レビュー
宇宙人退治なら大統領にお任せ。さらにハチャメチャ度が増したシリーズ最新作
セインツロウIV ウルトラ・スーパー・アルティメット・デラックス・エディション
スパイク・チュンソフトは,PS3/Xbox 360用ソフト「セインツロウIV ウルトラ・スーパー・アルティメット・デラックス・エディション」(以下,「セインツロウIV」)を本日(2014年1月23日)発売した。
本作はとびきりイカれたオープンワールド型クライムアクション,「セインツロウ」シリーズの最新作。北米では2013年8月20日にリリースされた本作だが,やたらと長いサブタイトルが追加されている日本版では海外で有料配信された13種類のDLCを完全収録。待った甲斐のある,お得なパッケージとなっている。
本稿ではシリーズの大ファンであり,「セインツ・ロウ 2」(PC/PS3/X360),「セインツロウ ザ・サード」(PC/PS3/X360)のレビュー(「こちら」と「こちら」)を担当してきた筆者が実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの概要をお伝えしていこう。
なお,以下の本文にはゲームのネタバレが含まれているのでご注意を。まっさらな気持ちでゲームを楽しみたい人は読むのをやめて,今すぐお店に買いに走ろう。
「セインツロウIV ウルトラ・スーパー・アルティメット・デラックス・エディション」公式サイト
戦いの舞台は宇宙,そして仮想空間へ……。
スーパーヒーロー? いいえ,ギャングです。
2008年にリリースされた記念すべき第1作「セインツロウ」で,たまたま抗争に巻き込まれたことからストリートギャング“サード・ストリート・セインツ”(以下,セインツ)のメンバーとなった主人公。「セインツ・ロウ 2」(2009年)ではセインツのリーダーとしてスティールウォーターの完全支配を果たし,「セインツロウ ザ・サード」(2011年)に至ってはセインツがポップカルチャーの象徴としてファッションブランドからテレビCM・映画まで手掛ける強大なメディア帝国へと変貌。
もはやストリートギャングの枠からは完全に外れ,セインツの資金力を狙ってきたあらゆる敵対組織を壊滅に追い込んだのち,ギャング殲滅に乗り出したアメリカ政府の特殊部隊が操る巨大空中空母“ダイダロス”までも撃沈。その圧倒的暴力を誇示したセインツだったが,「セインツロウIV」では主人公がいよいよアメリカ合衆国大統領にまで上り詰めてしまった。……しかも,今度の敵は地球を侵略しにきたエイリアンときている。
このように,数あるクライムアクションゲームの中でも独自の路線を突き進んでいる「セインツロウ」シリーズ。全編において悪ふざけと超展開の目白押しで,とくにこれまでのストーリーに関してはシリーズ未経験者からすれば「なるほど分からん」としか言いようがないと思うが,深く考えてはいけない。頭をカラッポにして,ありのままを受け入れるのが「セインツロウ」シリーズの正しい楽しみ方だ。……今となっちゃ,第1作では比較的シリアスにギャングの抗争を描いていたというのが信じられないね。
さて,そんなブッ飛び“バカゲー”シリーズの最新作である「セインツロウIV」。本作では前述したようにアメリカ合衆国のリーダーとなったセインツと“ゼン帝国”を名乗るエイリアンとの戦いが描かれているのだが,圧倒的な科学力を持つゼン帝国を前に人類はあっという間に窮地に追い込まれてしまう。セインツのメンバー達も囚われの身となり,ゼン帝国の支配者である“ジニャック”が創りだした仮想空間“バーチャル・スティールポート”に精神を閉じ込められてしまうのだ。しかも早々に地球は爆発四散(!?)してしまうため,本作ではストーリーの大半がこのバーチャル・スティールポートで展開することとなる。
そして舞台が現実から仮想空間へと移ったことで,ゲームデザインはこれまで以上に荒唐無稽なものへと変化。敵を凍らせたり念力で放り投げたりといったアメコミヒーローも真っ青な“スーパーパワー”を駆使できるようになり,盗んだ車を乗り回して銃撃戦を繰り返すという,クライムアクションとしては比較的スタンダードなシステムだった従来シリーズとはプレイフィールも大きく違っている。
中でも,超高速で車や障害物を弾き飛ばしながら移動できる“スーパーダッシュ”や,力を溜めることで空高く舞い上がることができる“スーパージャンプ”の存在は本作のキモと言える。その身ひとつで縦横無尽にマップを駆け抜け,飛び回れる爽快感は,これまでの「セインツロウ」では味わえなかったものだ。
ただし,あまりにも手軽かつ優秀すぎる能力であるために,本作では移動手段として車やバイクを利用する必要性がほぼ無くなってしまった。実際,筆者はメインストーリーをクリアするまでにトータルで30分も車を運転していないし,車両のカスタマイズも性能云々ではなく完全な道楽要素と化している。そういった意味では,ゲームバランスの崩壊を招いているとも言えるが……そもそもハチャメチャでカタにハマるのなんてクソ食らえな「セインツロウ」に対して,こんなツッコミは野暮というものか。
なお,ストーリーが進行するとバーチャル・スティールポートから抜けだして現実世界(セインツの拠点となる宇宙船)でも活動できるようになる。当然スーパーパワーは使用できなくなるが,セインツのメンバーと会話してサブクエストを進行させたり,ロマンスを楽しんだりできるのだ。……ちなみに主人公は超雑食で,お望みであれば同性からメカまでどんなプレイでも楽しめる。SF……ロマンス……いったい何エフェクトなんだ……。
宇宙一凶暴なファッションリーダーに注目!
