プレイレポート
「アサシン クリード オリジンズ」プレイレポート。古代エジプトは,冒険してよし,観光してよし,暗殺してまたよし
「アサシン クリード オリジンズ」公式サイト
これまで毎年のようにリリースされてきた「アサシン クリード」シリーズだったが,ご存じのように2016年には新作がなく,「アサシン クリード シンジケート」以来,2年ぶりに発売されたのが「オリジンズ」となる。充電期間を経て発売された,メインストリームの最新作が気になっているファンは多いはずだ。
すでに序盤のインプレッションを掲載しているが,今回は,より詳しいプレイレポートをお届けしたい。使用したのは日本語版のPlayStation 4版で,スクリーンショットや操作の説明なども,すべてそれに準拠している。
緻密に再現された古代エジプトを自由に移動して,巨悪に挑む
冒頭でも書いたとおり,「オリジンズ」は今から2000年以上前の紀元前1世紀のエジプト,いわゆる古代エジプトが舞台だ。歴史的には3000年ほど(つまり紀元前3000年頃から)続いたとされる古代エジプト文明だが,時間軸としてはその最末期となるプトレマイオス朝の滅亡直前,あのクレオパトラが女王として君臨していた時代となる。
没落に向かうエジプト王国はおよそ盤石とは言い難く,内部は権力闘争と暗殺に明け暮れ,外部からは共和制ローマの圧力や干渉が続くという,混乱の極みにあった。
国はそんな状況だったが,主人公バエクは,王(ファラオ)や人々を守る「メジャイ」の一員として,妻アヤと息子ケムと共に,シワという片田舎で幸せに暮らしていた。だがある日,狩りに出たところで謎の集団に襲われる。不気味な仮面を被った彼らは,神殿の下にある宝物庫の扉を開けろとバエクに命じる。なんとか逃げのびたバエクは,仮面の集団の正体を暴くため,人々を守るメジャイと暗殺者という2つの顔でエジプト中を駆けめぐることになるのだ。
「アサシン クリード」といえば,歴史上の著名人が登場し,彼らと共に歴史の一ページを体験できるのが醍醐味の1つ。本作でもその演出は健在で,上記のクレオパトラのほか,ユリウス・カエサルなども登場して,激動の時代を背景とした物語を盛り上げてくれる。美しいグラフィックスはもちろん,こうした実在の人物が登場することで,「もしかしたら,バエクも本当にいたのかも……」というリアリティが感じられるのだ。
パルクールで自由に動き回り,セヌの目で敵を偵察。相手が手強いときは,真正面から戦わないこと
パルクールもシリーズ初代から続く大きな特徴で,壁や障害物を乗り越えて普通では行けない場所へ移動することが可能だ。「オリジンズ」ではそのアクションが強化され,非常にストレスフリーになった。
コントローラの[×]ボタンで登る/乗り越える,[○]ボタンで降りるのだが,基本的に[×]ボタンを押していれば,バエクはどこでもグイグイ登って行く。すごく高いとか,よほど特殊な場所でもない限り,たいていのところへ行け,壁や崖,あるいはそびえ立つ塔でも,落ちることはほとんどない。
以前の作品では「つかめそうに見えるけどダメで,壁に引っかかったり,途中で落ちたりする」ということもたびたびあったが,本作では,そんな場面に出くわすことは少なくなった。とにかく移動がスムーズで,どこでもつかんだり乗り越えたりできるので,敵陣の裏を取るのも楽チン。望んだとおりの場所にスイスイ行けるのは,想像以上に気持ちいい。
かがんだステルス状態でもそれなりの速度で移動できるため,草むらに隠れながら敵に近づき,後ろから一撃! といった芸当も難しくない。バエクの機動力の高さはかなりのもので,操作していてイライラすることがないのが好印象だ。
強い味方になってくれる鳥,セヌも忘れてはいけない。セヌはバエクに常につきそう相棒で,方向キーの上を押すことでいつでも呼び出せ,上空から地上の様子をうかがってくれる。セヌにかかれば敵の配置はもちろん,宝箱の場所や秘密の入り口,後述する資源の場所まで発見してマーキングできる。まるで「ゴーストリコン ワイルドランズ」や「ウォッチドッグス2」に登場するドローンのような存在で,こいつをうまく使いこなせるかどうかでゲームの難度がかなり変わる,というほどの印象だ。
