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将来のゲームPCは「メモリ+Optane+SSD」の構成になる? 「Intel Memory and Storage Day 2019」レポート
イベントで発表となった話題の概要については,すでに掲載済みであるが,本稿では,4Gamer読者の関心もありそうな話題を中心に,より詳しい内容や展示の様子をレポートしたい。
データセンター向けの144層QLC 3D NANDが2020年に登場
Intelは,「インタフェースはより高速に,メモリとストレージはより大容量に,演算処理をあらゆるものに」というコンセプトで,データセンター向け製品を展開しているとMann氏は述べる。しかし,DRAMチップの記憶容量の場合,かつては3年で4倍も向上していたものの,64Mbit DRAM以降は2年で2倍,4Gbit DRAM以降は4年で2倍に成長ペースが鈍化しており,データが増加するペースに追いつけなくなっているそうだ。
一方,Intelの3D NANDは,32層から64層,そして96層へと順調に多層化を続けてきており,2020年に登場予定の第4世代3D NANDでは,ついに100層を超えて144層になるという。
製品としては,第10世代Coreプロセッサ「Ice Lake」や「Cooper Lake」といった開発コードネームを持つ2020年登場予定のXeonプロセッサに合わせて,96層の3D NAND SLCを採用するSSD「Cliffdale-R」と,144層のQLC 3D NANDを採用するSSD「Arbordale+」(いずれも開発コードネーム)が登場する。144層QLC 3D NANDのSSDへの採用は業界初となるそうだ。
また,Optaneを使ったデータセンター向け製品としては,第2世代のOptane DC Persistent Memoryと「Barlow Pass」,および第2世代Optane DC SSD「Alder Stream」(いずれも開発コードネーム)を予定しており,その後もCPUの世代更新に合わせて,新しいSSDとOptaneの製品を投入する予定であるそうだ。
SSD 665pは読み書きともに1800MB/s超を実現
同社の3D NANDは,垂直フローティングゲート(浮遊ゲート)方式を採用しており,チャージトラップ(電荷捕獲)方式のNANDフラッシュメモリと比べて,セル間の電荷の干渉がなく,データを長く保持できるため,高い信頼性を実現すると強調していた。
面積あたりのビット密度でも,Intelの3D NANDは最先端を実現しており,96層の第3世代3D NANDでは,6.1Gbit/mm2を達成した。3D NANDは,現在4bitのデータを1のセルに記録するQLC(Quad Level Cell)を採用しているが,Intelによる実験では,すでに5bitのデータを1つのセルに記録することに成功しているとのことだ。
またKalavade氏は,データセンター向けSSDの新しい規格として,「E1.L」と「E1.S」という新しいフォームファクタを発表した。長いケースにSSDを収納するE1.Lを使うと,1ラックで既存のU.2接続型SSDと比べて2.6倍の容量を実現する。E1.Sの場合,1ドライブあたりでM.2 SSDと比べて2倍の容量を実現でき,放熱効率も優れているそうだ。
一般消費者向け製品においても,SerialATA接続型HDDは多くの面でQLC NANDを使ったPCI Express(以下,PCIe)接続型SSDにはかなわないと,Kalavade氏は主張する。氏によると,SSDの年間故障率はHDDよりも4.2倍も低く,消費電力も57%少ない。物理的なサイズも20分の1で済むうえ,性能に至っては実に300倍の差があるという。
たとえば,2018年9月に発表された64層のQLC 3D NANDを採用した「Intel SSD 660p」(以下,SSD 660p)は,7200rpmのHDDと比べて,ゲームのロードが40%も高速で,ゲームの起動は77%速いそうだ。
記憶容量1TBモデル同士での「CrystalDiskMark」による比較デモのスコアを確認した結果を表にまとめておいた。見てのとおり,SSD 665pは,SSD 660pと比べてかなり高速になっているようだ。
もちろん,TLCベースのPCIe接続型M.2 SSDではもっと高速な製品もあるが,
SSD 665p | SSD 660p | |
---|---|---|
逐次読み出し | 1816.56MB/s | 1228.62MB/s |
逐次書き込み | 1887.50MB/s | 1333.17MB/s |
ランダム読み出し | 17279 IOPS | 13137 IOPS |
ランダム書き込み | 47608 IOPS | 37105 IOPS |
第2世代の「Optane DC Persistent memory」が2020年に登場
Intelが新世代のメモリ技術として力を入れるOptane関連の最新情報については,Lead ArchitectのMohamed Arafa氏と,不揮発性メモリ担当Chief Systems ArchitectのFrank Hady氏が解説を行った。
Mohamed Arafa氏(Senior Principal Engineer and Lead Architect,Intel) |
Optane Memory H10を手にするFrank Hady氏(Intel Fellow and Chief Systems Architect Non-volatile memory solutions,Intel) |
Optaneを採用するデータセンター向け製品には,DDR4 SDRAMを搭載するDIMMモジュールと同じスロットに取り付け可能で,DRAMと合わせて主記憶として使う「Optane DC Persistent memory」と,PCIe接続で高速なストレージとして使う「Optane DC Solid State Drive」の2種類がある。
Optaneの土台となるメモリ技術の3D XPointは,ビットライン(Bit line)とワードライン(Word line)と呼ばれるアクセスラインが直行(クロス)する構造で,ビットラインの上と下にメモリセルがある2層構造となっている。将来的には,この構造を上下に重ねた4層構造とすることで,容量を2倍にできるという。
