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[E3 2015]「Project Morpheus」の新機能判明。「The PlayRoom VR」で実現されたまったく異なる2視点からのゲーム映像の秘密とは
その機能を活用したのが「The PlayRoom VR」というVRデモだ。
なお,The PlayRoom VRは,その名のとおり,「The PlayRoom」のVR版である。
The PlayRoomは,PS4向けに開発されたPlayStation Camera(以下,PS Camera)を活用した拡張現実(Augmented Reality,以下AR)型アプリケーションで,PS Cameraが捉えた自分の部屋の中に,愛らしい小人ロボットを出現させて一緒に戯れたり,その様子をビデオストリーム配信して実況したりできる「これぞまさにコンピュータエンターテインメント」といったものであった。
今年のGame Developers Conference 2015では,その大勢の小人ロボット達が思い思いに暮らす街並みを,Morpheusを装着した被験者が,自分本位の視位置から観察できるVR体験「Bedroom Robots」が公開されたわけだが,このBedroom Robotsの世界観を延長して,VRゲーム化したものが(関連記事),今回のThe PlayRoom VRということになる。
The PlayRoom VRは「非対称型ゲームメカニクス」を採用した対戦型ゲーム
非対称型ゲームメカニクスとは,敵対する陣営それぞれに,異なるゲームルール(ゲーム性,ゲームメカニクス)が適用されているタイプのゲームで,本作では,Morpheusを装着して「怪獣」となる一人のプレイヤーと,この怪獣から逃げながら反撃する4人の小人ロボット陣営に分かれて対戦することになる。
怪獣側となったプレイヤーがやるべき操作は,頭部を動かすことだけ。
本作の最初のシーンでは,怪獣がやるべきことは,小人ロボット達の街の破壊だ。とはいっても,移動はオートなので,頭を左右,あるいは前後に動かして,建造物やら看板やらヘリコプターやらの飛来物に頭突きをしていくだけ。実にシンプルだ。破壊されたさまざまなオブジェクトの破片は,これまた逃げ惑う小人ロボット達を襲うことになる。
小人ロボット側となった4人のプレイヤー達は,ゲームコントローラ(DUALSHOCK4)を操作しつつ,各自の操作対象となる小人ロボットを動かして,空から飛来する建物の破片群などを回避しなければならない。
ここで特記しておかなければならないのは,怪獣側プレイヤーはMorpheusを装着しているので,怪獣側の専用視界を与えられているということだ。一方で,4人の小人ロボット側のプレイヤーは,みんなでテレビ画面を見ながら怪獣からの攻撃(?)を回避するというゲームプレイになる。怪獣側プレイヤーと小人ロボット陣営はそれぞれ,互いの視界を見られない状態でのゲームプレイとなるのである。
ここでこんな疑問を持った人もいるかもしれない。
「あれ? ということは,このゲームはPS4を2台使ったゲームなの?」
1台のPS4で怪獣側のゲームランタイムを動かして,そのVR映像をMorpheusに出力し,もう1台のPS4で小人ロボット陣営のゲームランタイムを動かしてテレビに出力しているのか……と考えるのも無理はない。
しかし,このThe PlayRoom VRは,まぎれもなく,1台のPS4だけで実現されている。そう,The PlayRoom VRでは,1台のPS4が,二つの陣営のゲーム画面を別々に描画しているのである。
「でも,PS4は映像出力端子(HDMI端子)を一つしか持っていないはず」
「MorpheusにはPU(Processor Unit)と呼ばれるインタフェースボックスがあるが,あれはテレビに接続できるものの,Morpheusに表示される画面をテレビに複製表示する機能のはず」
というわけで,普通に考えると1台のPS4でThe PlayRoom VRのような2画面を実現するのはどう考えても無理そうなのである。
MorpheusのPUに隠された「驚くべき機能」とは?
