プレイレポート
「Fate/Grand Order -SUMMON PENCIL SERVANT-」でアナログ聖杯戦争が勃発。これは「FGO」の対人戦バージョンだ
と言うと,おそらく,1990年代にエニックス(およびスクウェア・エニックス)から発売された「バトルえんぴつ」を思い出す人は多いだろう。子供時代,「ドラゴンクエスト」シリーズなどのキャラクターが描かれた鉛筆を転がして楽しんでいたが,学校への持ち込みが禁止されてしょんぼり……という経験をした人は,筆者だけではないはずだ。
なぜ,今の時代に,ペンサバがあえて“鉛筆を転がすゲーム”として作られたのかは分からないが,こんなに懐かしいものを出されてしまっては,転がしたくもなるというもの。普段がっつりFGOを遊んでいるカルデアのマスターであればなおさらである。一式を購入してペンサバを遊んでみた。
まずは開封の儀。ブースターパックという名の“縁召喚”が盛り上がる
ペンサバは,スターターパック(800円+税)とランダムパック(200円+税)が販売されている。スターターパックには,プレイに必要なプレイシート,マーカーやカード,説明書のほか,3騎のサーバントの鉛筆(マシュ,アルトリア・ペンドラゴン,クー・フーリン〔キャスター〕)が封入されている。
ブースターパックは,24種のサーヴァントの中からランダムで1騎が入っているというものだ。
引いたサーヴァントを相棒に対戦することになるので,FGOプレイヤー同士で遊ぶ場合,ブースターパックの開封は非常に盛り上がる。お目当てのサーヴァントが引けるよう“触媒”を用意して挑んでみたり,サーヴァントとの縁を信じて“縁召喚”を行ったりして,一喜一憂するのがオススメだ。
触媒として,FGOでスカサハを表示して召喚に挑む対戦相手。結果は……すまない……空気の読めない男で,本当にすまない…… |
筆者もFGOでジャンヌ・ダルクを表示。来てくれ,聖女様! と祈ったのだが,触媒が効き過ぎた。おお,ジャンヌ…… |
鉛筆を転がして戦うシンプルな遊び……ではない! これは“FGOの戦闘システムを使った対戦ゲーム”だ
鉛筆を転がすと言うと,バトルえんぴつのシンプルな遊びが思い浮かぶのではないかと思う。鉛筆を転がし,「○○のダメージ」といったテキストの指示に従って,相手のHPをなくせば勝利というものだ。
ペンサバもその点は同様である。鉛筆を転がして敵を攻撃するのは間違いない。ただし,ペンサバの場合,“まったくカジュアルではない”ルールになっているというのがポイントだ。
鉛筆のサイコロエリア(1〜6の数字が書かれている)の数字で先攻後攻を決め,バトルを開始すると,まずは先行のプレイヤーが3本の鉛筆をすべて転がし,「行動回数」を決定する。各鉛筆の側面には0〜3回の行動回数が書かれており,この数字が「そのターンにおけるサーヴァントごとの“最大”行動回数」となる。ただし,FGOと同様に,1ターンで行える行動はパーティ全体で3回まで。つまり,マシュとアルトリアを振ってそれぞれ「1回」「3回」の面が出た場合,マシュを1回,アルトリアを2回行動させるか,もしくはアルトリアを3回行動させるかを選べるという感じだ。
行動回数が決まったら,鉛筆を振ってサーヴァントの行動を決定する。FGOでは,5枚のコマンドカードにバスター,アーツ,クイックの攻撃属性が割り振られているが,これはペンサバでも同じ。というか,FGOのコマンドカードの配色が,そのままペンサバの鉛筆にも割り振られている。FGOでバスター2枚,アーツ2枚,クイック1枚のアルトリアであれば,ペンサバでもバスター2面,アーツ2面,クイック1面の配分というわけだ。
鉛筆は6面なので1面余るが,そこには性能が向上する「霊基再臨」と,サーヴァントごとの特殊行動が記されている。マシュなら味方全体のダメージ減少効果,エミヤなら「相手の鉛筆を転がして,出たコマンドを使用」(おそらく,エミヤの投影魔術をイメージしている)といった効果だ。
こうした行動をターンごとに繰り返し,相手のサーヴァントを全滅させたプレイヤーが勝利となるのだが,ここでややこしいのが,ダメージを計算するとき,FGOを再現したさまざまなシステムが絡んでくるということ。
