インタビュー
「オーディンスフィア レイヴスラシル」押切蓮介氏×マフィア梶田対談。本作の魅力とそのほか気になることを語る
“神谷クオリティ”の世界観やビジュアルを,ゲーム上に再現する開発陣に驚き
マフィア梶田:
それではゲームの話に戻りますか。本作はHD化によって,元よりハイクオリティだったグラフィックがさらに向上してますよね。この美麗なビジュアルを生むヴァニラウェアの神谷盛治さんですが,押切先生はいつ神谷作品というものを認識されましたか?
認識っていうんなら,Wii版の朧村正かなあ。それまでは,ゲームの絵を誰が描いているかなんて全然意識してなかったけど……「凄いデザインだな」ってハッとさせられましたね。
マフィア梶田:
漫画家として,具体的にどの辺りに魅力を感じますか? たぶん言い表すのが難しいところですけど。
押切氏:
色合いが綺麗なのはもちろんだし,デフォルメが絶妙であるとかいろいろあるけど……言葉でどう表現としていいか分からないなあ。でも,このビジュアル見ていると,「いいなあ,こんなセンスを持っていたらなあ」って思いますよ。
マフィア梶田:
先生も独特のセンスをお持ちですが,神谷さんの世界観やビジュアルってまた特殊ですよね。
押切氏:
これは漫画にも描く予定なんですが,神谷さんに会いにヴァニラウェアへ行ったんですよ。
マフィア梶田:
そうなんですか! どんな方でしたか?
押切氏:
たくさん話したわけじゃないですが,優しい雰囲気の人でした。それで,神谷さんの制作現場も見せていただいたんですが……これまでは外国人のスタッフだらけの幻想的な会社ってイメージだったんですよ。
マフィア梶田:
俺もそんなイメージ持っていますよ。
押切氏:
でも,いざ行ってみたら,漫画の編集部みたいな感じなんですよ。乱雑な感じ。
マフィア梶田:
たしかに分かりやすいんですけど,漫画の編集部イコール乱雑っていう決めつけはどうなんでしょう(笑)。
押切氏:
まあ(笑)。それで神谷さんの机を見て,びっくりしたんです。きっと木造りの,幻想的なデザインの机で作業しているんだろうなって思ってたら,僕の机の4分の1くらい小っちゃくて。作業に使用しているPCも,16インチくらいかな……小っちゃくて,しかも新しいものでもなくて。
マフィア梶田:
そんな環境でこれだけ繊細な絵を生み出しているんですか!? 普通こういう絵って,大きめに描いて仕上げるじゃないですか。もっといいものを使ったらもっと作業も楽だと思うのに,使い慣れた道具がいいってことなのかな。作品を見ると芸術家というイメージだけど,職人気質なんですね。
押切氏:
いやあ,凄い人ですよ。まずモノから揃えるような人達にちょっとね,教えてあげたいくらいですよ。それこそ漫画家を目指す人のなかにも,液晶ペンタブ買えばどうにかなるって思ってる人が多いから。
マフィア梶田:
形から入る人達に,道具じゃないぞと。これまでの話を聞いて神谷さんへの興味がさらに湧いてきましたよ。和風も洋風もできるのが凄いですよね。唯一無二だなと。
背景はもちろん,モンスターデザインなんかもやっぱ一味違いますよね。見ているだけで楽しいし,飽きない。
押切氏:
完全に絵画ですよね。キャラクターのモーションも芸が細かいんですよ。でも,これを動かすスタッフさんのことを考えるともう……
マフィア梶田:
言葉は悪いけど,死人が出てもおかしくないですよ(笑)。
いやほんとに。漫画で“神谷クオリティ”って描いたんですけど,神谷さんを筆頭に,ヴァニラウェアさんの画ってセンスの塊じゃないですか。模写してるだけで頭おかしくなりそうだったんですよ。なんで僕がこれを描いてるんだろうって。
これを動かしちゃう開発陣のことを考えると,凄いなあ,プロだなあって。
美しい女性キャラが多い中,お気に入りは巨漢の将軍「ブリガン」
押切氏:
そろそろ梶田さんのプレイするところを見てみたいなあ。っていうのも,僕はこのゲームを,人がプレイしているところを見たことがなくて,ぜひ客観的に見てみたいなって思っていたんです。
いいですよ。では……あっ,コントローラが温まっている(笑)。だいぶ力入ってましたね。先ほど,プレイしてみて一番肌に合うキャラはオズワルドという話をうかがいましたが,では物語として見たときに好きだというキャラクター,描いていて楽しかったっていうキャラクターはいますか?
