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スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む
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印刷2017/09/30 00:00

インタビュー

スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む

画像集 No.006のサムネイル画像 / スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む
 今年の東京ゲームショウ2017では,出展した各社がさまざまなゲームタイトルを展示し,我々メディアの編集者や一般の来場者がむさぼるように新作ゲームの波に溺れていった。毎年のことであるが。

 そんなイベントの開催前日のこと,スクウェア・エニックスは新作スマホゲーム「バトル オブ ブレイド」iOS / Android)を発表した。本作では4on4のアリーナバトルや,プレイヤー同士の共闘モード,1人で遊ぶストーリーを楽しめるというが,会場ではPV映像の披露と,TGSのスクエニ生放送スタジオにて40番組で簡単に取り上げられただけのため,その実態はほぼ不透明であった。

 そこで今回は,TGS会場にいたプロデューサーの小山田 将氏,ディレクターの須田裕介氏にアポイントメントを取り,「バトブレ」についての話を直接聞いてきた。どうやら本作は“これまでの積み重ね”を余すところなく注ぎ込んだ,両名ならびに開発チームの渾身の1作になるようで――。

「バトル オブ ブレイド」公式サイト



「聖剣伝説RoM」で培ったものを,すべて注ぎ込む


4Gamer:
 本日は「バトブレ」について話を聞かせてくれるということで,ありがとうございます。小山田さんには度々4Gamerに登場してもらっていますが,今回は聖剣伝説ではなく,「バトブレ」のプロデューサーとしての登場になりますので,あらためて自己紹介をお願いします。

小山田 将氏(以下,小山田氏):
 分かりました。スクウェア・エニックスの第8ビジネス・ディビジョンに所属し,今回は「バトブレ」のプロデューサーをしています,小山田です。

4Gamer:
 続いて,須田さんもお願いします。

須田裕介氏(以下,須田氏):
 小山田と同じく,第8ビジネス・ディビジョン所属の須田です。私はディレクターとして参加しています。小山田とはスマホゲーム「聖剣伝説 RISE of MANA」で一緒に仕事をしていて,今回はその開発チームを引き継いで,「バトブレ」を制作中です。

4Gamer:
 というと,「バトブレ」は「聖剣伝説RoM」と同じ開発チームが手掛けているんですか。

須田氏:
 はい,そうです。

小山田氏:
 「聖剣伝説RoM」のディレクターは八木(八木正人氏)でしたが,本作では須田がディレクションを担当しています。開発会社については同じく,娯匠さんに頼んでいます。

4Gamer:
 それだけ聞くと,「聖剣伝説RoM」とは何らかの関連性がある作品に聞こえますが,本作はどのような経緯で立ち上がったんでしょう。

須田氏:
 開発がスタートしたのは,約2年前ですね。

小山田 将氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む
小山田氏:
 「聖剣伝説RoM」のサービスが終了したとき,私は八木と一緒に悔しがっていて,「次は違うタイトルで,もっと頑張ろう」と話し合っていたんです。

 でも,そこで須田は「俺はもう1回,スマホゲームでリベンジしたい!」と,ものすごく熱く語ったんですよ。

須田氏:
 普通ならサービスが終了したゲームに対して「おわったなあ……」みたいな気持ちになるかもしれません。

 でも,私は「聖剣伝説RoM」への思い入れが強かったので,そこで培ったスマホゲームやアクションRPGに関する技術やノウハウを引き継いで,次の新作に取り掛かりたいと考えていました。そしてそれらを余すことなく投入したのが,今回の「バトブレ」なんです。

4Gamer:
 言ってみれば続編,あるいは番外編をやるような感覚なのかもしれませんが,同じ方向性の作品をさらに磨いて世に出すというのは,結構怖くはありませんでしたか。

小山田氏:
 私もアクションRPGでやると言われたら怖かったのですが,須田は「違う,アクションRPGじゃない,メインはあくまでリアルタイム対戦でやりたいんだ」と主張しました。ですから「バトブレ」は,4on4のリアルタイム対戦であることを主軸に開発しています。

