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[GDC 2021]膨大な数のゲームが流通するSteamで強い印象を与えるには? Steamページの作り方を指南する講演を紹介
このため多くの開発者やマーケティング担当者が「Steamユーザーに注目される作品」にするべく知恵を絞っており,そのためには「Steamページをきちんと作る」のが重要であることは,これまでにも度々語られてきた。とはいえ“きちんと作る”とは,実際には何をどれくらいやることを指すのだろうか?
GDC 2021で行われたセッション「30 Minute Steam Page Makeovers(30分でできるSteamページ作成)」では,Return To Adventure MountainのCreative Director,Chris Zukowski氏が,この疑問に答える講演を行った。
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うまくいかないSteamページの4つ問題点
セッションの冒頭においてZukowski氏は,これから話すページの作り方を聞いて,完璧なページを作ってから公開するやり方は間違いだと,まず指摘した。Steamページは常に制作の途中であるべきで,指標となる数値で「これではダメだ」という結果が出たら,積極的に修正を加えていくべきだ,というのが氏の考え方だという。
完璧なページを作るために時間をかければかけるほど,公開時期は後ろにずれ込み,結果的にプレイヤーのウィッシュリストに入るチャンスを逃がしてしまう。それよりは,不完全であっても公開してしまい,その後に手直ししていったほうが良いというのだ。
さて,実際にSteamページを作るにあたっての代表的な問題点として,氏は以下の4つを挙げた。
- ページが目立たない
- ジャンルが不明瞭
- Steamのアルゴリズムに適さない
- ゲームが死んでいる
以下,順番に見ていこう。
ページが目立たない
Zukowski氏によれば,Steamユーザーは新作が“アセットフリップ”か否かを疑う傾向にあるという。アセットフリップとは,ゲームエンジンのアセットストアで販売されているサンプルゲームを,そのままSteam上で販売しているケースのことで,当然ながらこれは嫌われる。なので目立つ目立たない以前の問題として,「このゲームではそうではない」ことを暗黙のうちにユーザーに伝える必要がある。
これを踏まえた上で重要になるのが,サンプルのスクリーンショットだ。例として挙げられた「Jupiter Moons: Mecha」では,当初,スクリーンショットがどれも似たようなものにしか見えないという問題点があった。実は,この“スクリーンショットがどれも同じに見える”というのは,アセットフリップの大きな特徴だそうで,こういうページは精査されることもなく,ユーザーにスルーされてしまうそうだ。
ではスクリーンショットをユニークなものにするためには,どうしたらいいのだろうか? Zukowski氏は一つの指標として,「1つのアセットでスクリーンショットを作らない」ことを挙げていた。また一見,ゲームに興味を抱いた人にしか意味を持たない込み入ったUIの画面なども,このゲームはちゃんと作られている――つまりはアセットフリップではない――ことを示唆するスクリーンショットになり得るという。
続いての大きなポイントは,Steamページの右上に表示される画像と短い解説文(通称「カプセル」)だ。
このカプセルを,スクリーンショットを使って作るというのは「あまり望ましくない」とZukowski氏は指摘する。このスペースに置く絵を,イラストレーターにしっかりお金を払って描いてもらうことは,「このゲームはアートに気を使っている」というシグナルになるのだそうだ(もちろんそのアートをゲーム内のタイトル画面に使うといった考え方はある)。
これが実際に効果があるのかという疑念に対して,Zukowski氏はカプセルの絵をスクリーンショットからイラストへと変更した「Dwarven Valley」の例を挙げた。この作品のウィッシュリストを調べると,カプセルのイラストを変更した途端に,登録が急増しているのが見て取れる。
