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“6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)
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印刷2016/08/20 00:00

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“6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)

 さまざまなゲーム開発会社にスポットを当てて紹介していく「ゲーム開発会社探訪」。第3回は,「大神 絶景版」「ゼルダの伝説 風のタクト HD」「FINAL FANTASY 零式 HD」など,高い技術力でコンシューマ・スマホを問わずにゲーム開発を行っているヘキサドライブが2016年4月に移転したばかりの東京開発拠点を訪問して,同社代表取締役社長兼CEO 松下正和氏と,同社取締役・東京開発責任者 齊藤康幸氏に,オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて話を聞いてきた。

左から,ヘキサドライブ取締役・東京開発責任者 齊藤康幸氏,同社代表取締役社長兼CEO 松下正和氏
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ヘキサドライブ公式サイト



エントランスもロゴも格好よく


4Gamer:
 東京事務所の新開設,おめでとうございます。エントランスが格好いいですね!

オシャレなエントランス
画像集 No.002のサムネイル画像 / “6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)
松下正和氏(以下,松下氏):
 大阪(本社)もそうですが,エントランスなど会社の顔になるところは,オシャレな感じがいいよねと思っています。

齊藤康幸氏(以下,齊藤氏):
 エンタメを創る,デジタルでやっているというサイバー感をキーワードに,東京は白を,大阪は黒を基調に,コーポレートカラーのオレンジを配色して……という感じですね。ちなみに大阪は松下の趣味,東京は僕の趣味です(笑)。

4Gamer:
 今日のお二人の服装も白と黒ですよね(笑)。

一同:
 (笑)

齊藤氏:
 実は,この東京事務所の会議室は壁を取り外すと,60人ぐらい入れる大きなスペースになるんですよ。学生さんに直接「ここが働く場所なんですよ」とお伝えできるので,会社説明会もここでやっています。

松下氏:
 きっかけになったのは,最初に大阪で自前のオフィスを構えたときに掛かってきた営業の電話なんですよ。そこがデザイナーズオフィスのような,格好いいデザインをしている会社でして。

齊藤氏:
 創業当初から「大手からスピンアウトした小さい会社だから,仕方ないよね」とは思われたくないと考えていたので,採用される側にとって「ここなら活躍できそうだな」「いい会社だな」と思ってもらえるように,デザインには力を入れてます。


6感を揺さぶるという社名「すべてがしっくりときた」


4Gamer:
 社名のヘキサドライブはどういう経緯で決まったんでしょうか?

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松下氏:
 “ヘキサ”という単語を夢に見たんですよ。前日に見ていたアニメか何かの影響かもしれないですが,何かが引っかかったんでしょうね(笑)。それで,立ち上げメンバーの5〜6人でカフェで打ち合わせをしていたときに,「夢で見たんだけど,ヘキサってどう? 格好いいよね」と。

齊藤氏:
 音の響きがいいし,プログラムでよく使われる16進数に通じるものもあって,僕ららしいよねというのもありましたね。

松下氏:
 実際,立ち上げメンバーはプログラマーばかりだったこともありましたし。それで,ヘキサのうしろにくっつく言葉を考えようと。

齊藤氏:
 ヘキサには「6」という意味がありますが,人間には5感に加えて“心”もある,つまり“6感”じゃないですか。それなら,人間の持つ5感に心を加えた6感を揺さぶる,そんな感じどうですかみたいな話をして,じゃあ,「揺さぶる」=「ドライブ(DRIVE)」だねと。

松下氏:
 なので,ヘキサドライブという名前を付けるのと同時に“人間の持つ5感に心を加えた6感(HEXA)を躍動(DRIVE)させる”という会社のコンセプトが出来上がったんですよ。そこですべてがしっくりときました。