須田裕介氏
画像集 No.004のサムネイル画像 / スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む
須田氏:
 プロダクト名は言えませんが,実は2年前の時点で,「聖剣伝説RoM」のリソースを用いた4on4の対戦ゲームのモックを作りました。

小山田氏:
 そこから社内で何度かふるいにかけられましたが,最終的に“アリーナという要素だけで勝ち残った”ので,正式に開発がスタートしました。

 実際,クローズドβテストではユーザー評価がダントツに高かったんですよ。

4Gamer:
 なるほど,「バトブレ」は対戦を押し出したスマホゲームなんですね。私はユーザーと同時に初報を目にしただけだったので,正直なところ,どういうゲーム内容なのかを捉えられていなかったんです。

小山田氏:
 まあ,開発を進めていたら「対戦だけではダメだ!」というお達しを受けたので,皆で協力して遊べる共闘モードと,1人で遊べるストーリーモードの追加を決定しました。やはり,スクウェア・エニックスといえば“物語”というところがあるので,我々としても会社の特色を生かすため,これらのコンテンツの肉付けには賛成しています。

4Gamer:
 ふむ,さりとて対戦だけをフィーチャーしているわけではないと。

小山田氏:
 私も個人的にさまざまな対戦ゲームを嗜んでいますが,やはり対戦だけだと疲れてしまうんです。なので,AIと戦えるNPC戦などもあったほうがいいと考えました。

4Gamer:
 MOBA系のタイトルでは1戦に数十分の時間がかかるのもザラなのに,本作では“180秒で決着がつく”らしいですね。

小山田氏:
 ガワだけ見るとMOBA系を想像する人は多いかもしれませんが,我々は決してMOBAを作っているつもりはないです。アクションRPGの遊びの延長戦として共闘マルチプレイがあったので,だったらそれで対戦もしたいよね,という。

4Gamer:
 そうなんですか。意外です。

小山田氏:
 それこそ「リーグ・オブ・レジェンド」「Vainglory」などを参考にしているつもりはありません。あくまで,コンセプトやゲームとしての面白さを突き詰めることを目指してきました。

4Gamer:
 では,この180秒の内訳はどのようなものになりますか。3分間の対戦ともなると,レベルやアイテムなどの概念もオミットしているだろうと予想しましたが。

小山田氏:
 育成やカスタマイズといった要素は,対戦とは切り離しています。言ってしまえば“育て切ったヒーロー同士がぶつかり合う”ようなゲームなんです。そのほうがスマホゲームらしく,手軽で面白いんじゃないかと思いまして。まあ,これに至るまで,さまざまなすり合わせがありましたが。

須田氏:
 MOBA系の対戦時間が長期化している理由は,試合の中にビルド要素が組み込まれているからなので,我々は3分間の対戦を提示しつつ,ビルド要素を別に置いています。

4Gamer:
 スマートに遊びやすくしたんですね。

須田氏:
 アクションRPGの魅力はキャラクターを自身で育て上げることにありますし,プレイヤーさんには自分が育てたお気に入りのキャラで対戦してもらいたいですからね。


★5も★3も,強いものは強い


4Gamer:
 「バトブレ」では「ヒーロー」「武器」が大きく取り上げられるようですが,この2つはゲーム内において,どのような役割を担っているのでしょう。

小山田氏:
 まず,ヒーローにはロールやステータスに加え,固有のアクションスキルが最大3つ備わっています。対戦の外でヒーローのレベルを上げると,ステータスが上昇したり,新たなスキルが開放されたりします。ちなみにキャラクターはすべてオリジナルです。

4Gamer:
 ふむふむ。

小山田氏:
 ロールには攻撃型の「アタッカー」,防御型の「タンク」,味方を補助する「サポート」,敵の侵攻を邪魔する「ジャマー」があり,タンクはアタッカーを抑えやすく,ジャマーはタンクを抑えやすくと,相性があります。武器はヒーローにアクションスキルや,常時発動型のパッシブスキルを追加する要素です。

4Gamer:
 ロールには相性があるとのことですが,これはステータス補正が付くシステム的なものなのか,それとも操作で制しやすくするプレイング的なものなのか,どちらになるんでしょう。