最後に,実際のゲームのさまざまな機能やギミックが動いているところを切り取り,GIF画像などでページに配置するという手法が示された。
これは「ゲームの特徴を文字で説明するより,動画を示したほうがずっと分かりやすいし,アピールもしやすい」という話である。当然ながらこれには手間がかかるが,“手間をかけている”というのは,アセットフリップ疑惑を振り払う意味でも最善の手段だ。
また「短い宣伝動画を見た人は,そのゲームを遊んでいるような気持ちになり,ゲームへの興味を強める」という効果は,ゲームの内容とまるで関係のない動画(実際のゲームプレイとまったく異なる内容を表示するゲーム動画)ですらそれが起こることからも明らかである。結局のところ,“ゲーム購入者は見栄えの良いゲームを買う”というのは,覆し難い現実なのだろう。
ジャンルが不明瞭
続いての問題点は,ジャンルが分からない――言い換えれば“このゲームでプレイヤーは何をするのか分からない”という問題だ。
まず,Steamのユーザーは“自分の好みのジャンルをはっきりと意識している”傾向がある。“シヴィライゼーションみたいなゲームのようだから興味を持った”とか“マリオパーティのようなパーティーゲームのようなので,自分向けじゃない”というのは,Steamユーザーに広く見られる判断基準なのだそうだ。
ゆえに“このゲームのジャンルはなにか”をユーザーに素早く把握してもらうのは,そのタイトルがウィッシュリストに入るか否かを大いに左右する。“好みのジャンルでないからウィッシュリストに入れない”ということも当然あるだろうが,そういうユーザーを最後まで騙し切って購入させたとしても,彼らが当該作品を高評価する可能性は低いだろう。“ユーザーを騙さないようにする”のは,Steamページを作る上での鉄則だとZukowski氏は指摘した。
その上で,ユーザーにジャンルを的確に把握してもらうためには,カプセルの説明文,良いスクリーンショット,そして「類似ゲームを想起させるカプセル」が重要だという。
まずカプセルの説明文は,動詞を意識した文言を作るのが理想だ。コントローラのボタンを押すと何が起きるのか? キャラクターが死ぬとどうなるのか? ゲーム内の時間はどのように経過していくのか? こういった具体的な点について,短く説明していくのがポイントとなる。
実際に“良いカプセルの例”として挙げられた「Dead Cells」「Fall Guys」の文書を,2021年7月末現在のSteamページで見てみよう。いずれも簡潔明瞭というだけでなく,カプセルの絵やスクリーンショット・動画と結びつくことで,ユーザーに“これがどんなゲームなのか”を素早く把握させる一助となっていることが分かる。
続いて良いスクリーンショットだが,氏は「スクリーンショットには,それ単体でそのゲームのジャンルを伝える力がある」と指摘する。代表例はホラーゲームで,恐ろしげな画面を見れば「このゲームはホラーゲームなのだ」と多くの人は直感的に理解できる。このためカプセルの文書ですべてを語ろうとするより,「詳細はスクリーンショットに語らせる」といった役割分担を意識することが重要になる。
しかしそれだけでは不十分だ。ホラーゲームということは伝わっても,ゲームとしてのジャンルにはさまざまなものがあり得る。なのでUIが表示されたスクリーンショットなども用意しておけば,「このゲームは銃が撃てる」「このゲームは荷物管理が必要で,アイテムには食料も含まれる(=おそらくはサバイバル要素が強い)」といった予想が可能になる。
最後に「類似ゲームを想起させるカプセル」だが,これはジャンルが近い作品のカプセルを研究し,その一部の要素を自身のタイトルにも取り込むという意味になる。
またこれは,ゲームタイトルそのものにも当てはまる。例えば「シミュレーター」とついたゲームであれば,そのゲームがどんなゲームかは,おおよその予測できるはず。さらに知識のあるユーザーなら,ある種のコミカルさが意識されたゲームである可能性も脳裏をよぎるかもしれない。
こういった“そのテーマならではのもの”は,時代とともに変化することがある。このため古いゲームをSteamで公開している場合は,そのゲームのカプセル画像が現代においてもジャンルの把握に寄与するものであり続けているかをチェックすべきだとZukowski氏は語った。
