プレイレポート
本日発売「ダンガンロンパ1・2 超高校級の人狼」先行プレイレポート。原作キャラが入り乱れての“学級裁判”が楽しめる人狼系推理ゲーム
本作は,4Gamer読者であればご存じであろうスパイク・チュンソフトの人気アドベンチャーゲーム「ダンガンロンパ」シリーズをモチーフとした“人狼系なりきり推理ゲーム”だ。ジャンル表記に“人狼系”とあるとおり,ゲームとしては,このところ人気の会話型推理ゲーム「人狼」をベースとなっている。
ヨーロッパの伝統ゲームがベースとされる人狼は,テレビ番組や映画,はたまた演劇の題材として取り上げられたこともあり,ここ1〜2年で急速に人気が上昇。ゲームの進行をサポートするスマートフォン用アプリまで登場するなど,大学生や若い社会人層などを中心に,コミュニケーションゲームとして人気を博している。
一方で,ダンガンロンパといえば,個性的な登場人物達の中に潜む殺人犯を,「学級裁判」によって探し出すという,ミステリー要素をふんだんに備えた“ハイスピード推理アクションゲーム”。PSPで登場した原作1作目と2作目をセットにした,PlayStation Vita版「ダンガンロンパ1・2 Reload」が10月10日に発売されたばかりということもあって,現在進行形で遊んでいるという人も少なくないだろう。
ちょっと異色の組み合わせであるものの,「犯人捜し」が主題となる点で,共通点も多い両作。想像してみても,相性は非常に良さそうに思える。しかし,いったいどうやってゲームに落とし込んでいるのだろうか。4Gamerでは,アルジャーノンプロダクトの協力のもと,この気になるタイトルを発売に先駆けて遊ばせてもらったので,実際のプレイフィールを交えつつ紹介していこう。また本作の開発者にも話をうかがっているので,そちらもお楽しみに。
「ダンガンロンパ1・2 超高校級の人狼」公式サイト
原作キャラが入り乱れての心理戦
しかし,プレイヤーすべてが「シロ」もしくは「クロ」のどちらかという訳ではない。特殊な行動が可能な「ロール(役職)」を持ったプレイヤーが居て,彼らの動向が推理を進める(もしくはほかのプレイヤーを騙す)鍵となるのだ。
パッケージの中身を見ていこう。本作のコンポーネント(内容物)は,原作に登場する35名のキャラクターイラストが描かれた「キャラカード」(35枚)と,先にも触れた役職を決定する「ロールカード」(19枚),そしてさまざまな効果を持った「アイテムカード」(49枚)に分かれている。そのほかにゲームの補助として使われる「サマリーカード」「ターゲットカード」「ブランクカード」を加えた126枚+ルールブックが全内容物だ(参考:公式サイトのカードリスト)。
まずロールカードを見ていこう。本作に登場するロールは以下の7種類だ。
※()内は人狼における(比較的近い)役職名。細かな部分では違いがある。それに関しては後述。
- シロ/10枚(村人)
- アルターエゴ/1枚(占い師)
- 絶望病患者/1枚(該当無し)
- モノミ/1枚(狩人)
- クロ/1枚(人狼)
- 裏切者/4枚(狂人)
- 超高校級の絶望/1枚(妖狐)
プレイヤーには,ゲームマスター(GM)からこのロールカードが1枚,伏せた状態で配られ,このゲームにおける自分のロールが決定される。ロールカードは自分だけで確認し,決して人に見えてはいけない。自分のロールは,自分だけにしか分からないわけだ。
さて人狼であれば,このロールカードがすべてなのだが,本作の場合にはさらにもう2種類カードが用意されている。1つはキャラカードで,これもロールカードと同様,ゲーム開始前に,各プレイヤーに1枚がランダムに配られるが,こちらはすぐに表向きにして構わない(正確にはロールカードよりも先に,キャラクターカードが配られる)。キャラカードには,原作登場人物の能力や口癖などが書いてあるのだが……能力については,ここでは一旦忘れよう。このカードは基本的に“なりきりプレイ”をするためのもと考えれば良い。原作キャラクターになりきって遊ぶのが,本作のスタイルというわけだ。
