レビュー
あのきらびやかな建物の奥で,夜な夜な繰り広げられることとは。
ドリームクラブ Complete Edipyon!
筆者は体質的にお酒が飲めないために,いろいろ損をしている気がしてならない。例えば,帰りの電車でよく見る「だからオレは,部長にガーンと言ってやったんだよ。あはははは」と喜んでいる人達がたいへんうらやましく,筆者も酔って偉そうにしてみたいのだが,できずにいる。部長いないし。また,女性と飲みにも行くこともないので,テレビ番組などでよく見る「あたし,酔っちゃったみたい。今夜は帰りたくな・い・の」などと言われたことも一度もない。一度でいいから言われてみたいと思っている。
もちろん,「一杯いかが?」と女性がお酌をしてくれる場所もほとんどなじみがなく,その昔,営業をやっていた頃に,たまに連れて行かれたものの,なんだかんだいって30年近く前の話なので,記憶も定かではない。
「ドリームクラブ Complete Edipyon!」公式サイト
そんな筆者にもってこいのタイトルが2012年11月15日,ディースリー・パブリッシャーからリリースされた。それが「ドリームクラブ Complete Edipyon!」だ。
……と,あまりといえばあまりにもわざとらしい流れだったのは間違いないが,それは仕方ないとして,Complete Edipyon!は,「コンプリートエディぴょん!」と読むのであり,いつもようにスペルミスをやらかしたわけではないので注意してほしい。エディぴょんか。
軽く振り返ってみると,ドリームクラブシリーズは,2009年にリリースされたXbox 360版「ドリームクラブ」が第1弾となる。2010年にはPSP版「ドリームクラブ Portable」がリリースされ,翌2011年にはXbox 360向けに「ドリームクラブ ZERO」が,またPS Vita向けに「ドリームクラブ ZERO ポータブル」が登場。さらにスピンオフ作品として「マージャン★ドリームクラブ」(PlayStation 3/Xbox 360)が2012年に発売されており,おまけに,2012年9月22日に掲載した東京ゲームショウ2012のレポート記事でもお伝えしたように,完全新作となる「ドリームクラブ5号店」(仮称)の制作も発表された。そこのあなた,付いてきてますか? ちなみに,英字表記であるDREAM C CLUBのCにはなにやら大人の事情があるらしく,発音は,ドリームクラブでオッケーよ。
ドリームクラブへようこそ。初めての方でも大歓迎です
このほかの,PlayStation 3対応タイトルとして「ドリームクラブZERO Special Edipyon!」(これもエディぴょん)の制作も発表されているが,なんだかこんがらかってきたので,シリーズタイトルの話はこのへんで終わりたい。
もっとも,なにせ筆者は初挑戦なので,あのシステムでこちらをリニューアルしたと言われても,実はよく分かっていない。というわけで,ここは虚心坦懐,無垢な心でプレイしてみるのだが,実はなにやらこのピュア(無垢)なハートというものが,本作では重要な要素になるらしい。意外とピュアには自信があるので,いけるかも。さあ,飲むぞ!
先走った。えー,ドリームクラブとは,こちらがお酒を飲みつつ,向かいに座ってくれる可愛い女の人にもお酒を飲ませ(料金こっち持ち),そんでもって楽しくお話ししたり,ゲームに興じたりするという紳士のための施設なのだ。現実世界にも類似のものがあるらしいのだが,上記のように筆者とは無縁であるし,ここはなんというか,現実とは無関係の,そう,もっとドリーミーな場所なのだ。いろんな都合があるので,そういうことにしておいてほしい。
プレイヤーは,あまり裕福ではないアルバイト青年であり,そのような場所は明らかに分不相応なのだが,なぜか1年間だけそこの会員になってしまったという設定の,夢のような話だ。さすがドリームクラブ。もっとも,会員であることにお金はかからないものの,ドリームクラブではいろいろとお金がかかるので,その点は考慮しなければならない。
でもって,ゲーム的に何が目的なのかというと,実は筆者はよく分かっていない。明確な指針が提示されるわけではないので,とりあえず筆者はドリームクラブに通い,お酒を飲みすぎてひっくり返ったり,オムライスにケチャップで文字を描く「オムライスラブ」などのミニゲームに熱中したりした。ちなみにオムライスラブには妙に筆者のゲーマー魂に訴えるものがあり,思わず熱中してしまったが,これがなかなか難しく,もうね,オムライスラブ最高ラブ。
■夜のお遊び
10人のホストガールと,心安らぐ楽しいひとときを
しかし,ふっふっふ,筆者も大人だからよく知っているのだが,こういう場所での会話は,話半分に聞いておくのがいいのだ。「彼氏なんかいないです」なんて言っててホントにいなかったためしはまずないんだぞ,ちくしょう! って,なぜ涙目になってるのだろう,オレ。
えーと,ホストガールとはまず「会話」が楽しめる。彼女達のスリーサイズや出身地,好きな食べ物やスリーサイズ,あるいはスリーサイズなどは基本的に非公開なので,その点を話題に会話したりするわけだが,うう,考えただけで楽しそうだ。とはいえ,「ところでキミのスリーサイズを教えなさい」と聞いたとしても,ええー,なにこのオヤジと思われるのがオチであることは経験的にもよく知っているので,作戦が必要になる。
