プレイレポート
カナイセイジ氏新作「ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ」プレイレポート。シビアな戦闘バランスで再現されたデスゲームの世界
同作はアニメ「ソードアート・オンライン」(以下,SAO)をモチーフとした,協力型のダイスゲームだ。第1シリーズである≪アインクラッド≫編がベースとなっており,キリトやアスナといったSAOのキャラクター達も登場する。5月14日に開催された「ゲームマーケット2017秋」で先行発売が行われ,「ラブレター」などで知られるゲームデザイナーのカナイセイジ氏が手がけたタイトルということもあって,話題を呼んだことでも記憶に新しい。今回は,そのプレイレポートをお届けしたい。
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SAOを再現したゲームシステム。立ちふさがる強敵を撃破し≪アインクラッド≫を攻略せよ
「ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ」の舞台となるのは,SAOの第1シリーズで登場したオンラインゲームの世界,≪アインクラッド≫だ。デスゲームと化した≪アインクラッド≫を脱出するために,主人公であるキリト達はその最上階を目指して攻略を進めていく,というのが第1シリーズのストーリーだが,本作でもSAOと同様,≪アインクラッド≫の攻略が大きな目的となる。
本作の≪アインクラッド≫は「低層」「中層」「高層」の3つの階層と「最終戦」で構成され,各階層ではSAOのストーリーをモチーフにした「シナリオ」に挑戦することになる。シナリオの内容は,第1層でキリト達に痛手を負わせた「コボルトロード」など,SAOで登場した数々の強敵との戦闘を行うものとなっており,戦闘に勝利してシナリオを達成することで,その階層をクリアできる。「低層」から順番に階層を進んでいき,最後に待ち受ける「最終戦」を攻略することが,本作のゲームクリア条件だ。
ゲームの具体的な流れに触れていこう。まずプレイヤーは,自らが扮するSAOのキャラクターを1人選ぶ。キャラクターは主人公である「キリト」とヒロインの「アスナ」,そして「クライン」「エギル」「シリカ」「リズベット」の6人が用意されており,思い思いのキャラクターでパーティを組み,協力プレイで≪アインクラッド≫に挑戦できる。ただし,パーティには必ずキリトがいなければならないので,その点には注意。1人でのプレイにも対応しているが,その場合は任意のキャラクターを1人選び,そのキャラクターとキリトの2名を操ってプレイを進めることになる。
キャラクターを選び終わったら,階層にシナリオを配置していく。シナリオは1階層に付き3種類が用意されており,そのうち1つをランダムで配置していくため,プレイする度に異なる≪アインクラッド≫ができあがる。ただし最終戦のシナリオは1種類のみとなっており,プレイヤーの前には必ず“とある男”が立ちふさがることになる。
シナリオの配置が終わると,いよいよ≪アインクラッド≫の攻略がスタート。最初に攻略する階層である「低層」のシナリオカードを表向きにして,そこに記されている敵と戦闘を行うのだ。
戦闘が始まると,最初はキリトのプレイヤーが「手番プレイヤー」となる。手番プレイヤーはまず「連係」を行うプレイヤーを1人選び,手番プレイヤーは「メインダイス」を,連係相手に選ばれたプレイヤーは「サポートダイス」を,それぞれシナリオカードに記された個数だけ振る。そのダイスの出た目を使って,プレイヤーは自らのキャラクターが持つ「ソードスキル」を発動可能だ。
ソードスキルには,さまざまなダイスの値が指定されており,その指定されたダイスをコストとして消費することで発動できる。スキルの効果によって敵にダメージを与え,HPを0にすれば勝利だ。
ダイスはメインダイス・サポートダイス問わず,1ターンに2回まで振り直しを行うことが可能。さらにキャラクターには,特殊な効果を及ぼす「アビリティ」がそれぞれ設定されており,ダイスの目を操作できる効果を持つものがある。振り直しとアビリティを使い,良い出目を狙うのが,敵が強くなる「中層」以降の戦闘を切り抜けるコツだ。
手番プレイヤーが攻撃を終えると今度は敵が反撃を行い,手番プレイヤーは敵ごとに設定されている値のダメージを受け,その分HPが減少してしまう。HPが0になったキャラクターは「死亡」し,パーティ全体が「攻略失敗」として,その時点でゲームオーバーとなってしまうのだ。