そして,もう一つのカードがアイテムカード。これが本作の鍵を握るカードである。
アイテムカードは,ゲーム開始時に,各プレイヤーに2枚が伏せた状態で配られる。アイテムカードには,さまざまな特殊効果が書かれており,所定のタイミングに使用することで効果を発揮する。
例えば「希望のかけら」であれば,「クロ」による襲撃を受けたとき,それを回避することができるし,「塩」を持っていれば,殺害されてしまった後も会話にのみ参加することができる。対象が「裏切者」であるか否かを判別する「誰かの卒業アルバム」を使えば,特殊能力を持たない「シロ」でも,ゲームの流れを大きく左右する情報を掴むことができるだろう。
未使用のアイテムカードは,机の上に伏せて置いておく。またアイテムカードの上限は2枚まで。ゲーム中に新たに獲得しても,上限を越える場合は,任意のカードを山に戻して,2枚まで減らさなくてはならない |
原作にも登場したアイテムが,勝負の鍵を握る。「ジャスティスロボ」を使えば,「クロ」の襲撃から自分以外の誰かを守ることができる。はて,アレってそんなに強かったっけ? |
希望と絶望の学級裁判が幕を開ける
ではいよいよゲーム本編に入っていこう。
先にも説明したとおり,本作は超高校級の生徒達の中に潜む「クロ」を見つけ出す(あるいは見つからないようにする)ゲームだ。ただし勝利条件はロールごとに細かく設定されており,これによって大きく2つの勢力に分けられる。「クロ」を見つけ出し,学級裁判で裁くことで勝利となる「希望サイド」と,プレイヤーを一定数殺害することで勝利となる「絶望サイド」だ。
○希望サイド(勝利条件:クロを見つけ出し,学級裁判で“おしおき”すること)
○絶望サイド(勝利条件:「クロ」がルールによって定められた人数を殺害すること)
クロ……殺人事件の犯人。毎晩誰か一人を指名することで,その人物を殺害できる 裏切者……何の能力もないが,誰が「クロ」であるかを予め知っている。「アルターエゴ」には絶望サイドとして判定される
前日の「夜時間」の行動によって,「朝時間」に死体が登場したら学級裁判がスタート。「昼時間」を使って,各人の言動や「アルターエゴ」によってもたらされた情報などを元に推理を進めていく。昼時間として定められた制限時間(通常4分)が過ぎれば投票だ。投票によって最も票を集めた人物には,モノクマによる“おしおき”が待っている。
この「殺害」と“おしおき”のサイクルを繰り返しながら,「クロ」を絞り込んでいく。問題なのは,各人のロールなど公開された情報が,本当のところは正しいのかどうか分からないことだ。「アルターエゴ」を名乗る人物は,本当は「裏切者」のなりすましかもしれない。特殊能力やアイテムによって重要な情報を掴んでも,いまそれを公開してしまっては,夜に殺されてしまうかもしれない。
誰の言葉を信用し,誰を切り捨てるのか。自分の言動は,他人から見て説得力があるだろうか。論理と推理,詭弁と強弁を駆使しながらの舌戦が,人狼系ゲームの醍醐味なのだ。
「クロ」に殺害されたり,“おしおき”によって退場したプレイヤーは,(アイテム効果による例外を除き)以後の議論に参加できない。ただし,自分の属する勢力が勝利すれば,退場後でも勝利となる |
「クロ」によって指名されたプレイヤーの前には,GMによってターゲットカードが置かれる。夜が明けたとき,目の前にターゲットカードがあったときの絶望感たるや! |
■(コラム)人狼とはここが違う!