Optaneを採用する製品ラインナップについては,まずOptane DC Solid State Driveから見ていこう。
現在のラインナップとしては,PCIe 3.0 x4対応の「Optane SSD DC P4800X」「Optane SSD DC P4801X」と,PCIe 3.0 x2対応の「Optane SSD DC D4800X」の計3製品がある。
一方,一般消費者向け製品では,QLC 3D NANDとOptaneの両方を搭載したハイブリッドストレージ「Optane Memory H10」という製品が販売中だ。Optane Memory H10では,Optaneをストレージキャッシュとして利用している。
イベントでは容量32GBのOptaneと容量512GBのQLC 3D NANDを搭載したマシンと,容量512GBのTLC 3D NANDだけを搭載したマシンによる性能比較デモも行われた。
1つのタスクを動かした場合,Optaneをキャッシュとして搭載したマシンが5.5秒,Optane非搭載マシンが7.61秒で完了したが,ファイルコピーをしながら画像編集ソフト「Photoshop」を動かすといった複数のタスクを同時に動かした場合,Optane搭載マシンが5.12秒で完了したのに対し,Optane非搭載マシンは33.42秒もかかり,Optaneの効果が大きいことを証明していた。
2020年登場予定の次世代Optane DC SSDである「Alder Stream」は,現行製品の「Intel SSD DC P4610」と比べて3倍高性能で,レイテンシは4分の1も低くなるそうだ。
ストレージ製品以上に将来のPCにおいて重要な要素になるかもしれないのが,メモリモジュールタイプのOptane DC Persistent Memory(以下,Persistent Memory)だ。現在のPersistent Memoryは,サーバーシステム向けであるが,2020年にはワークステーションで使えるようになり,将来的にはクライアントPCでも利用できるようになるという。
Persistent Memoryのモジュールは,DDR4 DIMMモジュールとピン互換があるので,そのままDDR4 DIMM用スロットに装着できる。Persistent Memoryには,1モジュールあたり記憶容量128,256,512GBの3モデルがあり,CPU 1基あたり最大3TB,1台のワークステーションでは最大6TBを搭載できるという。
Persistent Memoryは,メモリモードとアプリケーションダイレクトモードの2種類の使い方が可能だ。メモリモードは,アプリケーションからはメモリのように見えるモードで,DDR4メモリがPersistent Memoryのキャッシュとして使われる。一方,アプリケーションダイレクトモードでは,アプリケーションがDDR4メモリとPersistent Memoryを明示的に使い分けられるという。ただ,アプリケーションがダイレクトモードを利用するには,アプリケーションをOptane対応に作り換える必要がある。
さて,これまではデータセンター向け製品にしか使われていなかったPersistent Memoryだが,前述のようにIntelは,これをクライアントPCにも展開していく計画である。
クライアントPCにおけるPersistent Memoryの効果だが,PCワークステーションでは,より大きなモデルを快適に扱えるようになるほか,ビデオ編集やプログラムのビルド高速化などに貢献するという。また,今までよりも多くのアプリケーションやWebブラウザのタブを同時に開けるようになり,アプリケーションの切り替えも高速になるとIntelはアピールしていた。
ゲーム用途についても言及があり,ロード時間短縮や高速なゲームの切り替え,シーンのスムーズなロードが可能になるとのことだ。
クライアントPCでPersistent Memoryを使うとなると,当然,OS側での対応も必要だ。現在は,ワークステーション用の「Windows 10 Pro for Workstations」がPersistent Memoryをサポートしているが,これを拡充する必要がある。ということで,Microsoftは,将来のクライアントPC向けWindowsでPersistent Memoryに対応するプランであることを明らかにした。
クライアントPCとOSが対応することで,将来のPCにおけるメモリとストレージの階層構造は,DDR4メモリとPersistent Memory,Optane SSDとQLC 3D NAND SSDといった4段階の構造が完成するというわけだ。
会場のショーケースでも,Persistent Memoryによるデモが行われていた。アプリケーションダイレクトモードで動作する「SPECwpc」のスコアは,Persistent Memory利用時のほうが数倍高いといった具合で,かなりの高性能が期待できるようだ。
そのほかにも,Intelは,3D XPointに関してMicron Technology(以下,Micron)と組んでいたパートナーシップが解消となったことを受けて,ニューメキシコ州のリオランチョ(Rio Rancho)にある自社工場「FAB 11X」に,Optane製造ラインを作ることを明らかにした。Micronとのパートナーシップが途切れても,今後のOptaneの供給に問題はないと強調していた。
全般的に,ゲーマーにとって直接関係のある話題は少なかったが,SSD 665pの性能や,Persistent MemoryをクライアントPCにも広げていく計画が明らかになったのは興味深いと言えよう。将来のゲーマー向けPCでは,メモリスロットのいくつかにPersistent Memoryが取り付けられて,メモリとSSDだけのシステムよりも快適なPC環境を実現するようになるかもしれない。
Intelの当該プレスリリース(英語)
- 関連タイトル:
Intel Solid-State Drive
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