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[Unite 2016]個人のUnityスキルを評価する「Unity認定試験」の展開が紹介されたセッション「Unity教育への取り組み」聴講レポート
このセッションでは,ユーザー個人が持つUnityの技能を評価する「Unity認定試験」をはじめ,今年から本格的にスタートしたUnityの教育への取り組みが紹介されていた。
Unite 2016 Tokyo 公式サイト
Unity認定試験とは,90分の制限時間内にUnityの基礎知識に関する問題300問に回答するというものだ。なぜこのような取り組みが必要なのか。それは,一口に「Unityでゲームを開発した経験がある」と言っても,個人のスキルには大きなばらつきがあるからである。
簗瀬氏によると,プログラミングに直接携わらないゲームデザイナーやディレクター,あるいはアーティストであっても,「Unityを使って何がどこまでできるか」という基本的な理解があるに越したことはないという。
そこで,ゲーム開発に必要なUnityの基礎知識やスキルを明確にし,それを各自が習得しているかを評価すべく,認定試験とそのシステムを設けたわけである。実際,出題の水準は,ゲーム開発に携わるのであれば,どんな職種であっても「ここまでは知っておいてほしい」というものになっているとのことだ。
こうした一連の取り組みの中で,Unityが最初に取り組んだのは「プロフェッショナルスキル標準」を設定することだった。これはゲーム開発の現場で必要となるスキルを網羅したリストで,サウンドやライティング,物理演算,ゲームデザインといったカテゴリに分けられている。ちなみに,北米を中心とした大手ゲームデベロッパ数社のアドバイスを受けて策定されたとのことだ。
したがって,このリストに沿って各項目にチェックを入れていけば,「この現場にはどんな人材が必要なのか」「応募してきた人材がどんな職種に向いているのか」といったことが明確になる。
また,Unityのプロフェッショナルスキル標準は,北米で推進されているSTEM教育(サイエンス,テクノロジー,エンジニアリング,数学に重点を置いた教育)の「STEMスキル標準」に準拠しており,各項目がどの分野にあたるのかが明記されている。
そのため,Unityのプロフェッショナルスキル標準に基づいたゲーム開発の授業を行えば,STEM教育を行っていることとなり,学校としてはUnityを教材として採用しやすくなっている。この試みについて,簗瀬氏は「学術的な知見や教育効果に基づいており,しかもそれをビジネスにしっかりと結びつける取り組み」であり,「ゲームを作る人を増やすという意味で,非常に大きなこと」と説明した。
さらに,Unityのプロフェッショナルスキル標準にリストアップされた各項目のスキルを研修や授業で習得するためのサポートとして,「カリキュラムフレームワーク」が用意される。
このフレームワークは,研修や授業の内容およびスケジュールを,受講の回数や時間,受講者のレベルに応じて設計するための指標である。ゲーム開発に必要な要素が全14項目に網羅されており,それぞれの難度や評価方法,教材などを掲載している。簗瀬氏は「これをきちんと使えば,開発現場に足りないものや,これを教えたらもっと可能性が広がるといったことが見えてくる」と語っていた。
また,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンがカリキュラムフレームワークを使って独自に作成した教材サンプルを配布する予定もあるとのこと。
前述のとおり,今回制定されたUnity認定試験は,Unityの基礎的な知識を問うものである。その出題範囲には,ゲーム開発のみならず,ゲーム産業に関するものもあるという。第1回は3月に開催されたGDC 2016の会場にて実施され,日本からも数名が受験したそうだ。その中で合格が判明しているのは,今のところ1名とのこと。簗瀬氏は「90分で300問を答えるには英語に長けていないと厳しかった」と述べ,「日本語化されていればもっと合格率が高まったのではないか」と分析していた。
あらためてUnity認定試験に合格する価値を説明すると,「一定水準のUnityスキルを持っていることを示せる」という点が挙げられる。ただし,これは「面白いゲームが作れる」ことを保証しない。簗瀬氏は「ゲーム会社に入社するのと,面白いゲームを“独力で”作れるかどうかは別の話」であり,Unity試験は即戦力になるか,または自己の学習進度の指標になるものであると説明した。
日本におけるUnity認定試験の実施スケジュールも公開された。それによると,5月に教育関係者向けのプレリリースが行われ,6月以降,東京・渋谷で開催されているイベント「Unity道場」にて試験が実施される。その後,2017年に全国でも試験を実施する予定とのことだ。ちなみに,試験も教材もすべて日本語で提供される。
これに合わせて,現在は全国の教育機関や研修センターを対象に「認定トレーニングセンター」制度を設ける取り組みも展開中。この制度は,契約を交わした専門学校などでも一般向けの認定試験を実施できるようにするというものだ。
セッションの終盤には,Unity教育の将来的な展望が示された。それによると,エキスパートプログラマーやエキスパートアーティストといった,より職種に特化した上位の認定試験を設ける予定もあるそうだ。たとえばプログラマーであれば,法則化や最適化,デバッグ,メモリ管理といったスキルが求められる内容になる。出題形式も選択問題だけでなく,与えられた課題を実技形式で達成するようなものになるとのこと。
また,認定試験の内容もゲーム開発者やゲーム産業を志す人に向けたものだけでなく,VRやHCI(Human Computer Interaction),ロボットなど,さまざまな分野でUnityを使う開発者向けに分化させることを検討しているという。
簗瀬氏は,こうしたUnityの教育への取り組みについて,興味のある人は「Unity認定試験公式サイト」にアクセスしてほしいと述べて,セッションを締めくくった。
Unite 2016 Tokyo 公式サイト
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