インタビュー
[TGS 2017]PlayStation VRは価格改定する10月に供給体制が整う。SIEWWSプレジデントの吉田修平氏にVR市場に向けた年内の展開を聞いた
今回は,PlayStation VR(以下,PS VR)および現在のVR業界に関する吉田氏の考えを中心に話を聞いている。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
9月19日に「2017 PlayStation Press Conference in Japan」が開催されました。毎年東京ゲームショウ直前に開催される恒例のイベントですが,今回はPlayStation 4(以下,PS4)の新作タイトルに焦点を当てて,次々に紹介していく内容でしたね。
去年(2016年)のE3からの流れなのですが,海外では「Media Showcase」という呼び方をしていて,会場に来た方だけでなく,ストリーミングで中継を見ている全世界の方々に楽しんでいただけるよう,演出に比重を置いています。
テンポ感は好評をいただいていますから,日本もそのスタイルを踏襲しました。
4Gamer:
イベントを振り返って,内容をどう評価していますか。
吉田氏:
私も自社タイトル以外の新作はあまり知らなかったので,ステージを見ていて,非常にワクワクしました。個人的には,「LEFT ALIVE」や「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS」,「十三機兵防衛圏」(PS4/PS Vita)をはじめとする新作は大いに気になります。
4Gamer:
サードパーティに花を持たせたのかもしれませんが,正直なところ,ファーストパーティのタイトルがあまり目立っていなかったように感じました。
吉田氏:
今年(2017年)のE3で発表した「ゴッド・オブ・ウォー」,「The Last of Us Part II」といった新作や,11月リリースの「Horizon Zero Dawn」の大型拡張コンテンツなどを仕込んでいるのですが,やはり日本向けのカンファレンスですから,日本市場をより強く意識して,年末から春にかけてのラインナップにしました。
ですが,PS VR向けでは10月に「グランツーリスモSPORT」と「V!勇者のくせになまいきだR」,11月に「The Inpatient -闇の病棟-」,そして「Bravo Team」といったラインナップが年内に控えています。そのあたりでは一定の存在感は出せたと思います。
4Gamer:
PS VRと言えば,先日発表されたように,10月14日からはPlayStation Camera付きのセットが税別4万4980円に値下げされますよね。日本ではまだ品薄状態が続いていると思いますが,なぜこのタイミングで発表したのでしょうか。
吉田氏:
出荷台数自体は少しずつ伸ばしてきたのですが,これまでは需要に対して供給が追いついていない状況にあったので,日本ではなかなか手に入りにくい状況が続いていました。
欧米ではちょっと前に価格改定を行いましたが,日本でもやっと,10月から供給体制が整いますので,お買い求めやすい価格に改定させていただきました。
今まで買えなかったという方は,ぜひこの機会にお買い求めください。
4Gamer:
ソフト面はどうでしょう。PS VR専用または対応タイトルのラインナップは,十分揃ってきたと思いますか?
吉田氏:
まず,私としては,PS VRに関してはまだ導入段階が続いていると考えています。
供給が追いつかなかったことも含めて数多くいらっしゃる,これからPS VRを手に取ってくれる方にとっては,PS VRのローンチ以後に発売されたタイトルすべてが新作だと思っています。
さらに新しいタイトルも投入していきますから,プレイヤーの選択肢はより広がっていくと言えるのではないでしょうか。
4Gamer:
吉田さんは,現在の日本におけるVR市場を,PlayStationプラットフォーム以外も含めてどのように捉えていますか。
私は予想以上に成長していると思います。
1つはロケーションベースで,バンダイナムコエンターテインメントさんの「VR ZONE」,グリーさんの「VR PARK TOKYO」のようなVRエンターテインメント施設ができたことで,手軽にVR体験ができる機会が増えています。
その体験も非常にクオリティが高いので,日本はすごく恵まれていると思います。
もう1つは,ゲーム以外の分野でも,VRでデザインを確認したり,アーキテクチャをVRで表現してプロジェクト内で共有したり,教育分野におけるVRトレーニングであったりと,多くの企業がVRに取り組んでいることです。
VRの効果が実際に認められて投資を受けている企業もありますし,さらにそうした企業から,VRゲームを作っている開発者に声がかかるような環境が実現しつつあります。
私が「そうなってほしい」と願っていたことなのですが,産業としてVR技術が根付き始めていることを感じます。