創業当初からあった東京開発拠点計画


4Gamer:
 ところで,東京開発拠点の計画は,ずいぶん早い段階から考えていたとうかがったんですが。

松下氏:
 そうですね。立ち上げメンバーが全員カプコン出身なので,まずは大阪でスタートしたのですが,ゲーム業界の仕事を考えると東京は外せないというのは,創業当初から話に上がっていましたね。

齊藤氏:
 実は,僕は創業メンバーではないんですよ。最初の5人プラス1という,幻のシックスマンだったんです(笑)。会社の名前を決めるときや,理念などの話をしているときに混ざっていたのですが,合流は1年後ぐらいでした。その時にはすでに,東京行きの話は出ていました。

松下氏:
 今後の会社の発展を考えたときに,「あの会社いいよね」と思ってもらえても,東京に拠点がないとどうしようもないというところがあったりしますので。

齊藤氏:
 いいモノづくりをするためには,直接依頼を受けて,僕らの力をふんだんに使っていただけるパブリッシャさんと組んだほうが力を発揮できるだろうし,パブリッシャさんともいい関係が作れるだろうと。
 そういうことを含めて考えると,関西でのメガパブリッシャはカプコン,プラットフォームまで含めると任天堂さんもいますが……という感じで,残りはほとんど東京です。それなら営業の拠点だけじゃなく,一緒に仕事をして安心してもらえるということで,開発拠点もちゃんと東京に持とうという流れになりました。


カプコンから飛び出した理由とは


4Gamer:
 先ほど少しお話にも出ましたが,お二人ともカプコンご出身なんですか?

松下氏:
 はい。僕は元々がアーケード,齊藤は「戦国BASARA」などのメインプログラマーをしてました。

画像集 No.004のサムネイル画像 / “6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)
齊藤氏:
 昔のカプコンの体制でいう第4開発部,三上真司さんの下でした。当時は「バイオハザード4」というタイトル(のちに「デビル メイ クライ」として発売)のゲームを開発していたんです。それがカプコンでの最初の仕事でしたね。ほかにも「鉄騎」「鉄騎大戦」という,Xboxのタイトルなどにも携わっていました。

4Gamer:
 あの大きな専用コントローラがあったロボットゲームですね。

齊藤氏:
 そうです,そうです。その「鉄騎大戦」のオンライン対応をやっていました。ひと通り仕事ができるようになってきたところで,「戦国BASARA」でメインプログラマーをやらせていただいて,「戦国BASARA2」でもメインプログラマー,次に「ロスト プラネット」チームのメンバーになったという感じです。

松下氏:
 僕は「ストリートファイターZERO」でアドンというキャラクターを作っていました。アーケードだと,ほかには「ストリートファイターZERO2」「ウォーザード」,コンシューマでは「CAPCOM VS. SNK 2 EO」「デビル メイ クライ 3」「ロスト プラネット」などですね。

4Gamer:
 カプコン社内でも,すでにそれなりの立場になっていたと思うのですが,そこから飛び出して会社を設立した理由はなんだったのでしょう?

松下氏:
 カプコンではずっとプログラマーでやってきて,これがメインプログラマーになるとプログラムチーム全体のパフォーマンスを上げてゲームを良くしていく方向になるんですが,(カプコン時代の)最後の「ロスト プラネット」の頃はプログラミングの比率は下げさせてもらって,デザイナーやサウンド,さらにはプランナーに至るまでのスケジュールを管理していたんです。

4Gamer:
 プロジェクトマネージメントですね。

松下氏:
 ええ。そういうことに挑戦していた中で,さらにもっと現場を良くすることを考えたときに,もっと根本的なところからやっていかないと無理かなというのが実感としてあったんです。例えば,評価とか採用とか。そういう部分は,大きな会社の中で変えていくには時間が掛かると思いまして。もちろん,さらに上のポジションに立てばできることなんでしょうけれど,それでも5〜10年はかかるだろうと。それなら,飛び出して自分で組織を作るのがいいと考えたんです。

4Gamer:
 なるほど。

松下氏:
 良い環境を作って,そのうえで良い開発をする。つまり,良いプロダクトのためには根本からやらないとダメだなと。

4Gamer:
 いろいろな方にお話を聞くと,「自分の作りたいゲームを作るため」という理由が多いのですが,そうではないんですね。

松下氏:
 僕にも好きなゲームジャンルはありますが,それを同じ志を持った人と作りたいんです。「何をやるのか」もポイントですが,「誰とやるか,どういう風にやるか」が重要だと思っています。


プログラマーだけで30人の会社?


