インタビュー
「ジャンプチ ヒーローズ」サービス1周年記念インタビュー。クリエイターに聞く,多彩な作品のファンに応える秘訣とは
そんな「ジャンプチ ヒーローズ」がサービス開始から1周年を迎えた。新たなライバルタイトルも増え続けるなか,いかにして「ジャンプチ ヒーローズ」はプレイヤーの心を掴み続けているのかを,本作のプロデューサーを務めるLINEの白井雄一朗氏,同じくプロデューサーであるワンダープラネットの鷲見政明氏に話を聞いてみた。
「ジャンプチ ヒーローズ」公式サイト
「ジャンプチ ヒーローズ」ダウンロードページ
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リリースから1周年。ゲームに登場したワザなどは
どうやって選んだ?
4Gamer:
まずは「ジャンプチ ヒーローズ」のサービス開始から1周年,おめでとうございます。
白井氏:
気づけば1年が過ぎていて,本当にあっという間でした。
鷲見氏:
ですね(笑)。プレイヤーさんの要望を反映しながら改善のアップデートをしていたら,いつのまにか1周年を迎えてしまったという印象です。
4Gamer:
そもそも「ジャンプチ ヒーローズ」はどのような経緯で始まったタイトルなのでしょうか。
白井氏:
「ジャンプチ ヒーローズ」がサービスを開始した2018年は,「週刊少年ジャンプ」の創刊から50周年だったんですよ。その節目に,弊社と集英社さんで,スタンプの配布などのコラボ展開をさせていただいていたのですが,その中でゲームという展開を提案させていただいたのが企画の発端です。
4Gamer:
LINEからの提案でスタートしたプロジェクトなんですね。
白井氏:
はい。そこから,「週刊少年ジャンプ」のゲームを作るなら,どういう内容がいいのかというところを弊社の中で検討しました。まず考えたのが,「週刊少年ジャンプ」には50年の歴史があるので,幅広い年齢層の方が読まれているということです。そのため,ゲームは間口が広くて遊びやすいものがいいだろうと考えました。
4Gamer:
その結果,たどり着いたのがパズルゲームという形だったと。
そうですね。加えて,「週刊少年ジャンプ」の作品にはバトルものの作品が多く,またその人気も高いので,RPG要素も取り入れることにしました。
そこまで内容が定まったところで,同じパズルRPGの「クラッシュフィーバー」なども手がけられているワンダープラネットさんに声をかけさせていただいて,プロジェクトが本格的にスタートしたという感じですね。
4Gamer:
鷲見さんは「ジャンプチ ヒーローズ」のお話を聞いたとき,どう思いましたか?
鷲見氏:
自分も「週刊少年ジャンプ」の読者の1人だったので,考える間もなく「やりたい!」と思いましたね。
ワンダープラネットとしても,LINEさんから「一緒にやりませんか」というお話をいただいてからすぐに「やります」とお答えして,「ジャンプチ ヒーローズ」の開発が始まりました。
「楽しいね!を、世界中の日常へ。」というミッションを掲げている弊社としては,我々のプロダクトに「週刊少年ジャンプ」のキャラクターが重なることで,より大きな理想を実現できるのではないかという思いがありました。
4Gamer:
実際にプロジェクトが動き始めてからは,LINEとワンダープラネットはどういった形で開発と運営に携わっているのでしょうか。
白井氏:
弊社がパブリッシャ,ワンダープラネットさんがデベロッパという役割ですが,その枠組みを超えて,「ジャンプチ ヒーローズ」というプロジェクトを成功させるという共通のゴールに向かって,意見交換をしながら協議を重ねています。
4Gamer:
2社が協力しながらゲームをよりよいものにしているわけですね。では,ゲームに登場させる作品も相談しながら決めるという感じなのですか。
白井氏:
お互いに作品を出し合って,どういう順番で実装するのがいいのかなどを相談しながら決めています。その後,弊社からその作品を扱ってオーケーかどうか,集英社さんにご確認いただく流れです。
作品を選ぶときには,作品の年代が偏らないように,とくに注意しています。たとえば,人気作品の多い1990年代だけを扱えば,それだけ多くのプレイヤーさんの目に入るとは思うのですが,「ジャンプチ ヒーローズ」が大事にしている“オールスター感”がなくなってしまうので,さまざまな年代から幅広い作品を抽出することを考えています。
4Gamer:
作品の選出に合わせて,ゲーム内でキャラクターが使うワザも選ばれると思うのですが,ワザらしいワザがないギャグマンガなどのジャンルは選ぶのも難しそうです。
白井氏:
確かに,ワザの選びやすさは作品によって違います。ワザが多すぎてどれを選べばプレイヤーさんに喜ばれるのか分からないこともあれば,ワザがなくて「どうしたものか」と悩むこともあります。選定基準としては,ファンの方が見たときに納得していただけるのかどうかという点を重視していますね。
4Gamer:
そうして考えられて実装したワザに対するプレイヤーの反響はいかがですか?
