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マフィア梶田の二次元が来い!:第280回「ワイキキビーチでロストレガリアに思いを馳せる月英学園-kou-」
しかし,アレですね。実際にやってみて分かったのですが,意外なことに海外のホテルだとむしろ自宅よりも仕事が捗りますね。作家先生がわざわざ旅館などで執筆する理由が分かるような気がします。たまには環境や気分を変えるのも大事なのだなと,しみじみ思いました。ハワイ,初めて来ましたが良いところです。
「RADIO 4Gamer Tap(仮)」の第24回では,Aimingより配信中の「ロストレガリア」(iOS / Android)を特集。ゲストとして運営チームリーダーを務める遠藤 翼氏をお招きし,ゲームの魅力をご紹介いただきつつマルチプレイでボスに挑んできました。
「ロストレガリア」ダウンロードページ
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本作ですが,まさにPCの王道MMORPGをそのままスマホに落とし込んだような作品になっており,最大5人遊べるパーティプレイでは,しっかりとMMORPGの醍醐味を味わうことができました。また,十字架型の武器やマウントできるペットなど,しこりん(岡本信彦さん)が大興奮しているので,その様子もぜひお楽しみ下さい。
アークシステムワークスは2015年11月4日,PCゲームのダウンロード販売サイト「Steam」にて「月英学園-kou-」の配信を開始しました。価格は2480円(税込)。
本作は2013年10月に発売された同名のPS Vita向けソフトの移植版で,古くから「鬼」の伝承が伝わる桃生町(ものうちょう)を舞台に,「ハザード」と呼ばれる異形の怪物と,対ハザード組織「月英学園生徒会」との戦いを描いた学園伝奇アドベンチャーです。
「月英学園 -kou-」公式サイト
「月英学園 -kou-」Steamページ
PS Vita版が発売されたのが約2年前であり,同人時代まで含めればもう5年近くの歴史がある作品ですが,今現在でもさまざまなコラボレーションやグッズの企画が動くなど,非常に根強い人気を持っています。
実のところ,杉田氏と個人的に交友のある筆者も最初期からさまざまな形で関わっている作品でして,僭越ながら登場キャラクターのひとりである「田中太郎」のモデルであったり,ゲストシナリオの執筆なども担当していたりします。
今回はSteamでの発売を記念して……というわけではないのですが,本連載でもPRしてより多くの人に知ってもらいたいなと。しかしながら,前述したように原作は随分前に発売されていますし,ゲーム内容を含めて情報なんぞ出尽くしているんですよね。ハッキリ言って,いまさら書くべきことってあまりないんですわ。
……とはいえ,ひとりでも多くのゲーマーにPCでも「月英学園-kou-」をプレイしてもらいたいので,ちょいと一般的な紹介記事とはアプローチを変えて,制作に関わったからこそ書ける裏話などを絡めつつ紹介したいと思います。
あ,それと公式サイトのキャラクター紹介で相棒の佐藤はいるのに,どういうわけか田中がハブられていることは絶対に許さないよ。顔か? やっぱり顔なのか?
杉田ワールドが詰め込まれた「パンドラの匣」
どこか懐かしく強烈な個性を持った作品
「月英学園-kou-」は,いわゆるビジュアルノベルの作品であり,選択肢を選びシナリオを読み進めていくオーソドックスなスタイルとなっています。世界観は冒頭でも軽く紹介しましたが,「学園伝奇アドベンチャー」というジャンルからも分かるように「ラブコメ」から「能力バトル」まで何でもござれなみんな大好き“学園モノ”と,幻想的な存在を扱った“伝奇モノ”が合わさって最強に見える感じのアレ。ちょっと古い作品になりますが,「東京魔人學園」シリーズとか面白いですよね……。
表向きは生徒会という形をとっている対ハザード組織に所属するヒロイン「御月英理」と,月英学園に転校してきた主人公「遠山 浩」。この二人を中心に展開する物語は,とくに1980年代後半〜90年代のアニメやゲームに触れてきたオタクの琴線に触れるものがあるはずです。原作者である杉田氏の独特な感性も相まって,どこか懐かしさを感じさせながらも強烈な個性を持った作品になっています。
遠山 浩 |
御月英理 |
ヒロインたちとのラブコメや,男友達との友情,異形の怪物との熾烈なバトルなど学園伝奇モノとして押さえるべき点は押さえつつ,クライマックスには大きなどんでん返しが……。異口同音に「ハッピーエンド」や「バッドエンド」と評することはできず,アレコレと考えさせられる“引っかかり”をプレイヤーの心に残します。4GamerにはPS Vita版のプレイ動画がアップされているので,作品の雰囲気をもっと知りたいという人はぜひそちらも確認してみてください。