そこで登場するのがIISだ。これは「インタラクティブ飲酒システム」の略で,日本語と英語がチャンポンになっているあたりがナイスセンスだが,つまりコントローラのスティックでグラスを傾けてお酒を飲むというもの。スティックを倒しすぎてグビグビ飲んでしまうと,こちらが酔っぱらってしまうが,あまり飲まないと好感度が下がるみたいなので,傾け加減が非常に難しいというハイテクなシステムだ。
さらに,ETSというものも用意されており,これは「エモーショナルトークシステム」の略だ。プレイヤーとホストガールが,お互いに酔った状態で発動されるようで,向こうの質問に対するこちらの選択肢が,文ではなく○とか×とかの記号になってしまうというハイテクなシステムだ。おそらく,アルコールによって思考力が低下した状況を再現しているのではないかと思うが,ここでしか聞けない質問があったり,好感度がグッと上がったりなど,非常に重要なゲームの要素になっている。とはいえ,記号じゃ分かんねえよ。
そして,ホストガールの好感度が上がってくると,お待ちかねのカラオケリクエストが可能になる。カラオケシーンは,リズムゲーム仕立てになっており,ホストガールの歌に合わせてコールを入れるわけだが……えー,筆者は実はプロデュース活動も割と熱心にやっているほうで,この手のリズムゲームには慣れているはずだと自分では思っていたのだが,本作のそれはかなり難しく,なかなかいいスコアが取れない。というわけで,思わずこちらにも熱中してしまったが,まあ,失敗してもオーディションに落ちたりするわけではないので,気は楽だ。
ホストガールの状態によっては,歌の途中でロレツが回らなくなったり,ダンス中に足をもつれさせたりなど,とんでもないことになったりする。これも最初は何事かと思ったが,要するにほろ酔いでうまく歌えない状況が再現されているわけで,巷では「カワオケ」と呼ばれているらしい。すごいぜこれ。
落ち込んだとき,悲しいとき,
ドリームクラブはいつでもあなたを待っています
ホントかウソか知らないが,2016年のオリンピック開催都市であるリオデジャネイロの人々は,カーニバルのために一生懸命働くという。あちらは年に一回だが,こちらは週に一回。好きなもののために働く汗は貴いのだ。あの子の喜ぶ顔を見るため,プレゼント代をがんばって稼ぐぞ,みたいな。ピュアだなあ。
というわけで,プレイヤーに許された一年間はまさに夢のように,瞬く間に過ぎる。毎週のようにお店に通い,いろんなホストガールと真にたわいのない,例えば,「缶入りポタージュスープの最後のコーンは,たいてい缶の底にひっついているが,それをあえて叩き落として食べるべきか否か」などという,まったく罪のない会話を重ね,オムライスに文字を書き,カラオケに合いの手を入れたりした。争いごとも何もない,いかにもアジア的,微温的なユートピア。わっはっはっは。なんて楽しいんだ。酒は飲めないけど,現実もこんな感じなんだろう。大人ってステキ。
かくして,ゲーム終了。ああ,面白かった……って,え,これじゃダメなの? どういう意味? まあ,確かにエンドクレジットでは,なんというか,あまり上手とは言えない男声合唱による,やや悲しげな曲が流れたけど,これってバッドエンドなの?
ううむ,どうやら筆者はゲームを進めるべき方向性を根本的に間違っていたみたいだ。聞くところでは,ホストガールの誰かと仲良くなり,店外デートに誘ったり,VIPルームに行ったりといったイベントをまき起こし,最後はよく分からないけど,さらに大人っぽいことになるらしい。そうだったのか。まあ,あまりにも何も起きないので,薄々おかしいなとは思っていたんですよ。そういうことは,早く言ってくれなきゃ。
亜麻音 |
魅杏 |
さて,うっふっふ,ターゲットは誰がいいだろうか。やはり,ここは亜麻音だろうか。なにはともあれ,頭のリボンがたまらなくいいよね。でも,魅杏もいい。いわゆるツン&デレ系だが,なんだかんだで,一番仲良くなったのは彼女だし。そうは言っても大人同士,るい先生も悪くないかもしれない。悩み事を聞いてほしそうな様子なので,妙に気になるところだ。だがしかし,今回はセッちゃんに決めた。キミに決定だ。
なんとなく,半世紀以上生きている筆者の孫でもおかしくない雰囲気がなきにしもあらずだが,セッちゃんは間違いなく20歳以上なのでいろいろと大丈夫だ。「ミッカヴィン」の謎も,解き明かさなくてはなるまい。
お目当ても決まったところで,さあ,再び夢のような一年間を始めよう。ドリームクラブへ,ようこそ!
「ドリームクラブ Complete Edipyon!」公式サイト
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(C) D3 PUBLISHER
- DREAM C CLUB Complete Edipyon! (初回封入特典:プロダクトコード同梱)
- ビデオゲーム
- 発売日:2012/11/15
- 価格:¥4,600円(Amazon) / 5395円(Yahoo)