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EPYCの登場で「データセンターの新しい時代が始まる」。価格帯や次世代CPUのロードマップが明らかになったAMDイベントレポート
AMDはこのイベントで,EPYC 7000シリーズの大まかな価格帯も発表している(表)。それによると,2ソケット向けで32コア64スレッドの「EPYC 7601」などは3400ドル(約37万8451円)から,1ソケット向けで32コア64スレッドの「EPYC 7551P」は2100ドル(約23万3749円)からになるという。
対象システム | コア数とスレッド数 | 価格帯 | |
EPYC 7601, |
2ソケット向け | 32C64T | 3400ドルから |
---|---|---|---|
EPYC 7451, |
24C48T | 1850ドルから | |
EPYC 7351, |
16C32T | 650ドルから | |
EPYC 7251 | 8C16T | 475ドル | |
EPYC 7551P | 1ソケット向け | 32C64T | 2100ドル |
EPYC 7401P | 24C48T | 1075ドル | |
EPYC 7351P | 16C32T | 750ドル |
ゲーマーに直接関係のある話題は正直ないのだが,久しぶりにサーバー市場へ帰ってきたAMDが,EPYC 7000をどのような市場に向けて展開しようとしているのかがうかがえるイベントでもあるので,その概要を簡単にレポートしたい。
AMD,新世代サーバー向けCPU「EPYC 7000」を正式発表。8C16Tから32C64Tまでの計12製品をラインナップ
最初に登場したのは,Hewlett Packard Enterprise(以下,HPE)のAntonio Nori氏。氏は,HPEが開発中というEPYC 7000を採用したクラウドサービス向けストレージシステム「Cloudline CL3150」を披露した。
EPYCはCPUだけでなく,周辺回路も集積したSoC(System-on-a-Chip)となっているため,直接SSDを接続することが可能だ。Cloudline CL3150は,その特徴を生かした製品で,クラウドサービスや大企業向けのストレージシステムになるという。出荷は2017年後半の予定とのこと。
次に登壇したのは,MicrosoftのCorey Sanders氏。Microsoftのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」では,採用するハードウェアに一定の仕様を定めており,それにもとづく「Project Olympus」というサーバーを,サーバーメーカー各社と共同開発しているという。
そのProject Olympusに準拠したEPYC搭載サーバーシステムを現在開発中で,2017年後半からAzureサービスで採用することが決まったと,Sanders氏は発表した。
Su氏が一旦退場したイベント後半では,AMDでエンタープライズ向け,組み込み向け製品を担当するセミカスタムビジネス事業部部長のForrest Norrod氏が登壇。Baidu(百度)やDell,Super Micro Computerといったパートナー企業の代表者とともに,各社が年内に出荷する予定のEPYC 7000搭載サーバー製品をアピールした。
サーバー分野の大手メーカーだけでなく,EPYC 7000シリーズの採用を表明しているハードウェアメーカーは,11社にもなるという。今のところ,EPYC 7000シリーズは,サーバー向けCPUとしてのスタートを順調に切りつつあるようだ。
Norrod氏は,EPYC 7000シリーズのラインナップと価格帯についても説明した。これらについては速報記事や冒頭の表を確認してもらうとして,Norrod氏が強調していたのは,EPYCがサーバー市場でも最も大きなところを狙っているという点だ。
氏によると,サーバー市場の80%は2ソケットシステムであり,EPYC 7000が2ソケット向けに9製品もラインナップしているのも,そこが最も大きな市場であるからというわけだ。価格帯で比較しても,EPYC 7000シリーズは,競合であるIntelのXeon E5シリーズより高い性能を有しているというのが,Norrod氏の主張である。
Norrod氏は出番の最後に,EPYC 7000シリーズの発注は,6月20日から可能であると宣言した。ただ,AMD関係者にヒアリングしたところ,すべてのEPYC 7000シリーズが同時に出荷開始となるわけではなく,2017年7月末ぐらいまでの間,段階的に出荷されることになるという。
最後に再び登壇したSu氏は,サーバー向けCPUのロードマップについて,簡単に説明した。それによると,投入時期は不明――スライドを見る限りでは,2018年以降に見える――だが,Zenマイクロアーキテクチャの改良版「Zen 2」マイクロアーキテクチャを採用する「Rome」(ローマ,開発コードネーム)を7nmプロセスで製造するという。それに続いて,「Zen 3」マイクロアーキテクチャを採用する「Milan」(ミラノ,開発コードネーム)を2020年までに投入し,性能面でのリーダーシップを取り続けると,Su氏は述べていた。
Zen 2とZen 3の登場時期がこの辺りだとすると,デスクトップPC向けRyzenの後継CPUも,同じくらいのタイミングで登場してくる可能性があるのではなかろうか。
余談だが,EPYCの開発コードネームが,「Naples」(ナポリ)だったので,Zenマイクロアーキテクチャベースのサーバー向けCPUは,イタリアの都市名を採用していくようだ。
最後にSu氏は,「EPYCの登場により,データセンターの新しい時代が今始まる」と宣言してイベントは終了した。実際に市場においてEPYCが評価されるのはこれからだが,AMDが抱いている自信がうかがえるイベントだったのではなかろうか。
AMDのEPYC製品情報ページ
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