こちらは安全地帯に身を置きつつ,敵に限らずさまざまなオブジェクトがチェックできるので,怪しいものを見かけたらとりあえずセヌを呼ぶ,といった感じでいい。働き者だ。
さて「縦横無尽なパルクール」と「上空から偵察し放題」というバエクの能力を聞いて,難度がヌルくなったのでは,と心配する向きもあるかもしれないが,実際はそんなことないので安心だ。
「オリジンズ」のバトルは基本的に多勢に無勢(というか1人)になるし,カウンターをしていれば何とかなるシステムではなくなったため,かなり歯ごたえがある。とくに盾持ちの敵は常にガード状態でこちらの攻撃を受け付けないため,相手の攻撃をかわし,隙を突く,背後や側面に回るといった機動戦を仕掛けるか,隙が大きくなるが敵のガードを崩せる強攻撃を使うなど,それなりの工夫がないと倒せない。
イヤらしいのが弓兵で,遠距離から高い精度の矢を射込まれるので,後回しにしても追いかけ回しても,体力を削られ続けてやがて瀕死状態に……といったことが起きる。チクチク攻めてくる弓兵と,堅い盾持ちの兵士のコンビは脅威だが,小さめの敵拠点でもたいてい両方揃っているのでやっかいだ。プレイ中,意図しない大立ち回りになってしまうこともしばしばあるが,余裕があるときは,パルクールやセヌを活用したステルス状態で隊長クラスや盾を装備した兵士をあらかじめ排除しておこう。
緻密に再現された広大な古代エジプトで楽しむのは,探険か,観光か,それとも暗殺か
本作の古代エジプトはオープンワールドとして作られており,序盤にシワで活動するチュートリアル部分を除き,基本的にどこに行って何をするのも自由だ。
エジプト文明は肥沃なナイル川に沿って発展したが,現実と同じようにゲームでも水と生物であふれるナイル川を離れると,不毛な砂漠になる。厳しい環境のせいか,砂漠では人間どころか動物すらあまり見かけない。
とはいえ,砂漠には忘れられた墓地や洞窟などがあり,うまくいけばゲームを有利に進められる武器や財宝が入手できるので,遠出してみるのも面白い。映画では普通,墓荒らしは太古の呪いの餌食になってしまうのだが,バエクはそもそも当時の人間なので,その心配はあまりしなくて良さそうだ。遠慮することなく遺跡を探索しよう。
さて,エジプトで忘れてならないのが,ピラミッドを始めとした大規模な遺跡だが,これらもゲーム世界にしっかりと再現されている。ギザの大ピラミッドやスフィンクスはもちろん,すでに失われてしまったアレクサンドリアの図書館や大灯台なども,ゲームで見ることも入ることも可能で,自宅にいながら世界遺産や世界七不思議を体験できるという贅沢な作りだ。
大灯台やピラミッドは,かなり離れた場所からも目視できるので,紀元前に本当にこんなものが建っていたのかと驚く。そんな場所の多くが兵士の駐屯地になっていたり,謎解きが必要なダンジョンになっていたりするため気軽に探索できるわけではないが,最近,ピラミッドの中に巨大空間が発見されたりといったニュースもあるので,ロマンあふれるゲーム内観光をぜひ楽しんでほしい。
「オリジンズ」のキャラクター強化はレベルシステムになっており,レベルアップに必要な経験値はクエストのクリアだけでなく,地域ごとに設定された宝の発見や,敵の討伐などでも手に入る。つまり,探索すればするほどバエクが強くなるというアンバイなのだが,もちろん,サブクエストを受けるも受けないもプレイヤー次第で,別に急ぎの用があるなら,スルーしても後回しにしても一向に構わない。
レベルの話が出たのでここで触れておくと,上記のように本作はマップのどこへでも移動できるが,地域によってレベルが設定されており,出現する敵の強さが異なる。
したがって,場所によっては,自分のレベルを大幅に超える敵が出没することがある。そういう敵は本当に強力で,場合によっては山賊の一撃で死ぬこともある。こちらの攻撃はほとんど効かず,正面から立ち向かえば勝ち目はまずないので,レベルを超えた場所を探索するときは,とにかく逃げるか隠れることを最優先にして,場合によってはバエクを鍛えてから戻ってくることも考えたほうが良さそうだ。
