インタビュー
「ボーダーブレイク」専用コントローラの注文受付が開始。ただし,3000台に満たない場合は企画中止。ここまでの経緯をHORIとセガのキーマンに聞いた
ただし,確実に製品化されると決まっているわけではない。というのも,受付期間中(5月2日10:00まで)に注文数が3000台に満たなかった場合,この企画は中止になるとのこと。つまり,目標をクリアした場合に限り,製品化が実現する。
先日掲載した記事にも大きな反響があり,全国のボダブレファンを歓喜させた今回の企画だが,そこにはどのような経緯があったのか。プロジェクトを主導するHORIとセガ・インタラクティブのキーマンに集まっていただき,注文受付の開始前にインタビューを実施した。
「『BORDER BREAK』専用コントローラー for PlayStation 4(仮)」注文受付ページ
「ボーダーブレイク」公式サイト
きっかけは公式Twitterへの“突撃”
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
さっそくですが,今回のプロジェクトが立ち上がった経緯から教えていただけますか。
PS4版「ボーダーブレイク」の発表以降,プレイヤーの皆さんが専用コントローラを非常に期待されていることは知っていました。ただ難しいところとして,我々の製品というのは基本,「お客さんにお店でパッケージと一緒に買ってもらう」という流れを想定しているんですね。
その点,PS4版「ボーダーブレイク」は基本プレイ無料タイトルなので,その展開は期待できない。なかなか踏み切れなかったというか,難しい企画ではあったんです。
4Gamer:
なるほど。そもそも企画の話自体はいつ頃からあったのでしょうか。
小西氏:
実は約2年前から打ち合わせをしています。
遠藤将城氏(以下,遠藤氏):
その頃は「アーケードのコンパネ(コントロールパネル)をそのまま再現する」という話でした。あとは弊社のFPS/TPS向けデバイス「タクティカルアサルトコマンダー グリップコントローラータイプ G1」(以下,TAC G1)をボーダーブレイク仕様にする,という構想もありましたね。
小西氏:
もともとアーケード版「ボーダーブレイク」の稼働初期から,筐体の入力デバイスが非常に特殊なので,「家庭用に移植されるのであれば,ぜひウチでやりたい」という話をセガさんには伝えていました。当時は「まだ考えていない」というお返事でしたが。
4Gamer:
その企画が2年前になって,再び浮上したというわけですか。
青木盛治氏(以下,青木氏):
PS4版「ボーダーブレイク」の企画立ち上げとほぼ同時期ですね。当初からゲームソフトと専用コントローラをセットで考えていました。アーケード版のプレイヤーに遊んでもらうためには,やはりなるべくゲームセンターと近い環境を用意したいと。そこで,HORIさんにご相談させてもらった,という経緯ですね。
ただ,そこからは紆余曲折がありまして(笑)。先ほどのお話にもありましたが,当初はコンパネを丸ごと再現したいと考えていたんですよ。
4Gamer:
それだと4〜5万円くらいになりますか。
青木氏:
いえいえ,桁が違いました(笑)。
小西氏:
開発としてはやりたい一心でしたが,いろいろと試算してみると10万円近くになることが分かったんです。こちらに実物がありますが,アーケード版のコンパネはかなりしっかりしています。さらに横幅もあるので,丸ごと再現となると,どうしても価格にも反映されます。
青木さんの期待には応えたかったんですけど,プレイヤーの皆さんもこの価格では大変だろうと思いまして,「アーケード版をそのまま再現するのは難しそうです」とお答えしました。
4Gamer:
先ほどの「TAC G1をボーダーブレイク仕様にする」という構想はどうだったのでしょう。
百溪 曜氏(以下,百溪氏):
開発チームで検証してみたんですが,アーケード版のLグリップはしっかりと握ったうえで,人差し指と中指を使ってこまめにボタンを操作するというものです。一方,TAC G1は4本の指で握って,人差し指で左上のボタンを操作することに適した形状になっています。「置いて使うもの」と「持って使うもの」の違いと言いますか,微妙に感覚が異なるんですね。
青木氏:
2月に実施したオープンβテストでもTAC G1を使ってプレイした方がおられましたが,「微妙に違う。ちょっと足りない」という意見が多かったように思います。
百溪氏:
アーケード版の人差し指と中指で押すボタンの部分ですが,TAC G1はそこにボタンが5つあります。そのぶん,小さくて押しにくいという声もありました。そのあたりも含めてボーダーブレイク仕様に合わせてもらうという話もいただき,いろいろと相談を重ねたのですが,どうしても「大改造せざるを得ない」という結論になってしまって。
小西氏:
ええ,それだと新規で作ってもあまり変わらないというのが結論です。
遠藤氏:
TACは一般的なFPSやTPSには適しているのですが,「ボーダーブレイク」の特殊な入力デバイスに対しては少し足りなかったということです。
4Gamer:
なるほど。その後,「Lグリップのみ製品化する」という話になっていったと?
