プレイレポート
原作のシビアな戦闘バランスと,ダークファンタジーな世界観を再現したTRPG。「DARK SOULS TRPG メディア向け先行体験会」レポート
「モンスター・コレクションTCG」や「六門世界RPG」などを手掛けている,グループSNEの加藤ヒロノリ氏が制作を担当しているDARK SOULS TRPGは,果たしてどのように原作のシビアな戦闘バランスを表現しているのか。体験会で判明したゲーム内容をお伝えしていこう。
原作の世界観を再現したキャラクターメイク
「DARK SOULS TRPG」は,DARK SOULS IIIの世界観をベースに展開される。「薪の王」達の故郷が流れつく世界である「ロスリック」を舞台として,主人公は「火の無い灰」と呼ばれる不死者となり,世界を照らす「火」を巡る戦いへと身を投じることになる。「灰の審判者グンダ」や「呪腹の大樹」など,原作でプレイヤーを苦しめたボス達が登場することはもちろん,アイテムや魔法も原作に登場するものが収録されている。
サンプルシナリオは4つ収録されており,「灰の墓所」から「深みの聖堂」までの原作のストーリーに沿った体験を楽しめる。今回の先行体験会では,本作のチュートリアルも兼ねた内容となっている,「灰の墓所」のシナリオをプレイすることとなった。
ゲーム開始後,まずはキャラクターメイクを行うことに。キャラクターの名前や性別,年齢といったプロフィールを自由に決定した後,キャラクターが戦闘でどのような役割となるかを示す「素性」を選ぶ。「素性」は原作と同じく10種類が用意されており,「戦士」「騎士」「傭兵」「伝令」「盗人」「刺客」「魔術師」「呪術師」「聖職者」「持たざる者」の中から1つを選べる。初期装備と初期スキルは素性ごとに用意されているため,素性が決まるとそれらも自動的に決定していく形だ。
今回はサンプルキャラを使ってのプレイだったので,キャラクターメイクにランダム要素はなかったが,TRPGっぽくダイスを振っての作成もできる。その場合は,それぞれの素性には能力値の条件(騎士なら体力15,筋力13,技量10といった具合)が設定され,ダイスの出目によっては選択できない素性も出てくる。
スキルは初期状態で1つ獲得しているほか,キャラクターのレベルが5の倍数に達するごとに1つ,追加で獲得できる。スキルの効果は,敵にダメージを与えるものや敵からのダメージを軽減するものなどさまざまだ。魔術師や呪術師の場合は,原作に登場した「ソウルの矢」「発火」などが,武器で戦う素性の場合は「構え」「ウォークライ」といった戦技がスキルとして用意されている。素性によっては,「バックスタブ」のようなアクションや,あるいは本作オリジナルで設定された能力がスキルとして設定されていることもある。
素性を決めた後は,本作独自の設定である,キャラクターが持つ「思い出」を決定する。(サンプルシナリオの)キャラクターは「墓所で目覚め,戦えることは理解しているものの,過去の記憶が曖昧な不死者」という設定だ。これ自体は,原作経験者であればとくに違和感はないかと思うが,ここにロールプレイのためのフレーバーとして,過去の記憶の断片を設定できるというわけだ。
思い出は,素性ごとに用意された「素性思い出表」から1つ,共通の「汎用思い出表」から2つ,合計3つを,ダイスによってランダムで獲得する。素性思い出は,戦士なら「鍛冶の炎:肉親とともに,炎を見つめ,鉄を鍛える」「始まりの動揺:初めて敵を倒し,返り血を浴びた際の動揺」といったものがある。汎用思い出は「喜び」「怒り」「哀しみ」「楽しみ」「明るい」「暗い」のカテゴリごとに,それぞれ6つずつ用意されている。
体験会で作成した呪術師の一例を出すと
- 伝授の儀式:呪術の師から受ける,伝授の儀式(素性思い出)
- 友の抜け駆け:友人に出し抜かれた(汎用思い出:怒り)
- 肉親の窮地:肉親が追い詰められる場面に居合わせた(汎用思い出:怒り)
といった感じで,なんとなくキャラクターのイメージも湧いてくる。
なお,「思い出」はフレーバーであると同時に,キャラクターの命のストックにもなっている。原作において,不死者であるプレイヤーキャラクターは死亡しても何度でも生き返る。本作でも,例え死んでしまっても復活はできるのだが,同時にそのキャラクターが持つ「思い出」が1つ失われてしまう。そして3つの「思い出」をすべて失ったキャラクターは,「亡者」と化してキャラロストしてしまうのだ。
また,本作における「ソウル」の扱いは,原作同様に経験値とお金を兼ねたものとなっている。ソウルは敵キャラクターを倒した時,新たなフィールドへ移動した時,シナリオをクリアした時など,さまざまなタイミングで獲得が可能だ。
