連載
【西川善司】PS VRとPS4 Proを購入するも,プロセッサーユニットの思わぬ問題で頭を悩ませる
西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト
(善)後不覚 |
西川善司,PS VRを購入する
ただし,アメリカのAmazonで
ボクは残念ながら,発売日にPS VRを購入することはできませんでした。どうしても欲しいPS VRではありますが,だからといって,標準価格の2倍近い転売価格で購入する気はありません。
そこで,11月初旬にAmazon.comのPS VR販売ページをチェックしてみると,そこには確かに「In Stock」(※在庫あり)の表示が。実際にここで購入した友人達もいたので,自分も注文してみることにしたわけです。
結局,ボクは399.99ドルのPS VRと,29.99ドルの「PlayStation Move」を一緒に注文。関税の3654円と送料の2611円を含めて,総額は日本円で5万3028円となりました。多少割高にはなりましたが,転売業者から買うよりはお得だったので,よしとしましょう。
ちなみに配達は,日本での「お急ぎ便」に当たる「Expedited Shipping」ではなく,通常配送の「Standard Shipping」を選択したところ,注文からおよそ10日程度で届きました。「PS VRが欲しいのに,どこにも売っていない……」という人は,Amazon.comもチェックしてみてはどうでしょうか。日本国内での製品保証はなく,アフターサービスも受けられませんが。
西川善司,PS4 Proも購入する
TV CMでも,あまりPS4 Proを積極的にアピールしていないので,一般の人から見るとあまり「PS4 Proの優位性」が認知されていないのかもしれません。
余談ですが,発売日から2日後の11月12日に,渋谷駅近くのヤマダ電機を訪れる機会がありました。店員に確認してみたところ,ここにもPS4 Proの店頭在庫があるようでした。
店員との話を終えて,周囲をふと見ると,中高生くらいの男の子とその親らしい人たちが,ゲーム機の見本が展示されているガラスケースの前で話しあっていました。どうやらPS4を購入しようと相談しているようです。それとなく会話を聞いていると,「高い方(PS4 Pro)にするか。安い方(薄型PS4ことCUH-2000シリーズ)にすれば,その差額分,ソフトを一緒に買ってやる」と親御さんに言われたようです。悩んだあげく,少年は後者を選択していました。この親御さん,なかなか巧みな提案をしたものです(笑)。
その数日後,地元のヤマダ電機では,PS4 Pro購入者向けに,3タイトルのゲームソフトの中から,1タイトルをプレゼントするキャンペーンを展開していました。こうしたキャンペーンを実施している店舗で購入するのもいいかもしれません。
PS VRのプロセッサーユニットに表示遅延なし
しかし,ちょっとやっかいな問題が
PS VRには,PS4本体とPS VRの間に入って,映像や頭部の動きをやりとりしたり,VR映像を普通のテレビやディスプレイに出力したりする「プロセッサーユニット」が付属しています。プロセッサーユニットは,各機器をつなぐハブのような役割を担うので,ケーブル類の接続は結構複雑です。ケーブルをうまくレイアウトする必要があります。
もし,“PlayStation 4 Pro II”のような次世代モデルが出るようなことがあれば,プロセッサーユニット相当の機能を統合してほしいものです(笑)。
どうやらPS VRのプロセッサーユニットがネックとなっているようです。
プロセッサーユニットは,PS VRの画面に表示される映像を,通常のテレビに表示して見られるように出力したり,PS4が生成した,VR映像とは別視点の映像を表示したりする機能を持ちます。
そのため,PS VRを利用するには,PS4(またはPS4 Pro)本体のHDMI出力端子とプロセッサーユニットのHDMI入力端子をHDMIケーブルでつなぐ必要があるだけでなく,プロセッサーユニットのHDMI出力端子とテレビまたはディスプレイのHDMI入力端子も,HDMIケーブルでつなぐ必要があるのです。
