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「デイメア: 1998」誕生の地は,イタリアのとある小さな村。開発会社やゲームのイメージ元となった土地を巡ったオレヴァノ・ロマーノ紀行をお届け
開発経緯やゲームの魅力は,掲載済みのレビューとインタビュー(関連記事1,2)でお伝えしたとおり。そんな本作の日本語版発売を記念したメディアツアーが,パブリッシャであるDMM GAMESにより行われ,4Gamerもそれに参加してきた。
ツアーの行き先は,本作の開発会社であるInvader Studiosの所在地である,イタリアのオレヴァノ・ロマーノ(Olevano Romano)。目的は,スタジオとゲームの主な舞台となる町「キーンサイト」のモデルとなった場所の見学である。本稿でその模様をお届けしよう。
日本語版「デイメア:1998」公式サイト
「バイオハザード」ファンが生み出した,“90年代ホラーゲーム愛”溢れるサバイバルアクション。日本語版の発売を控える「デイメア: 1998」を紹介
2019年9月に海外でリリースされ高い評価を受けたサバイバルホラーアクション「デイメア: 1998」の日本語版が,DMM GAMESから発売される。「バイオハザード」シリーズなど1990年代の文化やホラーゲームのリスペクトに溢れた本作の世界観や物語,ゲーム性などを中心にその魅力をお伝えしよう。
「バイオハザード」へのリスペクト溢れるサバイバルホラーはこうして生まれた。「デイメア: 1998」開発会社のInvader Studiosにインタビュー
「バイオハザード」シリーズへのリスペクト溢れるサバイバルホラー「デイメア: 1998」を制作したイタリアのInvader Studiosを訪問し,コアメンバーにインタビューを行った。スタジオ設立やDMM GAMESから日本語版が発売された本作の開発経緯には,彼らの“バイオ愛”とカプコンとの邂逅があったようだ。
「デイメア: 1998」誕生の地は
長い歴史を持つイタリアの小さな村
オレヴァノ・ロマーノの歴史は古い。山岳民族のオスキ・ウンブリア語系アエクイ族により紀元前5世紀には開拓されていた地域で,早くからローマに帰属し,1世紀前後には石壁を使った要塞化が進んでいたそうだ。
“オレヴァノ”の語源は謎が多く,さまざまな説があるそうで,ローマ貴族の1つ「オリブリウス」(Olibrias / Olybrius)の名が変化したものというそれらしいものや,教会の儀式で焚く樹脂やそれを購入するための積立金を指す「オリバヌム」(Olibanum)という何とも二ッチな説などがあるとのことだった。
旧市街地の中心である烽火台のある城は,1000年以上も前にベネディクト会の修道士たちによって建てられたと考えられ,西側の谷間の肥沃でフラットな農地を一望しつつ,近隣地域にある山上の村々が連ねる連絡網の1点を担っていた。古代から,オリーブやブドウなどの農業が盛んだったらしく,今でもワイナリーが幾つもある。
また,美しい景観に囲まれているためか,ローマから芸術家たちが訪れては長期滞在したり,住み着いたりしているというが,盆地の端に位置するためか夏場は気温が上がり,山沿いながらも避暑地というわけではないらしい。
ローマから遠く離れ,そして人口は6600人ほどという小さな村であるオレヴァノ・ロマーノ。「そんな場所になぜゲームスタジオがあるのか?」と思う人も少なくないはず。詳しくはインタビューで伝えているが(関連記事),小さな村とその周囲にたまたまプログラミングやシナリオ,楽曲制作といったゲーム制作に必要なスキルを持った人がいた。
偶然というよりは奇跡に近い形でつながった彼らは,「バイオハザード 2」の非公式リメイクのデモを発表して注目を集め,地元にゲームスタジオを設立したというわけだ。
ゲームの主な舞台となるキーンサイトという町を作り上げる際には,このオレヴァノ・ロマーノでロケーションハンティングが行われた。さて,そう聞くと,先行して発売された海外版(2019年9月発売)をプレイした人は疑問に思うかもしれない。というのも,ゲームの舞台はアメリカで,キーンサイトもアイダホ州にある田舎町という設定だからだ。かくいうアメリカ在住で本作をプレイ済みの筆者も,「寂れた田舎町らしさは出ているが,たしかにアイダホっぽくはないな」と感じていた。
かといってイタリアの町を想起できるものでもない。独特の雰囲気あるキーンサイトがどこをイメージして作られたのか分かるかもしれない。内心ちょっとワクワクしながらツアーに参加した。
Invader Studios公式サイト(英語)
Invader Studiosは,オレヴァノ・ロマーノの旧市街地から見て南東の方角,4階建てのアパートの最上階を改装した場所にある。キッチンなどは取り除かれているが,広い屋根裏の2LDKといった感じだろうか。このアパートの内外も「デイメア: 1998」のアセットとして使用されており,マップのあちこちでそれが確認できる。ここでは実際のスタジオの写真とゲーム画像を並べて紹介しよう。
ここからはロケ地巡りを兼ねた観光の模様をお届けしよう。町の中心に位置するタウンホールを下ると見えてくるのが,ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の息子でイタリア王国の第2代国王であるウンベルトI世の名を冠した広場。その中央には噴水があり,これをイメージした大きな噴水がゲーム内に登場する。
