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クマが縦回転して街が分裂し,宇宙は原子の中にある。世界のすべてが分かりそうな気がするゲーム「Everything」のプレイレポート
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印刷2016/12/05 21:17

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クマが縦回転して街が分裂し,宇宙は原子の中にある。世界のすべてが分かりそうな気がするゲーム「Everything」のプレイレポート

 アメリカのアナハイムで現地時間の2016年12月3日と4日に開催されたイベント,PlayStation Experience 2016。そこに出展されていた,不思議なゲーム「Everything」のプレイレポートをお届けする。

 この業界には,ときおり「奇妙」としか表現できないゲームが登場する。PlayStation史上で言えば,アスミック・エースから発売されたPlayStation用ソフト「LSD」が,その代表例だろう。

 2014年7月にSteamでリリースされた“山を眺めるだけのゲーム”,「Mountain」もその一例と言える。そして,本作「Everything」は,その「Mountain」を開発したデイビッド・オライリー氏による新作なのだ。


 本作には明確な「クリア目標」や「主人公」というものが存在しない。プレイヤーは,フィールド上のさまざまなオブジェクトに“入り込む”ことで,そのオブジェクトを動かしていく。基本的にすべてのオブジェクトに入り込むことができ,自由に動かせる。それはイヌやクマといった生物はもちろん,自動車や消火栓でも同様だ。プレイヤーが入り込んだ消火栓は,地面の上を滑って動き出す。なお,クマや貨物コンテナなど一部のオブジェクトは,なぜか90度ごとの縦回転でガタガタと移動する。

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 何かに入り込んでいるプレイヤーは,近くにある同規模のオブジェクトへ自由に移り込める。入り込んだオブジェクトはライブラリに登録されていくので,本作に何か具体的な目的を見出すならば,ライブラリの充実がそれになるだろう。しかし,それはシステムの一部にすぎない。

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 入り込んでいるオブジェクトは,同種のオブジェクトとの接触で群れを作り,群れの中で“子供を作って”繁殖できる。こうして群れが大きくなると,その群れと同規模のオブジェクトへ移り込めるようになる。なので,犬の群れからトラックに移り込み,トラックの群れから家屋に移り込み,家屋の群れからビルに移り込めるというわけだ。なお,今回のデモでは,L1で減少,R1で増殖と,簡単に群れの個体数を調整できた。

 読者が付いて来てくれているのかそろそろ不安になってきたが,まだ続ける。ある程度まで群れの規模が大きくなると,“Ascend”によってフィールド自体に移り込み,上位のフィールドを移動できるようになる。つまり,都市の群れからAscendすると島に移り込んで地球上を動けるようになり,島の群れからAscendすると地球に移り込んで宇宙空間を動けるようになるというわけだ。逆に“Descend”すれば下位のフィールドへと移行する。

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 先ほどの不安は確信に変わりつつあるが,まだ続ける。例え宇宙に出たとしても,やることは基本的に同様だ。筆者の場合は,地球を増やしてSupermassive sun(大質量恒星)へと移り込んだ。さらにAscendを進めると,普段イメージする宇宙とは異なるスケールの,見たことのない姿の宇宙へと移行していく。

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 自分が正気なのかも若干疑わしくなってきたが,まだまだ続ける。入り込みの対象はRegular Nested Structure(Large)――宇宙物理学に詳しくはないが,入れ子構造宇宙とかフラクタル関係空間とか,多分そういうやつだろう――などになりつつ,Ascendを続けていく。すると,入り込んでいる対象がCarbon(炭素)になった。

今まで見ていた宇宙は炭素の中にあったのだ
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 そう,このゲームでは,原子に1つの宇宙が収まっているのだ。その原子が存在する宇宙はまた外側の原子の内にあって,外側の原子が存在する宇宙はさらに外側の……と,1種の回帰的な入れ子構造で本作の世界は構成されている。「だから何だ」と言われればそれまでのシステムなのだが,この短く壮大な旅を一周したときは,奇妙な感動を覚えた。

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 もし「変なゲームを遊びたい」と思ったら,この「Everything」というタイトルを思い出してほしい。本作はPS4のほか,PC/MACで2017年第1四半期にリリースされるとのこと。本作のなかでさまざまなオブジェクトを発見したプレイヤーは,ゲーム以上の何か大きな発見をつかむだろう。

ライブラリに登録されたオブジェクトは,サイズに関係なく任意に呼び出せる。ビッグスケールの宇宙をクマが漂う
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