須田氏:
 ステータス特攻ではなく,「アタッカーなら攻撃力や移動速度の低下が嫌だろう」などといった,アクションスキルにおける相性となります。

4Gamer:
 それはつまり,各ヒーローごとに特色を出す,念入りな個別調整が必要になるやつですね。

小山田氏:
 もちろんです。

4Gamer:
 ヒーローは現状,どれくらいの数を予定しているんでしょう。

小山田氏:
 現時点で約60体の制作を進めていますが,ローンチ時に何体実装するのかは検討中です。とはいえ,これらはアクションゲームの制作に特化してきた娯匠さんの強みですので,大きな心配はしていません。

4Gamer:
 ヒーローの入手方法はどうなりますか。

小山田氏:
 ストーリーを進めるだけで,基本となるロールのヒーローが入手可能です。それ以外にもキャラガチャを実装予定です。

須田氏:
 ほかにもゲーム内イベントで獲得できるようにします。

4Gamer:
 おそらく,レアリティ的なものもありますよね。

須田氏:
 ええ,あります。

4Gamer:
 となると,レアリティごとの差も,やはりありますよね。

小山田氏:
 はい,能力的には★5と呼ばれる高レアのヒーローのほうが,最初から分かりやすく強いです。でも,そこに相性差があったり,武器があったりしますので,★3のヒーローでも十分対等に戦えます。マッチング次第で,如何様にもなりますよ。

須田氏:
 あとレベルの成長速度の差も大きいですね。★5に比べて★3のほうが早熟で使いやすいので,序盤は無理して★5を使用するよりも遊びやすいと思います。

4Gamer:
 ヒーローにはレベル以外にも「マナボード」というカスタマイズ要素があるようですが,こちらはいわゆるスフィア盤的なものですか。

須田氏:
 はい,スフィア盤的なものです(笑)。

4Gamer:
 なら,強化の指針はいかがでしょう。プレイヤーそれぞれの異なる個性を持ったキャラクターにできるのか,あるいはすべて同一の性能になるのか,いろいろあると思いますが。

須田氏:
 基本的には一本道で,最終的に全プレイヤーで共通の性能になります。

小山田氏:
 マナボードの進め方によって,攻撃力を優先するのか,防御力を優先するのか,はたまたスキルを開放するのか,そういった部分はプレイヤーさん次第です。

須田氏:
 分岐路があるツリーシステムも考えはしたんですけどね。

4Gamer:
 採用はしなかったと。

須田氏:
 この場合“使いづらいビルドになってしまったヒーロー”や,それらの振り間違いを恐れる人が出てしまうはずなので,止めました。それを有料アイテムで振り直しさせるなども,やりたくありませんでしたし。


コラボ武器はお手の物?


4Gamer:
 もう一方の武器についても教えてください。こちらはバトル オブ“ブレイド”というくらいなので剣だけかと思っていましたが,公式サイトを見たところ,それ以外の形状もチラホラと見受けられました。

小山田氏:
 武器種は「片手剣」「大剣」「双剣」「槍」「弓」「杖」「ナックル」の7種類です。武器にも★3〜★5のレアリティが設定されており,★4と★5の武器にはすべて必殺技的なアクションスキルが備わっています。

4Gamer:
 武器にもステータス値はあるんですか。

小山田氏:
 サブ的なものですけどね。基本的にヒーローの基礎値が大きな比重となりますから。

須田氏:
 武器でフィーチャーすべきは,あくまでスキル面です。

4Gamer:
 対戦のバランスを工夫されている印象ですね。しかし遠近の攻撃レンジが存在するということは,タンクに弓を装備できたりも?

須田氏:
 いえ,装備可能な武器はヒーローごとに決まっています。

4Gamer:
 「弓アタッカーが欲しかったら,そのヒーローを手に入れる」ってことですか。あと,本作では“スクウェア・エニックスの名作に登場する武器”が目玉となるようですが。

小山田氏:
 はい,たくさん登場します。

4Gamer:
 ティザーサイトを見たとき,私はてっきり「ドラッグ オン ドラグーン」のウェポンストーリーのような題材のゲームかと思いましたが,種を明かせば「聖剣伝説2」の武器みたいな印象で,よりしっくりきました。