PS VRを使用していない(≒VR HMDが動作していない)場合,プロセッサーユニットに入力された映像は,テレビにパススルー出力されます。つまり,PS4とプロセッサーユニット,テレビをいちいちつなぎ替えることなく,PS4のゲームをプレイできるわけです。
話は少し逸れますが,この問題を確認する前に,ボクは「プロセッサーユニットのパススルー出力に遅延があったら困るな」と考えて,表示遅延の有無を検証していました。
手順はディスプレイの表示遅延評価と似たような感じです。具体的にはまず,PS4 ProのHDMI出力をHDMI分配器につないだうえで,分配した出力の一方を東芝のテレビ「REGZA 26ZP2」に,もう一方をプロセッサーユニットのパススルー出力経由で,もう1台のREGZA 26ZP2につなぎます。
表示する素材は,PC上で表示遅延計測ソフト「LCD Delay Checker」を動作させて,その様子を1080pで60fpsのMP4動画ファイルとして保存したものです。PS4 ProではLCD Delay Checkerが動作しないので,その動画をPS4 Pro上で再生することにしたわけですね。そしてその模様を,パナソニック製デジタルカメラ「DC-TZ70」から240fps撮影して,遅延の有無をチェックすることになります。
以下に高速度撮影した動画を掲載しておきますが,結論から言えば,パススルー出力を経由したことによる表示遅延は,まったくありませんでした。
「これならば,PS4 Proと4Kテレビをプロセッサーユニットに接続しっぱなしでも問題ない」と安心していた矢先だっただけに,今回の問題にはとても驚いた次第です。
HDRパススルー不可にどう対処すべきか
ネットに何か情報がないか,と当たってみたところ,PlayStation公式Blogに情報がありました。
Q&A形式でPS VRの情報をまとめたページに,「プロセッサーユニットを繋いだままで,4KまたはHDRの映像をPS4からTVに出力できますか?」という質問があり,それに対して明確に「HDR信号には1080p,2160pどちらにも対応しておりません。もしPS4のHDR映像コンテンツを,HDR対応TVで楽しむ場合,PS4とTVモニターを直接接続する必要があります」(原文ママ)とあったのです。
うーむ。これは意外と大きな問題,というか制限かもしれません。2016年9月に配信されたシステムアップデートで,すべてのPS4は,HDR出力に対応しました。つまり,PS VRとHDR対応ディスプレイデバイスを持っている人が,PS VRとゲームのHDR出力を楽しみたいと思った場合,いちいちHDMIケーブルをつなぎ換えなければならないからです。
もともとソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下,SIE)は,「すべてのPS4でHDR出力対応」をアピールしていましたが,PS VRを接続すると,HDR出力が無効になってしまいます。これは残念と言うほかありません。
問題となったプロセッサーユニットの挙動は,公式Blogの記述を見る限りは仕様ですから,ファームウェアのアップデートで改善されるといった可能性は低いと思います。
「PS VRを使うときだけ,接続し直せばいいだけでしょ」と言う人もいるでしょうが,HDMIケーブルをつなぎかえるというのは,やってみるとけっこう面倒ですからね。なにかうまい対策を考えたいところです。
■■西川善司■■ テクニカルジャーナリスト。最近,マルチコプタータイプのドローンに興味を持ち始めたという西川氏。本格的なものはかなり高価なので,720pでのビデオ撮影機能を備えつつ,1万円台前半で買えるHoly Stone製のドローン「X401H-V2」を購入して遊んでいるそうです。先日は,12万円もするDJI製の新型ドローン「Mavic Pro」を購入した知人のところへ遊びに行ったら自慢されたそうですが,「自慢されると『(同じものを)買ったら負けだ』という気分になる」という訳の分からない理論で,真似はしないことにしたとのこと。その代わりに買おうと企んでいるのが,4K対応プロジェクタかDolby Atoms対応AVアンプだというのですから,どっちに転んでも財布が軽くなることに変わりはありませんね。 |
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