押切氏:
ブリガンですね。このキャラクター好きなんだよな。ビジュアルが特に。まあー描きやすいんですよ,このボスは。本当に。
マフィア梶田:
さっきイラストを拝見しましたが,たしかに押切先生の描くブリガンは味わいがある。かなり気合入れて描いてますよね。
押切氏:
描きやすいし,凄く楽しかったんですよ。それで連載のイメージカットにも,5人の主人公達と一緒に描いたんですけど,あとから,あれ? 大丈夫かなって。この絵を見た人達が,ブリガンも主人公のひとり,6人めのキャラクターなのかという錯覚を起こしはしないかと。
このイメージカット,まずなんで押切先生が鬼太郎ハウスみたいな家に住んでいるんだって突っ込みたくなっちゃいますけど(笑)。たしかにブリガンは存在感ありますな。
しかし,あれだけ可愛い女性キャラクターがたくさんいるのに,どうしてよりにもよってブリガンなんですか!
押切氏:
もちろん女性キャラクターも良いなあとは思ったけど,なんでだろうな……。でもこの世界において,女性キャラクターが美しいってのはもう当たり前じゃないですか。
マフィア梶田:
でも,屈強な肉体を持った“乳首シールド”の戦士は当たり前じゃなかった,ということですか(笑)。
押切氏:
いやいやもうね,彼はストーリーも好きで。王様の側近でありながら,その失脚を狙っているという背景がもう,「このおじさんは一体どう裏切ってくれるのだろうか」っていう,不敵なところが魅力的で。
マフィア梶田:
なるほど。本作はどの登場人物にも,細かい設定やストーリーが用意されてますよね。
押切氏:
ストーリーが好きといえば,コルネリウスなんですよ。自分が姿を変えられてしまったあとに,偽物が現れて自分になり替わるわけじゃないですか。こういう話は気になりますね。オーディンスフィアの話って,人間関係とか相当シリアスで,分かりやすくはないなってところがいいですよ。
マフィア梶田:
ヴァニラウェアの作品って,これまでも全般的にちょっとダークですよね。世界救うぞっていう王道の感じではなくて,ちゃんと悲劇も描くし,決してただのハッピーエンドには落ち着かない。俺はそのあたりが,押切先生の作風にも近いかなとも思うんですよ。
押切氏:
遠く及ばないですよ。
マフィア梶田:
いやいや(笑)。アトラスも,それこそ「女神転生」シリーズという伝奇・怪奇モノの看板タイトルがあって,押切先生の作品と親和性があるなって思うんですよ。アトラスだと,思い入れある作品ってどれになりますか?
