イベント
感度の良さがウリのワイヤレス型モーショントラッキングセンサー「STEM System」が10月に発売決定
「Razer Hydra」の開発メーカーでもあるSixenseの最新モデルとなる「STEM Sytem」は,当初からVRヘッドマウントディスプレイの周辺機器として開発が重ねられてきたものだ。ポジショナルトラッキングは,一般的なジャイロスコープや加速度センサーではなく,独自に開発したベースユニットから発せられる電磁場を利用して,最大5つのSTEMと呼ばれる子機の位置を読み取るという,ユニークな仕組みになっている。
子機の構成は,アナログスティックやトリガーボタンを有した2つのコントローラと,ヘッドセットの頭部および両足に装着することで,さらに細かいトラッキングが可能になるSTEMパック3機で構成される。
これらのSTEMは,リチャージャブルバッテリーが内蔵されたワイヤレスユニットであるため,自由に動き回りながらゲームを楽しめるのが特徴だ。すでに100を超えるタイトルをサポートしているRazor Hydraの代替コントローラとしても利用できるようだ。
古くからアナウンスされていた周辺機器なだけあり,これまでにもさまざまなイベントで体験デモが行われていた記憶があるが,SVVR 2016で公開されたのは,さらに小型化された基盤とSTEMユニットである。電磁波にゆがみが生じないよう,極力プラスチックを利用したベースユニットは30%程度,STEMパックに至っては約50%の小型化に成功しているようだ。ちなみに,これまでのイベントで公開されてきた小型化前の製品は,開発キットとしての利用になるという。
STEMシステムは小型化しただけでなく,これまで予定されていたRF(Gazell)プロトコルに加えて,133Hzまでの送受信が可能なBLE (Bluetooth Low Energy)にも対応したデュアルバンドに進化した。これはつまり,ほかのモバイル機との相性も格段に上がったことを意味し,Samsungの「Gear VR」などへの対応も射程距離に入ったことになる。その値段はSTEMユニットの数によって変化し,299ドルから579ドルまでの異なる価格帯でパッケージが販売される予定だ。
会場では,旧型STEM Systemを利用し,「Siege VR」という新しいデモが展示されていた。これは2人協力プレイが可能なアクションゲームで,STEM Systemと連動させたRiftと,専用コントローラーで操作するViveを使って,押し寄せる敵兵の侵攻を防いでいくというもの。
プレイヤーは弓兵となるのだが,門を突き破ろうと攻城兵器を押して来る兵士達を,しっかりと射貫いていくという細かい動作も難なくこなせるようになっており,このあたりに電磁場を使ったトラッキングシステムの優秀さが見え隠れする。
しかし,発売直前の段階でも自社製デモを公開していることからもお察しのとおり,SixenseはSDKを無料配布してからしばらく経っているのにもかかわらず,今のところは公式サポートを表明しているソフトウェアメーカーがほとんどない。
その裏には,STEMの開発が進められていくうちに,ViveやRiftの専用VRモーションコントローラが発表されしまったという事情がある。ここまでに何度も発売の遅延が繰り返されてきたのも,こうしたメーカー側の発表に翻弄されて,仕様変更を繰り返してきたためだという。この辺りはサードパーティとしてのサガでもあるだろう。
もっとも,オープンプラットフォームの周辺機器として,当初からのコンセプトは守られているため,OSVRがリリースされる頃には重宝されるだろうし,ワイヤレスという利点を考慮すれば,ヘッドセットからケーブルが出ているハイエンドモデルよりも,モバイルVR向けのコントローラとしての価値の方が高いように思える。
2016年は,Google Cardboard系統のモバイルVRデバイスから,Sony Interactive Entertainmentの「PlayStation VR」までを含め,25種類程度のVRヘッドセットが年内にリリース予定という,まさにVRの年である。そんな中で,現実的かつ自然な操作性を目指して開発が進められてきたSixenseのSTEM Systemは,どこまで評価されることになるのだろうか。
Sixense 公式サイト
Copyright (C) 2023 Razer Inc. All rights reserved