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[SPIEL’16]QUEEN Gamesが贈る新作アブストラクトゲーム「GLÜX」試遊レポート。建築ゲームの「Monument World」も合わせて紹介
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印刷2016/10/22 15:01

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[SPIEL’16]QUEEN Gamesが贈る新作アブストラクトゲーム「GLÜX」試遊レポート。建築ゲームの「Monument World」も合わせて紹介

画像集 No.011のサムネイル画像 / [SPIEL’16]QUEEN Gamesが贈る新作アブストラクトゲーム「GLÜX」試遊レポート。建築ゲームの「Monument World」も合わせて紹介
 アナログゲームの世界には,いわゆる「アブストラクトゲーム」と呼ばれるジャンルがある。何かの状況を具体的に表現しているというよりは,抽象的なルールや表現方法をもったゲームのことだ(典型的なのは囲碁やポーカーなど)。SPIEL'16にも,もちろんたくさんの興味深いアブストラクトゲームが出展されていたのだが,ここではQUEEN Gamesの新作「GLÜX」を紹介したい。

 GLÜXは「光をモチーフにしたゲーム」と説明に書かれてはいるが,とくに光を扱っているという印象はない――が,極上のアブストラクトゲームとして「頭がウニになる感覚」を与えてくれる作品である。また,合わせて2016年4月頃に発売されていた「World Monument」も簡単にレポートしよう。こちらはうってかわって非常に具象的なボードゲームである。

画像集 No.015のサムネイル画像 / [SPIEL’16]QUEEN Gamesが贈る新作アブストラクトゲーム「GLÜX」試遊レポート。建築ゲームの「Monument World」も合わせて紹介

「GLÜX」公式サイト(英語)

「World Monument」公式サイト(英語)

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エリアの支配をめぐるアブストラクトゲーム「GLÜX」


 GLÜXはQUEEN Gamesがファミリーゲームと謳うとおり,シンプルなアブストラクトボードゲームだ。細かいジャンルとしては,エリアマジョリティに属する(詳しくは後述)。 プレイヤー数は2〜4人で,プレイ時間は30分程度。人数が増えれば増えるほどカオス度合いは増し,2人の場合は逆に思考と思考のぶつかりあいになりがちだ。とはいえ,人数に関わらず運の要素も結構――例えば「カルカソンヌ」と同程度には――あるので,ガチガチの思考ゲームというわけではない。

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 GLÜXにおいて,プレイヤーがするべきことはシンプルだ。

  • 自分の袋からチット(駒)を1つ取り出す
  • ルールに従い,ボード上のいずれかにそのチットを置く
  • 手番の終了。ほかのプレイヤーも同じことを行い,袋の中のチットがすべてなくなったらゲーム終了

 GLÜXのチットは両面印刷されていて,1〜6までの数字がドットで表示されている。表裏を合計すると必ず7になっているので,チットには3種類(1と6,2と5,3と4)があることになる。要はサイコロの表裏の組み合わせと同じである。
 チットは4色あり,1人のプレイヤーは1つの色のチットだけを扱う。各色チットは24枚あるので,チット1種類につき8枚が袋の中に入っていることになる。

 GLÜXのボードは,横9マス縦13マスで区切られている。ほとんどのマスは深い青色で塗られているが,いくつかのマスは水色で塗られていて,これら水色マスがいくつか集まって9つのエリアを作っている(詳しくは下の写真を見てほしい)。GLÜXの目的は,できるだけこの水色エリアに自分の色のチットを置いて,他のプレイヤーより多くのエリアを支配することにある。

水色で塗られたエリアの支配が目標となる
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■両面印刷されたチットが曲者


 各プレイヤーがチットを置き始めるスタート地点は,ボードの四隅となる。スタート地点を表す座布団のようなマーカーを置けばゲームスタート。手番が来たプレイヤーは,前述のとおり自分の袋からチットを1枚引き,それをボードの上に置く。チットはとくに表裏が定められておらず,自分の好きな面を上にして置いて構わない。とはいえ,最初の一手は自動的にスタート地点に置くことになる。

ゲーム開始直前の模様
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 さて,2手目からが本格的なゲームの開始だ(いや,実のところ勝負は1手目から始まっているのだが)。手番プレイヤーは再び袋からチットを引き,ボードの上に置く。このとき,おける場所には以下の制限がある。