4Gamer:
 ところで,創業当時は知り合いの会社に間借りしていたとか。

松下氏:
 起業した当時,相談する相手としてパッと思いついたのがゲームリパブリックの岡本吉起さんだったんです。カプコン時代にアーケード部門にいたこともあって,岡本さんのことをよく知っていまして。それで,相談にいったら「オフィスが少し広めで空いてるから,使っていいよ」と。ゲームリパブリックの片隅にパーテーションで区切って,机を5個入れて始めました。オフィスを借りるとなると保証金だったり,いろいろと大変なので……すごくありがたかったですね。

4Gamer:
 相談相手が側にいるというのも心強いですね。

松下氏:
 仕事の面で岡本さんに相談できましたし,経営者としても教わることも多かった。岡本さん自身は語るというよりも,行動するタイプなんですよ。今でもすごいなと思っているのは,大量の餃子の差し入れ(笑)。自分では,それほど差し入れなどをしていなかったので,こういう風にしてみんなを少しでも盛り上げていくんだなあと勉強になりましたね。

4Gamer:
 ちなみに,ゲームリパブリックにはどれぐらい間借りしていたんですか?

松下氏:
 1年半ぐらいですかね。僕らも少しずつ人が増えてきて,ゲームリパブリックのほうでも人が増えて手狭になってきたので,ちょうど道を挟んで向かいのビルにいい物件が空いていたので,そこに引越しをしました。

齊藤氏:
 当時は10人ぐらいでしたっけ。新卒の人がちょうど入ってきたぐらいの時期で。

松下氏:
 今思えば,小さな会社によく来てくれたよね(笑)。少人数で,しかもプログラマーばっかりという状況で。

4Gamer:
 最初はプログラマー集団としての会社が目的だったんですか?

松下氏:
 もちろん,自分達でゲームを作りたいという話はあったんですが,初期メンバーが僕を含めて全員プログラマーだったので,採用もプログラマーばかりでしたね。確か5年めぐらいまでは本当にプログラマーしかいなかったと思います。その段階で,社員数は30名ぐらいだったかな。

画像集 No.005のサムネイル画像 / “6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)

4Gamer:
 えっ,プログラマーだけで30人ですか?

齊藤氏:
 東京に開発拠点を置いたのが会社の立ち上げから2年半後ぐらい。そのタイミングで僕が東京に赴任してきて,2拠点体制になったんです。その後,それぞれで採用を進めて,東京と大阪に15人ぐらいずついる状態になっていたので,合わせて30名ぐらいですね。その頃までは,本当にプログラマーしかいない会社でした(笑)。

松下氏:
 仕事のやり方などを分かっている分野なのでやりやすかった半面,自分達でゲームを作るとなるとプログラマーだけじゃできないところもあるので,あとから考えるともう少し早い段階でプログラマー以外のスタッフを入れていたら良かったなとは思いましたね。

4Gamer:
 デザイナーの採用は,どうされたんですか?

齊藤氏:
 ベテランの方を採用しました。プログラマーしかいない会社に来るというハードルがあるのと,企画も含めて,独り立ちしてデザイン部門を回せる方じゃないと厳しいというのもあって,採用までに時間がかかりましたね。

松下氏:
 ちなみにプランナーさんは,つい最近採用したんですよ。

4Gamer:
 そうなんですか?