レベルは地域だけではなく,クエストにも設定されており,「推奨レベル前後の敵が,クエスト中に登場する」というスタイルになっている。ステルスを徹底すれば多少レベルが低くてもなんとかなったりもするが,バエクの成長度に応じて,「やりたいクエストや行きたい地域を,しばらく我慢する」という場面も結構あるのだ。個人的にはクエストも地域もすべて自由に選べるほうが好みだが,「難しいクエストを低レベルでクリアする」といったやり込み要素も考えられるので,あえて挑戦してみるのも面白いだろう。
帰ってきた最新作はボリューム満点。現代に蘇った太古のエジプトで,思いっきり楽しもう
「オリジンズ」ではシリーズ従来作の目玉だったカウンターシステムがなくなり,その分,戦闘はいくぶんシビアになったものの,ハック&スラッシュの面白さが堪能できる。
武器と盾は,ほぼすべてランダムで手に入り,また装備は敵が持っているものを奪うほか,宝箱やクエストの報酬などで入手できるが,種類やレア度は運次第。近接武器はスタンダードな片手剣のほか,リーチ重視の槍や一撃の攻撃力が高いメイスなどがあり,弓も連射型やショットガンのような一斉発射型など種類も多い。
装備にもレベルがあり,当然ながら高レベルなもののほうが性能がいいが,低レベルな装備も鍛冶屋でお金を払えば鍛え直してレベルを上げられる。「レベルは低いがレア度は高い」という装備は,鍛冶屋に払う金さえ持っていれば即戦力になり得るので,売らずにとっておこう。
武器と盾以外の強化は本作のクラフト要素になっており,資源であるレザーや銅を消費することで,アーマーや道具袋,暗殺用のヒドゥンブレード(従来作におけるアサシンブレード)などをアップグレードできる。
必要な資源は「動物や敵を倒して奪う」と「チェストなどから拾う」という方法で入手するが,プレイした感じでは前者のほうが効率が良さそうだ。レザーを求めて朝から晩まで鹿やハイエナを追い回したり,金属ほしさに湖で海賊行為を繰り返したりなど,そんなことをするだけでゲーム内の1日を過ごしてしまうこともあったほどで,寄り道はすごく楽しいのだ。
野生動物や輸送兵を倒して資源を得られれば,アーマーや矢筒,籠手などを強化でき,ミッションを有利に進められる。強化はレベルや進行度に関係なく実行できるので,時間さえかければ前半でもかなりのパワーアップが可能だ。おまけに野生動物を狩れば,一緒に金策用の狩猟アイテムも入手できてしまう。
闇にまぎれてスタイリッシュにサクッと暗殺,というイメージの「アサシン クリード」シリーズだが,「オリジンズ」の時代はアサシン教団が生まれる前ということもあって,物語としては非常にシリアスではあるものの,あまりダークな印象は受けない。むしろ,暗殺そっちのけで圧政に苦しむ人々を助けたり,水辺で必死に戦ってワニの皮を手に入れたり,古代の大都市アレクサンドリアの景観に驚いたりと,予想以上に古代エジプトを満喫してしまった。
本作には,時間を止めて,アングルや画面効果を自由に変えて写真が撮れる「フォトモード」が用意されているので,なおさら観光に力が入る。スフィンクスとか,インスタ映えしそう,みたいな。
時代を一気にさかのぼったため,続編ものにある「前作を知っていないと理解できないことが多い」といったことはない。そのため,未経験の人が新たに「アサシン クリード」シリーズを始めるにもぴったりだ。新作を待ち望んでいたシリーズファンはもちろん,オープンワールドのゲームが好き,あるいは太古のエジプトを思いっきり満喫してみたい人に,ぜひ手にとってほしい一作だ。
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(C)2017 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Assassin’s Creed, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.
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