プレイレポート
「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」は何がどう“難しい”のか? 徹底した遊びやすさと迷宮の怖さを見事に両立させた本作のプレイレポートをお届け
エクスペリエンスから2014年6月5日に発売されるXbox 360用ソフト「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」(PC版は8月22日に発売予定)。本作は“Team Muramasaの集大成”と銘打たれた,ファン待望の完全新作ダンジョンRPGだ。
プレイヤーは異世界に迷い込んでしまった主人公となり,仲間と共に現代へ帰還する方法を求めて冒険を繰り広げる。コアプレイヤー向けの高難度を謳う本作を一足先にじっくり遊んでみたので,そのプレイレポートをお届けしよう。
なお,今回は主に,本作の醍醐味であり,一番の悩みどころでもあるキャラクターメイキングと,実際のプレイフィールに絞って紹介しているので,ゲームに関するより詳しい情報を知りたい人は,「こちら」のインタビューや,4Gamerに掲載している過去記事も合わせて参照してほしい。
「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」公式サイト
エスカリオで今日から始める異世界生活
乗っていた旅客機が原因不明の消失事件に巻き込まれ,意識を取り戻したときには見知らぬ世界に迷い込んでいた主人公。何が起こったのか分からぬままモンスターに襲われそうになっていたところを,リウと名乗る少女に助けられた主人公は,「剣の街 エスカリオ」へと案内される。
そこでは,主人公と同じように異世界に流れ着いた“異邦人”達がギルドを作り,現代に帰還するための手段を求めて戦いを続けていた。
異邦人の中でも特別な存在である“選ばれし者”としての才能を見出された主人公は,エスカリオを統治する3つの勢力,「異邦人ギルド」「王宮騎士団」「メデル商会」それぞれの思惑の狭間で,自らもまた冒険者としての第一歩を踏み出すことになる……。
若さを取るか,熟練の技を取るか
年齢がカギを握るキャラクターメイキング
まずは本作で最初の“山場”となる,キャラクターメイキングから紹介していこう。本作では,最大6人でパーティを組んで冒険に挑むことになるが,プレイヤーの分身たる主人公はもちろんのこと,パーティメンバー全員を自由に作成できる。とにかく早く冒険を始めたいという人は,あらかじめ登録されている5人の仲間をパーティに加えても構わない。
パーティは隊列の先頭から3人が前衛,残りのメンバーが後衛となっており,例えば前衛2人,後衛4人といった変則パーティにはできない。
キャラメイクでは,種族,職業,年齢,才能,性別など,さまざまな項目を組み合わせてキャラクターを作成することになる。種族は「ヒューマン」「エルフ」「ドワーフ」「ミグミィ」「ネイ」の5つ,職業は「ファイター」「ナイト」「サムライ」「ウィザード」「クレリック」「レンジャー」「ニンジャ」「ダンサー」の8つだ。
才能はいわゆるパッシブスキルに近い要素で,各種族に1つずつ,全5種類が用意されている。別の種族の才能に付け替えることもできるが,初期設定ではそれぞれの種族をイメージしたものになっているので,強いこだわりがなければ無理に変更する必要はないだろう。また,性別は男女の2種類で,どちらを選んでもゲームプレイには影響しない。
ちなみに,種族や職業,性別と,戦闘時のボイスやポートレートは自由に組み合わせられるので,野太い掛け声で戦う見た目は可憐な猫耳ファイター(男)みたいなキャラを作ることもできる。ただし,主人公のみ種族はヒューマン,才能は主人公専用の「選ばれし者」に固定されている点には注意が必要だ。
さて,ここまであえて説明を後回しにしていた年齢が,本作のキャラメイクにおける1つのキモになる。本作には,キャラクターが死亡するたびに「生命点」が減少し,生命点が無くなったキャラクターはこの世界から消滅するというルールがある。そして,生命点は年齢が高くなるほど少なくなり,その代わりにキャラメイク時のボーナスポイントが底上げされるのだ。