齊藤氏:
 2013年の採用なので3年前になりますね。つまり,会社立ち上げて7年めまではプランナーがいなかったんです。


「どこのホンダでしょうか?」「あっ,それ聞いてなかった!」


4Gamer:
 東京に進出した段階ではプログラマーしかいなかったとのことですが,仕事面では順調でしたか?

齊藤氏:
 これが紆余曲折ありまして。実は,リーマンショックの影響もあって,先の仕事がどうなるか分からないということで,東京進出は1回延期しているんです。それが2008年頃で,実際に東京に拠点を開設したのは2009年11月。スクウェア・エニックスさんとのコラボレーション作品でもある「The 3rd Birthday」の頃でした。

画像集 No.006のサムネイル画像 / “6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)
松下氏:
 「The 3rd Birthday」では,いろんなことが重なっているんです。
 まず,CESA会員による賀詞交歓会で,当時スクウェア・エニックスの社長だった和田(洋一)さんにご挨拶させていただいたんです。そうしたら,その日,会場を出て帰ろうとしていたところで会社から連絡があって「スクウェア・エニックスのホンダさんという方が,お会いしたいので今からこちらに来られますかと言ってるんですが」と。「もちろん行く行く!」って返事をして,すぐに新宿まで行きましたよ。

 それで,スクウェア・エニックスの受付で「ホンダさんという方に呼ばれたんですが」と伝えたら「どこのホンダでしょうか?」「あっ,それ聞いてなかった!」となってしまって(笑)。実は元エニックス社長で,当時スクウェア・エニックスの副社長だった本多(圭司)さんに呼ばれていたんです。どうやら和田さんが当時,プログラムができる会社を探していたらしく,すぐに本多さんに連絡してくださったみたいで。

4Gamer:
 急転直下の展開ですね。

齊藤氏:
 大阪から来ていたからというのもあったんでしょうね。「今,東京にいるので話してみよう」みたいな。

松下氏:
 それから少し経って,「ファイナルファンタジー」シリーズのプロデューサーなどをされていた北瀬(佳範)さんや,現在「FINAL FANTASY XV」のディレクターをされている田畑(端)さんが,大阪のヘキサ本社まで来られて,一緒にやってみませんかという話になりました。それが「The 3rd Birthday」だったんです。
 そういうことであれば,東京にそのまま行こうとなって,東京開発拠点の計画を実行することにしました。もし,CESAに入ってなかったら賀詞交歓会にも行かず,和田さんに名刺を渡してなかったら……そのあとのいろいろな展開も無かったんだなあと。そこが分岐点でした。

4Gamer:
 まさに運命的なポイントだったんですね。

松下氏:
 「The 3rd Birthday」の仕事は僕らも勉強になったし,このつながりのおかげで,その後もいろいろなお仕事やお手伝いをさせていただきました。すごい経験をさせてもらいましたね。

齊藤氏:
 うちの開発の力を高く買っていただけて,今でも「空いてないですか」とよく言ってくださいます(笑)。


あの“谷”が無かったら自分達も学習できなかった


4Gamer:
 理想的な形で東京進出を果たせましたが,逆に苦労された点はありますか。

松下氏:
 実はリーマンショックのタイミングで,いったん仕事が途切れたりもしました。その当時は「仕事って結構どんどん来るのかなあ」ぐらいに思っていたんですが,2か月経ち,3か月経ち,4か月経ち……。「あれっ? 全然来ないぞ」って。「The 3rd Birthday」(東京)は動いていたタイミングだったんですが,大阪のほうが半年ぐらい,丸ごと空いてしまったり。

齊藤氏:
 この落ち込みのときは本当に大変でしたね。それでも,ちゃんと実績を出せば,それを評価していただいて,ご一緒しませんかというオファーが来る。そういう良いサイクルを作れたのが大きかったです。

松下氏:
 「大神 絶景版」では超解像(HD)でのリメイクをしましたし,そのつながりでいくつかのHD版のお仕事もさせていただいて,ちゃんと次に結び付いていくんだなあと。まあ,この落ち込みのときは会社の売り上げがかなり下がったので,役員報酬を止めたりもしました。会社はめちゃくちゃ赤字で,二人の貯金もガンガン減っていきまして……。

