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これはシリーズ最高の完成度。探索の面白さ,強敵との手に汗握る戦い,幅広いロールプレイなど,数々の魅力が進化した「DARK SOULS III」をレビュー
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印刷2016/04/19 00:00

レビュー

これはシリーズ最高の完成度。探索の面白さ,強敵との手に汗握る戦い,幅広いロールプレイなど,数々の魅力が進化した「DARK SOULS III」をレビュー

 2016年3月24日,フロム・ソフトウェアのアクションRPG「DARK SOULS III」PS4/Xbox OnePC版は4月12日)が発売された。2011年に登場した「DARK SOULS」から数えて,もう3作。シリーズの大きな区切りとなるタイトルとして,「Demon's Souls」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)やDARK SOULSを手掛けた宮崎英高氏が再びディレクターを務め,満を持してのリリースだ。
 期待していたシリーズファンも多いと思うが,これまで数々の“心が折れる”体験をしてきたプレイヤー達を満足させるデキとなっているのか。レビューをお届けする。

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滅びゆく世界を舞台に“王殺し”に挑む


 本作の舞台となるのは,滅びゆく終末の世界。火の力を継いだ「薪の王」達が存在する「ロスリック」と呼ばれる場所だ。プレイヤーは,灰の墓所で蘇った不死の存在「火の無い灰」であり,火を求めて薪の王を倒す,すなわち“王殺し”に挑むというのが,ざっくりとした本作の背景設定となっている。

正確には,ロスリックは“薪の王達の故郷が流れ着く”場所だ。シリーズを通して描かれてきた強大な存在である薪の王だが,その故郷が流れ着いているということで,ゲームをプレイしていると過去作と世界観につながりがあることも分かってくる
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本作のプレイヤーは火の無い灰であり,亡者ではないので,死んでもゾンビっぽい見た目にはならず,人のままだ。ボスを倒すと,身体に火を纏った状態になり,なかなかカッコイイ
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 DARK SOULSシリーズは,基本的にストーリーをじっくりと語るようなシーンはなく,ゲームを進めていくうちになんとなく分かるという作りになっているので,詳しく紹介するのはなかなか難しい。オープニングムービーからなんとなく察してもらえると幸いだ。


 探索マップはロスリック城を中心としたさまざまなシチュエーションが用意されているのだが,黄昏時の空や崩れた城壁,寂びた街など,ところどころに滅びの寂しさを感じさせるテイストが盛り込まれている。DARK SOULSというと,陰鬱で暗い世界観というイメージが強いが,本作はどちらかというと,色あせた雰囲気といったところだろうか。主人公も“灰”なわけだし。

序盤の探索マップであるロスリックの高壁。黄昏の空が美しい
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拠点となる「火継ぎの祭祀場」。おなじみの火防女や,青くはないけど挫折してる人のほか,プレイヤーを助けてくれるNPCが居着いている
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探索中に出会ったNPCは,だいたい火継ぎの祭祀場を訪れてくれる。過去シリーズに比べて,本作は割と話の通じる人が多い気がする
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 また,シリーズ初のPlayStation 4/Xbox One世代の専用タイトルとして,これまで以上に探索マップが強化されている。
 とくに本作では,単純にマップの広さや入り組み具合がパワーアップしているというだけでなく,目指すべき巨大なロスリック城が遠くに見えたり,眼下には通ってきた街や森が見えたりといった,広大なマップを活用した絶景ポイントも多い。つい足を止めて風景に見入りつつ,これからの探索に思いをはせられることだろう。

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遠くにあっても,見える建物にはだいたい行ける。遥か先の巨大な建物には何が待つのか
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3作目でもやっぱり高難度

死ぬ,死ぬ,そして死ぬ


 DARK SOULSといえば,やはり何度も死にながら攻略していく高い難度と,その困難を乗り越えたときの達成感が最大の魅力。何が出てくるか分からないマップを恐る恐る探索し,奥までたどり着けば強大なボスに殺されながらも,どうにかこうにか攻略法を見つけ出す。この楽しさは,本作でももちろん失われていない。

 とくに本作の戦闘は,全体的にアクションのレスポンスがよく軽快に戦えるので,操作していて気持ちがよい。これまでのDARK SOULSよりも,キビキビと動いてくれる感じで,どちらかというとDemon's Soulsに近い。そのぶん,敵の動きも隙がなくなっているので,そこは腕の見せどころになるが,強敵にストレスなく全力で挑めるので,アクションゲームとしての完成度はさらに増したと言える。

