プレイレポート
手ごわい敵と歯ごたえのあるバトルが楽しめる「GOD WARS 〜時をこえて〜」プレイインプレッション
「GOD WARS 〜時をこえて〜」公式サイト
和をベースとした親しみやすい世界観と,手ごわい敵達
本作は,日本最古の歴史書「古事記」とおとぎ話の世界を融合させたタクティクスRPGだ。
古代日本を思わせる美しい「瑞穂国」では,文明の発達に伴い,自然が破壊され,人々が争うようになった。「富士国」の女王でありながら生贄として育てられてきた少女・カグヤは,幼馴染みの少年・キンタロウに助けられ,自らの運命を切り開くべく旅に出る。
外の世界では,怒りに駆られた神々「荒御霊」が暴れ,「出雲国」と「日向国」がにらみ合うなど問題が山積み。サクヤとキンタロウの旅はどのように展開していくのだろうか?
タクティクスRPGといえば西洋風のハイファンタジー的な世界観を持つものが多いが,本作の世界観は和風で統一されているのが特徴だ。舞台となる瑞穂国は桜が咲き,鳥居や藁葺きの屋根を持つ家々が立ち並ぶといった土地で,見ていてどこか懐かしさを感じる。
本作のテーマの一つに“文明を発達させた人間による自然破壊”と,これに対する“神々の怒り”があるのだが,こうした和の情緒が溢れる風景が消えていくことを思うと感情移入もひとしおだ。
登場するキャラクターは日本神話やおとぎ話で馴染み深い神々や英雄達。竹の結界の中で育てられたカグヤ,力持ちのキンタロウとそのお供のクマ,そして三匹のお供を連れたモモタロウなど,日本人なら誰もが知っている人物ばかりで親しみやすい。
また,オオクニヌシがあちこちの女性に手を出すプレイボーイだったり,青鬼のアオメが金髪碧眼のせいで差別を受けていたり(鬼のモデルになったのが漂着した外国人であるという俗説がある)と,神話や伝承に基づいたネタが盛り込まれているのも楽しい。こうした方面に詳しい人なら,より楽しめるのではないだろうか。
本作では,そんなカグヤ達が瑞穂国の各地を転戦していく。バトルは斜め見下ろし型の箱庭風マップで展開し,カグヤやキンタロウ達を操作して,行く手を阻む敵を打ち倒していくのだ。バトルでは,敵味方が入り乱れて「俊敏力」の高い者から順番に行動していくため,行動順を確認しながら戦うのがポイントだ。
戦場は,山や谷があり,川が流れているなど多彩なステージが用意されているが,戦いを有利に進めるには,こうした地形をうまく利用する必要がある。とくに重要なのが,敵味方の高低差と位置関係だ。
敵より高い位置や側面,背後から攻撃すると命中率がアップし,与えるダメージも大きくなるのが本作のバトルにおける大原則。なかでも「弓矢」や「弩」といった飛び道具は高い所にいると射程が延び,低い所だとその逆となる。そのため,攻撃する際にはできるだけ高い位置を占め,側面や後方へと回り込むと効果的。周囲の地形を見て,しっかりと戦術を練る必要があるのだ。
本作の難度は,はっきり言って高めだ。敵は頭が良く,高所に登ったり,味方の後方へ回り込んできたりと,前述の大原則をしっかりと守ってくる。おまけに敵によっては,HPが減ると逃げてから回復するし,仲間同士で能力アップのスキルを掛け合ったりするのも小憎らしい。
また,攻撃スキルの使い方も手慣れたもので,HPがじわじわ減少する「病毒」や,移動力が半減する「鈍足」といった状態異常を容赦なく与えてくる。本作では,同じ状態異常が重複するため,病毒のときに病毒のスキルを食らうと,よりHPが減る「猛毒」に,鈍足を重ねて食らうと移動できなくなる「足止」に……というように,よりキツい状態異常にかかってしまう。もちろん敵も,こうした点を踏まえて攻撃してくるのでかなり厄介だ。
あるステージでは「高所に陣取った弓兵から,病毒のスキルを含む遠距離攻撃を受け,敵のところにたどり着く前にやられてしまう」ようなことすら起こるのだから恐ろしい。
幸い,本作には「簡単」「普通」「難しい」という3段階の難易度設定があり,戦闘中以外ならいつでも変更できる。最初は「普通」でスタートし,苦戦するようなら「簡単」にしてしまうといいだろう。難度を下げると,敵の動きが明らかに変化する。例えば,ボスの動き一つとっても,「普通」なら前線に出てきて雑魚と連携して攻撃してくるような局面でも,「簡単」だと後ろで待っているため各個撃破がしやすくなるといった具合だ。
また,ステージの合間には「依頼」というフリーミッションを受けることもできるので,ここでお金や経験値を稼ぐのもいいだろう。
そんなバトルで鍵となるのが「けがれ」の値だ。これはMMORPGにおける「ヘイト」のような働きをする数値で,敵を攻撃したり,仲間を回復したりすると上昇する。敵はけがれが高い仲間を狙ってくるため,前衛役がわざとけがれを上昇させるスキルを使って注意を引きつけたり,回復役のけがれが溜まったらこれを下げるスキルで安全を確保したりといった具合に,うまく管理することで有利にバトルを展開できる。
敵はかなり手ごわいが,地形やけがれのシステムを理解し,うまく作戦が決まったときは爽快だ。とくにボスは巨体で迫力があるうえ,強力なスキルを使ったり雑魚を呼んだりと容赦ない攻撃をしてくるだけに,打ち破ったときの喜びは大きい。
3つの職業を組み合わせる,多彩なキャラクター育成
手ごわい敵に立ち向かうために欠かせないのが「職業」を組み合わせて行うキャラクターの育成だ。各キャラクターは「主職業」「副職業」「固有職業」という3つの職業を使いこなす。
