インタビュー
「ロードス島戦記オンライン」は2016年初頭に新たな動き。運営スタッフにテストの遅れやこれからについて聞いてみた
そんな中,2015年6月に韓国で正式サービスがスタートし,“肝心の日本でのサービスはどうなったのか”と思っていた読者も多いのではないだろうか。そこで4Gamerでは,加藤氏と運営プロデューサーの合田真二氏にインタビューしてみた。
日本でのテストが遅れた理由とは?
4Gamer:
よろしくお願いします。加藤さんは改めてになりますが,それぞれロードス島戦記オンラインで何を担当されているのかを教えてください。
ロードス島戦記オンラインにおける,世界観の監修などを行うブランドマネージャーの役割をしています。できあがったコンテンツが原作の世界観を逸脱していないかを確認するというものですね。また,共同で開発を行っているL&K Logic Korea側に,ロードス島戦記の世界ならこんなことができるという提案も行っています。
4Gamer:
加藤さんが監修全般を行っているんですか?
加藤氏:
いえ,もちろんゲーム内容に関しては原作者である水野 良先生にも監修していただいていますよ。
4Gamer:
分かりました。ですが,世界観の監修というと責任重大ですね。
合田真二氏(以下,合田氏):
加藤はマニアですから(笑)。水野先生にも「加藤さんなら大丈夫」と太鼓判を押されているくらいですし。新装版「ロードス島戦記」7巻のあとがきに名前も出ているんですよ。
4Gamer:
あらためて,合田さんはどのような形で関わっているのでしょうか。
合田氏:
私はMMORPGのプロデューサーとしての経験を活かし,運営に必要な環境を整えるなどの業務をしています。
4Gamer:
では,ロードス島戦記オンラインは,どのような作品なのでしょうか。
加藤氏:
プレイヤーさんは7番目の主人公として,ロードス島戦記の物語が体験できます。マニアックなネタや,原作における歴史を踏まえて,この時代,この場所なら,もしかしたらこんなキャラクターが活躍していたかも……というif的な部分も原作サイドと相談して取り入れていますので,見つけていただけると嬉しいですね。
4Gamer:
物語の裏側が見られるというのは面白いですね。
加藤氏:
また,NPCたちにもストーリーがあって,ロードス島という場所で生きているんだと感じられるものになっています。
ゲーム的には,いわゆる見下ろし視点の2D型MMORPGです。近年はアクション性が強いMMORPGも増えていますが,ロードス島戦記オンラインはアクションが苦手な方にも気軽に遊んでいただける作りになっています。というのも,ロードス島戦記のファンというと,年齢層がどうしても高くなりますので。
4Gamer:
新装版が出たとはいえ,多くは1988年から始まったオリジナル版からのファンでしょうから。
合田氏:
ええ,ですから,操作関連もかなり整理されており,やろうと思えばマウスを持った右手だけでもプレイできますよ。具体的には,特定条件を満たすと自動発動する「リアクションスキル」が存在しており,これをカードゲームのデッキのように予めセッティングしておけば,複雑な操作をしなくても派手な戦闘が楽しめるようになっています。
4Gamer:
片手が空くので,チャットもやりやすいというのは,以前お聞きしましたね。
合田氏:
そうです。また,モンスターを倒すと手に入るアイテムには,ランダムでさまざまな能力が付与されています。いわゆるハックアンドスラッシュ系になっていますので,アイテムを収集して強い冒険者を目指すのも大きな楽しみとなります。
加藤氏:
クラス名やステータスなどの用語も原作に準拠したものになっています。例えば,キャラクターの体力や生命力を表す値は「HP」という表現がお馴染みですが,本作では「ロードス島戦記コンパニオン(※)」で使われている「LP」としています。
※ロードス島戦記は,ゲームシステムに「Dungeons&Dragons」を用いながら,世界観はゲームマスターである水野 良氏の独自のものを使って行われたテーブルトークRPGセッションが元となっている。「ロードス島戦記コンパニオン」は,同作専用のゲームシステムとして後に開発されたものであり,「Dungeons&Dragons」とはまったく異なるルールが採用されている。
4Gamer:
それは,TRPGからのファンにはたまりませんね(笑)。
加藤氏:
また,小説やほかのメディアで使われていた用語も取り入れています。ただ,あとで出典によって用語が変わることもあるのですが,ここはロードスやソード・ワールドなどではお馴染みの「後付け優先の法則」に則って整理しています(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。ところで,発表からこれまでの2年間になにがあったのでしょうか。αテストを2015年中に行うとのことでしたが。