小山田氏:
 私もこれまで,コラボで武器ばっかり作ってきましたしね(笑)。

4Gamer:
 ああ,納得です(笑)。

※「聖剣伝説RoM」では他作品とのコラボ時に,コラボ先の象徴的な武器をたくさん制作していたことから

画像集 No.005のサムネイル画像 / スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む

小山田氏:
 原作のイメージに沿ったスキルを鋭意制作しています。

4Gamer:
 参戦作品は現時点で発表されているだけでも,「NieR:Automata」「Romancing Sa・Ga」「Romancing SaGa Minstrel Song」「聖剣伝説2」「聖剣伝説 〜LEGEND OF MANA〜」「乖離性ミリオンアーサー」とラインナップされていますが,もちろんタイトル数は今後も増えていくんですよね。

小山田氏:
 最終的に,スクエニのRPG作品の武器をすべて出したいと思っています!

4Gamer:
 さすがに「あと何作品」とは言えないでしょうけど,ローンチまでに10作品くらいまで増えますか。

小山田氏:
 発表はこれから随時行いますが,今の予定では10作品は超えています。

須田氏:
 小山田は「バトブレ」で“オールスター的なお祭り感”を出したいんですよ。

小山田氏:
 ええ,そうなんです。オリジナルの武器を用意するのは難しくありませんけど,極論ですが「アイスソードとマナの剣って,どっちが強いの?」みたいなこと,やりたいじゃないですか。

4Gamer:
 最強武器決定戦!

小山田氏:
 「俺の好きなこの武器のほうが,お前の武器より強い」みたいなのいいじゃないですか。

須田氏:
 それに分かりやすいんですよ。自分の好きなスクエニ作品の武器で対戦に挑む,といった構図は。ゲームを触ってもらう最初のとっかかりにもなります。

4Gamer:
 アイスソードなんて,ネット上の知名度がピカイチですもんね。それと,武器以外にも装備品ってありますか。防具とか,アバターアイテムとか,装飾品的なものは。

須田氏:
 「アクセサリー」があります。これは全部で3つ装備できるもので,見た目の変化とパッシブスキルの追加に対応しています。

4Gamer:
 アクセサリーは頭,上半身,下半身みたいに3か所に着けるやつですか?

須田氏:
 いえ,部位の制限はありません。装備できるスロットが3か所あるだけです。言ってしまえば,頭に3つのアクセサリーを付けることだってできます。「王冠」と「うさ耳」を同時に装備できるわけです。

4Gamer:
 それはいいですね。アバターの自由度が高まります。

小山田氏:
 能力重視のダサい見た目でいくのか,見た目重視のかみ合わないスキルでいくのか,ぜひとも悩んでいただきたい部分です(笑)。


1人で気軽に3分プレイ!


4Gamer:
 肝心のところで,ゲームの操作方法はどのようになるんでしょう。

画像集 No.003のサムネイル画像 / スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む
須田氏:
 片手でも手軽に遊べる設計です。

 操作はバーチャルパッドですが,これは小山田が携わっていたスマホゲーム「聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-」の技術を使っています。

 移動や回避といったアクション面は,すべて「聖剣伝説RoM」を踏襲しています。

小山田氏:
 当然,「バトブレ」向けに調整はしていますが,大体の操作感は「聖剣伝説RoM」をイメージしてもらえればなと。

4Gamer:
 そうなると結構なアクション性がありそうですね。対戦のルールはどうでしょう。

小山田氏:
 ゲーム内では「アリーナ」と言いますが,ちょっと待ってください,これです(スッと実機を見せてくれる)。

4Gamer:
 おー,ヘルプに解説動画が収録されているんですか。

須田氏:
 分かりにくいところだけですけどね。

4Gamer:
 なになに,「基本は陣取り合戦」「“刃晶”という陣地を取るとポイントゲット」「マップ内の中立モンスターを倒すとポイントゲット」「相手陣営のヒーローを倒すとポイントゲット」「ポイントをより多く集めるか,先に400点を貯めると勝利」と。これだけでもさまざまな戦略が考えられそうです。