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総プレイ時間はおよそ40時間で,本編のエンディングは10種類のマルチエンディング。メインヒロインである英理はもちろんのこと,ストーリーの核心に関わってくるキャラクターには個別ルートがあります。ひとつひとつクリアしていくことで最終的に真のエンディングに辿り着くという,ビジュアルノベルではお馴染みの構成ですね。コンプリートを目指すのであれば必然的に繰り返しプレイすることになるわけですが,PC版では従来のオートモードやスキップ機能に加えて「次の選択肢までスキップ」という機能を実装。細かい点ではありますが,PS Vita版よりもプレイアビリティが向上しているのが嬉しいです。
また,本作はアークシステムワークスの看板タイトルである「BLAZBLUE」シリーズのアドベンチャーモードで培ったノウハウを活かし,ただの「紙芝居」ではなく派手なエフェクトやカットインを交えることで物語の“魅せ方”にもこだわっています。ビジュアルノベルではありがちな棒立ち会話でプレイヤーを退屈させないよう,カメラワークを工夫することで高い臨場感を演出することに成功していますね。それを大画面で楽しめるのは,PC版の大きな利点と言えます。伊藤賢治氏による壮麗な音楽や,声優陣の迫力ある演技に関してもせっかくのPC版なのですから,ぜひとも良いスピーカーで音量を上げて堪能してほしいです。
そういえば自分は「月英学園」最初期のプロットを見せてもらった際,あまりにも風刺的で鬱々とした展開に思わず「杉田さん,これじゃあエンターテイメントにならんですよ!」と言ってしまったのですが,いざできあがってみると“毒”が丁度いい感じになじんでおり,むしろ個人的にも好きな傾向のストーリーにまとまっていたので驚いた覚えがあります。
これは杉田氏が「グニャングニャンにヒネクレた性格」をしつつも,根っこではサービス精神が豊かで「人々を楽しませる」ということを本質的に理解しているからこその結果なんじゃないかなと。それに加えてやたら豪華なスタッフや出演声優陣……つまり,杉田氏の人望によって集まった人々が上手い具合に化学反応を起こしたという点も理由として大きいのではないでしょうか。なにせ自分を含め,本作に関わっている人間のほとんどは杉田氏とプライベートでも深い付き合いがありますから。商業化しても良い意味で“同人的”なノリは変わらず,強い信頼関係と「面白い物をみんなで作りたい!」という高い熱量によってできあがった作品なのですよ。
もちろん,ゲーム自体はそのような事情など一切知らずとも楽しめますが,もしも杉田氏のディープなファンであると自負している読者がいるならば,その辺も加味したうえでプレイしてみると,さまざまな小ネタや物語に込められたメッセージを,より深く理解することができるのではないでしょうか。なお,4Gamerでは過去に杉田氏とプロデューサーである森 利道氏のインタビューも「こちら」に掲載しているので,興味があればそちらもあわせてチェックしてみてください。
ちなみに,物語の舞台となっている桃生町の大半は,杉田氏の地元である埼玉県の某所をモデルにしており,背景などの取材には筆者も同行しました。
具体例を挙げるならば,御月家の外観などは杉田氏の友人宅がそのままモデルになっており,見る人が見れば一発で分かってしまうほど酷似しています。その他にもさまざまな場所が本作の背景美術に影響を与えていますが,申し訳ないことに筆者が覚えていることといえば,杉田家近くの河原に大量のカラスがひしめいており,その不気味極まりない光景にドン引きしたことくらいですね……。地獄に存在すると言われる賽の河原みたいでした。
ある意味ハザードが徘徊する桃生町よりもホラーな場所でしたが,そんな話はさておき。本作にはこのようにシナリオ面でもビジュアル面でも,杉田氏の原風景や人生観が盛り込まれており,中でも“人間関係”に対するニヒリスティックな価値観が垣間見えるあたりに,共感できる人はとことん共感できるかと。
杉田氏とは,もうかれこれ8年ほどの付き合いになりますが,筆者から見た杉田氏は頑迷なほどに強い信念と思春期の繊細さを併せ持っており,その危うさすら感じる“不安定な魅力”が多くの人々を惹き付けてやまないのではないかと勝手に思っているんですよね。
「月英学園-kou-」はまさしくそんな杉田氏の絶望と希望が入り混じった内面を深く知ることができる「パンドラの匣」であり,当人のファンであれば必携のアイテムです。そうでなくとも,似たようなメンタリティを持った人間がプレイすれば一生忘れられないゲームになることでしょう。
Steamで手軽に楽しめるようになった「月英学園-kou-」。この機会に,ぜひとも「杉田ワールド」を味わい尽くしてくださいませ。
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(C) 杉田智和/ARC SYSTEM WORKS.
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