経緯を順番にお話ししますと,2013年11月に制作発表を行い,翌年4月の「ニコニコ超会議3」で2014年夏にαテストを行う予定であると発表しました(※その後,加藤氏より「αテストは2015年中に実施したいと思っています!」との知らせを受けた。関連記事)。しかし,この時点でのクオリティではお客様に満足いただけないだろうと判断し,以降はコンテンツのボリュームアップやブラッシュアップなど,クオリティの向上を図ってきたんです。
4Gamer:
一方,韓国ではすでに正式サービスがスタートしています。
加藤氏:
日本はロードス島戦記の生まれた国ですから,日本のファンに向けてのクオリティアップは,とくに重視させていただいています。その結果,時間がかかってしまったんです。
4Gamer:
つまり,(ロゴやイラストの変更などの)ローカライズを含めて,原作ファンが納得できるものにするため,ということですか。
加藤氏:
おっしゃるとおりです。
4Gamer:
なるほど。では,韓国のプレイヤーからの評価はどうなのでしょうか。
加藤氏:
原作の世界観がよく再現されていると受け止められたようです。また,BGMにも高い評価をいただけました。
4Gamer:
世界観の再現はファンにとって嬉しいところだと思います。一方で,ロードス島戦記を知らない人がプレイしても楽しめるのでしょうか。
加藤氏:
もちろんです。また,ロードス島戦記を知らない人には,ゲームをきっかけに,小説をはじめとするさまざまなロードス島戦記に触れていただきたいですね。原作をご存じの方が,初心者の方にロードス島戦記の魅力を教えるツールとして使ってもらえると嬉しいです。初心者を見つけたら,いろいろと優しく教えてあげてください。
合田氏:
あと僕としては,まだロードス島戦記を知らないというのは,幸せなのではと思うんですよ。僕らはもう作品を知っていますので,記憶を失いでもしない限り,ロードス島戦記に初めて触れたときの感動は味わえません。しかし,これから始めようという方は,新鮮な驚きをもってこの作品に触れられるわけですから。
4Gamer:
新しいメディアで好きな作品が登場するとその度に思うことではありますね。
加藤氏:
本当に,原作をまだ知らない方が羨ましいです(笑)。
4Gamer:
思い入れがすごいです(笑)。歴史が長いコンテンツですから,加藤さんのように相当ディープなファンも多いんでしょうね。では,そんなロードス島戦記をゲーム化するにあたり,プレッシャーはありませんでしたか。
加藤氏:
もちろん,相当なプレッシャーがあります。ロードス島戦記と言えば,日本のファンタジー小説の源流に位置する作品のひとつで,あとに続く作品に大きな影響を与えている作品ですから。例えば,日本におけるエルフと言えば耳が長く華奢なイメージですが,これはロードス島戦記のヒロイン「ディードリット」のビジュアルによるものです。
4Gamer:
それ以前は,耳が若干尖っている程度の表現でした。
加藤氏:
そうです。なので,ロードス島戦記を通して,現在のファンタジー作品を体験しているという人は多くいると思いますよ。
サービス開始時点で「灰色の魔女」をまるっとプレイ可能
4Gamer:
ところで,本作のサービス形態は,どういったものを予定しているのでしょうか。
基本プレイ無料+アイテム課金制を予定しています。具体的にどういったものが課金対象となるかはまだお話しできないのですが,ロードス島戦記オンラインの世界を楽しんでいく上で,便利になるものがメインですね。いわゆるPay-to-Win(お金を払わないとゲームで勝てない)にはしません。
4Gamer:
もうひとつ気になるのは,サービス当初で原作のどこまでの物語が楽しめるのかということです。
加藤氏:
本作では,「灰色の魔女」が始まる少し前からスタートし,同エピソードの終わりまで楽しめます。
4Gamer:
というと,小説1巻の終わりまでということですか。それだけでも相当な分量ですね……原作が日本語とは言え,ローカライズ作業が大変そうです。
加藤氏:
はい,大変です(苦笑)。
4Gamer:
原作ファンとしては,その後の物語も見てみたいと思うのですが,それはアップデートで展開していくのでしょうか。
加藤氏:
はい。今後追加していきたいと考えています。ただ,灰色の魔女のあとに「炎の魔神」へと続きますが,実は両エピソードの間には2年ほどの語られざる空白期間があります。あくまでこれは私自身の希望なのですが,こうした部分に対してもアプローチしていければと思いますね。
4Gamer:
たしかに,何があったのか気になりますね。エンドコンテンツ的なものは用意されているのでしょうか。
合田氏:
ええ,もちろんご用意しています。どのような内容かは,今後の発表をお待ちください。
「ロードス島戦記」をファンが楽しむためのツール
4Gamer:
さて,今回はゲーム画面も見せてもらえるそうですが。
加藤氏:
はい。まだローカライズの途中のものなので,最終版ではないのですが。まずサービス開始時点では,剣で戦う「エスカイア」,回復を得意とする神官「オラクル」,魔法を操る「マジックユーザー」でプレイできます。
