インタビュー
野犬出没注意! 4Gamer編集部に「野犬のロデム」のラショウさんがやって来た
またラショウ氏は「ボコスカウォーズ」の作者でもあり,オリジナルのX1版を始め,MSXやファミコンなど,さまざまな機種に移植されたこの作品を遊んだことがある人も多いのではないだろうか。
ピグミースタジオから2014年7月2日に発売予定のPlayStation Mobile向けソフト「野犬のロデム」(PS Vita / Android)は,上述の「野犬ロデム」に多数の新要素を詰め込んで現代に蘇らせた,野良犬生活シミュレーションだ。
ラショウ氏のこれまでの活動における集大成とも呼べる作品に仕上がっている本作を携えて,ピグミースタジオの小清水 史氏と共にラショウ氏が4Gamer編集部を訪れてくれたので,さっそく話を聞かせてもらった。「野犬のロデム」のゲーム内容については,下に掲載したムービーを見ればよく分かる……ような,やっぱりよく分からないような……。
「野犬のロデム」公式サイト
イタチョコのゲームは“普通”に対する懐疑が出発点
4Gamer:
「野犬のロデム」は,ラショウさんによるコンシューマゲームとしては「ボコスカウォーズ」以来,なんと28年ぶりということになりますが,そもそもラショウさんがゲーム作りを始めたきっかけは何だったんでしょう。
ラショウ氏:
「ボコスカウォーズ」は最初にX1で発売したのですが,もともとは私の兄がPC-8001や,TK-80というワンボードマイコンを持っていて,それを使ってプログラムを打ち込んでいるうちに自分でゲームを作る楽しみに目覚めたという感じです。
私自身,ゲームが好きで,よくゲームセンターにも通っていましたが,それだけではだんだん物足りなく感じ始めて,自分の中に溜まってきた「ここをこうすれば,もっと面白くなるのに」という思いを形として表したかったというのがありますね。
4Gamer:
X1といえば,4Gamerには「Oh!X」の編集長だったauekiという人がいますが,それはともかく,1980年代には自分達でプログラミングをするという文化がありましたよね。
ラショウ氏:
そうですね。まだゲームを“やる人”と“作る人”の境界がぼんやりしていて,誰でもプログラムを作ったり,あるいはそれを改造して遊んだりといったことがありました。私はそこからさらに,何かに捕らわれないものを作りたいという野望に取りつかれて,その結果が「ボコスカウォーズ」という形になったんです。
4Gamer:
「ボコスカウォーズ」のアイデアはどこから生まれたのでしょうか。
ラショウ氏:
それまでのゲームでは“たくさん動いている側”が敵でしたが,それを逆転させてみたらどうだろうという思いつきで作られたのが「ボコスカウォーズ」です。たくさんのキャラクターを自分で動かしてみたら,どうなるんだろうと。
4Gamer:
確かに,当時としてはたくさんのキャラクターを操作するゲームは珍しかったですね。
ラショウ氏:
ええ。それに自分で書いたプログラムが画面の中で動き出したら,やっぱり興奮すると思いませんか? 私は今でもその感動を持ったまま,ゲームを作っているのかなと思います。「野犬のロデム」には,自分が操作しなくてもキャラクターが勝手に動き出す“セミオートモード”を入れています。それはもちろん初心者のためのものでもありますが,私自身が楽しみたいからでもあるんです。
4Gamer:
その後はイタチョコシステムを立ち上げて,Macintoshユーザーなら誰でも知っているような数々の作品を発表されました。
ラショウ氏:
「ボコスカウォーズ」を作ったあと,結構やりきったなと思って,その後は舞台や演劇といったステージ活動のほうに興味が移ってしまったんですが,Macintoshに出会ったときに「これは思想があるパソコンだな」と感じたんです。そして,このキャンバスを使って何かを作ってみたいと思うようになったことが,私をもう一度ゲーム作りに連れ戻してくれました。
Macintoshでは,ハイパーカードやマクロメディア(現アドビシステムズ)の「Director」など,ゲームを作りやすい環境が整っていましたよね。
ラショウ氏:
それもあるんですが,私としては「シムアント」や「シムアース」といったシムシリーズをどうしても遊びたくて。
当時は高嶺の花だったMacintoshをどうにか手に入れて,これらを遊んでみたらやっぱり面白くて,自分でもまたゲームを作りたいという気持ちが湧いてきたんだと思います。そのときに,多くのシムシリーズを出してくれたMacintoshでゲームを作るのが,正しい恩返しになるんじゃないかと考えたんです。
それで,当時イタチョコが好きだったので,それに素直にシステムという単語をくっつけて,イタチョコシステムを立ち上げたわけです。
4Gamer:
ああ,それでイタチョコシステムという名前になったんですね。これで長年の謎が1つ解けました(笑)。
ただ,イタチョコシステムで一連のMacintosh用ゲームを発表されてからは,またしばらくゲーム作りからは離れてしまいましたね。
ラショウ氏:
そうなんです。また私の中で,一通りやりきったと感じてしまったので。ただ,私にとっては,そのときに表現したいもののキャンバスがたまたまゲームだったり,ステージだったりするだけで,ずっと何かの創作活動を続けているという意味では,とくに違った活動をしているという意識はないんです。
4Gamer:
ここ数年は,ずっとステージでの活動を中心に行ってきたわけですが,今回の「野犬のロデム」を開発することになったきっかけは何だったんでしょうか。
ピグミースタジオさんのほうからコンタクトをいただいて,いろいろとお話をうかがっているうちに,この会社は何か“変な方向”に行きたいんだなと感じて。
ほかのところから声をかけられていたら,たぶん乗らなかったと思いますが,ピグミースタジオさんとなら安心して“変なこと”をできるんじゃないかと思ってしまって(笑)。
4Gamer:
変なこと,ですか(笑)。
ラショウ氏:
イタチョコシステムのゲームって,いわゆる“普通のゲームシステム”に対する懐疑が出発点になっているんです。いつも目にするようなゲームシステムも,本当にそれでいいのか。一度それを壊してみせて,そのことを改めて皆さんにも考えてもらいたいというのがあります。
4Gamer:
ラショウさんご自身では,「野犬のロデム」の仕上がりについてどのように感じていますか。
ラショウ氏:
かなりやりきったという思いと,まだまだやれるという両方の思いがあります。ただ,それはまた次回以降の野望として取っておいて,基本的に“満足”はしないですね。そもそも,オリジナルである「野犬ロデム」はフロッピーディスク1枚で出したんですが,そこに入れたかったものを今回は盛りに盛り込んで,PS Vitaでもこれ以上は入らないほどのボリュームになってしまいました。
4Gamer:
もしかして,すでに次回作も動き出しているんですか?
ラショウ氏:
次はどのプラットフォームやどのタイトルで,というのはまだ言えないんですが,次回作はすでに動き始めています。
4Gamer:
なんと,それは楽しみですね!
では,最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
ラショウ氏:
まず,これまでゲームを遊んだことがない人にやってもらいたいというのがあります。さらに,今のゲームに失望してしまった人にも,このゲームに触れることで,まだゲームに残されている道やゲームがするべきことを感じ取っていただいて,できればあなたもゲームを作ってください。このゲームから感じるものが何かは分からないですけど(笑)。
4Gamer:
ちょっと放り出したようなところもありますからね(笑)。
今後のご活躍と,ピグミースタジオさんとの次回作を楽しみにしています。
「野犬のロデム」公式サイト
- 関連タイトル:
野犬のロデム(PlayStation Mobile版)
- 関連タイトル:
野犬のロデム
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