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「NieR:Automata」はこうして作られた。ディレクターのヨコオタロウ氏とプロデューサーの齊藤陽介氏が,シンガポールのゲームイベントで述べたこと
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印刷2017/11/01 12:00

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「NieR:Automata」はこうして作られた。ディレクターのヨコオタロウ氏とプロデューサーの齊藤陽介氏が,シンガポールのゲームイベントで述べたこと

 「NieR:Automata」PC/PlayStation 4)のディレクターを務めたヨコオタロウ氏とプロデューサーの齊藤陽介氏が,2017年10月13日にシンガポールで開催された「SEA SUMMIT」(The Game Conference for Southeast Asia)で同作についての講演を行った。このSEA SUMMITは,14日〜15日に開催されたゲームを中心としたファンイベント「GameStart」に合わせて行われた業界関係者向けのもの(一般参加も可能だが)で,e-Sportsやマーケティングなど,さまざまなテーマについて講演が行われた。

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「SEA SUMMIT」公式サイト

「NieR:Automata」公式サイト


 最初のヨコオ氏のレクチャーは,イベント2日めのキーノートという扱いで,タイトルは「ゲームキャラクターの作り方とシナリオの書き方」。主に「NieR:Automata」を題材に説明が行われた。
 いつものように覆面を装着して登壇したヨコオ氏。最初の挨拶では,20歳以下の人は経験がないので話を聞いても無駄であり,30歳以上の人はそれまでの人生を全力で肯定しようとするので,そういう人の話を聞いても無駄であり,要するに人の話を聞かないでもとくに問題はない,としたうえで,それでも(来場者の)朝の貴重な時間を使っている以上,なるべく実のある話をしたいと述べ,いわゆる「ヨコオ節」を聞かせてくれた。
 なお,お気づきのこととは思うが,本講演では写真撮影が禁止されており,なんだかテキストだらけの記事になっている(あるいはあまり関係のない写真が掲載されている)ことをあらかじめお断りしておきたい。


ゲームのキャラクターはこのようにして作られる


会場はこんな感じ。あまり広くなく,そのぶん講演者との距離が近い。向かって右手にあるのが,ヨコオ氏のために作られた「ヨコオBOX」で,ヨコオ氏がこの中に入ってレクチャーが行われた
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 レクチャーは,あらかじめ寄せられた質問にヨコオ氏が答えるという形式で進められ,最初の質問は,「ゲームのキャラクターを作るとき,まず最初に考えること」というものだった。ヨコオ氏は,まず考えるのは「予算」で,その次が「期間」だと答えた。この2つがあれば,だいたいの問題は解決するという。
 その次に考えるのが「市場」で,つまり,現在どのようなゲームが求められているのか,バトルアクションなのか,それともRPGなのか,といったこと。続いては「バランス」で,これはキャラクターの人数や男女比などだ。具体的には,100人は予算的に難しいので,3〜5人ぐらいがいいかな,といったことになる。
 5つめに考えるのが「ファン」で,例えば過去作に出てくるキャラクターが再登場したほうがいいのかといったことだが,実際には“ファンの期待を裏切る”ことも大切だという。これに続くのが「ゲームの内容」で,バトルゲームを作る場合なら,キャラクターの手が4本あると面白いが,それをやっちゃうとコストが高くつくとか,そういう話だ。

 最後が「ドラマ」で,これはキャラクターの性格がどういうものか,髪の色は,衣装は,といった部分だ。「ドラマ」は,普通「キャラクターの作成」という言葉でまず思い浮かぶ作業だが,実は最後。そこに至る要件をすべて満たしたうえで,初めて取り掛かるものだとヨコオ氏は述べた。

 例えば,最初に「ドラマ」を決めてしまうと,あとで予算の都合で実現できず,結局キャラクター性が壊れてしまうということもある。「必要が条件を満たしたあとで自由な発想ができる」のだ。

 次の質問は,「どうしてヨコオ氏の作品は暗い話ばかりになるのか」というもの。これに対してヨコオ氏は,自分ではそう思っていないのだが,暗いというなら,それは現実が暗いからだと答えていた。
 ビデオゲームの大きな特徴として,現実を模倣するというものがあるという。例えば「スペースインベーダー」の時代,画面はディスプレイの黒と,白いドットしかなかったが,この黒い部分が「宇宙空間」だと主張すれば,そのように見えてしまうという性質を人間は持っている。

 そして,模倣すべき現実は,紛争が起き,人が死ぬといった良くないことが世界のいたるところで起きている。明るいはずのスポーツ競技であっても,勝者の背後には敗者がおり,人は競争や憎しみが避けれられない。だから(現実を模倣する)ゲームもそうなるのだという。