押切氏:
そうだなあ……「怒首領蜂」(※)ってアトラスですよね? アトラスだからプレイしていたってわけではなかったけど,ハマったのは怒首領蜂だなあ。
※アトラスより1997年にリリースされたSTG。開発はケイブ
マフィア梶田:
渋い! アトラスのタイトルの中でも渋いところにきましたね。なんで怒首領蜂だったのですか? いわゆる弾幕系の初期の作品ですね。
押切氏:
なんでだろう……高校生の時だったけど弾幕を避ける快感に目覚めたんですね。いや,めちゃめちゃハマりましたよ。でも,シューティングゲームって怒首領蜂ぐらいで,後には続かなかったなあ。
ああでも,中学生くらいの時に「真・女神転生」はやったかな。そのころにはホラーや怪奇系の世界観は好きで。画集とかも持っていますし。「でろでろ」の妖怪デザインとか,けっこう参考にしましたよ。
マフィア梶田:
金子一馬さん(※)の絵を? ちょっと意外な繋がりですけど,たしかに絵柄はそれこそ違うけど,押切先生の描く妖怪も,金子さんの描く悪魔も,一味違うデザインですよね。
ちょっと意外なところで,アトラス作品が押切先生に影響を与えていたんですね。一番好きなゲームは弾幕系の怒首領蜂ということでしたが(笑)。
※「真・女神転生」シリーズのキャラクターや悪魔デザインを担当する,アトラス所属のイラストレーター / ゲームクリエイター
一人でじっくりプレイできるし,ほかの人のプレイもずっと見ていられる良質なゲーム
マフィア梶田:
気づけば外も真っ暗で,そろそろお開きの時間みたいですよ。
押切氏:
ゲームやってると,あっという間に時間が過ぎちゃうなあ。いやあ,梶田さんのプレイするところが見られて良かったですよ。自分がプレイしていると攻撃対象ばかりに意識が集中しちゃうけど,人のプレイを見ることで,キャラクターのモーションや背景の細かさとか,ほかのいろんなことに気付けました。
僕ね,アトラスの人がプレイしているところもみたいなと思っていたんですよ。どんだけ凄いプレイを見せてくれるかなあって。
マフィア梶田:
じゃあ,ここにいらっしゃるアトラスの女性広報イトーさんにプレイしてもらって,それを眺めながら締めの話でもしましょうか。
広報イトーさん:
え,私ですか!?
押切氏:
お,いいですね。僕は最初,広報さんだって分からなかったんですよ。てっきり梶田さんが,4Gamerの企画で連れてきた女性声優の方だと思ってました。しかし久しぶりだなあ,女性がゲームするところを見るのって。
マフィア梶田:
お菓子を食いながら女性がゲームするところを斜め視点で眺めるって,ちょっと違う“プレイ”感がありますな。先生的には,女性がプレイしている場合,なかなか進めなくて苦しんでいるパターンと,軽やかにこなしていくパターン,どっちがお好みですか?
押切氏:
苦しんでいる方がいいですよね,うまい人がプレイしているのを見ても,サクサク進んじゃって面白くないかもしれない。
マフィア梶田:
やはりそうですか。慣れている人はガチの効率プレイですし,下手な人の方がドラマがあるんですよね。
……話がちょっとそっちの方向に行っちゃいそうなんで,対談の締めに入りますよ。まず俺からひとことなんですが,先生は仕事量が多いんで,ある程度絞っていただいて俺と遊ぶ時間を作ってください!
押切氏:
本当にそのとおりですね。僕は連載を結構掛け持ちするタイプの漫画家だったんですけど,それだとどうしても中身が薄くなるので,ひとつの作品に熱量を捧げたいって意味で「仕事を減らす」なんてことをインタビューでほざきくさった記憶を思い出しましたよ。
……すみません卑屈っぽい話で。
マフィア梶田:
いやいやそれは全然かまわないですよ(笑)。でも先生の仕事量は,素人目に見てもひとりでこなす量じゃないって思うくらい異常だったんで。一時期に比べたら減ったのかもしれませんが,ぶっちゃけ今でもかなり多いと思いますよ。
あと,ふたりでまたなにかやりたいですね。前に映画撮りたいって話はしましたよね。
押切氏:
そういえば言ってましたね,面白いものを撮ろうって。最近はTwitchとかを見ると,いろんな人がゲームプレイなんかを披露していて面白いです。あと羨ましいです。僕も,己のゲームプレイを誇示したいなあと(笑)。
マフィア梶田:
じゃあ4Gamerでやりましょうよ,そういう企画! 不定期でもいいから,番組やりましょう。ここで確約とっちゃいますよ!
