「蒼き革命のヴァルキュリア」国歌斉唱イベントが開催。光田康典氏の指揮のもと，50人のファンと一緒にユトランド王国の国歌を歌ってきた

　2016年10月8日，セガゲームスが2017年1月19日に発売を予定している「蒼き革命のヴァルキュリア」（PlayStation 4 / PlayStation Vita）のイベントが都内のスタジオで開催された。
　このイベントは，本作のサウンドを担当する作曲家 光田康典氏の指揮のもと，抽選で選ばれた約50人のファンにより，ゲーム内で使われる「ユトランド国歌『麗しの地』」を収録するという内容だ。

　筆者も4Gamer代表として，取材しつつも収録に参加し，ファンと一緒にユトランド王国の国歌を歌ってきたので，その模様をお伝えしたい。

収録当日は雨天にもかかわらず，幸運なファンがスタジオに集結した

「蒼き革命のヴァルキュリア」公式サイト

（左から）光田氏，小澤氏，プロデューサーの下里陽一氏

　収録には「蒼き革命のヴァルキュリア」のディレクターを務める小澤 武氏も立ち会い，「もともとはプロに歌ってもらう予定でしたが，重要なシーンで使うにあたり，作品に情熱を持たれている皆さんに来ていただきました。歌のうまいへたは関係ありません。必要なのは，皆さんの“愛”だけです」と参加者を激励した。
　また，指揮を執る光田氏は，参加者から見て正面の壁の上方を指差し，「あそこにオフィーリア（本作のヒロイン，救国の歌姫）がいます。皆さんは城の中庭にいるユトランド王国民になった気持ちで歌ってください」と指導していた。


　参加者全員にイヤホンが手渡され，オーケストラ演奏を聞きながら，モニターに映し出される歌詞を見て歌う，という流れで収録が行われた。当初はリハーサルを2，3回行ったあと，本番の収録という予定だったが，参加者は初回のリハーサルから光田氏も驚く歌唱力を発揮し，2回目には早くも本番同様の収録を行うことに。


　収録の様子を取材していた筆者は3回目の合唱から参加したのだが，とにかく全員が初めての国歌斉唱とは思えないほど，上手に歌い上げていたのが印象的だった。事前にPVが公開されていたので，しっかり練習を積んできた人も多かったことだろう。


　全員による合唱だけでなく，10〜15人による個別収録も行われた。これはオフィーリアの歌に感銘を受けた国民が，少しずつ彼女の歌に加わっていくという演出のための収録だ。スタジオではオフィーリアの歌に，少しずつファンの合唱が重ねられていく様子も披露された。
　そして最後に行われた全員での合唱は，歌詞の3番からの盛り上がりを強調した演出となり，締めくくりにふさわしい熱唱となった。


　イベント後には，光田氏と小澤氏，プロデューサーの下里陽一氏への囲み取材も行われた。

　今回の企画は小澤氏による発案で「プロでは出せない，大勢の国民の合唱という“生のリアリティ”」にこだわり，ファンに協力を呼びかける形で募集をしたところ，なんと400人以上の応募があったという。その中から抽選で約50人が参加したわけだが，当然ながらこうした場に慣れていない人が多いことを想定し，光田氏はファンをサポートするためにコーラスのスタッフを用意していたそうだ。
　しかし，「サポートが必要がないほどの上手さだった」と開発陣からは驚きと賞賛の声が挙がっていた。


　音に貪欲な光田氏も，今回の企画には即賛成だったという。最初はセガゲームス本社ビルの1階で収録するという話もあったが，音質の都合によりスタジオ収録となったそうだ。光田氏いわく「50人という大がかりな収録は，これまでに体験したことがないです。プロを呼んだコーラスでも30人ぐらい」とのことで，「本当にうまくいってよかった」と胸を撫で下ろしていた。
　下里氏も「無事，終わったからいいけど，結構無茶なことをした」と語っている。

　収録内容については，「最初は少し緊張されていた様子もありましたが，最後のテイクではそれも吹っ切れて，皆さんの感情が本当に伝わってきました。小澤さんが欲しかったものが撮れたのではないでしょうか」と光田氏は絶賛。その最後のテイクでは，開発陣は感極まったという。さらに，全員が収録後に嬉しい顔で帰っていったことが，本当に嬉しかったとコメントしていた。


　なお，今回収録した「麗しの地」はゲームの終盤で流れる予定。和やかな収録の雰囲気とは，かなり違うシーンとなるようだ。小澤氏が作詞を担当した「麗しの地」は，オフィーリアのテーマ曲とも言える楽曲であり，その対となる“ヴァルキュリアの歌”も存在するが，こちらはメインテーマを歌うサラ・オレインさんが担当する。

　初めて作詞したという小澤氏は，物語の設定を複雑に考えず，素直に「ユトランドの国民が誇りを持つような歌にする」ことがテーマとなった。作詞にあたっては，とにかくあらゆる国の国歌を聞いて，そのイメージをつかんでいったそうだ。
　一方，作曲担当の光田氏は，ピアノで曲を作ったため，小澤氏に「学校の校歌のよう」と心配されたことを明かした。しかし，国歌も校歌も「人々をまとめる曲」という同じコンセプトであり，ピアノからオーケストラ演奏になったとき，校歌から国歌へと姿を変えたというわけである。


　最後に，開発陣からファンに向けて送られたメッセージを掲載して本稿の締めとしたい。

小澤氏：
「私のわがままで企画したイベントに集まっていただき，本当にありがとうございました。また，選に漏れてしまった人には申し訳ありませんでした。皆さんに期待されているんだな，ということをひしひしと感じました。それに応えられるよう，製品版に向けた最後の一仕事を頑張ろうと思います。ご期待ください」

下里氏：
「音楽には光田さんを起用し，新たな試みをたくさん採り入れ，PS4で最高の音楽をお届けすることにこだわりました。光田さん自身も『これ以上ないものができた』と自負されるほど，いい曲を書いていただきました。ぜひ期待してください」

光田氏：
「これまで手掛けてきたゲーム音楽の中で，一番盛りだくさんの内容になりました。今回のイベントも含め，今までにないチャレンジをしています。それがいい形で収まっていますので，ぜひゲームをプレイして，シナリオやグラフィックスはもちろん，音楽も楽しんでいただければと思います」

「蒼き革命のヴァルキュリア」公式サイト