 もう1つの理由は,「殺すゲームが求められている」ことにある。多くのゲームが敵を殺したり倒したりする内容であり,ゲームがそういうものなら,希望に満ちた明るい世界であるはずがない。ハリウッド的な,例えば敵を全滅させた主人公がヒロインと爽やかにキスをするという世界観には「違和感を感じる」(ヨコオ氏)。かくして,世界をあるがままに描こうとした結果が,暗いと言われているというのだ。

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「NieR:Automata」とプラチナゲームズ


 次の質問は,「どのようにして,『NieR:Automata』が作られたか」というものだった。
 これには,こういう経緯があったとヨコオ氏は述べた。まず,プラチナゲームズのプロデューサーがスクウェア・エニックスに新作開発の話を持ちかけた。これに対して,スクウェア・エニックス側が「NieR」シリーズの最新作を打診し,それからヨコオ氏に声をかけたという流れだ。なるほど。
 ヨコオ氏は,プラチナゲームズはアクションゲームについて優秀なデベロッパであり,「ベヨネッタ」「メタルギア ライジング リベンジェンス」など世界観もしっかり持っていると述べ,プラチナゲームズが作るなら,「NieR」シリーズがもともと持っているファンタジーRPGっぽい作品は難しく,そのため,「SF」「バトルアクション」というテーマを提案したという。

 しかし,実際にプラチナゲームズと話をすると,「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」をリスペクトしているというスタッフがいたという。ヨコオ氏は,「皆さん優しくてびっくりした」と話したが,もともとヨコオ氏が想像していたプラチナゲームズは,マッチョなスタッフ達が1人のすごいクリエイターを崇めているという映画「マッドマックス」に出てくるような図式だったそうだ。なんとなく分かる気がするが,実際には若いクリエイターの意見を吸い上げる社風があり,たまには毛色の違うものを作ってみたいと思っていた。そこで,「NieR」のRPG要素が復活したとのこと。
 つまり,プラチナゲームズに気をつかって「SF」で「バトルアクション」という提案をしたのに,現場の声でRPG要素が復活したのが「NieR:Automata」だったのだ。

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 このように,最初はどのようなゲームにするかのビジョンはとくになく,その場の状況によって変わっていったが,結果として,やや風変わりな,とても「NieR」らしい作品になったとヨコオ氏は言う。

 次は,「ゲームを考えるときに,どのように試行錯誤するのか」という質問だ。
 これについてヨコオ氏は,大切なことは1つで,それは「想像する」ことだと述べた。世界は,中心に「私」がおり,その周囲に「他人」がいるという形で作られている。他人の集合体が世界であり,表現するという行為は他人の心を操作することであり,誰かの心に石を投げて,波紋を作っていくようなものだ。しかし,他人の心は分からないので,その波紋がどういう姿になるかを「想像」する必要がある。

 ここでヨコオ氏は,「セクシー」というキーワードで検索した1枚の水着美女の写真を示した。これをセクシーと思う人もいるだろうが,もしかすると露出が多くてけしからんと感じる人もいるだろうし,あるいは泳ぐのにジャマなアクセサリーを付けているのはおかしいと思う人もいるはずだ。
 1枚の写真が他人の心に起こす波紋は人によって異なり,これを想像することが求められる。極論すれば,水着美女がセクシーであるというのはある種の思い込みであり,想像ではなく妄想だ。自分の都合のいいイマジネーションを押し付けているだけだ,とヨコオ氏は述べた。

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 しかし,他人の心に起きる波紋は,操作することも可能だ。次にヨコオ氏は可愛い子猫の写真を示した。そしてここに,「虐待されて捨てられた子猫」というキャプションをつけると,なるほど,写真の雰囲気がガラリと変わってしまった。
 これがあることで,多くの人が,写真の子猫が「かわいそうだ」と思うはずで,これがマッチョな男の写真ならそうならない。これを分析すると,弱いものが理不尽な状況に置かれることを,人はかわいそうと思い,つまりキャプションを付けることによって他人の心を操作したことになる。
 もっとも,これで「かわいそう」の表現ができたかといえば,それについては疑う必要があるという。「自分が面白いと思っても疑う。自分が面白いとことに誘導する」ことが重要だとヨコオ氏は説明した。