例えば,鉛筆を振るとダメージが与えられるだけでなく,宝具の発動に必要なNPや,クリティカルの判定に使うスターが発生する。NPに関しては,どれだけ溜まったかプレイシートで管理できるのだが,スターの数は毎ターンメモしておく必要があるだろう。
クラスの相性の処理は,FGOとまったく同じで,セイバーはランサーに対してダメージ2倍,アーチャーに対して0.5倍となる。バーサーカーであれば,与えるダメージと受けるダメージがどちらも1.5倍だ。
FGOの“チェイン”も割とそのまま再現されており,同じ属性の行動を3回行うと,バスターチェインならダメージアップ,アーツチェインならNP+20%,クイックチェインならクリティカルスター10個を獲得。3回同じサーヴァントで行動した場合は,ブレイブチェインが発生してもう一度鉛筆を転がせる。
スターを溜めると,その個数によってクリティカルが発生するのだが,これは鉛筆のサイコロエリアを使って,スターが1〜6個のときは1を出せばクリティカル,7〜13個のときは2以下の数字でクリティカル……といった処理。クリティカルに成功すると,ダメージとNP,スターが2倍になる。
各サーヴァントが持つスキルもFGOに準拠した内容で,だいたい同じような効果になっているのだが,3ターン攻撃力を向上させる「カリスマ」などもそのまま。つまり,「効果が3ターン続く」ということを覚えておいて処理しなければならない。
……と,ここまで書けばお気付きだろう。FGOをきっちり再現しすぎていて,処理が非常に多いのだ。しかも,アナログゲームなので,すべて手動で計算しなければならない。鉛筆を転がしているのに,メモを取るための筆記用具が別途必要という,なんだが奇妙な状態である。
プレイシートはあるものの,そこで管理できるのは,スキルの状態(ペンサバでは各スキルはゲーム中1度しか使えないので,スキルが描かれたカードの裏表で,使用可能かどうかが分かる)と,各サーヴァントのNPの溜まり具合だけ。それ以外はすべてメモで管理していくことになり,アナログゲームとしては煩雑な印象が否めない。
もし,「FGOをあまり遊んでいないけど,バトルえんぴつが好きだったので」という人がプレイした場合は,処理に苦労するはず。難しいゲームだと感じるかもしれない。
ただし,FGOプレイヤー同士で遊ぶ場合は話が別だ。なにせペンサバは,“FGOの戦闘システムをほぼそのまま使った対戦ゲーム”である。NPやスター,チェインの処理は当然発生するものとして受け入れられるし,クラスの相性は説明を読むまでもなく覚えている。さまざまなスキルの効果も,スキル名を言われればだいたい効果を把握できる。処理は複雑ではあるが,意外なほどスムーズに遊べてしまう。
また,アナログゲームでありがちな「テキストを読んでも,どう処理すれば良いのか分からない」といった場面に出くわしても,「FGOと同じでいいんじゃない?」で済んでしまうのも,遊びやすさにつながっている印象だ。
肉体系女神ステンノに,脳筋孔明
システムはFGOだが,ペンサバならではのカオス展開も……
実際の対戦の様子を紹介していこう。初回プレイ時はルールを把握するためにスターターセット同士で対戦したので,筆者も相手もマシュ,アルトリア,クー・フーリンという構成だ。この3人を相手する場合,FGOの感覚だと「矢避け連発されたら嫌だし,とりあえずクー・フーリンを狙おう」となる人は多いかと思う。筆者も実際にそうしたのだが,実はそれはあまり良い作戦ではない。ペンサバではスキルが1回しか使えないので,連発されることはないし,対人戦である以上,使用前に倒せることもほとんどないからだ。
しかも,ペンサバは「サーヴァントが倒されると,残りのサーヴァントの行動回数が増える」という仕組みになっている。つまり,クー・フーリンを先に倒すと,コスト5の強力なアルトリアが暴れ回ることになるわけだ。FGO特有の「行動回数の問題で,強いやつから倒さないとヤバイ」は健在なのである。その結果,相手のアルトリアにバッタバタとなぎ倒され,初戦は筆者の敗北となった。
ちなみに,ペンサバではアルトリアの持つスキル「直感」(というか,これによって発生するクリティカル)が非常に強力。FGOのアルトリアは宝具火力がウリだが,ペンサバでは「魔力放出」と組み合わせたバスターのクリティカルで大ダメージを叩き出すサーヴァントと化している。……それはオルタ化して槍を持ったときの仕事では?