ソウルを消費することでキャラクターのレベルを上昇させたり,アイテムを購入したりできるので,何を優先してソウルを使用するかが,本作においても重要になってきそうだ。
ホストプレイヤーと白霊プレイヤーが,協力してダンジョンに挑む
本作のサンプルシナリオ上でのゲーム進行は,トランプで表わされた「フィールド」を用いたダンジョンアタック形式で行われる。プレイヤー達は拠点となる場所をスタート地点として,さまざまなフィールドを移動していく。ダンジョンは複数のフィールドで構成されており,トランプ1枚で1つのフィールドとなる。プレイヤー達はさまざまなイベントをこなしながら,ダンジョンを進んでいくことになるのだ。
具体的な流れに触れていこう。まずシナリオが始まると,シナリオの背景や状況説明など,ゲームマスターによる導入が行われる。
続いて,プレイヤーの中から1人,「ホストPC」を選択することになる。本作は1人から4人までのプレイヤーが参加することを想定しているが,2人以上のプレイヤーでシナリオに挑む場合は,必ず1人がホストPCとなり,残りのプレイヤーは「白霊PC」としてシナリオに参加しなければならない。これは原作を意識した設定で,シナリオはホストの世界で起こる出来事となり,白霊はほかの世界からホストを手助けするためにやってきた存在となるのだ。
とくに気を付けたい点が,ホストが死亡した場合は,白霊として参加しているプレイヤーも同時に死亡してしまう点だ。ホストがやられてしまえば全滅扱いになってしまうため,ほかのプレイヤーはホストを守ることが重要になってくる。
導入部分が終わると,いよいよフィールド探索が始まる。プレイヤーは現在のフィールドから,隣接しているフィールドへと移動が可能で,新たなフィールドに移動すると,そのフィールドに用意されている「チェックポイント」が提示される。どのチェックポイントを処理するかはプレイヤーの自由となっており,例えば「水盆を調べる」「隣のフィールドへ」という2つのチェックポイントがあるフィールドでは,水盆を調べるか,または調べずに隣のフィールドへ行くかをプレイヤーが自由に選択できるのだ。
このチェックポイントの処理に応じて,イベントが発生する。イベントの内容はさまざまとなっており,新たなアイテムを獲得できることもあれば,敵との戦闘が発生することもある。新たなフィールドに移動し,チェックポイントの選択によって生じたイベントを処理して,また新たなフィールドに移動する。これを繰り返してボスが待ち受けるフィールドまで移動し,そこでボスを倒すまでが,本作の1セッションとなっている。
攻撃と防御,どちらに余力を残すか。原作をイメージしたバトルシステム
本作の戦闘は, 5つの「スタミナダイス」を用いて行われる。原作の戦闘は,攻撃にも防御にもスタミナを消費するので,スタミナ配分を考えながら戦わなければならないが,本作でもこの要素がスタミナダイスによって表現されているのだ。
スタミナダイスは,1ターンに5個まで使用できる。攻撃と防御(回避とガード)はどちらもスタミナダイスを使用して行う必要があるため,例えば攻撃に5個すべてを使ってしまえば,そのターンは敵の攻撃に対する防御を行えないことになる。スタミナダイスという1つのリソースをどのように割り振るか,攻撃と防御のバランス感覚が問われるシステムとなっている。
戦闘の流れは,まず最初に行動順を決定する「イニシアチブ決定処理」を行う。未行動のキャラクター全員が「2D6+能力修正値」でイニシアチブ値を決定し,最高値のキャラクターから行動するというものだ。ただしこの時,同じイニシアチブのキャラクターはバッティングが発生してしまい,次のイニシアチブ決定処理まで行動ができなくなってしまう。敵とバッティングした場合も同様の処理が行われるため,「お互い牽制しあって動けない」というイメージが分かりやすいだろうか。
また,プレイヤーにはそれぞれ「幸運」というリソースが設定されている。判定時に使用すると,任意のダイスを振り直すことができる重要リソースなのだが,イニシアチブ決定処理でバッティングが発生したプレイヤーは,この幸運が1つ回復する。シナリオが進むと幸運を使用する機会も増えていくため,バッティングが生じることによるメリットも重要になってくる。
イニシアチブ決定処理で最高値を出したキャラクターは「アクション権」を獲得し,まず好きな個数のスタミナダイスを消費する。そしてその使用したダイスの出目を用いて,敵への攻撃やアイテムの使用,装備の変更といった能動的な「アクション処理」を行えるのだ。攻撃が選ばれた場合は,対象となったキャラクターに「リアクション処理」が発生し,任意の個数のスタミナダイスを使うことで攻撃に対するガードや回避を行うことになる。