最初にエスカイアでイベントの様子を見ていただきますが,こうしたイベントはインスタンスの一人用フィールドで行われます。もちろん見ているだけではなく,戦闘に参加するなどして物語は進みます。
4Gamer:
いきなりここですか!(※とある2人の王の一騎打ち)
加藤氏:
ええ,あの戦いもイベント化されています。このあたりのセリフは「ロードス島伝説」(※)最終巻に出てくるものになっているんですよ。この戦いの最後と言えば「矢」ですが,もちろんゲーム内でも同様の出来事が起こります。しかし,“誰が矢を放ったのか”については,このゲームでも結論を出していません。
※ロードス島戦記の前日談に相当する物語。テーブルトークRPGのリプレイや小説といった形で展開した。
4Gamer:
そういえば結局,分からないままでしたね。
加藤氏:
これは永遠の謎でいいのかなとも思いますね。次は,オラクルで灰色の魔女に初めて出会うイベントです。フィアンナ王女の救出に乗り込んだパーティが突如出現した魔女に捕らえられて,彼女のアジトから脱出するという流れですね。
ちなみにオラクルは鈍器で攻撃し,スキルで回復するというキャラクターです。ここでは攻撃系のリアクションスキルをセットしてありますので,条件さえ揃えば強烈な連打攻撃を放ちます。
4Gamer:
メイスで敵をボコボコにするプリースト……神官ってトゲ付きのメイスを持っていたりして,結構エグイですよね(笑)。この連打攻撃は,リアクションスキルというわけですね。
加藤氏:
そうです。リアクションスキルは,攻撃系から回復系までいろいろな種類があり,発動条件も,確率や相手のステータス状態など,さまざまです。もちろん,プレイヤーさん自身の操作で発動できるアクティブスキルや,取得すれば常時効果を発揮するパッシブスキルも存在します。ちなみに,オラクルはマイリー神のプリーストなのでスキルの中に「バトルソング」(※)が含まれていますよ。
※戦の神マイリーに仕えるプリーストの神聖魔法。RPGで言うバフのようなもので,歌を聞いた者の攻撃力を増強すると共に,恐怖など,精神に影響を与える攻撃を無効化できる
4Gamer:
やはり戦闘と言えばマイリーですよね。バトルソングが頼もしすぎて。
加藤氏:
最後に,マジックユーザーでチュートリアル部分を紹介します。プレイヤーは冒険者ギルドの一員として冒険に身を投じていくことになりますが,ギルド加入のきっかけとなるのがチュートリアルです。ここでは基本操作に関して,順を追って学ぶことができます。
合田氏:
コミュニケーション関連も充実しています。通常のチャットに加え,特定の話題について語るようなチャットルームを自由に開設できます。ロードス島戦記について語るサロンのような使い方をして頂ければ嬉しいですね。
4Gamer:
とすると,「あの矢を放ったのは誰だ!」だったり,「ロードス島で一番強いキャラはこれ」だったりなチャットルームができるわけですね……?
合田氏:
みなさんでいろいろ語っていただければ(笑)。
4Gamer:
チャットをしやすくしたというのは,この“遊びながら語りあう”みたいな感じを想定していそうですね。
合田氏:
おっしゃるとおりです。個人的にも本作は“ロードス島戦記を楽しむためのゲーム”であると認識していますので。
4Gamer:
ロードス島戦記好きが集まると,かなり濃い話が交わされそうです。では,今後のスケジュールを教えてもらえますか?
合田氏:
2016年初頭に,今後の展開を告知させていただく場を設けられればと思っています。
加藤氏:
日本のプレイヤーさんには2年間お待たせしてしまいましたが,今後は素早い展開を考えています。もちろん,先のαテスト優先抽選権にご登録していただいた方への対応も検討中です。
4Gamer:
最後に読者へのメッセージをお願いします。
加藤氏:
この2年間,より良いものをお届けできるように頑張ってきました。ロードス島戦記のさまざまな要素を再現しましたし,原作ファンが楽しめる部分もたくさんご用意しましたので,ロードス島戦記好きの方にどこまで見つけていただけるかがともて楽しみです。原作小説や派生作品などを相補的に楽しんでいただけるツールのひとつとして,活用してもらえればと思います。
合田氏:
中学生のころに旧小説版の1巻を手に取り,大学生のころにテーブルトークRPGをやっていたときは,まさか自分がロードス島戦記に関わることになるとは思ってもいませんでした。僕のような世代の人間はもちろん,原作を知らない世代の方にも楽しんでいただけるゲームとなっていますので,ぜひ期待していただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ロードス島戦記オンライン」公式サイト
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