主職業,副職業は「戦士系」「回復支援系」「攻撃妨害系」の3系列から自由に選択可能で,例えば主職業に戦士系の「戦人」,副職業に回復支援系の「祈祷士」を選べば,前衛で戦いながら回復もこなせる……といった具合に,戦術に合わせて幅広く設定できる。
敵を攻撃したり,スキルを使用したりといった,戦闘中のさまざまな行動で経験値が蓄積されていき,一定値に達するとキャラクターや職業のレベルがアップ。職業のレベルが上がると,より上位の職業が開放される。職業の中には,移動力を上げるスキルを持つ「山伏」や,反撃能力に優れた「侍人」,遠距離から状態異常を与える「叉鬼」といった個性的なものも存在しており,レベル上げのモチベーションも高まる。
固有職業はキャラクターの人となりを表すもので,こちらは変更できない。森に暮らす木こりであるキンタロウの場合だと「森人」という固有職業を持ち,斧の命中率をアップさせたり,マップの特定地点から薬草を採取したりできる。
また,オオクニヌシの固有職業「武神」は本人がプレイボーイとあって,女性だけに効くスキルが揃っているなど,それぞれユニークなものが用意されているので,ゲームを進めて新しい仲間が増えるのが楽しみになってくる。
スキルは「MP」というリソースを消費して使うが,戦闘時は0からスタートし,ターンの経過とともに増加していく。いきなり強力なスキルを使いまくることはできないが,MPを増やすスキルを使ったり,MP増加量を上げるパッシブスキルを装着したりと,カスタマイズを工夫することによって補うこともできる。
スキルの効果は攻撃や回復などさまざまだが,とくにユニークに感じられたのが,特殊なユニットをマップ上に設置するタイプのもの。敵の攻撃を引きつける「苔人」や,隣接した敵に自動でダメージを与える「焔石」はうまく使えば戦いを有利にできるが,置く場所の判断を誤るとまったく役に立たないなど,戦局を読む目が問われるのが面白い。
また,物語を進めると「奥義」が開放される。こちらは,敵にダメージを与えたり,仲間がダメージを受けたりすると増加する「奥義ゲージ」を使って放つ強力なスキルだ。
仲間全員の状態異常を治したうえに,数ターンだけ状態異常を受け付けないようにする「神儀天詔琴の調」や,HPが減り続ける代わりに攻撃力が上昇する「神儀烈火解放」など強力なものばかりで,バトルをさらに奥深くしてくれる。今後,物語が進むにつれて,どんな奥義が出てくるのか楽しみだ。
バトルの面白さと,キャラクターの楽しさでプレイヤーを引き込む
本作のプレイフィールをまとめると,「手ごわいけれど,バトルの面白さとキャラクターの楽しさでプレイヤーを引き込むタクティクスRPG」といったところ。
バトルの難度は高めだが,けがれのシステムとキャラクターカスタマイズを理解すると面白さがアップする。やり込み系の人なら,いろいろな職業のレベルをコツコツと上げて,たくさんのスキルを習得していくのが楽しみの一つになるだろう。
また,誰もが知っている神話やおとぎ話のキャラクターが登場するため,「今度はどんな仲間が出てくるのだろうか」という興味で,ついついプレイし続けてしまう。プレイボーイだがサッパリとした好青年のオオクニヌシと,彼のもつれた女性問題をさばくイナバの迷コンビぶりや,メガネで巨乳と属性てんこ盛りの美女でありながら,差別された過去から世の中を斜めに見てしまうアオメなど,現代風のアレンジも面白い。
一方,バトルやUI関連で気になるところもいくつかあった。バトルに関しては繰り返しになるが,敵側に有利な布陣でスタートすることが多いこともあり,やはり難度は低くない。依頼をこなして経験値やお金を稼げばいいものの,初心者ほどストーリーをまっしぐらに追ってしまうと思われるので,チュートリアル的なステージを増やすなどして,もう少し時間をかけてゲームに慣れていける仕組みがあればと感じられた。
UIに関しては,スキルの選択時に少々手間取ることがあった。本作では主職業,副職業,固有職業という3つの職業がそれぞれ固有のスキルを習得していく。そのため,ゲームが進むとリストに結構な数のスキルが並ぶことになる。スキルのソート機能や,直前に使用したスキルが記録される履歴タブなどをうまく活用したいところだ。
今回の記事執筆にあたっては,基本的にPlayStation 4版をプレイしているが,PlayStation Vita版に触れることもできたので,そちらのプレイフィールも軽くお伝えしておきたい。
本作は画面に表示される情報量が多いゲームなので,遊び始める前はPS Vitaの画面サイズでそれがどう見えるか気になっていたが,実際にプレイしてみると,やはり全体的に文字が小さく,とくにステータス画面の文字やアイコンの判別などが少々つらいと感じた。また,戦闘開始時の読み込みが若干長いという点も,筆者としては許容範囲だが,気になる人はいるかもしれない。ただ,いったん戦闘が始まれば動作のもたつきなどは見られないので,その点はご安心を。
歯ごたえのあるバトルに加え,職業のレベル上げなどのやり込み要素もある,タクティクスRPGとしては久々の大作となる「GOD WARS 〜時をこえて〜」。総じて手がたくまとまっており,待った甲斐のある完成度に仕上がっているので,この手のゲームが好きな人にはぜひお勧めしたい。
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(C)2017 KADOKAWA GAMES
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