人狼経験者向けに,本作においてルールが異なる部分をまとめて紹介しておこう。実際のプレイの参考にしてもらえれば幸いだ。なおアイテムカードについては,効果が多岐にわたるため省略しているので,ご了承いただきたい。
- プレイヤーの人数に限らず,「クロ」はゲームに必ず1名しか存在しない。その代りに,狂人役である「裏切者」の数が多い。
- 絶望サイドの勝利条件は,参加人数によって定められた人数を殺害すること。残りの人数を気にする必要がないため,スピーディなゲームの展開となる。
- 「裏切者」は,「アルターエゴ」によって絶望サイドとして判定される代りに,「クロ」が誰であるか最初から分かっている(「クロ」側からは分からない)。
- 狩人役の「モノミ」は,ガードに成功した場合,自身が死亡する(「クロ」の殺害達成数としてカウントされる)。
- 霊媒師に相当するロールが存在しないため,前日の“おしおき”の成否を知ることはできない。ただし「アルターエゴ」に“おしおき”をした場合,その事実は即座に公開情報となる。
- 人狼では,犠牲者が出なかった日も投票が行われるが,本作では犠牲者がない場合は学級裁判が発生しない。つまり議論とアイテムカードの使用は可能だが,投票が発生しない。
- 人狼では,狼は自分自身を含む狼を殺害の対象に選べないが,本作では「クロ」は自分自身を殺害の対象に選択しても構わない。何らかの防衛手段を得ている場合には,有効なブラフとなる。
ゲーム中は,ルールの要点をまとめたサマリーカードで,ロールの特殊能力や人数,必要な殺害数などを確認できる
開発者に聞く,「ダンガンロンパ1・2 超高校級の人狼」誕生秘話
これまで紹介したように,ダンガンロンパという原作と,人狼系推理ゲームのコラボレーションによって生まれた本作だが,実際にプレイしてみると,その端々に感じられるのが,原作への愛情と,メカニクスへの深い理解だ。そんな超高校級の人狼が,いかにして世に出ることになったのか。今回の先行プレイに協力いただいた本作の開発者――アルジャーノンプロダクトの蒲 淳志氏と,開発協力のアークライト・橋本淳志氏に話を聞いてみた。
4Gamer:
さっそく遊ばせていただいたのですが,単に人狼にキャラクターを乗せただけではない,かなり本格的なゲームになっていて驚きました。開発のきっかけはなんだったのでしょうか。
蒲 淳志氏(以下,蒲氏):
アルジャーノンプロダクトは,主に「ダンガンロンパ」のグッズなどを企画・製作ている会社なのですが,自分がもともと人狼をよく遊んでいたこともあって,面白いコラボレーションになるのではないかと思ったんです。
4Gamer:
確かにイメージしやすいですね。しかし「ダンガンロンパ」はキャラクターの人気が高いシリーズですし,シチュエーションとしてもベースとなる人狼とはかなり違いがあります。プレイしてみると,確かにこれしかないという感じですが,今の形にまでこぎつけるのは,かなり大変だったのでは?
蒲氏:
ええ。弊社もカードゲーム開発のノウハウがあるわけではなかったので,そこは実績のあるアークライトさんにご協力をいただいて,なんとか発売までたどり着くことができました。ルールに関しても,橋本さんと幾度となくやりとりをして,改良を加えていったんですよ。
橋本淳志氏(以下,橋本氏):
気をつけたのは,いかにファンに満足いただける形で,「ダンガンロンパ」を人狼に落としこむかということです。またゲームとしての観点では,早期に死んでしまったプレイヤーをどうフォローするか,という点にこだわっています。
4Gamer:
そのためのアイテムカードなんですね。早く死んでしまったプレイヤーは傍観するだけになってしまうので,人狼系ゲームでは常につきまとう問題です。多くのタイトルがこの問題の解決を試みていますが,本作の解決方法はとてもシンプルで,面白いと感じました。
橋本氏:
ええ。それにアイテムカードがあれば,「シロ」であってもさまざまな行動をとることができます。なので,人狼よりも楽しめるのではないかと。
4Gamer:
もう一つの独自要素であるキャラカードも,原作の雰囲気を再現するという意味では欠かせないですね。個人的には,議論するときにキャラカードの名前で呼べばいいというのが面白いと感じました。とくに初対面の人とプレイするときに,とても助かります(笑)。
橋本氏:
ゲーム会などで不特定多数のプレイヤーと遊ぶときは,地味に便利ですよね。ゲームモードも複数用意しているので,集まったプレイヤーの熟練度に応じて,ルールを選んでいただければと。