さらに進むと,かつてはファーマーズマーケットで賑わいだという小さなエリアに到着。現在は小さな雑貨屋があるばかりでなんとも寂しい旧市場といった場所で,そこからさらに登っていくと聖マルガリタ教会がある。
タウンホールの集会所には日本語版「デイメア: 1998」の試遊版が用意され,筆者もチャプター2の途中までプレイした。村議会などが開催される場所で,開発メンバーはこの日の朝の3時まで試遊版の設定をしていたそうだ。ゲームの感想は[こちら]で確認してほしい |
タウンホールを下ったところにあるウンベルトI世広場。写真に写っているのはインタビューに登場してくれた(関連記事),ティツィアーノ・ブッチ氏,アレッサンドロ・デ・ビアンチ氏,ミケル・ジアノーニ氏(左から) |
実在したかどうかは定かでないものの,信仰の放棄を拒否したために,ローマ帝国高官オリブリウスとの結婚が破断になったばかりか,捕らえられて殉教したとされる。その信仰は根強く,十字軍遠征の時代にさらに強い支持を得て,12世紀にはカトリックにおいても聖人となった。
村の語源の一説として登場したオリブリウスに関わる聖マルガリタが,この地で信仰対象になっているのは興味深い。なお,聖マルガリタ教会は何度か建て替えられているとのことで,現在の教会は1876年の火災で一部が消失したのち,すべて作り直されたものだという。
オレヴァノ・ロマーノは,中世期にはルネサンス期をけん引したイタリアの有力貴族の1つ,コロンナ家に管理されていた。旧市街地に残るもっとも古い石畳は14世紀ごろのものだという。
聖マルガリタ教会の脇を歩いていくと,やがて「コロンナ城」(Castello Colonna)という旧市街地の最も高い部分にある砦に行き着く。「中世の塔」(Torre Medievale)と呼ばれている烽火台も,ここにある。
コロンナ城は,中世後期に台頭したボルゲーゼ家に譲渡されたものの,ほとんど管理されておらず荒れ放題だったらしい。そこで1970年に立ち上がったのが,地元の名士だったルイジ・マルクッチ(Luigi Marcucci)さんという人物で,城を購入して整備にあたり,無料で一般公開されたという。この城の住居部分は,アートギャラリーやイベントスペースとして利用されている。
アートギャラリーには,日本とイタリアで活動した彫刻家である豊福知徳氏の作品が展示されていた。この地に滞在していたこともあり,ルイジ・マルクッチ氏とも親しかったそうだ。壁には,同じくイタリアで40年近く過ごした画家の高橋 秀氏の作品もあり,意外と日本と深いつながりがあったことを知ることができた。
第2次世界大戦後はチェザネーゼ畑を放棄する農民が増えて絶滅しかけたらしく,筆者手持ちのワイン辞書にも掲載されていない。今世紀に入ってから地元農家によって復刻され,ワイン業界での注目度が高まっているそうだ
さて,実際に村を周ってみたところ,スタジオと噴水以外はそのままの風景を切り取ったというものはなく,いわゆる“聖地巡礼”の地という感じではない。直通で行ける交通手段はなく,タクシーだとおよそ1時間という道のりで,料金は2万円ほどかかってしまうということで,このあたりもなかなか難度が高く感じるかもしれない。
それでも本作にハマった人や,貴重なワインと地元の名産を楽しみたい人。イタリアの田舎ののどかな雰囲気に浸りたいという人なら,旅行の際にそのルートに組み込んでみてもいいところだ。
ローマから行く場合は,中央駅(Rome Termini)から出ているバスでサンチェザーレオ(San Cesareo)という町に行き(約40分),そこからオレーヴァノ・ロマーノ行きのローカルバスを使うというルートになる。また,サンチェザーレオ発のオレーヴァノ・ロマーノ行きが1日2本ということなので,出発時間はもちろん1泊することを込みでプランを立てよう。
日本語版「デイメア:1998」公式サイト
「バイオハザード」ファンが生み出した,“90年代ホラーゲーム愛”溢れるサバイバルアクション。日本語版の発売を控える「デイメア: 1998」を紹介
2019年9月に海外でリリースされ高い評価を受けたサバイバルホラーアクション「デイメア: 1998」の日本語版が,DMM GAMESから発売される。「バイオハザード」シリーズなど1990年代の文化やホラーゲームのリスペクトに溢れた本作の世界観や物語,ゲーム性などを中心にその魅力をお伝えしよう。
「バイオハザード」へのリスペクト溢れるサバイバルホラーはこうして生まれた。「デイメア: 1998」開発会社のInvader Studiosにインタビュー
「バイオハザード」シリーズへのリスペクト溢れるサバイバルホラー「デイメア: 1998」を制作したイタリアのInvader Studiosを訪問し,コアメンバーにインタビューを行った。スタジオ設立やDMM GAMESから日本語版が発売された本作の開発経緯には,彼らの“バイオ愛”とカプコンとの邂逅があったようだ。
キーワード
(C)2019 Destructive Creations and All in! Games / Developed by Invader Studios / Published by DMM GAMES