そこで,Morpheus(のPU)に隠された機能が活きてくるのである。
それでは,順序よく種明かしをするとしよう。
The PlayRoom VRでは,実際にインチキなしに,PS4のGPUが,怪獣側のMorpheus用映像と小人側のテレビ用映像の両方をリアルタイムに描画している。Morpheus用は1080p/60fpsのリプロジェクションによる120fpsの映像となっている。なお,テレビ用映像の解像度とフレームレートは不明だ。
怪獣側のMorpheus用映像は,PS4のHDMI端子から出力されてMorpheusのPUへと伝送され,これがMorpheusのHMD部に表示される。
それでは小人側のテレビ用映像はどういう仕組みで伝送されているのかというと,テレビ用映像はレンダリングされたあと,いったんPS4のGPU内にあるリアルタイムH.264エンコーダを通してH.264で数Mbpsの映像ストリームに変換される。これをUSBを通してMorpheusのPUに伝送し,MorpheusのPUがH.264映像ストリームをデコードして,PU側のHDMI出力端子からテレビに出力する……こんな流れになっているのだ。
つまり,MorpheusのPUにはH.264デコード機能が搭載されており,これをPUのHDMI出力端子からテレビに出力することができるのだ。裏を返すと,MorpheusのPUのHDMI出力端子は,Morpheus表示用映像を補正複製出力する(ソーシャル出力する)ためだけではなく,まったく異なる映像を出力することもできるのだ。
MorpheusのHMD部には,頭部の動きをトラッキングするための加速度センサーやジャイロセンサーが搭載されているが,そうしたHMD部側のセンサー類の情報はUSBを通してPS4側に伝送されている。USBは(いまさら改めていうまでもなく)双方向バスラインなので「PU→PS4」だけの活用ではなく,「PS4→PU」のデータ伝送も行われている。そして,この「PS4→PU」のデータ伝送において,H.264の映像伝送が実現されているということなのだ。
MorpheusのPUの隠し機能が広げるマルチプレイの可能性
SCE関係者によれば「PUのH.264映像デコード機能は最終仕様ではない」とのことだが,これは,1人プレイに収まりがちなVRゲームに新たな可能性や広がりを見出せる機能として高い価値があるように思えるので最終仕様版にも搭載してほしいところだ。
今回のThe PlayRoom VRのように,非対称型ゲームメカニクスを実現するための手段としても面白いが,シンプルに,これまで画面分割をしてプレイさせていたローカル対戦プレイに活用しても十分に価値は高い。
例えば,レースゲームや一人称シューティング/三人称シューティングのローカル対戦プレイにおいて,プレイヤー1とプレイヤー2は同じゲーム空間で戦うことになるが,プレイヤー1はMorpheusでプレイし,プレイヤー2はテレビでプレイする……といったものだ。表示デバイスの性能差異で多少のゲームプレイにおける有利不利は生じるが,お互いのゲーム画面を見ずに,それぞれで自分だけの画面を見ながら対戦プレイができることには大きな価値がある。
あるいは,もっとシンプルに,シングルプレイのゲームだが,実際にプレイしているプレイヤー視界の映像をテレビに複製するだけでなく,レースゲームであればコースを走行している全車の順位・タイム表だったり,コースマップの表示に切り換えたりできるようにすれば,自分のプレイ順を待つだけの人にも観戦の楽しみの幅が広がる。2D画像や文字ベースの情報表示であれば,実際にMorpheusでゲームをプレイしているプレイヤー側の映像描画の負荷を増やさないですむ。
まぁ,一番近いイメージを挙げるとすれば,任天堂のWii Uのゲームパッド側の画面表示だろうか。ただ,Morpheusの場合は,メインとなるプレイヤーの視界はHMDで覆われているので「セカンドスクリーン」としての活用とは,若干主旨の異なるものになるのだろうが。
というわけで,Morpheusには,ユニークな機能が隠されていたことが判明した。まだほかになにか隠された機能がないか,今後も注意深く見守っていくことにしたい。
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