアウトに特筆すべき点はない。左右側面が湾曲していることを除けば,S6 edgeは,5インチ級スマートフォンのオーソドックスなサイズやレイアウトを踏襲した製品といえよう。
カバーガラスが剥き出しになったようなS6 edgeのデザインは,堅牢性に不安を感じるかもしれない。ガラスはCorning製の強化ガラスであるGorilla Glass 4を採用しているほか,アルミニウム合金製のフレームには,ロードバイクのフレームにも使用されているという強度に優れた「6013アルミニウム合金」を採用することで,軽さと強度を確保しているという。YouTubeのSamsung公式チャンネルでは滑落テストの様子が公開されているので,興味のある人は見てみるといい。
しかし,ゲームとなると話は別だ。片手でしっかりと保持してプレイするシーンを想定した場合,S6 edgeでは側面の段差を利用してわしづかみにするか,あるいは手のひらに載せて指を側面にかけるような持ち方になるだろう。ところが,そうした持ち方でゲームをプレイしてみたところ,側面にかけた手がデュアルエッジスクリーンのタッチパネル部分にまで触れてしまい,誤タッチが起きることがあるのだ。とくにドラッグ操作に支障が出る場面が多かった。
誤タッチが起きないような持ち方をいろいろ試してみたのだが,確実にホールドしてプレイしようとすると,どうしてもデュアルエッジスクリーン部分に手や指が触れてしまいがちで,うまく回避できないのだ。慣れでどうにかできるのかもしれないが,筆者にはそう言い切る自信がない。
全面的に刷新されただけのことはあり,スマートフォンとしての完成度はなかなかのものだ。持ち方や握ったときの反応で印象は変化すると思われるので,S6 edgeの購入を検討している人は,ぜひ実機で持ち方チェックを行うことをお勧めする。
独自SoCのベンチマークテスト結果は優秀
スペック面に目を向けてみよう。S6 edgeの搭載SoC(System-on-a-Chip)は,Samsung独自の「Exynos 7420」だ。Exynos 7420とは,最大動作クロック2.1GHzのARM製CPUコア「Cortex-A57」と同1.5GHzの「Cortex-A53」をそれぞれ4基ずつ搭載する「big.LITTLE」構成のSoCで,Samsungではこれを「オクタコアのCPU」と称している。統合されているGPUは,同じくARM製のGPUコアIP「Mali-T760」だ。
搭載OSはAndroid 5.0(Lollipop)で,メインメモリ容量は3GB。4GBを搭載する「ZenFone 2」には及ばないものの,通常の使用においてメモリが不足することは心配しなくていい。ストレージ容量は,前述のとおり32GBもしくは64GB。なお,S6 edgeにはmicro SDカードスロットがないので,予算が許す限り64GBモデルを選択すべきだろう。
有機ELパネルは,5.1インチサイズで解像度1440×2560ドット,ピクセル密度は577ppiという高精細なものとなっている。この高精細有機ELパネルを生かして,Samsungでは,S6 edgeやGalaxy S6をディスプレイとして使う仮想現実対応HMD「Gear VR Innovator Edition for S6」の国内発売も予定されている。仮想現実対応HMDの本命ともいわれる「モバイルVR」の世界を体験するために,S6 edgeを選択するという手もありかもしれない。
スペックの説明に続いて,いよいよS6 edgeの実力を確かめてみるとしよう。
まずはSoCの各種情報を表示するアプリ「CPU-Z」を使い,Samsung自慢のオクタコアがどのように動作するのかをチェックしてみた。big.LITTLE構成のSoCは,性能重視のCortex-A57と省電力のCortex-A53を組み合わせて効率よく運用するというのがウリであるが,実際の動作はどうなるのだろう。
CPU-Zで見ると,最大動作クロック1.5GHzのCortex-A53がCPU 0〜3,最大動作クロック2.1GHzのCortex-A57がCPU 4〜7として認識されていた。そこで,S6 edgeの検証中に適宜CPUクロックの変動を観察してみたところ,Cortex-A57は800〜2100MHzの間で大きく動いていたのに対して,Cortex-A53は400〜1296MHzで動作するのがほとんどで,仕様上の最大CPUクロックである1.5GHzまで上昇することはあまりなかった。筆者は,操作の大半をCortex-A53側が担当するのではないかと想像していたのだが,実際の挙動を見る限りでは,意外にCortex-A57も同時に動作するシーンが多いようだ。
体感的な評価を述べると,S6 edgeのレスポンスはすこぶる良好で,とてもキビキビとした印象を受ける。8つのCPUコアがうまく動作しているためだろうか。ただ,バッテリーの減りは意外に速く,撮影時にちょっと負荷をかけていただけで,バッテリー残量が10%程度も減っていたのは驚きだった。S6 edgeの電力設定を「省エネモード」に切り替えて使用していても性能低下はあまり感じないので,バッテリー駆動時間を延ばしたいときは,ユーザーが意識して制御したほうがよさそうだ。ちなみに,筆者が愛用している「GALAXY S5 ACTIVE」も似た傾向があったりするので,最近のSamsung製スマートフォンはそういうチューニングをしているのかもしれない。