自分のいる戦場を知ったうえで,作りたいものを作れ


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 ここに人が2人いて,1人が「アニメはクールだ」と思い,もう1人が「アニメはダサい」と思っているとしたとき,正解は「どちらも正しい」となる。他人の心はさまざまで,すべての人を対象にできない以上,サービスすべきお客様は誰か,例えばマスなのか,ニッチなのかということをよく考えなくてはならないという。さらに,ユニークなことをしたいと思ったときは,スタンダードが何かを理解しなくてはならないとヨコオ氏は述べた。
 そして,以上のような分析は,クリエイターが自分の戦場がどういうものであるかを知るために必要であり,戦場のことを十分に知ることができたら,あとは「ムチャクチャにしてしまえ」という。自分の作りたいものを作るように,と来場者に向かって話して,レクチャーを終えた。


 続いて会場との質疑応答が行われたが,その中からいくつかピックアップしよう。
 「印象に残っているゲーム」を問われたヨコオ氏は,「ICO」「斑鳩」の名前を挙げた。普通のゲームは,いろいろな要素を足し算することで作られているが,「ICO」は余分な要素を引き算することで美しく見せることに初めて成功したゲームだと語った。「斑鳩」は,それまで雑だったサウンドの扱いを変え,映像と音楽をマッチさせたゲームだという。BGMを聞かせるタイミングまで計算されており,ゲームの音楽を映画のように使えることを初めて知ったそうだ。いずれの作品も「NieR:Automata」に大きな影響を与えているという。

 「プレイヤーがゲーム世界で好きなことができる作品をどう思うか」という質問については,例えば「Minecraft」のように,好きなように生きることができるものは,ゲームの夢だと述べる。しかし,自由度が高いとプレイヤーの感情のデザインはしづらくなる。つまり,「Minecraft」で泣いたことがあるか? という話になるわけで,そこには物語性が乏しい。だからといって,「Minecraft」に物語を求めると,今度は自由度が下がってしまう。高い自由度と感情のデザインは,今のところ両立したことがないが,会場の若い皆さんがそういうゲームを作ってくれることを楽しみにしたいと述べた。

 「NieR」シリーズの続編について聞かれたヨコオ氏は,作るとしたらと前置きしたうえで,「皆さんが『こうなるだろうな』と想像するものを,こちらも一生懸命想像して,そうならないようにする」と答えた。

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ゲームプロデューサーのお仕事


 続いては「NieR:Automata」でプロデューサーを務めたスクウェア・エニックスの齊藤陽介氏がステージに立った。
 具体的な仕事の内容を聞かれた齊藤氏は,「NieR:Automata」では,音楽の岡部啓一氏や美術の吉田明彦氏,そして開発を担当したプラチナゲームズなど,スタッフィングを担当したと答えた。 「ゲームの面白さの追求」という点では,ヨコオ氏を信じており,毎月1回,大阪にあるプラチナゲームズとミーティングをして,内容の善し悪しなどを検討してきた。プロデューサーの仕事はゲームの開発だけでなく,プロモーション活動など,なんでもやらなくてはならないという。

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 さらに齊藤氏はエグゼクティブプロデューサーなので,人の調達のほかに収支なども考えなくてはならず,もし会場にゲームプロデューサーを志望している人がいるなら,悪いことは言わないのでやめておいたほうがいいと,会場を沸かせた。

 「NieR:Automata」の開発プロセスは,まず主要スタッフを集めることからスタートしたという。ヨコオ氏とプラチナゲームズは初めてのチームになるため,半年のプリプロダクション期間を設け,「ある程度動く+ボス戦」ができるテストROMを作ってもらった。齊藤氏は,アクションゲームの職人集団であるプラチナゲームズとヨコオ氏,この2つがうまく噛み合うかどうか不安だったと述べる。

 完成したテストROMは非常にいい出来だったが,そういう不安もあったため,会社で企画をプレゼンするときには,プロジェクトが失敗してしまう可能性はあるものの,それでもやらせてくれと訴えて予算を得たという。
 またヨコオ氏には,プラチナゲームズの中に入ってくれるなら一緒にやろうと話し,大阪へ行ってもらうことをお願いした。人と人がチームを作る以上,相性というものもあるので,リスクはある程度覚悟していたそうだ。

齊藤陽介氏
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 そんな心配もあったが,ヨコオ氏も述べたように,プラチナゲームズのスタッフが「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」が好きで,外部ディレクターであるヨコオ氏と,プラチナゲームズのデザイナーの田浦貴久氏との相性が良かったこともあり,結果的にはうまくいったという。
 それから毎日,ヨコオ氏とメールをやりとりし,月に1回は顔を合わせてのミーティングを行っており,メールのやりとりは,おそらく恋人同士以上だろうと齊藤氏は述べた。