小西氏:
実のところ,TAC G1の件が頓挫した時点で専用コントローラの企画は,ほぼあきらめていました。セガさんにも「このままでは難しい」とお伝えしています。
その後,PS4版の発表になったわけですが,アーケード版のプレイヤーがHORIさんの公式Twitterに「専用コントローラを作ってほしい」と“突撃”されていたんですね。せっかく検討してもらっていたのに,HORIさんだけが矢面に立たされている状態は失礼にあたると思いまして,「両社から公式アナウンスを出しませんか」と相談を差し上げました。「前向きに検討はしましたが,残念ながら……」という内容ですね。
小西氏:
まさにそのタイミングで,社内でもプレイヤーのご意見を受けて,「やっぱりもう一度,前向きに考えよう!」と機運が高まっていたんです(笑)。
青木氏:
そこからのスピードはスゴかったですね(笑)。2年近く難航していた企画が,一気に動いていきました。
小西氏:
決定的な後押しになったのは,オープンβテスト(OBT)に参加されたプレイヤーの皆様からの反響です。
もともとはマウス(Rグリップ)もセットで提供する予定で考えていましたが,テスターの意見によると,ご自身のマウスでプレイすることに馴染んでいる様子でした。そういうことならば,我々には「しっかりとアーケード版を再現したLグリップだけを提供する」という選択肢があるんじゃないかと。そのほうが価格も抑えられますし。
青木氏:
プレイヤーの皆様から寄せられたご意見を見ても,マウス操作に関するものが少なかったんですよ。それは,おそらく自前のマウスでも不満がないということだろうと。逆に言えば,Lグリップに関するご意見やご要望は多かったです。
百溪氏:
とくにコアなユーザーであるほど,「自分にとって最適な環境でたくさん遊びたい」と望まれるでしょうから,それが2万円を切る形でご提供できることを嬉しく思います。
小西氏:
ほとんどないケースですが,公式Twitterへの“突撃”がなければ実現していない企画でした。我々も会社の事業である以上,赤字で商売するわけにはいきませんが,今回に限ってはトントンであれば十分。ちょっとくらいの赤なら,しょうがないかなという覚悟ですよ(苦笑)。
どのような製品になるのか?
