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「RED ASH」はオープンワールド“的”な作品に。稲船敬二氏がゲストとして登壇したAnime Expo 2015のパネルセッションをレポート
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印刷2015/07/07 00:00

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「RED ASH」はオープンワールド“的”な作品に。稲船敬二氏がゲストとして登壇したAnime Expo 2015のパネルセッションをレポート

 ロサンゼルスで開催されたAnime Expo 2015において,comceptの稲船敬二氏と,アニメーションスタジオSTUDIO4℃の田中栄子氏が,現地時間7月4日11:30に行われたパネルセッションのゲストとして登壇した。

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 このパネルでは,ゲームとアニメを連動させたプロジェクト「RED ASH」が正式に発表され,ゲーム版のタイトルが「RED ASH - The Indelible Legend」(以下,RED ASH),アニメ版のタイトルが「Red Ash -Magicicada-」だということが明らかになった。
 また,クラウドファンディングサイトKickstarterにてキャンペーンを開始したことも,合わせて告知されている。詳しくは,以下の記事を参照してほしい。

関連記事:稲船敬二氏の新プロジェクト「RED ASH」は,ゲームとアニメの連動企画。Kickstarterではキャンペーンがスタート

 アメリカのアニメファン向けのイベントと聞いても,日本ではピンと来ないかも知れないが,Anime Expoは今年で24回目という長い歴史を持っており,昨今では来場者がのべ10万人を超えるなど,アメリカでは最大規模のアニメイベントとなりつつある。
 アメリカンコミックスをベースにした映画の人気の高まりとともに,日本でも知名度の高いサンディエゴのComic-Conは,さらに歴史も長く規模も大きいが,Anime Expoは“日本のコンテンツ”にフォーカスしているというのが特徴だ。
 10代から20代までの若い世代を中心に,思い思いのコスプレで物販ブースを練り歩いたり,アチコチで撮影会をやっていたりする様子は,日本でもおなじみの光景かもしれない。
 また,パネルディスカッションや,ワークショップを題したさまざまなセッションをとおして,新しい情報をみんなで共有しようという,一体感のようなものも感じられるのが興味深いところ。

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 そんなAnime Expoには,2014年に初めて参加したという稲船氏だが,自身も「私も皆さんと同様にアニメが大好き」と公言する。
 今回,RED ASHを本イベントで発表したのも,日本のコンテンツに関心のあるファンに強くアピールしたいという意図があるためと思われるが,「ベルセルク」「アニマトリックス」などで海外でも知られるSTUDIO4℃との共同プロジェクトであるだけに,稲船氏も田中氏も,発表後のファンの熱狂には相当な手ごたえを感じている様子だった。

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北米最大規模のアニメイベントAnime Expo 2015で,新作となる「RED ASH - The Indelible Legend」を発表したcomceptの稲船敬二氏
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STUDIO4℃の代表取締役でありプロデューサーの田中栄子氏
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CGIアーティストとして長らく活躍し,「Red Ash -Magicicada-」が初監督作品となるSTUDIO4℃の佐野雄太氏

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 RED ASHは,人間とロボットの戦争により一度は滅びかけた人類が,ロストテクノロジーによって少しずつ復興している世界が舞台となっている。戦争を起こしたロボット達は野生化し,今も人間に攻撃を仕掛けてくる危険な存在であるが,人間も徐々に技術を復活させ,ロボット達に対抗する手段を得ているようだ。

 そんな世界にある都市グレイトスロップ(Great Slope)で生活するのが,RED ASHの主人公であるベック(Beck)という16歳の若者と,相棒のタイガー(Tyger)だ。彼らは,ロストテクノロジーのサルベージを生業にする「ディグ屋」(Delver)であり,そんな彼らを得意先とするメカニック屋「ボーンズ商会」の女社長コールが,仕事を持ち込むことで,物語が進んでいく。

 また,コールの元で働くロボット「シャイン(英名はGofer)」という小型ロボットも存在し,プロモーションムービーで稲船氏は「プレイヤーが良いアクションをすると,シャインが増えていく」というようなアイデアを,アートディレクターの伊藤和司氏に語り,伊藤氏も「なるほど,生産力が高まるわけですね」と答えている場面がある。