ベンチマークテストの1本めは,お馴染みAndroid版「3DMark Ice Storm」をテストしてみた。Ice Storm Unlimitedのスコアは「24565」と,Androidスマートフォンでは最速クラスのスコアを叩き出した。「Tegra K1」を搭載するゲーマー向けタブレット「SHIELD Tablet」のスコアが3万を超える程度なので,この性能であれば,どんなゲームでもスペックを気にする必要はなさそうである。
ちなみに,Android用3DMarkには,OpenGL ES 3.1に対応する高負荷テストアプリ「3DMark Sling Shot Benchmark」というものもあるのだが,S6 edgeでは「Your device is not compatible with this test」(テストと互換性がない)と表示されて,実行できなかった。Mali-T760はOpenGL ES 3.1に対応しているはずなのだが……。
そのスコアは右にあるとおりだが,メインメモリのアクセス性能を測る「RAM」は,2014年モデルのハイエンドスマートフォンと大差がない程度だった。S6 edgeはメインメモリにLPDDR4を採用しているのだが,これを見る限り,実効性能はLPDDR3とあまり変わらないようだ。とはいえ,S6 edgeのスコアは十分高いものなので,デメリットになっているわけではない。
一方,内蔵ストレージのアクセス性能を測る「Internal memory」は,逐次読み出しの「Read」が309.19MB/s,逐次書き込みの「Write」が151.56MB/sと,読み出し性能の優秀さが目に付く。データサイズの大きいゲームも増えているので,ストレージアクセス性能の優秀さは重要なポイントになりそうだ。
続いては,タッチパネルの応答性を調べてみた。普段なら,連射測定アプリ「ぺしぺしIkina」を使うところなのだが,なぜかS6 edgeでは,バックキー長押しからのメニュー表示ができなかったため,同種のアプリである「目指せ!16連射」を試してみた。
連射テスト中は,デュアルエッジスクリーンの影響を回避するべく,S6 edgeを卓上において実行したが,手に持った場合は先述したとおり,握っている手や指の位置が変わったときに測定が途切れることがあったのが気にかかる。
ZenFone 2と同様に,Qualcomm純正のベンチマークテストアプリ「Vellamo Mobile Benchmark」(以下,Vellamo)でもテストしてみた。CPU性能の計測だけでなく,Webブラウザの処理性能テストも行えるというもので,フルに実行するには時間を要するのが難点であるものの,CPU使用率や温度変化も記録できるという利点を備えている。
比較対象機を用意していないため,Vellamoの結果リストに掲載されている他機種との比較しかできないが,参考にはなるだろう。
性能優秀なスマートフォンだが,ゲーム用途ならGalaxy S6のほうが適するかも?
ベンチマークテスト結果から見ると,S6 edgeは極めて高い性能を備えたスマートフォンであることが分かる。今後登場するリッチなグラフィックスのゲームにも余裕をもって対応できそうで,ゲームが快適に動くかを心配したくないのであれば,申し分ない製品といえる。スマートフォンの買い換えや新規購入の対象として,選択肢に入れる価値のある製品だろう。
ただ,長時間の連打には不向きというテスト結果が出ているので,プレイするゲームジャンルによっては,不満を感じてしまうかもしれない。
握り具合を確認したいという人は,店頭での試用機で試してみてほしい。そのうえで「自分の持ち方なら大丈夫」という自信が持てたなら,S6 edgeを選んでOKだ。
●Galaxy S6 edge SCV31の主なスペック
- メーカー:Samsung Electronics
- OS:Android 5.0.2(Lollipop)
- ディスプレイパネル:5.1インチ有機EL,解像度1440×2560ドット
- プロセッサ:Samsung Electronics製「Exynos 7420」(8コア,最大CPU動作クロック2.1GHz+1.5GHz)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(容量64GBもしくは32GB)
- アウトカメラ:有効画素数約1600万画素
- インカメラ:有効画素数約500万画素
- バッテリー容量:2600mAh
- 連続通話時間:約1060分
- LTE待受時間:約420時間
- 無線LAN対応:IEEE 802.11ac
- Bluetooth対応:4.1
- 本体サイズ:70(W)×142(D)×7.0(H)mm
- 本体重量:約132g
- 本体カラー:ブラック サファイア、ホワイト パール、ゴールド プラチナ
- 主な対応サービス&機能:キャリアアグリゲーション,WiMAX 2+,WIN HIGH SPEED,au VoLTE,Eメール(@ezweb.ne.jp),SMS,グローバルパスポート(LTE/GSM/UMTS),ワンセグ,フルセグ,おサイフケータイ,NFC,Wi-Fiテザリング(最大10台),緊急速報メール
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