アクション権を得たキャラクターが好きな回数のアクションを終えると,そのキャラクターは行動済みとなり,再びイニシアチブ決定処理が行われる。これを繰り返し,すべてのキャラクターが行動済みになれば,次のターンへと移行するのだ。
最終的に敵をすべて倒せば戦闘は勝利となり,ソウルと戦利品であるアイテムを獲得できる。
こうしたバトルシステムを用いたシビアな戦闘バランスは,本作の大きな魅力だ。
プレイヤーは常に攻撃と防御の両方を意識しなければならず,臨機応変な対応が求められる。例えば,ボスの攻撃が激しいときは,防御や回避にスタミナダイスを割いてしのぎ,ボスに隙ができたターンで攻撃を集中するなどの駆け引きが重要になるのだ。
また,悪意ルールによって敵が強化されていくこともあって,戦闘を無傷で切り抜けることは難しい。ザコ敵を相手にしているはずでも,運悪く攻撃が集中すれば,簡単に死んでしまう。途中まではダンジョンをうまく攻略できていたのに,突然出てきた敵に事故のように殺されてしまった,という事態も十分に考えられるだろう。それはそれでDARK SOULSらしい部分でもあるが。
最後に,本作の制作者である加藤ヒロノリ氏へのインタビューをお届けして,本稿の締めくくりとしたい。
――本作を制作したきっかけを教えてください。
加藤ヒロノリ氏(以下,加藤氏):
フロム・ソフトウェア取締役社長の宮崎英高さんが,アナログゲーム好きな方でして,一度グループSNEに遊びに来てくださったことがあったんです。そこで宮崎さんと安田(グループSNE社長 安田 均氏)が話をする機会があったんですが,僕が昔からDARK SOULSシリーズの大ファンだったので,自分のソフトを持って行ってサインをお願いしたんですよ。それがきっかけで宮崎さんと懇意にさせていただいていたんですが,僕と宮崎さんの関係を見た稲垣さん(ドラゴンブック副編集長 稲垣 健氏)が「これは行けるのでは」と,フロム・ソフトウェアさんに話を持ちかけたというのがきっかけです。
――制作にあたり,フロム・ソフトウェアさんから指示や注文などはありましたか?
加藤氏:
フロム・ソフトウェアさんはむしろ,ご自由にどうぞ,というスタンスでした。DARK SOULSシリーズの世界観について,原作では多く語らないことが魅力だと考えていますが,TRPGで加藤の解釈を入れすぎてしまうと,それが公式の解釈だと誤解されてしまう恐れがあります。そのため,テキストは可能な限り濁して,答えを書かないようにしたんですが,かなり苦労しました(笑)。
――DARK SOULSシリーズは,NPCを殺害するなどのプレイも可能です。そういった要素に関して,本作ではどうなっていますか。
加藤氏:
一応NPCを殺害することは可能です。原作の経験プレイヤーが普通に遊ぶと,とりあえず殺害しようとする可能性は十分に考えられますし,それに合わせた展開もサンプルシナリオには用意してあります。ただ,それによって「悪意」が上昇するなどのデメリットも,もちろん発生しますが。
――DARK SOULSシリーズプレイしていて,今までで一番印象に残ったことを教えてください。
加藤氏:
ネットワークを不自由にして生まれた,DARK SOULSならではの文化ですね。あえてチャットを失くして,言葉もなくして,そこから生まれる文化でプレイする。そこがとにかくすごい,これを作った人は天才だ,と感動したんです。DARK SOULS TRPGの遊び方の1つに,白霊は一切しゃべらずにジェスチャーで意思疎通を行ってもよいというものがあるんですが,これはDARK SOULSのオンラインプレイを意識したものになります。
本作の文中には書けなかったんですが,オンラインセッションでLINEスタンプだけを使って会話するという形もすごく面白いです。実際に1回やってみたんですが,唐突なスタンプが次々と出てきても,ニュアンスは伝わるんです。そういった部分から出てくる面白さは,原作に通じているのではないかと。
――最後に,DARK SOULS TRPGの発売を楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。
加藤氏:
DARK SOULSを遊んだことがある人なら,必ず面白いゲームになっていると思います。ぜひ一度手に取って,遊んでみてほしいです。
――ありがとうございました。
- 関連タイトル:
DARK SOULS TRPG
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(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / (C)FromSoftware, Inc.
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