押切氏:
いいんですか? こんな日陰の漫画家なんかを出演させても。
マフィア梶田:
なに言っているんですか! いろんな意味でいまもっともスポットライトが当たっている漫画家ですよ(笑)
押切氏:
そうですね,いろんな意味で(笑)。やれたらいいなってことはたくさんあるけど,ただ,来年から忙しくなりそうです。溜まりに溜まったものをやらなくてはいけないし。
マフィア梶田:
来年から本格的に動き出す感じなんですね。ハイスコアガールも復活へ動いているなんて話も聞きますし,楽しみなことだらけですよ。まず楽しみなのは,レポート漫画連載なんですけどね。
押切氏:
最初のほうにも言ったと思うんですけど,あの漫画はオーディンスフィアの良さをまるで語れていないのですよ。僕は性格がねじ曲がっているから,妙な描写がアトラスさんの足を引っ張っているような気がしてならなくって。短い連載ですが,なんとかこのゲームの魅力を描いて行ければと思います。
マフィア梶田:
押切先生の漫画をきっかけに,本作に興味を持つ人がたくさん出たら嬉しいですね。
今日一緒にプレイして感じましたけど,自分でプレイしているときはもちろんだけど,ほかの人のプレイもずっと見ていていられるんですよね。ビジュアルも操作性も,本当に良くできていると思います。
もちろんふたりとも,発売されたら絶対に手に入れるわけですけど,できればまたクリアしてからがっつり語りたいところですね。
押切氏:
そうですね。僕は本当に,今日のことは一生忘れません。梶田さんと一緒にお菓子を食べながら,アトラスの女性社員のゲームプレイを眺めるなんて,こんな贅沢できたことを。
マフィア梶田:
えっ,そこですか(笑)。
押切氏:
ああ,もちろんそれだけじゃないけど,なんて至福の時なんだと。本当に友達の家でゲームしている感じだったし。最終回は今日のことを描いちゃえばいいかな。
マフィア梶田:
いいですね。対談はここで終わりですが,もうしばらくお菓子を食いながら,ゲームを続けましょうか。
――2015年10月29日収録
Infomation
11月14日には最新ゲーム情報を実機プレイを通してお届けする公式ニコニコ生放送「最新アクションRPG『オーディンスフィア レイヴスラシル』特番」が放送される。
グウェンドリン役の川澄綾子さん,メルセデス役の能登麻美子さんのゲームプレイが見られる,貴重な(?)機会なのでお見逃しなく。
また,公式サイトの「Infomation」では,広報イトーさんが担当している「みなさまの質問・ギモンにお答えします!『スペシャルQ&A』」が公開中だ。本作はもちろん,イトーさんにも興味を持った人はこちらもチェックしよう。
◆公式ニコニコ生放送
「最新アクションRPG『オーディンスフィア レイヴスラシル』特番」
【日時】
2015年11月14日(土)20時〜22時30分
(※終了時間は予告なく前後する可能性があります)
【番組URL】
http://live.nicovideo.jp/gate/lv240905840
【内容】
アトラス×ヴァニラウェアプロジェクト『オーディンスフィア レイヴスラシル』の最新ゲーム情報を実機プレイを通してお届けいたします。
第一部では本作で新たに追加された楽曲も紹介いたしますのでぜひご覧ください。『オーディンスフィア レイヴスラシル』の最新情報は,このニコ生で!
【出演(敬称略)】
川澄綾子(グウェンドリン役) / 声優
能登麻美子(メルセデス役) / 声優
安元洋貴 / 声優
歌広場淳(ゴールデンボンバー)/アーティスト
MC:松澤千晶
ほか
◆公式サイト「Infomation」
「みなさまの質問・ギモンにお答えします!『スペシャルQ&A』」
第1回:http://atlus-vanillaware.jp/osl/news/304/
第2回:http://atlus-vanillaware.jp/osl/news/444/
第3回:http://atlus-vanillaware.jp/osl/news/559/
「Infomation」URL:http://atlus-vanillaware.jp/osl/news/
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