本作の戦闘は,操作性が向上しておりテンポが良い。Demon's Soulsの戦闘が楽しかったという人は,とくに気に入るだろう
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「Bloodborne」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)を遊んでいたせいで,うっかり「ステップで回避……って本作にはない!」「攻撃食らったらすぐに反撃……リゲインねえよ!」とかやらかしたのは筆者だけだろうか
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 前作「DARK SOULS II」では,探索中に敵の数で圧倒されてしまう印象が強かったが,本作では「こいつとは戦いたくない……」と思う強敵が,マップの各所に配置されており,手に汗握るシーンが多い。こっそり進めば戦わずに済む場合もあるのだが,地形によってはどうしても発見されてしまい,初見ではだいたい死ぬか,倒せたとしてもボロボロの状態になる。連中にきちんと対処できるかどうかが,スムーズな探索の鍵となるだろう。

 とくに印象に残るのが騎士だ。本作の発表時に「Demon's Soulsの恐ろしい騎士が帰ってくる」と言われていたが,これが本当に恐ろしいから困りもの。装備のパターンも,剣や大剣,槍,メイスに大盾と,さまざまなバリエーションがあり,あの手この手で殺しにかかってくる。序盤の騎士に楽勝で勝てるようになり,「もう騎士は怖くない」とか思って先に進んだら,新タイプの騎士が出てきてやっぱり死にました! というのは,プレイヤーの大半が経験することだろう。

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見た目どおり,とっても強い騎士。装備のパターンが違う騎士に出会うたび死んだ気がする
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 また,「プレイヤーの視線を誘導して殺しに来る」というか,地形と敵の配置を活かして心を折りにくるマップ作りは,シリーズ3作目でさらに洗練されている。単純に死角から襲われるというだけでなく,例えば,敵を倒したと思ったら後ろから矢を放たれ,そちらを対処しようと振り向いたら,実はもう1体いた背後の敵に斬られて死ぬという感じだ。

 ただ,理不尽な不意打ちではなく,注意深く観察すると,高台から事前に敵の姿が確認できたり,あるいは,実は影が動いているので上から来るのが分かったりと,ちゃんと手がかりが用意されている。死んでしまったとしても,「あの時こうしていれば……」と後から気が付けるのは,トライ&エラーを繰り返すゲームデザインとよく合っていると思う。

雑魚相手でも,まともに攻撃をくらうと大ダメージを受けるので油断は禁物。……あの,あなたがた,ヤーナムってところでハワイハワイとか言ってませんでした?
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 再挑戦しやすさという点では,本作は復活ポイントとなる篝火や,ショートカットが小まめに配置されているのも良い。厳しいシチュエーションがあって倒れてしまっても,すぐに走って戻れるし,そこを越えればまた一息つけるポイントにたどり着くので,メリハリのある探索が楽しめる。
 また,本作はロードが短く,繰り返し挑んだり,あるいは一度離れてレベルを上げてから挑んだりするのもやりやすいのが嬉しい。

 全体的に,地形や敵の配置の細やかな調整により“きっちり殺しにくる”のだが,同時に遊びやすさも考慮されている印象だ。DARK SOULSシリーズが初めてという人も,本作が一番遊びやすいのではないだろうか。ただ,初体験の場合,一番最初のチュートリアル的なマップが高い壁として立ちはだかるはずで,そこは気になるところだ。

ボス戦では何度も死ぬので,ロードに悩まずサクサク再挑戦できるのはありがたい。本作のボス戦は,Bloodborneと同様,体力を減らすとパワーアップするようになっており,後半戦はとくに手に汗握る展開が待っている。「こいつどう倒せばいいんだよ……」的な絶望もセットだが
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一番最初のボス「灰の審判者、グンダ」。チュートリアルの延長で出現するので,負けてもOKなイベント戦闘かと思ったら,篝火送りにされてびっくり。この時点ではレベルを上げることもできず,実力で突破するしかないので,シリーズ初体験の場合かなり難しく感じるかもしれない。ここさえ越えれば,レベルを上げたり装備を整えたりできるのだが……。10種類ある「素性」によって難度も変わってくるので,どうしても厳しそうなら別の素性のキャラクターでスタートするのも手だ
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シリーズ伝統の探索をより楽しくしてくれる要素として,ゆるくつながるオンラインプレイももちろん健在。地面に残せるメッセージや死に際をリプレイ再生する血痕,ほかのプレイヤーを召喚する協力プレイ,あるいは進入して殺しにかかる敵対プレイなど,ひととおりが引き継がれている。協力プレイでは,Bloodborneで実装された,フレンドと遊ぶための合言葉を利用できる
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メッセージは,危険や隠されたアイテムを知らせてくれるものや,プレイヤーを騙すための嘘情報,クスりとくるネタなど,相変わらずさまざまなものが残されている。ボス前の「心が折れそうだ…」や篝火前の「またここか…」といったメッセージを見た時は「ですよね……」と言いたくなる
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シリーズ最大ボリュームのアイテムや魔法が登場