齊藤氏:
 それでも社員の給料をカットするのは,絶対に最後の最後だと思っていたので,その年も冬のボーナスを出しましたね。

松下氏:
 悩んだのですが「出そう」と決断しまして。あとで,当時の一部のメンバーからは「そんなに厳しかったんなら,出さなくても良かったのに」と言われて,「みんな,そういう気持ちでいてくれてるんだ」と実感しました。

松下氏直筆のスローガン
画像集 No.007のサムネイル画像 / “6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)
齊藤氏:
 その苦楽は共にしたいし,成功したときもみんなで分かち合いたい。そういうところを前面に出しているのもあって,みんな仲間でいてくれている。それは大事だなって思います。

松下氏:
 でも,あの“谷”が無かったら僕らも学習できなかったかな。

齊藤氏:
 良いときも悪いときも,外部の方達とつながっていくということ。ゲームは1社だけで作り続けられるものではないし,巡り巡って一緒にやれているのを感じたので,どんなときでも協力関係にある会社さんや,これから新しくつながる会社さんを大事にしようと思っています。

松下氏:
 結局,仕事は人と人との縁でしか回らないんだなあと思いますね。あと,そこで自分達が引き受けた仕事はキッチリと,求められた以上の結果を出そうと社内でも言っています。それこそ,クライアントさんが「ここまでやりますか」って驚くところまで。そして,それを次につなげていく。そういうところを僕らはやっていきたいんです。


プログラマー時代に1年間で名刺を2箱消費


4Gamer:
 「人とつながる」という面では,関西を拠点にしたゲームデベロッパの交流会「GIP West(Game Innovators Portal West)」を立ち上げていますが,これはどういう経緯で始めようと考えたんですか?

齊藤氏:
 関西にもゲーム会社が多いのにもったいない,このつながりを生かせたら……というのが出発点ですね。

松下氏:
 同業他社との飲み会をやろうというところから始めたので,最初の頃は居酒屋での交流会でした。

齊藤氏:
 仲の良い会社さんも悪い会社さんもあるだろうけど,僕らはまだ若い会社なので,粗相をしても許してもらえるかなっていうのも含めて「やっちゃえ!」と(笑)。

松下氏:
 そんな交流会を何回かやったあと,2010年4月にGIP Westを設立したんです。仲のいい会社さん達と,福岡の「GFF(Game Factory's Friendship)」を意識して始めました。任意団体としてお金を集めて,東日本大震災への寄付などもしましたね。現在はGIP Westのメインコンテンツとして,ゲームデベロッパ交流会があるという感じです。

画像集 No.008のサムネイル画像 / “6感”を躍動させるというヘキサドライブ。オープンな社風や人とのつながり,モノづくりへのこだわりについて聞く(ゲーム開発会社探訪 第3回)
齊藤氏:
 GFFを見習って,いわゆる産官学の連携で,ちゃんと地場に根付いたゲーム産業を強化していきたいなと思っています。

4Gamer:
 関西のデベロッパやGFFについての情報収集は,カプコン時代からされていたんですか?

松下氏:
 そうですね。カプコン時代は上司の方がすごく理解があったので,たとえばマイクロソフトの主催する技術カンファレンスなどに行きたいと言うと,大概は行かせてくれたんです。普通,現場のプログラマーは名刺交換をする機会はあまりないんですが,僕は1年間で名刺を2箱消費してました(笑)。

4Gamer:
 まるで営業マンですね(笑)。

松下氏:
 そういうところで,社外の人との交流が広がっていきました。ただ,関西の同業他社については,会社の存在は知っていても中の人は知らなかったというか,つながってはいなかったんです。なので,ヘキサドライブを立ち上げてから,もうちょっと関西の会社さんに友達が欲しいなって(笑)。

4Gamer:
 これまでに何社ぐらい交流会に来ているんでしょうか?