年齢は10〜99歳の幅で設定できるが,1歳ごとに生命点とボーナスポイントが変化するわけではなく,実際には以下の4つの年齢帯に分けられている。
10〜19歳:最大生命点 3,最低ボーナスポイント 3
20〜39歳:最大生命点 2,最低ボーナスポイント 5
40〜59歳:最大生命点 2,最低ボーナスポイント 7
60〜99歳:最大生命点 1,最低ボーナスポイント 10
初回プレイでは,1度死んだら即消滅な60歳以上のキャラクターはまったくお勧めできないが,ここで注目してほしいのが,20〜39歳と40〜59歳では同じ最大生命点にも関わらず,ボーナスポイントが2も違うという点。つまり両者を比べた場合,あくまで数値上のスペックだけを見れば,40〜59歳のキャラクターを作成するほうがお得であると言えないこともない。
また主人公には,パーティから外せず,死亡しても冒険者ギルドに戻ると即蘇生する(=消滅しない)という特性があるので,これを活かして60歳以上の設定で作成すると効率がいい……と思うのだが,60歳か。うーむ。ロールプレイを重視したい場合は,いっそ99歳にして,脳内で不老不死設定にしてしまうのはありな気がする。
なお,ボーナスポイントはおなじみのロールでランダムに決定されるが,筆者がひたすら試してみたところ,出た数字はほとんどが年齢ごとの最低値で,たまに+1,ごくまれに+2,相当運が良ければ+3といった感じで,+4以上はお目にかかれなかった。また,何度も作業的に再ロールを繰り返していると,せっかくいい数字が出たのにうっかり飛ばしてしまうミスに泣かされることにもなるので,+2ぐらいで手を打つのが現実的かもしれない。
ちなみに,キャラメイク時に設定した項目のうち,種族,才能,年齢,性別の4つ以外は,名前も含めてあとから変更できる(ただし,転職は1キャラにつき5回まで)。ちょっと変わっているのは,名前のほかに「愛称」を個別に設定できるという点で,ゲーム内では主に愛称のほうで呼ばれることになる。名前と愛称を同じにすることもできるが,こだわり派の人は今からたくさんのキャラクター名を考えておこう。
続いて,それぞれの職業の特徴についても解説しよう……と思ったが,それを始めるとキリがないので,ここではごく簡単に,序盤における筆者のお勧めパーティと,新職業のダンサーを軽く紹介するだけに留めたい。迷っている人は参考にしてほしい。
・序盤のお勧めパーティ(隊列順)
ナイト
サムライ or ファイター
ニンジャ
レンジャー or ダンサー
クレリック
ウィザード
本作で新たに加わったダンサーは,どちらかと言えばやや後衛(というか,補助職)寄りだが,低レベルのうちから使える「トライステップ」(1体の敵に3回攻撃)がなかなか強力なので,アタッカーとしても活躍できる。ただし前列に置く場合は,防御力の低さを何らかの方法でカバーする必要があるだろう。装備している武器の射程が無限になる「ウェポントリック」を習得してからは,後列からでも十分なダメージが期待できる。ただし,ここ一番での火力はレンジャーに一歩譲るので,どちらを使うかが悩みどころだ。
徹底した遊びやすさと,ダンジョンに潜る恐怖を
見事に調和させた絶妙なゲームバランス
さて,コアプレイヤー向けの高難度をウリにしている本作だが,実際に30時間ほどプレイしてみての印象は,確かに“容易に攻略できるゲームではない”というものだ。しかし,本作が初心者にオススメできないゲームなのかというと,決してそんなことはない。
ゲームシステムだけを見れば,本作の構造は非常にシンプルだ。キャラクターを育て,より良い装備を手に入れ,さらなる強敵が待つダンジョンに挑む。正に“ハック&スラッシュ”を地で行く,これ以上ないほど分かりやすい内容である。
おまけに本作では,キビキビとしたレスポンスに加え,オートマッピングや自動移動,戦闘結果を一瞬で表示する超高速戦闘など,快適にプレイするための機能がこれでもかと詰め込まれている。はっきり言って,何一つとして“難しくない”どころか,これほど遊びやすいゲームはほかにないくらいだ。筆者は,「ダンジョンRPGは何となくハードルが高そうで,これまで敬遠していた」という人にこそ,本作をお勧めしたい。