 探索の面白さを引き立てるのは,戦闘だけではない。どのようなアイテムを手に入れられるのか,それによって自分のキャラクターをどのように成長させられるのかというのも,重要なポイントだ。この点において本作はどうなのかというと,間違いなくシリーズ最高と言える。

 本作では,序盤からさまざまな武器や防具が登場し,非常にバリエーションが多い。剣で戦うか,槍にするのか。片手持ちと両手持ちのどちらが向いているか,盾のサイズは小,中,大のどれがいいのか。防具は回避の速度を優先して軽量なものを選ぶのか,あるいは防御重視の鎧で固めるかなど,自分の戦闘スタイルに合わせた装備を試したくなる。さまざまな種類の装備を集めるために,取り逃しがないよう,探索に熱が入ること請け合いだ。
 魔法も,これまでのシリーズ同様「奇跡」「呪術」「魔術」などがあり,どれを使っていくのか,あるいは「俺は脳筋,魔法なぞ不要」とばかりにまったく使わないのか,プレイヤーによって変わってくるだろう。

探索中に新たな装備を見つけるのは非常に楽しい。敵のドロップで入手できる装備も,つい何度も倒して一式揃えたくなってしまう
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 装備周りの新たなトピックとしては,本作で追加された「戦技」にも注目したい。これは,武器ごとに定められた追加アクションで,例えばロングソードなどの直剣なら2種類の攻撃を繰り出せる「構え」が,バスタードソードなどの大剣ならのけ反りにくい姿勢からかち上げ攻撃を放てる「踏み込み」が使えるといった感じだ。剣に限らず,槍や弓,ボウガン,盾などにも設定されており,武器の種別をより特徴付ける要素と言える。

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 使いどころはけっこう難しく,FP(フォーカスポイント,戦技や魔法を使うと減少するゲージ)の消費もバカにならない。その種別の装備を使い込んでいるからこそ組み込めるアクションということで,自分のキャラクターのロールプレイを刺激してくれる要素だ。
 もっとも,筆者はずっと大剣を使っているのに,意を決して踏み込んでも「肉を切らせて骨も断たれる」みたいな結果ばかりだが。

大技を繰り出すために踏み込み! お気に入りの武器があると,戦技を使いたくなるものだが,独特のアクションが多いのでけっこう難しい
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ロールプレイ的な遊び方としては,筆者はシリーズを通して“1周目は最後までバスタードソード+魔力の武器を使った魔法剣士”と決めている。愛剣を魔術で強化して戦うというのが,中学二年生な感性にグっとくる
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シリーズの区切りに相応しい最高の完成度

これはプレイしないと損だ


 本作は,DARK SOULSシリーズだけでも3作目,Demon's SoulsやBloodborneといった,宮崎氏がディレクターとして指揮を執ったアクションRPGも含めれば5作目となるタイトルだ。それだけに,新作に期待する半面,「さすがにもうネタは出尽くして,マンネリになるのでは?」と思っていたシリーズファンは,筆者だけではないだろう。
 しかし,本作はそのハードルをあっさりと飛び越えて,素直に面白いと思える一作に仕上がっている。探索の面白さ,強敵との手に汗握る戦い,幅広いロールプレイと,シリーズの魅力をきっちり正統進化させてきたのは,見事と言うほかない。シリーズが続いてきただけに,マップの作りや敵の配置,操作性,遊びやすさなどは洗練されており,大きな不満もない。シリーズファンはもちろん,アクションRPG好きならプレイしないと損というものだ。
 また本作は,シリーズ作品だけでなく,Demon's SoulsやBloodborneなども彷彿とさせる単語や場所,シチュエーションが多数盛り込まれており,ファンサービスも感じられる。そういった点にもぜひ注目してほしい。

 DARK SOULSシリーズは,本作で区切りを迎えるとのことだが,「では,次はいったい何が飛び出してくるのか?」と考えると,今後もフロム・ソフトウェアの動きに目が離せない。個人的には,まだしばらく本作を楽しんでいたいので,DLCが出てくれると嬉しいのだが。配信の予定,ありませんか?

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