インタビュー
Tango Gameworksが手がける新作について三上真司氏,木村雅人氏,片貝直紀氏にインタビュー。「PsychoBreak」は,プレイヤーが“怖すぎて投げ出す”サバイバルホラーになる?
プロデューサー木村雅人氏,アートディレクター片貝直紀氏にインタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,お二人が「PsychoBreak」でどのような役割を担当しているのか教えてください。
木村氏:
プロデューサーを担当している木村です。「PsychoBreak」では,企画をやったり,シナリオの制作に駆り出されたり,資料を集めたりと,ゲームのためになることなら何でもやっている感じです(笑)。
片貝氏:
アートディレクターの片貝です。自分の専門分野としてはエンバイロメントデザイン,いわゆる背景なのですが,現場では,ライティングからポストエフェクトまで,ゲームビジュアル全体のトータルクオリティを管理しています。
4Gamer:
「PsychoBreak」が「Zwei」として公開されたときに,さまざまなシーンがコラージュされたイメージボードが公開されました。「PsychoBreak」の具体的な内容とは直結しないものだということでしたが,どの程度の関連性があるものなのでしょうか。
そうですね……。ホラーの方向性は,「PsychoBreak」のコンセプトを表していると思います。イメージボードから画面の雰囲気やステージの多彩さは伝わったと思うのですが,「本気でホラーを作っているぞ」というのを表現したかったんですね。
ただ,個別のシーンでディテールをどこまで表現しているかについては,ゲームができてからのお楽しみです。ステージのバラエティというか,ゲーム全体を通しての展開は,おそらく読めないんじゃないかと(笑)。
4Gamer:
イメージボードはバラエティ豊かな感じですけど,どうつながるかはさっぱり分かりません(笑)。デモで見た最後のシーンでも,「この先どうなるんだ?」という衝撃的な展開にはかなり驚かされました。
片貝氏:
今回は三上がディレクションをしていますから,サバイバルホラーに飢えている方々に提供する作品ともいえます。ですから,ユーザーとの駆け引きみたいな部分があると思うんですよ。「今まで,こういうホラーって見たことないでしょ?」という展開にも,期待してもらっていいんじゃないかと。
木村氏:
イメージボードにいろんなシチュエーションがあったので,「これで成り立つの?」と思われた方も,少なからずいたと思うんです。今後の情報も,その感覚が持続するような出し方になるでしょうから,実際にプレイしていただくまで,「それで本当にサバイバルホラーになるの?」と思われることが多いんじゃないかなと(笑)。
ゲームの中には,本当にさまざまなシチュエーションを用意していますから,いろいろと想像をふくらませながら,楽しみにしていてください。
4Gamer:
「PsychoBreak」では,三上さんが大枠のコンセプトを固めて,スタッフの方々が細部を詰めていく形で作っているのでしょうか?
片貝氏:
Tango Gameworksの作り方って,トップダウンではなくて,「サバイバルホラーとはなんぞや」というコンセプトに始まり,スタッフが持ち寄ったアイデアをかき集めて,それをディレクターである三上がチョイスしていく,という流れなんですね。
「こういうものにしよう」という全体像はもちろん,どういうことをやるべきか,どういうことをやれば楽しい,または怖いのかといったところまで,チーム一丸となって組み上げていくんです。
木村氏:
もちろん,ベクトルは三上が示すんですけど,どのようなアイデアを取り入れるのかは皆で議論します。その中で出てきたものがユーザーの体験にとって良いものであれば,それをどんどん取り込んでいって,良い作品にしていく,というやり方ですね。
それが三上のディレクションの特徴であり,Tango Gamerworksの作り方であり,いいところなんだと思います。
4Gamer:
さまざまな企画案の中から,Tango Gameworksの第1弾タイトルとしてサバイバルホラーを選んだそうですが,最初から開発に参加していた片貝さんは,当時どのように感じていましたか?
片貝氏:
紆余曲折はありましたけど,一つのスタイルに固まるまでの過程が,僕にとっては面白かったです。
効率的な観点からすると,ゲームに筋の通った設計図があって,そのとおりに作るのが正しいんです。でも,全方位型というか,紆余曲折があってだんだんアングルが狭まってきて,一つの形にまとまっていくというのも,ゲーム作りの醍醐味ではあるかなと思うんです。
木村氏:
ゲーム開発には,自由に膨らませるときとそれをまとめていくとき,いろいろなフェーズがありますけど,その全部に楽しみがある感じですね。
片貝氏:
あんまりやり過ぎると怒られちゃいますけどね(笑)。
4Gamer:
プロデューサーという立場の木村さんとしては,そういう作り方をどう思っていますか?