小山田氏:
 戦闘の開始時,マップ内にある陣地はすべて中立となっていて,その周囲には陣地を守るモンスターが存在します。獲得できるポイント数は「陣地の占拠」「中立モンスターを倒す」「相手ヒーローを倒す」の順に下がっていきます。また,相手側に奪われた陣地であっても,再度奪うことが可能です。

4Gamer:
 いつでも逆転の可能性があるわけですか。プレイヤーキルを高得点にしなかったのも,そちら側の戦いに傾倒しないためですよね。

須田氏:
 そうです。あと陣地の占拠にはヒーローが範囲内に入って,一定時間待たないといけませんが,その際ヒーローの数が多いほど占拠時間が短くなります。つまり,チームプレイによって戦局を変えやすくなっています。

4Gamer:
 中立モンスターはリポップしますか。それ次第では「中立モンスターだけ狩っていればいい」みたいな状況も想起させられますが。

小山田氏:
 リポップはしますが,陣地を狙うほうがポイント効率が断然高いです。マップについてはローンチ時には1種類で,プレイヤーがゲームに慣れた後,徐々に増やしていく算段です。新規マップに関してはデザインだけでなく,さまざまなギミックや制限を盛り込む予定です。

4Gamer:
 それではマッチングに関してはどうでしょう。対戦ゲームでは野良vs.チームとか,4vs.3のマッチング欠けとか,前提からして劣勢になることもありますので。

小山田氏:
 基本的にルームを作成したり,クイックマッチングで参戦したりしてもらいます。ただし,当面は一期一会のマッチングで気軽に遊んでもらうつもりです。

須田氏:
 人数のバラつきは起こらないようにしますが,仮に回線の問題などでプレイヤーが途中離脱した場合はAIに切り替わります。ちなみに,4GamerさんはAI操作というと「弱そう」とか「頼りない」とか,そういうイメージはありますか?

4Gamer:
 本音で言うと,あります。AIは癖を見抜けばカモにしやすいですし,何より味方が欠けた場合は戦う前から萎えてしまいますし……。

須田氏:
 そこに関しては,「バトブレ」ではAIをかなり作り込んでいます。初見のプレイヤーには分からないような動きを駆使してきますし,それでいて無駄がなさすぎるわけでもない,最善のバランス調整をしている最中です。それにAIのヒーローは自動生成型なので,「主人公の1Pカラー」みたいな,お決まりのキャラが並ぶこともありません。

小山田氏:
 人かAIかを区別できないような溶け込ませ方にしたかったんですよね。

須田氏:
 「バトブレ」では最大8人が3分間プレイすることになるので,手軽なゲームとは言えども,こういった部分のケアにはしっかりと取り組んでいます。

4Gamer:
 大事なことだと思います。もはや何を聞いても新情報なので,このまま立て続けに教えてもらいますが,対戦中のコミュニケーション手段はあるんでしょうか。チーム戦術の実行などに必要になると思いますが。

小山田氏:
 「いいね」ボタンや,マップ上に警告などを示す「シグナル」は存在しますが,文字によるチャットは搭載していません。

4Gamer:
 それはまた,結構な割り切りですね。

須田氏:
 これはあえてなんです。3分しかない対戦時間にチャット機能を盛り込むと,指示役にゲームをガチガチに固められてしまいそうだったので。コミュニケーションゲームではなく,サクッと気軽に参加できる対戦ゲームということで,わざと大味にしました。ライトユーザーがいきなり「右行って」とか指示されても,わけ分からないじゃないですか。

4Gamer:
 確かに,MOBA系の用語を流用して「jg,Gankして!」とかが普及してしまうと,初心者には意味不明なゲームになってしまうかもしれません。それに3分では,下手したら戦略の相談だけで2分経つこともありえそうです。

小山田氏:
 最初のうちは“何も考えずにサクッと遊ぶ”くらいの気持ちで体験してもらうつもりなんです。ヒーローを育てきり,プレイングを磨いた一部の人が,最終的に戦略面にたどり着いてくれればいいと思っています。