松下氏:
 延べだと200社は超えていると思います。関西だけでも100社という感じですね。GIP Westは,6月に開催した回でちょうど30回になりました。最初の頃は不定期だったんですが,ここ何年間かは3か月に1回のペースで必ずやっていて,計算すると8〜9年経っているんですよね。

4Gamer:
 創業直後からやっていたことになりますが,それもすべて,人とつながりたいというところが出発点になっていると。

松下氏:
 本当に横のつながりは大切だなあと実感しています。交流会に来ていただいた皆さんの中でも「同じ京都同士なのに知らんかったー」みたいな。交流会に出たことで知り合いになり,仕事に発展して……といったお話をたくさん聞けたので,やって良かったなあと思いますね。

4Gamer:
 GIP Westといえば著名なゲストも特徴の一つですが,どうやってアポイントを取っているんですか?

松下氏:
 普通に,メールで直接アタックしている場合が多いですよ(笑)。いろいろなお仕事の中でのつながりがあったりとか,もしくはGIP Westのメンバーの会社さん,それぞれの強みみたいなものを持ち寄ったりして,「あの人,知ってる」「この人いけるかも」みたいな感じで,さまざまな方面へオファーしていますね。

4Gamer:
 今や関西の取りまとめというポジションですね!

松下氏:
 いえいえ。GIP Westも今の形になったのは,何回めかのゲストとしてサイバーコネクトツーの松山(洋)社長に来ていただいたときに「せっかくこれだけの集まりがあるのに,飲み会だけじゃもったいないよ」と言われたのがきっかけですし(笑)。
 また,関西でこれだけのゲーム会社さんが集まっているんだったら話をさせてほしいというオファーもいただいたりしたので,なんらかのゲストスピーカーを呼んで交流会とセットにという構成にしたんです。せっかく来ていただいた方に,いろいろなものを持ち帰ってもらえるようにと。

4Gamer:
 今後はこうしていきたいといった目標はありますか。

松下氏:
 現在,GIP Westはビジネスとしてのつながりを持ちつつ,お互いに高め合っていけるような場として確立していると思うので,今後はもう少し現場の人にも下ろしていける何かがあるといいなと考えています。最近は,関西で「GCC(ゲームクリエイターズカンファレンス)」という勉強会を立ち上げているので,そちらで現場に近いところも進めています。


正のスパイラルのほうが絶対にいい


4Gamer:
 ヘキサドライブの公式サイトでは技術情報を惜しげもなく出していますが,商売道具とも呼べるものをあえてオープンにしている理由は何なのでしょうか。

松下氏:
 僕達からすると,あれは自然な流れなのかなと思うんですよね。情報って,自分達が出さないと,外からも入って来ないじゃないですか。CEDECなどがいい例で,それぞれの会社さんで技術情報を出し合って,みんなで高め合いましょうとやっているわけですし。

齊藤氏:
 自分達から情報を出してみたら,すごくたくさんのリアクションが返ってきたので,どんどん出していこうってなりましたね。自分達がさらに伸びていくためには,「自分達は今,このフェイズにいます」ということを言わないと,外からの情報も入って来ないと思うんです。

松下氏:
 むしろ,ほかの会社さんも,もっともっと情報を出せばいいのになあと思います。ゲーム会社の場合,意外と「今,こういうことをやってます」ということは外に出さなかったりしますよね。CEDECみたいな場があれば,そこでやっと表に出てきますが,それもなかったとしたら全然ないんだろうなと。それって何か,もったいないじゃないですか。

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4Gamer:
 自分達レベルのものを出してもいいんだろうかという,気後れみたいなものや,やっぱり商売道具を出してしまうのは……という,ネガティブな部分があるのかもしれませんね。

松下氏:
 なるほど,そういう感情もあるかもしれないですね。そういう意味では,僕らはポジティブなことしか考えてなかったかも(笑)。出しちゃえばいいじゃん,そうしたら何かしら返ってくるしって。

齊藤氏:
 出さないと得られないので,閉じこもったらもう負のスパイラルなわけですよ。情報も得られないし,自分達が何者なのかも発信できないし……。それよりは,こちらから情報を出して,認知してもらって,それに対してのリアクションが返ってきてという,正のスパイラルのほうが絶対にいいですよね。

4Gamer:
 実際の反響はいかがですか?