蒲氏:
キャラクターの能力にも,原作の人間関係がかなり反映されるようになっています。「ダンガンロンパ」ファンのミナサンなら,きっと二ヤっとしてもらえると思います。
■(コラム)キャラクターの能力が開放される「えくすとりぃむモード」
アイテムカードの導入により,人狼にはなかった独自性が加えらている本作だが,実はより上級者向けの「えくすとりぃむモード」が存在する。先に解説した「のーまるモード」では,単なる“なりきりプレイ”にのみ使われていたキャラカードが,この「えくすとりぃむモード」では,大きな意味を持つようになるのだ。
例えば,“超高校級の幸運”である「苗木 誠」のキャラカードを見てみよう。彼のカードには,「あなたは3日目の朝時間まで,自身へのクロの襲撃を無効にすることができる。」という記述がなされている。このように,各キャラクターには原作の設定に準じたさまざまな特殊能力が設定されおり,「えくすとりぃむモード」では,ロールとアイテムカードによる効果に加え,このキャラカードによる特殊能力が使用できる。
「苗木 誠」のキャラカード。彼は主人公であるため,少なくとも3日目までは「クロ」に殺されることはない。ただし,学級裁判で“おしおき”された場合はこの限りではない 「腐川冬子」の能力は,自身が死亡したとき,手持ちのアイテムカードを「十神白夜」に託すというもの。原作での関係性が生かされているのが面白い
上級者向けの「えくすとりぃむモード」のほか,よりルールを簡略化した初心者向けの「いーじぃモード」もある。登場するロールが少なくなるほか,アイテムカードも導入されない
4Gamer:
人狼経験者向けに,プレイのコツなどがあれば教えていただけますか。
橋本氏:
そうですね……「クロ」になったときは敵である「アルターエゴ」を見つけ出すよりも,味方になってくれる「裏切者」を探すのがいいと思います。そのためにも,黙ってステルスしているよりも,積極的に会話に参加した方が良い結果に結びつきやすいのではないかと。
4Gamer:
本作の場合,「クロ」は常に1人なので心細いですものね。ちなみに希望サイドと絶望サイドで,どっちが有利とかあるのでしょうか。
橋本氏:
かなり調整しましたので,「のーまるモード」ならほぼ五分と考えてもらっていいと思います。「えくすとり〜むモード」になると,キャラの能力がある分,やや希望サイドが有利……かもしれません。
4Gamer:
「超高校級の絶望」が,またいい味を出していますね。
蒲氏:
人狼だと,村人でもとりあえず吊っておけということができますが,本作の場合「超高校級の絶望」がいるので,逆に危険です。「俺はシロだから吊っていいよ」という人がいたら,疑ってかかるべきですね。
4Gamer:
最後に原作ファンに向けたメッセージをお願いします。
蒲氏:
本作は人狼系の推理ゲームであると同時に,キャラへのなりきりを楽しむゲームでもあります。一粒で二度美味しいゲームになったと思いますので,ぜひ楽しみにしていてください。とくに「ダンガンロンパ」ファンのミナサンであれば,必ず楽しめると思いますので。
橋本氏:
なりきり要素の強い推理ゲームだと思って遊んでいただくのが,一番楽しめると思います。カードの下にセリフが書いてあるので,決めのシーンでは,それを高らかに読みあげながらプレイしていただけると,嬉しいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
そして,インタビューでも語られたように,本作はなりきりプレイをすることで,何倍にも面白くなるゲームでもある。“なりきり”というと身構えてしまう人が少なくないかもしれないが,カードに書かれた台詞を読み上げるだけで,かなりそれっぽいプレイができてしまう。原作ファンであるなら,その楽しさは計り知れないはずだ。
ちなみに今回のテストプレイでは,何人かの女性プレイヤーにも参加してもらったのだが,どちらかという女性プレイヤーのほうがノリノリでプレイしている感があった。原作のファン層の幅広さがうかがえるエピソードと言えるだろう。
原作の要素をしっかりと反映しながら,それでいて濃密なプレイを楽しめる,キャラクターゲームのお手本と言える本作。人狼ファンにも「ダンガンロンパ」ファンにも,プレイできる環境さえあれば,手放しでオススメできるタイトルだ。
「ダンガンロンパ1・2 超高校級の人狼」公式サイト
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