 ゲームのストーリーは,これまで荒野を彷徨っていた動く城「カルカノン」が,突然グレイトスロップの方向へと歩み始めたことから発生する「The KalKanon Incident」を描くという。
 グレイトスロップの平和維持組織“Gecko Company”は大砲を使ってカルカノンを撃破することを発表するのだが,カルカノンの中心部に巨大なロストテクノロジーが隠されているというウワサを知っているコールは,Gecko Companyがカルカノンを破壊するよりも先に,ロストテクノロジーの回収をするよう,ベックとタイガーに話を持ちかける。というのが,本作のあらすじになるようだ。


 Kickstarterのゴールである80万ドルは,1章から3章までを開発するための金額となり,さらに50万ドルを追加した130万ドルまでいくと,6章まで制作できるようだ。
 「Mighty No.9」のファンディングが,目標額であった220万ドルをはるかに超えて,380万ドルにも達していたことを考えれば,RED ASHにおける80万ドルという数字はだいぶ低めに設定されている気もするが,稲船氏によると「プロトタイプ作り」の資金として利用されるから,低く見積もられているとのこと。
 バッカーと情報を共有しながらプロトタイプとなるプロローグ編を開発し,Mighty No. 9のようにパブリッシャとの提携を模索し,完成までこぎ着けていくのが狙いであると稲船氏は檀上で語っている。とりあえずは2017年の夏までに完成させるスケジュールで,プロトタイプの開発を進めていくようだ。

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 ちなみにSTUDIO4℃によるアニメプロジェクトRed Ash -Magicicada-では,同じ世界観を共有しながらも,ゲームとは異なるストーリーが展開されるという。
 アニメは,ベックと親友のディナイが袂を分かって財宝を奪い合うというストーリーになり,Kickstarterの目標額である15万ドルで5つ分のエピソードを制作するとのこと。その後のストレッチゴール次第では,STUDIO4℃内外のさまざまなクリエイターに参加してもらって,それぞれの個性を活かした異なる設定やキャラクターを追加していくようだ。最終的に248万ドルのストレッチゴールに達することができれば,劇場映画版をグローバルで公開すると,プロデューサーの田中氏は話していた。


日本のアニメをリスペクトしたオープンワールドの世界


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 三人称視点のアクションアドベンチャーになるというRED ASHのゲームシステムはほとんど紹介されなかったが,発表の内容を見る限り,ベックのアビリティをアップグレードしたり,パーツを開発するための資金を稼いだり,ダンジョンに潜り込んで宝を探したりなど,RPG要素を含んだやり込み型のゲームになると思われる。

 また,稲船氏は,RED ASHはオープンワールド“”なゲームとも表現していた。
 稲船氏によると「オープンワールド」と呼ばれるタイプのゲームには,必ずデザイン面での制限というものが存在しており,RED ASHにもそういった制限はあるし,ストレッチゴール次第でシステムが変わる可能性もあるために,“的”という表現を使っているとのこと。
 ただ,制限があるとはいえ,ゲームの世界には何体ものNPCが登場し,比較的自由にプレイヤーがミッションを選べるようなスタイルにはなっているようだ。

 パネルセッション中,稲船氏が念を押すように何度も話していたのが,「(RED ASHは)アニメの世界を駆け抜けるようなゲーム」であるということだ。
 プロモーションムービーで描かれているベックとタイガーの会話や仕草は非常にコミカルで,登場人物達のノリの良い掛け合いがとてもアニメ的なのが分かる。さらに,ベックを囮にしてロボットを狩るというディグ屋の危険な仕事内容と,彼らにかなり借りを作っていると思われるコールが旧知の仲であること,そしてロボットを狩ることで入手できる“メモリーコア”という部品の存在も,プロモーションムービーで確認できる。

 短い時間ではあったものの,セッション終了後に稲船氏と話す機会を得たので,その模様も掲載しておこう。


4Gamer:
 今回,Anime ExpoでRED ASHの制作発表をされましたが,開発はまだ始まったばかりといったところでしょうか。
 
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稲船敬二氏(以下,稲船氏):
 いや,そうでもないですよ。2013年にMighty No. 9の発表をPAX Primeでした頃と比べれば随分と進行しています。
 実は昨年,この会場でSTUDIO4℃の田中栄子さんと偶然に合ったときに,何か一緒にできないかと話はしていました。そして,昨年の秋頃に改めて田中さんからお話しがきたときには,もうRED ASHの企画はありましたので,制作が始動したのは,8か月くらい前になりますね。