こちらに試作段階の写真をお持ちいただきましたが,「アーケード版のLグリップを再現する」ために,どのようなポイントに注力されていますか。
小西氏:
現在はまだ設計段階ですが,これから頭を悩ませることになりそうなのが,左手をマウントするパッドですね。材質もそうですし,剥がれないようにする耐久性にも注意しなくてはいけません。
青木氏:
パッドの部分は,アーケード版のプレイヤーであれば,ちょっとしたポジショニングや操作感覚の違いにも気づかれるでしょうね。
僕もモックを試してみましたが,「親指の位置がちょっと違う」と感じましたね。それはパッド自体の材質だったり,全体の角度だったりの違いから来るもので,そのあたりの微調整はたいへんなところだと思います。
遠藤氏:
本当にほんの少しの違いが,プレイヤーに違和感に与えることになりますので,慎重に進めていく予定です。
さらに専用コントローラには,親指の先に十字キーを追加しているので,その操作性にも気を使う必要があります。手の大きさは人それぞれですから……難しいでしょうね。
ただ,スティック部分の再現性はかなり良いものになると思います。アーケード版の図面がありますし,もともと「ボーダーブレイク」の入力デバイスは汎用性を持たせて,コストダウンを図った設計になっているんですよ。左右対称になっているのも,なるべく複雑ではないデザインを採用しているのも,それが理由ですね。特別な部品も使ってないので,HORIさんなら間違いないのではないかと。
4Gamer:
安定性についてはいかがでしょうか。営業用の資料によると,重量は「約1500g(仮)」となっていますが。
遠藤氏:
重量は調整中です。操作中に専用コントローラが浮いたり動いたりしないように,必要な場合は“おもり”を入れる予定で,底面にも滑り止めの加工を施します。
青木氏:
「ボーダーブレイク」にはスティック自体を倒す操作がないので,「バーチャロン」のツインスティックよりは心配しなくていいと思いますよ。うまいプレイヤーほど,指先だけの操作になりますから。
百溪氏:
開発チームのメンバーも試作テストに参加しますので,そのあたりは安心していただきたいと思います。
製品化に向けて,今後の展開は?
4Gamer:
それでは,今後の展開を教えてください。
小西氏:
4月18日15:00より,HORI公式サイトにて注文受付を開始し,受付期間は5月2日10:00までの予定です。ここで注文数が3000台に達した場合,晴れて製品化が実現する運びとなります。
4Gamer:
注文数が3000台に満たなかった場合,この企画は中止になるとのことですが,この数字というのは……。
小西氏:
会社として,商売として,企画を成立できるギリギリのラインですね。大丈夫だとは思っていますが,蓋を開けてみるまでは不安です(苦笑)。
注文数の途中経過は,弊社の公式Twitterで定期的にお伝えしたいと思っています。
4Gamer:
製品化が実現した場合,今回の受付期間中に注文していない人が購入する方法はあるのでしょうか。
小西氏:
未定です。まだそこまで話を詰めてはいないのですが,もしそのようなご要望が多く寄せられることになれば,前向きに検討したいと思います。ただ,そもそも目標の注文数をクリアできないと実現できませんから,専用コントローラを購入したいという方は受付期間中のご注文をお願いします。
青木氏:
先のことはまったく分かりませんので,絶対に欲しい方は「この機会をお見逃しなく!」と強調しておきます。
4Gamer:
太字にしておきます(笑)。
発売時期は「2018年」となっていますが,具体的には?
青木氏:
「PS4版『ボーダーブレイク』のローンチに合わせてほしい」と相談しているところです。ソフトの配信日は「今年の暑くなる頃には」とお伝えしています※。
※インタビュー収録後,配信日が8月2日であることが発表された(関連記事)。
4Gamer:
分かりました。
最後に両社より,「ボーダーブレイク」ファンに一言いただけますか。
小西氏:
ファンの方の熱いご要望をいただいたことで,今回の企画が実現しました。まだ注文数というハードルは残っていますが,我々はご期待に応えられる,むしろそれを超える製品を完成させたいと思います。
また,これっきりではなく,「ボーダーブレイク」のステップアップに合わせて,先々の展開も見据えています。皆さんには,ぜひ企画を拡散していただき,ご注文につながってくれれば嬉しいですね。
青木氏:
一度は消えかけた企画でしたが,OBTの反響を受けて実現に至りました。「ボーダーブレイク」は“共創”をテーマに掲げて,ここまで来ましたが,今回はファンの皆さんとHORIさん,そして我々で一つのものを作り上げたいと願っています。
ぜひ,ポチッてください(笑)。よろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「#HORIさんボダ専用コントローラーありがとう」こんなハッシュタグまで作っていただいてうれしいです!こちらこそありがとうございます!自作していらっしゃる方の投稿や、ご意見ご要望のツイートも可能な限り目を通させていただいております!一緒に盛り上げていきましょう!#BBPS4
— HORI /ゲーム周辺機器のホリ (@HORI__OFFICIAL) 2018年3月22日
「『BORDER BREAK』専用コントローラー for PlayStation 4(仮)」注文受付ページ
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