常識外れの超兵器でエイリアン共をブチ殺せ
容姿に関するカスタマイズ要素に関しては,相変わらず「セインツロウ」らしい自由度。顔のパーツやショップで販売している衣服はほぼ前作の使い回しであるが,日本版に同梱されているDLCでの追加分も考えると個人的にあまり不満は無い。プレイヤーのセンス次第で,いろいろな楽しみ方ができそうだ。
そして武器の種類は,エイリアンの超兵器まで加わって大幅に増加。ショップで威力やリロード効率を強化していけるのはもちろんのこと,武器ごとに好みのスキンを設定できるようになっていたり,それに伴って射撃音や弾のエフェクトも変わったりと,細かいところで嬉しい要素が追加されている。
性能面では敵のケツにねじ込んで空高く射出する「アナライザー」や,イカしたダンスミュージックで敵を踊り死なせる「ダブステップガン」など,ユニークなモーションや効果を持った武器が非常に多く,バイオレンスを突き抜けた馬鹿馬鹿しさにゲラゲラ笑いながら遊べるのが大きな魅力だ。
なお,従来のシリーズと同様,メニュー画面ではキャッシュを消費することで自身の能力をアップグレードできる。選べる項目は非常に多く,クエストなどをこなして“XP”を稼ぎ,レベルアップするごとに新しいものがアンロックされていく。体力やスタミナの強化はマストとして,ハンドガンやサブマシンガンの2丁持ちや所持弾数の増加は早い段階でアンロックしておくと戦闘がだいぶ楽になる。
さらに,メニュー画面ではマップ上で集めた“クラスタ”を消費することでスーパーパワーも強化可能。ダッシュのスピードやジャンプの高度をアップさせたり,戦闘系のスーパーパワーならリキャストを短くしたり,効果範囲を広げたりできる。クラスタは集めるのが少々面倒なので,自分の戦闘スタイルに合わせて優先的に強化したいものをよく考えて選ぶのがいいだろう。
ちなみに,一部の武器やスーパーパワーはセインツのメンバーから依頼される“サブクエスト”をクリアすることで報酬としてアンロックされる。そのほかにも電話で呼び出せるセインツのメンバーがスーパーパワーを使えるようになったり,かつての敵が仲間として生まれ変わったりとメリットが非常に大きいので,メインクエストの合間にこなしていきたい。
究極に愚かで愉快なゲーム体験がここに。
本作を遊ばずしてバカゲーは語れない!
新作が出るたび,深刻な“バカのインフレ”が発生しているように思えてならない「セインツロウ」シリーズ。一介のストリートギャングが街を支配して,国を支配して,ついには宇宙規模の戦いにまで発展してしまった……こんなメチャクチャな展開,ほかのタイトルでやろうものなら「ふざけんな!」と腐った卵を投げられかねないところだが,「セインツなら仕方がない」と許されてしまうのが凄いところで,最大の魅力でもある。このバカバカしさをファンが大喜びで追っかけているからこそ,開発者も毎回全力で悪ふざけをすることができるのだろう。
さて,そんな「セインツロウ」シリーズ最新作にして史上最大規模の悪ふざけが詰め込まれた「セインツロウIV」だが,やはりさすがの面白さだった。期待を裏切らない超展開の数々に腹がよじれるほど笑わせてもらっただけでなく,“公式チート”とも呼べるようなスーパーパワーを駆使しての戦闘は間違いなくシリーズ最高の爽快感を実現している。
前作に引き続き少々ボリューム不足な印象は受けるが,それはメインクエストを駆け足でプレイした場合の話だ。サブクエストやアクティビティを合間に挟めば,満足度はだいぶ違ってくる。
ただ,プレイ中に何度かフリーズやクエストが進行しなくなるといったバグに遭遇したのが気になるところ。しかも,今回は仮想空間という舞台設定から「演出だと思っていたら本物のバグだった」という事態に何度か遭遇して苦笑した。まぁ,バグに関しては洋ゲー慣れ……というか,しっかり調教されてしまっている筆者は「リセットすればいいや」という考え方なのでそれほどストレスに感じないが,気になってしまう人のほうが多いだろうとは思う。
まぁ,この程度のちょっとした不具合など「セインツロウIV」の魅力的な部分に比べれば霞んでしまうレベルではある。少なくともシリーズファンならば即買い,即プレイすべき出来栄えだ。
クライムアクションがお好きな人も,今頃は「グランド・セフト・オートV」(PS3/X360)のやり込みがいち段落した頃だろうと思う。そんな人には,まったく違うベクトルで傑作に仕上がっている本作を強くオススメしたい。シリーズ物ではあるが,そもそもストーリーなんかあって無いようなもの(失礼)だし,重要なシーンではちゃんと過去の回想が入るので,シリーズ未経験者でも本作のハチャメチャっぷりを楽しむうえではなんら問題ないはずだ。
このウルトラ・スーパー・アルティメット・デラックス・マザーファッ○ンなゲームを遊ばずして,バカゲーは語れない。脳から一切の皺が消え去ってツルツルになるような究極に愚かで愉快な体験を望むなら,後悔しないよう地球が爆発四散する前にプレイしておこう。
「セインツロウIV ウルトラ・スーパー・アルティメット・デラックス・エディション」公式サイト
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(C) 2013 by Koch Media GmbH, Gewerbegebiet 1, 6604 Höfen, Austria. Deep Silver is a division of Koch Media GmbH.Developed by Deep Silver Volition, LLC. Saints Row, Deep Silver and their respective logos are trademarks of Koch Media. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved.
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