4Gamer:
確かに,「VR」という言葉を目にする機会が増えて,日常的に使われるようにもなっているように感じます。
VRというものが話題に上ったり,ニュースになったりするだけでなく,実際にVRがさまざまな場面で活用されているという状況になってきましたから,ツールとしての健全な普及の形だと言えます。
それはPS VRにとってもいい展開なので,まずは感度の高いユーザーさんに体験していただくことを目標に掲げていきます。
一方,普及という意味で,現在まで需要にきちんと応えきれていないことは反省点です。
日本では,VRヘッドマウントディスプレイを扱えるハイエンドPCを所有されている方が比較的少ないと思います。
家庭で手軽に楽しめるVRシステムとしては,PS VRがもっともお買い求めやすいと思っていますが,家庭用VR市場の拡大における我々の責任の重さを再認識しました。
4Gamer:
では,PC向けの「Rift」や「Vive」をどのように認識しているのでしょうか。
吉田氏:
3社ともに交流があり,ハイエンドで,気持ちが良くて,楽しい体験を届けたいという「作りたい体験」は同じです。
VRというものは,体験してもらう機会が極めて重要です。それを体験したのがViveなのか,Riftなのか,それともPS VRなのかという違いはあまり関係がないと思っています。
体験のクオリティが高ければ,「今,VRではこんなことができるのか」と気づいてもらえる。それが大事なのです。
PS4とPC,供給するプラットフォームが違いますから,ユーザー層も明確に分かれています。どちらの土壌が成長しても,VRの普及という意味ではプラスになるという認識です。
4Gamer:
そろそろ時間が迫ってきたので,最後に一つ教えてください。通常のPS4よりも高性能なPS4 Proは,PS VRの体験品質を上げるのにも一役買えると思うのですが,現時点でどの程度の台数が販売されているのでしょうか。
吉田氏:
PS4 Proは,コンスタントにPS4本体全体の実売の2割程度を占めています。非常にいいペースで普及が進んでいると思っています。
4Gamer:
発売当初の目標もそれくらいだったんですか?
当初の目標と比較しても,少し上回っていますね。
我々が想定していた「PS4を持っているけど新たに購入される方」「4Kテレビを購入された方」に加えて,「PS4を初めて買うなら,より良いものを」と,最初の選択肢としてPS4 Proを購入される方がけっこういらっしゃいました。
ただ,我々としてはPS4 Proじゃないと良い体験ができない,という状況にはしないつもりです。
パブリッシャさんやデベロッパーさんに対しても,「PS4ですごくいいゲーム体験を作ったうえで,PS4 Proでプラスαを追加してください」とお話しするなど,「PS4 ProもPS4なんですよ」というメッセージを意識的に伝えてきました。
それを理解されたうえでPS4 Proを購入された方の評判は非常に良いですよ。
4Gamer:
そのプラスαを実行しているのが「PS4 Pro ENHANCED」マークの付いたタイトルですよね。素人目線だと,PS4とPS4 Proの両方に対応させる手間が増える分,敬遠される要素になりかねないと思ってしまうのですが,実際のところはどうなのでしょう。
吉田氏:
どこまでPS4 Pro向けに手を加えるかという話では,やはり開発チームの規模が大きいところほど,手をかけていただいていますね。
我々にも経験がありますが,ゲームはプログラムの部分で手を加えれば加えるほどに,より良いものになります。そのために,パブリッシャさんやデベロッパーさん向けの技術セミナーやカンファレンスを開催しています。
ただ,工夫して手を加えるほど良いものになるのはもちろんですが,PS4 Proの良さを出すこと自体難しいことではないと思っています。
PS4 Proのマシンパワーだけでもクオリティは高くなりますから,そういう意味では,ほぼすべてのタイトルがPS4 Proに対応しているというのが私の見解です。
今回の東京ゲームショウでも,お客様により良い印象でプレイしていただくべく,PS4 Proを推奨していますし,実際にほぼPS4 Proで出展されています。
4Gamer:
PS4 Proがもっと普及すれば,先程おっしゃっていた“体験のクオリティ”も上昇して,PS VRの普及に拍車がかかるかもしれませんね。
まずは10月14日の価格改定でPS VRを手に取れる人が増えることに期待します。本日はありがとうございました。
「PlayStation VR」公式サイト
4Gamerの東京ゲームショウ2017特設サイト
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PlayStation VR本体
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