ちなみに複数のジャンルを融合させたゲームの場合,まずは中心的な要素となるジャンルを前面に押し出すのが無難だという。その上で,もし完全に50:50のバランスでゲームが作られているなら,定期的にフォーカスするジャンルを切り替えていくのも有効だとZukowski氏は語っていた。Steamページは「永遠不動のものではなく,適宜作り変えていくことが重要」という方針は,こういうところでも活かされるのである。
Steamのアルゴリズムに適さない
Steamのアルゴリズムに対してSteamページを最適化することも,Steam内部での注目度向上に寄与する。
といっても,これは基本的にタグの設定がすべてを支配する。タグが適切に設定されてさえいれば,Steamがほかのゲームからの(あるいはそのユーザーが主に遊んでいるゲームジャンルからの)オススメとして,自身のゲームを推薦してくれることが起こり得るからだ。
そのため「適切なタグ」をつけることは極めて重要だが,これにあたってはジャンルを代表する先行作品が有しているタグを確認し,複数作品に共通するタグを(自分のゲームがそのジャンルに属するなら)使っていくのが効果的とのことだった。
ゲームが死んでいる
最後のポイントは,ユーザーに「これってもう開発者がサポートしていないゲームなのでは?」という疑念を抱かれてしまうことを避ける,ということだ。例えば“永遠にアーリーアクセスを脱しないゲーム”は,そのゲームの開発が続いている証拠がない限り,致命的なバグ(進行不能,セーブデータ破損など)が永遠に修正されない可能性をはらんでいる。
この問題に対しては,まず「開発者はなにかしらアップデートしたら,それをSteamページでも告知する」という,ごく当たり前の対策が挙げられた。また「最近のイベントとお知らせ」はストアページから直接見えるので,“アップデートを告知したけれど読まれなかった”ということは,比較的起こりにくい。
加えて,この「最近のイベントとお知らせ」で開発者ブログを提供するというのも,ファンとの交流を促進するとともに,“このゲームは死んでいない”ことを示す良いシグナルとなる。
フォーラムでのファンとの交流も重要だが,ここでより重要になるのは「FAQと連絡先をピン留めしておくこと」だとZukowski氏は語る。とくに小規模チームの場合,Steamのフォーラムまで細かくチェックしきれないこともあるため,SNSなど頻繁に確認している連絡先を明示しておくことで「バグ報告をしたのに反応がない,このゲームは死んでいる」と判断される危険性を下げられる。
またカプセルの絵をアップデートしていくのも有益だ。実際に新しい絵を描き起こすとなるとコスト的に大変だが,「大型アップデートがあった」「DLCが発売された」といった新しい変化は,カプセルの絵に文字でその情報を入れると効果が高い。
講演の最後に,Zukowski氏は「試行錯誤をくり返すこと」「効果があるかどうか分からないなら,まずはやってみること」の重要性を再び指摘した。
もちろん,そのうえで効果を確かめる必要はある。「KPIとしてはウィッシュリストの登録数が最適」とのことだが,そのほかにもさまざまな数的指標を毎日記録し,表計算ソフトなどで数値の変化をトレースするのは欠かせない。「試行錯誤の結果を分析せずに試行錯誤し続ける」のは,「試行錯誤も挑戦もせず,ただ一発で完璧なものを作ろうとする(作ったと信じる)」のと同じくらい有害なのだ(とはいえ,このあたりはSteam側がもっと便利なツールを提供してくれても良いのではないかと,頻繁に指摘される点でもある)。
「絶対に成功するマーケティング術」が存在しないように,「こうすれば絶対に成功するSteamページ作成術」もまた存在しない。Zukowski氏自身が「この講演を鵜呑みにせず,自分で試行錯誤しろ」と語るように,「やれと言われたことをひととおりやった」だけで勝てる世界ではないということは,肝に銘じておきたいところである。
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