そのため,本作ではキャラクターのHPには常に注意しなければならない。反撃ダメージはできる限り避けたいが,そこで重要になってくるのが「スイッチ」だ。原作においてこのスイッチは,攻撃を担当するキャラクターが素早く交代することで,隙のない連続攻撃を行うテクニックとして登場するが,本作においてもそれが再現されている。そのターン中に振ったメインダイスとサポートダイスをすべてソードスキルのコストとして使い切ることで,そのターンの敵の反撃を飛ばしてしまえるのである。
敵からの反撃の処理が終わると,連係相手として選ばれたプレイヤーが次の手番プレイヤーとなる。手番を終えたプレイヤーは「硬直状態」となって連係相手に選ぶことができなくなるため,硬直状態になっていないプレイヤーから次の連係相手を選ぶのだ。手番プレイヤー以外がすべて硬直状態となった場合は,即座に全員の硬直状態が解除される。
シナリオの敵のHPが0になるまで,こうした手番の流れを繰り返していく。すべての敵のHPが0になればシナリオクリアだ。
少ないコンポーネントで原作を再現した,カナイセイジ氏らしい1作
原作の≪アインクラッド≫は,コンティニューやログアウトはできず,またゲーム自体の難度も高かったため,作中ではさまざまな人物が死亡するデスゲームであった。本作においてもその雰囲気は再現されており,キャラクターがいつ死亡してもおかしくない,非常にシビアなバランスに仕上がっている。
まず,スイッチで敵からの反撃を飛ばすことが前提のバランスとなっているようで,キャラクターのHPはかなり低めだ。せいぜい,敵の反撃を2回か3回耐えられる程度である。スイッチは,振り直しやアビリティを活用すればどんなキャラクターでも成功させられるものの,振り直しやアビリティの使用回数には制限があり,またスイッチの成否はダイス運にも左右されるため,何度も反撃を食らってしまうことも十分にあり得る。本作はキャラクターの死亡が即座にゲームオーバーにつながるため,一度のミスが致命的な状況を引き起こすかもしれない,というスリルが常に付きまとう。
さらに,高いダメージを与えるソードスキルほど多くのダイスを必要とするため,スイッチを狙うことが難しくなってくる。ダメージのためにリスクを背負うか,あるいはダメージを捨ててスイッチを確実に行うか,プレイヤーは状況に応じて判断しなければならない。
本作は,こうしたギリギリの駆け引きを楽しめる作品となっており,SAOでキリト達が感じていたであろう戦闘の緊張感を疑似体験できるのが面白いところだ。原作ファンはもちろん,ボードゲームに慣れている熟練者にもおススメできる。
また,本作のシステムは非常にシンプルで,把握すべきルールの数は少ない。ダイスを振るだけで自然とゲームが進行していくため,ボードゲームの初心者でもルールが理解しやすいだろう。SAOは知っているけどボードゲームはやったことがない,という人でも楽しめるはずだ。
とはいえ,気になる点がないわけではない。原作の主人公であるキリトは,本作においても特殊なキャラクターであり,さまざまな“特別扱い”が用意されている。シナリオによってはキリトのみがデメリットを負う状況があったり,また最終戦の最後に待ち受ける「最終決闘」ではキリトが常に手番プレイヤーとなったりなど,キリトとほかのキャラクターとでは,明確な不公平が存在する。最終決闘ではキリト以外のプレイヤーは手持無沙汰になってしまう場面も多く,良くも悪くもキリトが“主人公”になっている印象である。
とはいえ,本作はあくまで原作ありきの作品なので,キリト達の冒険の軌跡を体験したいという人にとっては,そこもプラス評価になるのだろう。とくに最終戦のシナリオは,キリトと第1シリーズのラスボスとの戦闘を再現したものなので,原作ファンであればあるほど,白熱したものとなるはずだ。
現在,アニメ版最新作「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」が全国で公開されていることもあって,SAO熱が盛り上がっている読者も少なくないはず。本作をプレイして,原点である第1シリーズを思い返してみるのも一興ではないだろうか。
「ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ」公式サイト
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ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ
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