4Gamer:
 アリーナにはマッチングレート的なものはあるんですか。

小山田氏:
 あります。プレイヤー同士のレートに合わせてマッチングします。

4Gamer:
 でしたら,特定の相手を指定して戦える機能などはどうでしょう。

須田氏:
 構想はありますが,ローンチ時には実装しません。

小山田氏:
 確実に勝てる相手を選べてしまうと,マッチングレートも十分に機能しませんしね。

須田氏:
 1戦ごとのマッチングスピードを上げたいのも理由の1つです。

4Gamer:
 それでは「共闘」についても教えてください。こちらは常設でしょうか。イベントもやりやすそうな仕組みですが。

小山田氏:
 常設もあります。共闘はアリーナとは違い,2分間の戦闘になります。報酬も獲得できるので,アリーナより気軽に遊べると思います。イベントでは「フィールドボス戦」として,強力なレイドボスなどを提供していく予定です。

須田氏:
 アリーナはどれだけハードルを下げても対戦である以上,そこに限界があります。そのため,共闘にはアリーナと1人プレイの間に位置するコンテンツとしての役割を任せたいんです。それにプレイヤー同士の対戦コンテンツでは,我々は場所を提供するだけで,環境をコントロールできません。でも,共闘なら疑似的にプレイヤーvs.運営という形を取れるので,プレイヤーさんとのコミュニケーションが成り立ちます。

4Gamer:
 対戦オンリーだと,場合によってはギスギス的な感情から避けられませんものね。では3つめのコンテンツ「ストーリー」についても教えてもらえますか。世界観&設定には東出さん(東出祐一郎氏)が起用されているとのことですが。

小山田氏:
 プレイヤーさんにはストーリーで,メインキャラクター達の物語を体験してもらいます。

4Gamer:
 ボリューム的にはどんなもんでしょう。

須田氏:
 長いです。

小山田氏:
 最初に東出さんにお願いした分だけで,小説3冊分はあります。

4Gamer:
 3冊分って,そりゃまたボリューミーですね。文章量は小山田さんらがオーダーしたものですか。

小山田氏:
 こっちから「章仕立てで」「これくらいの期間で」「こういうシナリオで」とお願いしたら,3冊分のボリュームが届いたんです(笑)。

須田氏:
 対戦などのゲーム面は,アリーナや共闘にすべて引き受けてもらうつもりだったので,ストーリーに関しては“物語を読む”ことに特化しています。しっかりとした物語を見せたかったので,ゲームシステムに囚われたものにもしたくありませんでした。

4Gamer:
 いわゆる「あっ,モンスターだ!」みたいなのは嫌だったと。

須田氏:
 そうです。シナリオには長いもの,短いものが混在していますが,そういった部分にも制約をかけないほうが,読み手に面白さが伝わりやすく,東出さんの持ち味も出しやすいと考えました。東出さんには現在進行で執筆してもらっているので,新たに作ったヒーローを世界観に組み込んでもらったりもしています。


完成度は80%。そしてこれからが本番


4Gamer:
 「バトブレ」はTGS 2017の開催前日に発表されましたが,これはスケジュール的に予定していたことでしょうか。私もしかり,メディアの編集者は「スクエニから,なんか出ちまったよ!」と嬉しい悲鳴を上げていたのが,想像に難くないのですが(笑)。

小山田氏:
 発表した以上は予定していたというほかないのですが,正しくは「作り続けていたら,このタイミングだった」です(笑)。

4Gamer:
 現時点では,2017年内の配信を予定しているそうですね。

小山田氏:
 はい,目標は年内配信です。

4Gamer:
 それではTGSらしい質問として,現状のゲームの完成度はどれくらいですか。

須田氏:
 80%といったところです。今は最終調整の段階となりますが,ここからの調整は細かなバランスを見ていく密度の濃い部分です。ある意味,対戦ゲームとして最も本腰を入れなければいけない部分です。ちょっとした数値の変動が肝になりますから,詰めの作業と言いながらも,毎日かなり手を入れながら進めています。

小山田氏:
 実は2週間前にCBTを実施していたんですが,1週間前にはまったく違う内容に変わっていました。

須田氏:
 アンケートでいただいた「ボタン周りの操作性が悪い」「スキルが暴発してしまう」などの意見をくみ上げていくと,操作性と同時にUIもガラッと変えなければならかったんです。

4Gamer:
 あと少しだけど,ものすごい長い,追い込みの時期なんですね。

須田氏:
 ひたすら調整です。

小山田氏:
 プレイしては改善の繰り返しです。

須田氏:
 第2回部内大会もあるんですかね?