  • すでにボード上に置いてある自分のチットをスタート地点として,上下左右方向にそのチットが示す数字の数だけ離れたマスに置く。
  • このとき,途中でほかのチット(敵味方問わず)を「飛び越す」ことはできない(もちろんボードの外に出ることもできない)。
  • チットは2枚まで重ねて置くことができる。敵のチットの上に重ねても構わない。重ねた場合,一番上のチットに書かれた数字だけを参照する。

 文字で説明すると少し分かりにくいので,下の写真をみてほしい。

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 この写真の場合,右下が緑のスタート地点である。緑はそこに6のチットを置いた。しかるに次の手番で「3・4」のチットを引いた緑は,スタート地点のチットから6マス上方向に離れたマスに,3の面を上にしてチットを置いた。
 しかるにその次の手番では再び「3・4」のチットを引き,それを先に引いた「3・4」のチットから見て左に3マス離れたところに置いた。
 ちなみにこのとき,緑プレイヤーはスタート地点に置いた6のチットから左方向に数えて6マスめのマスに,その手番で引いた「3・4」のチットを置いても構わなかったし,前のターンに置いた(ボード左端にある)「3・4」のチットから上方向に3マス離れたマスにこの手番に引いた「3・4」のチットを置いてもよかった。
 なおこのとき,「nマス離れたマス」を数えている途中で,ほかのチットがすでに置かれているマスがあった場合,その先の位置にチットを置くことはできない。


■どことなく囲碁っぽい雰囲気


 さて,問題はここからである。
 GLÜXは水色のエリアの支配権をめぐって戦うゲームである。そして水色のエリアの支配をどちらが握っているかは,そのエリアに置かれているチットの点数の合計で決まる。例として,下の写真を見てほしい。

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 この場合,左上のエリアは文句なく赤プレイヤーのものだ。なにしろ赤のチットしか置かれていない。
 その右側のエリアは,赤のチットが2枚で合計7点,緑のチットが1枚で合計4点となっている。このためこのエリアは赤がトップで緑が2位ということになる。2位まで得点は入る(1位の半分)ので,2人プレイのときは「最低でもコミットしておくこと」が超重要だし,3人以上のときは考える要素がぐっと増えることになる。

 このエリアの支配において効いてくるのが,

  1. ほかのチットを飛び越すようにして新しいチットを置けない
  2. チットは1マスに2枚まで重ねられる(スタック制限2)

 この2つのルールだ。

 1.のルールを利用すれば,「敵のチットを守る壁」のようなものを構築することができる。端的に言って,敵のチットの右側にベタ付けしてチットを置いてしまえば,敵はそのチットを起点として右方向に陣地を伸ばしていくのが難しくなる。
 2.のルールも重要だ。このルールを利用すれば,ほかのプレイヤーのエリア支配を崩せるだけでなく,1.のルールを利用して作られた「壁」を崩すこともできる(敵プレイヤーのチットの上に自分のチットを置いてしまえばよい)。一方,自分で自分のチットの上に2枚めを置いてしまえば,それは「絶対に侵略されないマス」となるので,攻防の要とすることもできるというわけだ。そのことに1手番と1チットを使うかどうかはともかくとしてだが(なお2人プレイだと,この陣地構築は意識しても良さそうに感じた)。

激しい陣地の奪い合い。自分がエリア支配のために置いた,点数の低いチットの上に,点数の高いチット(6とか)を重ねることで,エリアの支配をもぎ取る戦術も有効だ
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 また,これらのルールと「エリアの支配はチットの合計点数で見る」ことが一緒になることで,チットそのものに価値のジレンマが発生しているのも面白い。
 6のチットは,エリアの支配にあたっては非常に強力だし,序盤においては迅速にほかのエリアに手を伸ばす起点ともなる。けれどゲーム中盤以降は6マスも回廊が「通っている」ことは減ってくるし,なにより自分の足元で起こっているエリア争奪戦に対して,新たな影響をもたらすことができない。
 一方で1のチットは,エリアの支配においては意味が非常に小さい。けれど1のチットは自分の周囲にチットを隣接して展開できるため,手番を使えばエリアの支配を固めるにあたって極めて効果的に機能する。2人プレイの場合,敵の「1」のチットの隣の新たにチットを置くのは自殺行為(すぐその上に置かれる)ので,防御的な運用が可能なのも大きい。