二戦目は3パックずつ開封したところ,偶然どちらもコスト10だったので,そのまま使用して対戦。筆者がジル・ド・レェ,メフィストフェレス,ステンノ。相手が佐々木小次郎,ジークフリート,ジャンヌ・ダルクだ。なんかもう,顔ぶれの時点で勝てる気がまったくしない。この面子で聖杯戦争に参加しろと言われたら,いろんな意味で頭を抱えるしかない。
ただ,ペンサバは基本的にコストが高いサーヴァントであればきっちりダメージを出せるようになっている。FGOだと,ステンノは☆4とはいえ,アサシンのクラス補正と低いATKで攻撃が苦手だが,ペンサバだとバリバリ殴れてしまうのだ。おかげで,ステンノがジークフリートを速攻で殴り飛ばすという,まさかの事態に。
序盤は圧倒的優位な展開で,これはいけるかと思ったのだが……結果は,ジャンヌが強力すぎて再び敗北。なにせ,シールダーとバーサーカー以外からはダメージ半減という,ルーラーのクラス相性がFGOのまま適用されているので,さっぱりダメージを与えられない。今回は,開けたパックでそのまま戦っているため,相性を考慮しようがなかったとはいえ,現時点のペンサバには弱点となるアヴェンジャーが存在しないので,ジャンヌは頭一つ抜けた強さな気がする。
三戦目は,さらにパックを2つ開封し,これまでの鉛筆と合わせてデッキを組んで戦うことに。筆者はジャック・ザ・リッパー,アルトリア,マシュのコスト5を2体使った編成。相手は小次郎,ジークフリート,諸葛孔明〔エルメロイ2世〕だ。
相性的に,アサシンのジャックでキャスターの孔明を相手するのは厳しいので,一番強いサーヴァントを優先して狙いにくい。しかもペンサバの孔明は,FGO同様の強烈なバフ+NP獲得スキルを3種使えるうえに,前述の「コストが高ければ頼れる基本性能になる」仕様により,何もかもが強い。
相手の作戦は,ジークフリートの宝具の早期発動だ。ジークフリートは攻撃時のNP獲得量を増やす「黄金律」を所持しており,さらに孔明のスキルで最大50%のNPを瞬時に付与できる。孔明の防御バフで生存率も上がるので,安全にNPを溜めて全体宝具の「幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)」をぶっ放すというわけだ。FGOでは孔明を使う側だから良かったが,敵になってNPをバラ巻かれると,厄介すぎる……。
さすがにジークフリートを潰さなければ,筆者の3連敗は確実だ。そこでジャックの「情報抹消」ですべてのバフを解除し,集中攻撃をすることに。ジャックといえば,FGOでは「強力なクイック攻撃で大量にスターを生み出し,クリティカルを連発。それによりさらにスターを……」という動きができる,代表的なクイックアタッカーだ。ペンサバにおいてもそこは変わっておらず,行動回数さえ確保できれば,簡単にクリティカルを出せる。しかも,回避効果の「霧夜の殺人」と回復の「外科手術」も所持しているので,生存能力まで高い(集中砲火を受けやすいペンサバでは,回復系のスキルがけっこう強い)。
途中,孔明からクラス相性でダメージ2倍の攻撃を受けるも,耐えきってジークフリートを撃破。続いて霧夜の殺人によるクイック強化効果とクリティカルが合わさり,小次郎を即死させてしまった。
後がなくなった孔明。ここで見せた軍師の策は……「自分に3ターンクリティカル威力3倍の『鑑識眼』を使い,物理で殴る」である。先のステンノ同様,ペンサバではキャスターの孔明であっても高い攻撃力を持っているので,ここまでクリティカル威力を強化されると大変なことになる。というか,ペンサバのシステム上,3回バスターの面を出せば,孔明でもバスターブレイブチェインが使えてしまう。完全に脳筋軍師である。
おかげでジャックは倒されたものの,こちらにはマシュもアルトリアも残っていたので,多大な損害を受けながらもなんとか撃破。全敗は免れた。
FGOプレイヤーで集まって遊ぶなら非常にオススメ
FGOプレイヤーであればご存じのとおり,FGOに対人戦のコンテンツはない。その点,ペンサバはほぼ同じルールで対人戦が楽しめる。これこそがペンサバの大きな魅力だと思う。どのサーヴァントを多く行動させるか,誰を狙うか,どこでスキルを一気に使って勝負に出るかといった,対人戦ならではの駆け引きには,FGOのバトルとは違った面白さがある。
また,ペンサバのシステム上,先に紹介したようなFGOではあり得ない展開が発生するのも面白いところだ。「ジークフリートを高火力で殴り倒す,肉体系女神ステンノ様」や,「自分にクリティカルアップを掛けて,バスターチェインでぶん殴ってくるガチムチの孔明」など,「お前,そんなキャラじゃないだろ!」という状況になったわけだが,FGOでのキャラクターを知っているからこそ,こうした展開は大いに笑える。
対戦はもちろんこと,開封の段階から非常に楽しく,FGOプレイヤー同士で遊べば間違いなく盛り上がれるので,ぜひ机の上で“アナログ聖杯戦争”を勃発させてほしい。
あらかじめ鉛筆を集めてデッキを組むのもいいが,個人的には,スターターパック+5個程度のブースターパックを使ってその場でデッキを作り,開封の儀も含めて楽しむ,いわゆるシールド戦がオススメだ。
「Fate/Grand Order -SUMMON PENCIL SERVANT-」公式サイト
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