4Gamer:
 Mighty No.9は2015年9月18日に発売となりますが,E3 2015で発表された「ReCore」を含めて,開発はどのように分担されているのでしょうか。

稲船氏:
 Mighty No.9とは別のチームに分けて開発を行っています。ReCoreはテキサスにあるArmature Studioという開発メーカーのプロジェクトであり,我々がコンセプトの提供をしているという形なので,これによってRED ASHの開発がもたつくようなことはありません。

4Gamer:
 セッションでは,「アニメの世界を駆け抜けるようなゲーム」というのを何度か話されており,本作におけるキーワードのように感じました。

稲船氏:
 ええ。ゲームやアニメといった日本のコンテンツを世界にもっと拡散したい,そしてもっと受け入れられるべきものであるという想いを,私は非常に強く持っています。この作品は,私の日本のアニメに対するそうした思いをオマージュしたもので,アニメ的な見せ方なり表現をRED ASHに取り入れていきたいと思っています。
 ただ,アニメのように動いているゲームという意味ではないですよ。ゲームでありながら,日本のアニメ的な特徴を持つ作品になるということです。

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4Gamer:
 今回もKickstarterを利用されるというのは,前回のMighty No.9で成功したと感じられたからでしょうか。

稲船氏:
 そうですね。クラウドファンディングというシステムは,かなり浸透していると思っています。ただ,今回の場合はオープンワールドなので,ゲーム本編をしっかりと作ろうと思えば10億円単位のお金が必要になってきます。そこまで資金を集めるのは難しいので,まずはプロローグ編でも十分に楽しめる段階まで作って,面白いかどうかをバッカーの人に問うてみようと。

4Gamer:
 なるほど。本編に突入するための残りの開発費はどうするのですか?

稲船氏:
 Kickstarterを成功させれば,パブリッシャは手を上げてくれますからね。

4Gamer:
 Mighty No. 9で,Deep Silverがパブリッシャになったもそのパターンだったのでしょうか?

稲船氏:
 そうですね。やはりパブリッシャにとってKickstarterのキャンペーンに成功した作品はリスクが少ないですし,そもそもパブリッシャがリスクを負うことを避けるような時代になってしまっているんだと思います。
 それであればこそ,我々の作るゲームに興味を持ってくれる人こそが大切なのであって,我々クリエイターはパブリッシャではなくゲーマーに目を向けてゲームを作っていくべきなのです。

4Gamer:
 その時代に,Kickstarterがうまく乗っかってきていると。

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稲船氏:
 Kickstarterは,要するに企画書を本当に公開しているようなものですよね。発言で誤解を受けるのは嫌なんですけど,Kickstarterで人気が出てお金が集まるのなら,それは良い企画だということです。

4Gamer:
 会場のセッションでも,あの作品の続編ですかという質問がありましたね。

稲船氏:
 ええ。でも,私はそんな権利を持っているわけではないですから,作りたくても作れないんですよ。でも,同じものとは言えないけれども,皆が満足する形で企画を作ることはできます。
 その企画に「こんなゲームをプレイしたい」という皆さんの夢と,「こんなゲームを作りたい」という我々の夢が重なって,1つのプロジェクトを完成させられるのがKickstarterなのです。もちろん,Kickstarterに企画をあげて,それをファンの皆さんが却下するという状況はあってしかるべきですよね。そのうえで,十分に需要があるのならば作りましょうという感じです。
 ゲームの企画をバックアップしてくれるファンと共に,ゲームを作れるクラウドファンディングは,非常に合理的なシステムだと思っています。

4Gamer:
 Kickstarterでは,RED ASHの発売予定日が2017年7月になっていますが。

稲船氏:
 Kickstarterの企画ページを作る際には日付をどうしても入れる必要があります。これからの開発スケジュールや,アニメプロジェクトとのシナジーを考えて,今から2年くらいという大まかな目途を立てているだけです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

 RED ASHは,ポップカルチャーとして日本最大の財産とも言えるアニメへのオマージュが込められたゲームであり,稲船氏率いるcomceptによって開発が進められている。ファンによって支えられることになるこの新規プロジェクトだが,まずは現在実施されているKickstarterキャンペーンの動向に注目が集まるところだ。

「RED ASH - The Indelible Legend」公式サイト


ゲーム「RED ASH - The Indelible Legend」Kickstarterプロジェクトページ

アニメ「Red Ash -Magicicada-」Kickstarterプロジェクトページ

  • 関連タイトル:

    RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女

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