マネージメント面で言うと,正直,すごく不安ですし大変です(笑)。
それこそ設計図があって,それに向かってスケジュールを立てて,進んでいくほうが,分かりやすいし効率的です。でも僕の経験上,そしてTango Gameworksの考え方としても,紆余曲折があって七転八倒しながら,皆が自由に発想したものを大きな幅でとらえて作っていくからこそ,ほかには作れないマスターピースが生まれるんだと考えています。
スタッフが伸び伸びと才能を発揮できる,自由度の高い手綱の取り方が三上の力であり,人材が集まっているTango Gameworksだからこそできることなんじゃないかなと。
4Gamer:
アート部分でいうと,「PsychoBreak」の柱となるコンセプトはズバリ何なのでしょうか。
片貝氏:
三上と僕で若干違う部分があるかもしれないんですけど,アート面でいうと,グラフィックスが綺麗でカッコよく,というのは当たり前として,不気味さ,暗さ,不潔さといった,いかにホラーとして画面が成り立つかを大切にしています。中でも,僕が一番重要だと思うのは,「不安定さ」だと思っています。
4Gamer:
不安定さというのは?
片貝氏:
登場人物にしろ,ゲームの世界観や舞台にしろ,「何が確実なのか」というのを見せにくくするというか,ちょっと不安になってしまう現状を表すものを出したいなと思っています。
あとはホラーなので,光や闇,広さや狭さ,清潔さと不潔さといった,対極的なコントラストで差別化して,それをユーザーのテンションにうまくつなげられるように構成したいなと。
木村氏:
得体のしれない不安定さっていうのは,よく話題に上がりますね。
僕は,今の片貝の「三上と違うかもしれない」という発言に,三上のディレクション,Tango Gameworksという会社の良さが集約されていると思うんですよ。三上とは違っていても,そのほうがより怖かったり,ユーザーにとっていい体験を与えられるのであれば,それでいいんだと。
片貝氏:
三上のディレクションで面白いところは,アングルの狭い作り方をしないんですね。僕らはよく放牧されているって言い方をしているのですが,ある程度決まった方向に誘導されはするんですけど,その中では自由に動き回れるんですね。
4Gamer:
なるほど。スタッフ個々の個性を大切にすると。
片貝氏:
そうですね。それはけっこう大きいです。僕も今まで何作もアートディレクションをしてきましたが,今回はとくに,あらゆるセクションに才能を持った人間が揃っていると感じていますし,結果には僕も驚いています。
彼らが出すアイデアについても,そのまま使いたいと思うこともよくありますし,面白いと感じています。少しだけゲームの軸からずれているといったアート的なジャッジは発生しますけど,クオリティ管理という意味では,すごく楽ですね。
木村氏:
三上自身も,スタッフをすごく信頼していると思います。
4Gamer:
アートディレクションでは,どのようにスタッフ間の整合性を判断しているのでしょうか。
片貝氏:
個人的には,それほど整合性は重視していないんですよ。世界観がスジの通ったものになっている,ということは大事なんですけど,そこにこだわり過ぎると,ユーザーが意識しないレベルまで介入することになってしまうので。
4Gamer:
必要のないところにまでこだわってしまう,ということですね。
片貝氏:
いくらコンセプトやキャラクター設定がまとまって筋が通っていたとしても,プレイする1シーン1シーンが怖くなかったり,面白くなかったら本末転倒ですから,そこを重視して作っています。ある意味,ユーザーの感じる怖さや面白さといった体験と,僕らが伝えたいコンセプトを天秤にかけているわけです。
そこは三上も同じ考えで,Tango Gameworksのゲームの作り方で共通する部分だと思うんですけど,あまり些細なことにはとらわれず,「プレイする人がどう思うか」ということを重視しています。
4Gamer:
お二人から見て,「PsychoBreak」はどのような印象の作品ですか。
片貝氏:
「本格的なサバイバルホラー」という一言に集約されるのですが,ホラー/アクション/サバイバルの要素がぎっしり詰まっている,濃いゲームです。
僕はいちホラーゲームファンとして最近の状況には寂しさを感じていて,本格的なホラーで,アクションもしっかりしていて,かつエンターテイメントにあふれた作品というものに飢えていたんです。でも「PsychoBreak」は,いちユーザー視点として見ても,「皆もこういうものを求めていたんじゃないか」と思える作品になりつつあります。