■思わず真剣勝負をしてしまう「深さ」のあるゲーム


 GLÜXはプレイしていて楽しく,また実に頭を捻る,好ゲームと言える。運が絡む要素は「袋からチットを引く」ところがすべてだが,「ここで6のチットが引ければ!」というシーンで連続して「3・4」を引いたりすることもあって,なかなかままならない。
 もっとも本作のチットは3種類しかないのだから,何が何枚使われているかを把握するのは簡単だ(最悪ボードの上に出ているチットをカウンティングすればよい)。このため,「あのタイプのチットは来にくい」「あのタイプのチットはまだ1枚残っているはず」といったことを予測しながらプレイすることは比較的容易といえる。

多人数プレイによる激しい殴り合い。楽しそう
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 しかしながら,結局ボードゲームにおける最大の不確定要素とは,人間の思考なのだ。GLÜXの4人プレイの模様を観戦していると,そのことを改めて強く感じる。対戦相手は自分が思う最善手を打ってこない可能性が常にあるし(そもそも自分が思う最善手が最善でない可能性も高い),そしてプレイ人数が増えれば増えるほど,予想は覆されやすくなる。
 結果,4人プレイにおいては半ばパーティゲーム的な楽しさが生まれるし,2人プレイではガチの思考ゲームになるといった感じで,人数によってさまざまな楽しさが生まれるゲームとなっているように感じた。

 とりあえず2人のガチゲーマーが対戦するとカウンティング合戦になると思われるので,その場合は砂時計を用意したほうがいいだろう。それくらいに,熱中できる作品である。

「GLÜX」公式サイト



ユーロゲームの初心者導入にオススメな「World Monument」


 もう一つ,World Monumentを紹介しよう。こちらはもう日本でもプレイしている人がそれなりにいるのではないかと思うので,写真メインでお届けする。

 本作の目的は,有名な建築物を建設することにある。「建設」は抽象的な話ではなく,実際にブロックを積み上げて建設するのだから,もうこれだけで楽しいことは請け合いだ。

こんな感じで建物を作っていく
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 ゲームは2つのフェイズに分かれている。最初は石切場フェイズ。次は建設フェイズだ。
 石切場フェイズでは,黒いポーンを動かして,資材となるブロックを獲得していく。黒いポーンは4マス移動でき,その通過点にあるブロックから1つずつブロックを獲得できる。ただし黒いポーンは必ず石切り場ボードの最外周で移動を終了しなくてはならない。
 資材ブロックにはさまざまな色があるが,原則として青のブロックはゲーム中では使用しない(これはゲーム終了時に1つ3点となる)。また黒いブロックを取ったプレイヤーは,次のラウンドのスタートプレイヤーとなる(同時に勝利得点2を得る)。

石切場フェイズ。4マス移動と書いたが,スタートプレイヤーおよびその隣のプレイヤーは,最初の周回では移動できるマスの数が少ない(先手有利を防ぐため)
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何色のブロックをいくつ石切場に置くかは,建造物ごとに指定がある。ブロックの置き場はランダム
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取ったブロックはスクリーンの後ろに隠しておく。建設フェイズでブロックがおけず,手番をパスするときは,手元のブロックを公開しなくてはならない
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 建設フェイズでは,スタートプレイヤーから時計回りにブロックを置いていく。どこにどんなブロックがおけるかは,ボードに指定されている。
 ブロックを置くごとに得点が得られるが,より高い位置にブロックをおければおけるほど得られる得点は高い。他人を踏み台にしてこそ,高得点が得られるのである!

他人が置いたブロックを踏み台として,どんどん建設していく
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 石切場フェイズと建設フェイズを1組として3回これを繰り返したところで,建物は完成し,勝利得点を計算する。前述のとおり,青いブロックは1つ3点になるが,それ以外に使わず残ってしまったブロックは1つにつき−1点のペナルティとなる。

 建物を作っていくゲームというと,「RUMIS」など名作が多いが,本作もまた簡単なルールで奥深い駆け引きが楽しめる作品となっている。そしてなにより,ゲームが終わったときに「建物」が実際に完成しているのが素晴らしい。
 いかにもユーロゲームらしい,ルールはシンプルだけど奥が深く,ビジュアルが楽しく,ゲームの間にもボードの写真を撮ってSNSにUPしたくなるような作品として,本作は初心者導入の定番の1つに加えても良いだろう。

完成! とりあえずこれ,写真を撮ってTwitterとかにUPしたくなりませんか。しかるにその画像を見た人は,「なんだか面白そう」と思いませんか。そういう意味でも好ゲームといえる
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「World Monument」公式サイト(英語)

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