そのうえで,本作の“難しさ”がどこにあるのかに話を戻すと,それは“死に対するリスクの高さ”にある。上述のように,本作ではキャラクターが死亡するたびに生命点が減少し,生命点がゼロになったキャラクターは消滅してしまうというのも,その理由の一つだ。しかしこれは,生命点が1しかないキャラクターを無理に冒険に連れ出したりしない限り,そうそう起こることではない。
また,冒険者ギルドに戻れば,死亡したキャラクターを生き返らせたり,減少した生命点を回復したりする手段も用意されている。なんだ,簡単じゃないかと思うかもしれないが,そうは問屋が卸さないのだ。
まず死者を蘇らせる手段には,「蘇生」と「即時蘇生」の2つがある。即時蘇生は,その場ですぐにキャラクターを復活させられるが,代わりにこの世界の通貨である大量の「血晶」が必要になる。これは,ゲームの序盤ではとても支払えないほどの高額だ。となると,無料で行える蘇生に頼ることになるが,こちらはゲーム内で一定の期間がかかる。
蘇生にかかる日数はキャラクターのレベルと年齢(=生命点)によって変化するため,一概には言えないが,ゲーム内で1日〜数日程度が必要となる。短いように感じるかもしれないが,実際プレイしてみると,これが結構長い。生命点を回復させるための方法も,同様に「療養」と「即時療養」の2つがあり,それにかかる日数もしくは血晶は,蘇生以上に長く(あるいは多く)なる。
ゲーム内の時間は敵との戦闘によって進む(レベルが高い敵が出現する迷宮ほど,1回の戦闘で長時間が経過する)が,主力を復帰させるためにレベルや装備が不十分なサブメンバーを入れて戦っていると,敵の予想外な攻撃であっさりとそのキャラが死亡してしまうこともあり,思わずうめき声を上げてしまう。
それならば,死なないように慎重に戦えばいいのではと思うかもしれないが,おそらくそれでも,一度も死者を出さずに戦い続けるのはまず無理だろう。通常のエンカウント率がそれほど高くない本作では,必然的に1つ1つの戦闘に大きな比重が置かれており,雑魚戦でもほんの少しの油断が死を招くのだ。
とくに怖いのは敵の識別ができないダークゾーン内での戦闘で,うっかり自分達よりもレベルの高い敵に手を出すと,あっという間にパーティが半壊してしまう。おまけに,序盤のうちから即死攻撃を仕掛けてくる敵が出現するため,油断していなくてもやっぱり死ぬときは死ぬのである。
また,ダンジョン内にセーブポイントがなく,ダンジョンから冒険者ギルドに直接帰還する手段が限定されている点も,難しさに拍車をかけている。本作には帰還や蘇生のスペルは存在せず,それぞれの効果を持ったアイテムは,まれにしか入手できない貴重品になっている。魔法で手軽にペナルティや危険を回避できない本作では,ダンジョンの奥深くまで探索し,途中の戦闘を潜り抜けてボスである「血統種」を倒し,無事にギルドに帰り着くまでが一連の冒険なのだ。
血統種はそのほとんどがかなりの強敵であり,たとえ勝利できたとしても,パーティメンバーも無事では済まされないことが多い。パーティに死者が出てしまい,歩いてギルドに戻ろうとしているときの怖さはかなりのものだ。
迷宮をどこまで進んだら引き返すのか? 蘇生や療養が必要なメンバーが出た場合にいかに戦力を補うのか? そもそも,死者をなるべく出さずに戦うにはどうするべきか? そういった,さまざまなレベルでのマネジメントを求められるのが,本作の面白さであり,難しさでもある。
遊びやすさをとことんまで追求したうえで,ダンジョンRPGが本来持っていた迷宮や死に対する恐怖を見事なバランスで実現した本作は,“Team Muramasaの集大成”という謳い文句に恥じない,素晴らしい出来栄えの一本だ。確かに手ごわいゲームではあるが,ダンジョンRPGのコアなファンだけでなく,より幅広いプレイヤーに手に取ってもらえればと思う。
「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」公式サイト
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