ホラーファン,ゲームファン,三上ファンに向けて,発売までによりよいものにするために頑張っているところです。
サバイバルホラーを生み出した三上のディレクションだけあって,ホラーであり,アクションであり,サバイバルでありという,怖さとそれを打ち破る気持ちよさが,すごくいいバランスで作られてきているんですね。プレイがやめられない,止まらない良さが出てきていると思います。
また,ゲーム全体に対して気を付けていることなのですが,コントローラを持っているプレイヤーと主人公の感情がリンクするゲームを目指しています。たとえば,主人公が驚くときはプレイヤーにも驚いてほしい,主人公が逃げたいときはプレイヤーにも逃げたいと思ってほしい,というように。それは没入感につながる楽しみだと思いますし,実際にそれを感じられる作りになりつつあります。
その大きく2つの理由から,すごくいいゲームになると僕は思っています。
4Gamer:
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
海外では,「サバイバルホラーはもう死んだジャンルだ」と言われることもあるようですけど,「PsychoBreak」で,本格的なサバイバルホラーはまだあるということを示したいです。
本格的に「怖い」作品を目指しているので,もしかしたら新しいジャンルの作品になるかもしれないと考えています。ゲームファンとホラーファンには,ぜひプレイしてもらいたいですね。
木村氏:
「PsychoBreak」は,すごく純粋なサバイバルホラーを追求している作品です。サバイバルホラーというジャンルは,絶妙なバランスが求められる,非常に作りにくいゲームなのですが,期待は絶対に裏切らない作品になることはお約束できます。「やめられない,止まらない」体験を,一人でも多くの方にぜひ味わっていただくために頑張って作っていますので,ぜひ期待していてください。
4Gamer:
プレイできる日が一日も早く来ることを期待しています。本日はありがとうございました。
今回のインタビューに合わせ,「PsychoBreak」の序盤およびバトルシーンを実機で見せてもらったのだが,インタビュー中で三上氏が語っていたように,その印象はとても“ミステリアス”だ。
ゲームは刑事セバスチャンとその相棒が,大量死亡事件の現場に向かうところから始まる。多数の死体が横たわる現場で,セバスチャンは警官達が次々と殺害されていくのを目撃するのだが,何者かに襲われて意識を失ってしまう。
目覚めた場所では,化け物のような何者かに追いかけられ,殺されそうになるものの,なんとか脱出に成功する。しかし建物を出ると,そこには衝撃的な景色が広がっていた……というのが,現在読者の皆さんにお話できるストーリーの一部だ。
「PsychoBreak」では,3人称視点のスタイルが採られている。日常的な風景から凄惨な大量殺人現場,そして屠殺場のような場所で得体のしれない何者かに追いかけられる場面転換は,プレイヤーに考える隙を与えない。
一方のバトルシーンは,古民家のような建物や地下通路で,異形の敵と戦うという内容だった。メインの武器となるのは銃火器とトラップ。銃火器は,ハンドガンやショットガンなど,複数のものを状況によって使い分けていくことになる。トラップは壁や床に自由に設置できる爆弾タイプのもので,銃で撃って爆発させ敵を倒すことができるものだった。
今回実機で見ることができたのはゲームのごく一部で,どのようなストーリーが展開されるのかは見当もつかなかったが,ホラー好きな筆者としては,先の展開が気になってしかたがないほど,ゲームの世界に引きこまれてしまった。
ゲームのごく一部を見ただけでも,サバイバルホラーとしてかなり期待の持てそうな印象で,さすが三上氏が「純粋なサバイバルホラー」を目指しているだけある,と納得させられてしまった。発売は2014年とまだまだ先だが,今から発売が非常に楽しみである。かなり本格的なホラーかつゴア表現も過激ではあるが,この手のジャンルが好きな人は,ぜひ今後も「PsychoBreak」の情報公開に期待してほしい。
「PSYCHOBREAK」公式サイト
■おまけ:Tango Gameworksスタジオツアーのフォトレポート
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