齊藤氏:
 やってみると分かるんですが,これって採用にも結び付くんですよ。「あの記事を見てすごく感動しました」と言ってもらったり,「参考にして作ってみたんです」という学生さんがいたり。そんなときは,オープンにした甲斐があったなと感じます。いい流れが見えてきたので,もう絶対にこっちの路線でいくって感じですね。


ゲームはまだまだ面白い状況にある


4Gamer:
 そうしたオープンな社風は,どうやって若手に伝えていくんですか?

松下氏:
 伝えるというか,今となれば,もう会社がそういう感じになっちゃってます(笑)。このあいだも,「社内の勉強会で使ったスライドを,『SlideShare(スライドシェア)』にアップしていいですか?」みたいな相談があったり。

4Gamer:
 それらのスライドは,ブログ(ヘキサ日記)にも載っていますよね。

松下氏:
 ブログなどで公開しているハウツーについても,ほかの会社さんでは,もう少し先までやっていたりするという部分もあるでしょうが,それはこれから進めていけばいいじゃないって思います。そういう意味でも,オープンにすることを現場の若手が理解してくれているのがすごく嬉しいです。

オープンな雰囲気のオフィス
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4Gamer:
 まさに発信力ですよね。松下さん自身,プログラマーだったということですが,人前に出て行くのには勇気が必要だったのではないですか。

松下氏:
 会社を立ち上げて最初のうちは,会社説明会をするのにパワポで資料を作って,それを読み上げるだけみたいな感じでしたね。みんなの前で話すことにも,ものすごく緊張していましたよ。

齊藤氏:
 場数を踏めば,話のテンポとか,見てくださっている方の顔色とか,空気感とかが分かるようになってきますので。まあ,引っ込み思案だったら社長とかやらないですよね?(笑)

松下氏:
 まあね(笑)。もちろん,大人数を前に話すことには慣れていませんでしたが,人と話したり,コミュニケーションを取ったりすることは嫌いじゃなかったんです。今では,例えば会社説明会などで人が少ないと「盛り上がらないから,もう少しいっぱいいてほしいな」なんて思っちゃいます。

4Gamer:
 少人数だと,むしろ物足りなくなってしまったんですね(笑)。では,これからゲーム業界を目指す人に向けてメッセージをいただけますか。

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松下氏:
 昔も今も,ゲーム業界はまだまだ面白いところにあると思うんです。スマートフォンが世に出てきて,すごく身近にゲームを遊べる環境ができています。ちょっと前までは,電車の中でゲームをやっていると変な目で見られたりしましたが,今ではみんなスマホでゲームをやっている時代。本当にゲームが日常の中にあふれている状況です。
 加えて,コンシューマゲーム機を取り巻く環境も,VRなどを含めてどんどん進化していますし,新しい体験や表現,実写と変わらないぐらいの映像が可能になってきています。そこには「若い人の力」が求められていると思うので,臆することなくゲーム業界に飛び込んできてほしいですね。

4Gamer:
 最後に,ヘキサドライブとしての今後をお聞かせください。

松下氏:
 これからも,スマホとコンシューマの両方でやっていく方向で考えています。プラットフォームやデバイスにこだわらず,面白いゲームをどんどん世に送り出していく。実際に,どんなものにも対応できる技術力を持っているのが僕らの売りでもあるので,それを活かしつつ,クライアントさんからの仕事ももちろんですが,自分達のオリジナルタイトル・ブランドも確立できるようにやっていきたいですね。そういう部分に関しても期待してください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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