4Gamer:
 部内大会とは? また面白そうなことを。どんな風にやったんですか。

画像集 No.002のサムネイル画像 / スクエニ新作「バトル オブ ブレイド」の小山田 将氏&須田裕介氏にインタビュー。聖剣伝説RoMで培ったものを,バトブレにすべて注ぎ込む
小山田氏:
 最初はテストプレイのためにと,スクエニの各部署のスタッフに呼びかけをしたんですが,誰も手伝ってくれなかったんです。

 だから,ちょっとしたご褒美(自腹)を用意したところ……あっという間に30人ほど集まってくれました。

4Gamer:
 いい仲間たちですね……(笑)。

須田氏:
 それから皆,血眼になってテストプレイを始めて,気付いたら開発チームよりも強くなっていて,大会の決勝戦では我々が敗北しました。最後の最後で私のレベル上げが追い付かず,相手チームにレベルをカンストされていた差で,もっていかれちゃいました。

小山田氏:
 友人や知人とリアルで一緒にプレイする際は,やはりチーム戦略が大事になってくるんですよ。スクエニのスタッフはゲーム好きが多いので,それぞれのチームで独自の戦略を練ってきました。

4Gamer:
 やはり,本格的な対戦ゲームとしての側面も存在しているんですね。戦略でいうと,ロールは偏るより,均等のほうがいい感じですか。

小山田氏:
 そういうわけでもないです。「バトブレ」はランダムマッチングですので,結果的にロールが偏ってしまうこともあります。そのため全員が同じロールであっても,それはそれで強みを出せるようにしています。

須田氏:
 サブロールってわけではありませんが,例えばチーム全員がサポートであっても,ヒーローによっては攻撃面に優れたサポートというのも存在します。ヒーローごとの特色を個別に設定しているからこそ,同じロールばかりでも柔軟性が出せるんです。

4Gamer:
 そういう部分も含めて,ガチガチな指示ゲームにならないようなので,私もお二方が言ったように,気軽な気持ちで楽しんでみたいです。それでは最後に,ゲームの配信日に向けた意気込みをそれぞれお願いします。

須田氏:
 私は対戦ゲームを作りたかったのと同時に,対戦コンテンツに対する心理障壁を,どれだけ下げられるのかにも注力しました。「バトブレ」は,対戦ゲームをやったことがない人にも楽しんでもらえるようにと心がけています。ゲーム配信後は,緻密な駆け引きなどはいったん置いといて,スクエニの名作の武器を好き勝手に振り回すみたいな,カジュアルな姿勢で楽しんでみてほしいです。

小山田氏:
 私は現在,この「バトブレ」と「聖剣伝説」シリーズの最新作「聖剣伝説2 SECRET of MANA」のプロデューサーを担当しています。しかし,「バトブレ」のディレクターは須田で,「聖剣伝説2 SECRET of MANA」のディレクターも別の人間に任せています。両作品にそれぞれ芯のあるディレクターがいてくれるので,「小山田はどちらにより力を入れているの?」といった邪推はしなくても大丈夫です。

4Gamer:
 しっかりとした制作体制を敷けているということですね。

小山田氏:
 本作はテストプレイをした方々から非常に高評価を受けてきた作品なので,この機会に知ったという人は「〜〜みたいなゲームなんだろう」とタカをくくらずに,1度プレイしてもられば,アリーナの魅力が伝わると思っています。それと「どのスクエニ作品の,どの武器を出してほしいか」といった意見も,ぜひ運営に送ってください。必ず参考にしますので。

須田氏:
 うちの小山田は,コラボ営業ならお手の物ですから。

小山田氏:
 だから,お手の物じゃないですって!

4Gamer:
 「ゼノギアス」や「レーシングラグーン」もスクエニRPGですよね。ってことはつまり……ゴクリ。

小山田氏:
 それ,武器出ないでしょう!

4Gamer:
 そういった続報はもとより,「バトブレ」が年内に配信されることを大いに期待しております。それでは,本日はありがとうございました。

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