 開発で苦労した点を聞かれた齊藤氏は,これまでの開発は東京で行ったので,開発と毎日でも会えたが,今回は東京と大阪という物理的な距離が問題だと思っていたと答えた。しかし,上記のようにヨコオ氏が大阪に単身赴任してくれたので解決できた。ちなみにヨコオ氏は,何度か東京に帰りたがったという。

 話がちょっと前後するが,「NieR」シリーズ最新作の開発方針としては,前作で「合格点」だと思った点は変えず,「及第点」だった部分をフォローしようというものだったという。
 「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」はアクションRPGで,アクション部分はがんばっていたものの,まだまだやれることはあると思っていた。そのため,アクションに優れたスタジオを探していたが,たまたま,ほかのゲームを作らないかという話がプラチナゲームズから来ていたこともあって,同社に決まったそうだ。

 前作のキャラクターデザインを担当したのは韓国のD.K氏で,同人誌などで注目しており,また,以前タツノコプロのアニメーターだったという実績もあってお願いした。引き続きデザインを依頼するという選択もあったが,D.K氏が肘を壊して絵が描けなくなってしまったため,以前スクウェア・エニックスにいた吉田明彦氏に話を持っていった。いろいろと説明して,快く引き受けてもらえたが,すばらしいデザイナーを付けられて良かったと思った記憶があるという。
 印象に残る音楽は,上記のように前作で高い評価を得たMONACAの岡部啓一氏が担当しているが,これは,(今後,シリーズが続くとして)変えるつもりはないとのことだった。ヨコオ氏と岡部氏は学生時代からの友達で,スクウェア・エニックスのアニメコンテンツのサウンドなど,さまざまな仕事をしているため,意思疎通はとてもスムーズだったという。


プロデューサーにはヒマがない


 「NieR:Automata」の開発形態について質問された齊藤氏は,プロデューサーを務める「ドラゴンクエストX」及び「ドラゴンクエストXI」とは異なり,これまで述べたように,プロデューサー+アウトソーシングという形だ。ただ,スクウェア・エニックス内部でも一部の開発を行っており,「ファイナルファンタジー」シリーズを手がけるサウンドチームが,カットシーンに音を付ける仕事をやったという。

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 これに関連して齊藤氏は,「ドラゴンクエストX」は,ほぼ100%スクウェア・エニックスで開発し,運営も社内で行っており,グラフィックスの一部を社外に発注した程度。また「ドラゴンクエストXI」は,「NieR:Automata」と「ドラゴンクエストX」との中間的な開発形態で,スクウェア・エニックスのプロデューサーやディレクター,各セクションのリーダーが外へ出て,外部チームと一緒に仕事をしたと紹介した。
 齊藤氏はこの3つのタイトルを並行して開発したので,日々いろいろなことが起き,ここ数年,まったくヒマがなかったそうだ。「NieR:Automata」の場合,ヨコオ氏が逃げ出さないようにすることにも気をつかったという。

 また,これは昔の話だが,齊藤氏が制作を担当した「ドラッグオンドラグーン」では,ヨコオ氏があまりにもめちゃくちゃなストーリーを考えるため,これは発売できないのではないかと問題になったという。そこで,ゲームの資料やビデオなどをスーツケース一杯に詰め込んでソニー・コンピュータエンタテインメント(現Sony Interactive Entertainment)へ説明に行った。話をした場所はなんと,ロサンゼルスで開催されていたE3のソニーブースの裏で,忙しい最中に大量の資料を見せられて辟易したソニー側が,あきらめてOKを出したという。「もう,帰ってくれ」と言われたそうだ。

 「NieR:Automata」は海外でも順調なセールスを記録している。開発中,ヨコオ氏はあくまで国内に主眼を置いており,海外のことはあまり考えていなかったが,齊藤氏は,プラチナゲームズのブランドネームなどから,海外でもちゃんとプロモーションすれば売れると思っていたそうだ。

 このように,ゲーム開発以外にさまざまなことを要求されるプロデューサーという仕事。齊藤氏は最後に,会場に集まったプロデューサー志望の人達に向かってアドバイスを述べた。
 まず,自分の担当する作品を好きでいること。一緒に作っている人を信じて,いつも同じ視点で話ができるようにすることや,彼らと同じ体験をすることも重要だという。そして,作りたいものと,会社やスポンサーが求めるものをあまり一緒にしないことも大切だ。
 無責任な判断はせず,責任は自分で取る必要がある。とはいえ,成功したらクリエイターがほめられ,失敗したらプロデューサーが怒られる。大変なだけで,あまりいい仕事ではないと述べて,再び会場の笑いを誘い,レクチャーを終了した。

齊藤氏(左)とヨコオ氏(右)と,小さいほうのマーライオン(中央)
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