鷲見氏:
ワザの選定に関しては「これを持ってきたか,なるほど」という声が多いですね。それから,プレイヤーの皆さんのあいだで話題にしていただいているのは「このワザの演出,原作っぽい!」というところです。
4Gamer:
その原作表現でとくにこだわったワザはなんでしょうか。
「セクシーコマンドー外伝 すごいよマサルさん」のマサルさんの必殺ワザですかね。そのワザというのが“エリーゼのゆううつ”からの“ラブ・ミー・ドゥー”で,原作ではズボンのチャックを下してからパンチを浴びせるというワザなのですが,ゲームで直接的にチャックを下ろしてしまうと,大人の事情に引っかかってしまうんですよ。それを避けるために,表現にはこだわって,いろいろな工夫を凝らしています。
白井氏:
てっきり,鷲見さんは「HUNTER×HUNTER」のゴンさんのワザを言われると思っていました(笑)。
鷲見氏:
ゴンさんも好きですけどね(笑)。キャラクターのワザは,ワンダープラネット内に「週刊少年ジャンプ」のことが大好きな開発メンバーが揃った“ジャンプ読者委員会”という集まりがあって,彼らが「絶対にこのワザ!」という感じで意見を出し合い,選定するという形になっています。
4Gamer:
ワザの演出として出てくる原作のシーンも委員会の方が選ばれるのですか?
鷲見氏:
そうですね。「このキャラクターなら,あの原画は絶対に使うべきだ!」という感じで,かなりこだわっています。
だから,バトルはスキップ機能で飛ばせるようになっているのですが,たまにはスキップせずに,キャラクター全員のワザに注目していただきたいですね。
白井氏:
もっともレアリティの高い星5のキャラクターばかりが注目されがちなんですけど,レアリティが低いキャラクターもしっかりと作り込まれています。ファンの方にも納得していただけるようなクオリティになっていると思うので,ぜひ見てほしいです。
4Gamer:
ちなみに,“ジャンプ読者委員会”の会議はどのくらいのペースで行われるのでしょうか。
鷲見氏:
週に1回行っているのですが,始めのうちは「このシーンがいいんじゃない?」「いや,絶対こっちでしょ!」という感じで会議がなかなか進まなくて,終わるまでに3時間かかることもありました(笑)。でも,いまではノウハウも蓄積されてきたので,意見はまとまりやすいですね。
「ジャンプチ ヒーローズ」は
今後もプレイヤーの声で成長していく
4Gamer:
「ジャンプチ ヒーローズ」がプレイヤーの支持を集めた理由はどういった部分にあると思いますか?
白井氏:
いろいろな作品を扱っているので,それだけ多くの方に遊んでいただけたのかなと思います。最終的には,このゲーム自体のおもしろさを評価してもらえるようになるとうれしいですね。
4Gamer:
この1年で,ゲーム内でさまざまなイベントが開催されましたが,それぞれ印象的だったイベントなどを教えてください。
1か月に1回のペースで開催している“大特集祭”では,1つの作品にフォーカスを当てたイベントを行っているのですが,その“大特集祭”の第1弾として「幽☆遊☆白書」を扱ったときが印象に残っています。
それまでは,特定の作品に注目するというよりも,広く浅く,という感じだったんですよ。でも,より深く作品に触れてファンの皆さんに喜んでいただけるようにしようということで“大特集祭”を開催したところ,ファンの方々から好評でした。“大特集祭”はもとから毎月開催することを予定していましたが,反響をベースにその後の方向性を固めることができました。
白井氏:
私も一緒に運営しているので,同じく「幽☆遊☆白書」の“大特集祭”が印象に残っていますね。鷲見さんが話したとおり,この「幽☆遊☆白書」の“大特集祭”は,「ジャンプチ ヒーローズ」にとっての大きな転換点になったので,一番印象深いです。そのイベント以降,「次はどの作品かな?」と“大特集祭”を楽しみにされている声を見かけることもあるので,いいイベントにできたという自信もつきました。
4Gamer:
“大特集祭”は毎月プレイヤーからの反響も大きいですよね。
鷲見氏:
そうですね。“大特集祭”はとくに人気のイベントになっていて,どれもいい反響をいただいています。
4Gamer:
ちなみに“大特集祭”で扱う作品を選ぶとき,プレイヤーの声は判断材料の1つになると思うのですが,プレイヤーの意見と要望はどのくらいチェックするものなんでしょうか。
鷲見氏:
僕も白井さんも,プレイヤーの皆さんからの意見は,ポジティブなものからそうでないものまで,可能な限りすべてに目をとおすようにしています。そこから“大特集祭”の作品だけに限らず,ゲーム全体として改善すべき点を考えています。
白井氏:
ただ,我々運営側が主体となって,ゲームをどのように改善していきたいのかと考えることは必要だと思うんです。企画,運営のメンバーから出てくる意見を踏まえて,現状のプレイヤーさんはどう思っているのかを汲み取るという形で,皆さんの声をゲームに反映しています。
いまは,Twitterに「ジャンプチ ヒーローズ」としてのアカウントと,プロデューサーとしての私のアカウントを開設していて,そこにいただく意見をとくに慎重にチェックしながら,アップデートを進めています。
4Gamer:
意見や要望はどんなものが多いのでしょうか?
白井氏:
ポジティブなものだと,「この作品がやっと大特集祭で使われたか! ありがとう!」という声が多いですね。そういう反応を見ると,すごく励みになります。
4Gamer:
ゲームの舵を取るトップの方々が直接意見を汲み取るというのは珍しいように思います。
僕は生放送に出演したりもするので,表に出ることが多いんです。そういう意味で,プレイヤーさんの意見が僕に向くことも多くて。ですので,運営チーム全体で意見を受け止めるのは当然のことですが,僕がその窓口になりやすいのかなと思っています。
また,「ジャンプチ ヒーローズ」以外にもいろいろなタイトルがある中で,「ジャンプチ ヒーローズ」を遊び続けていただいているということは,選んでもらえる理由もあるはずですよね。その理由を私たちがしっかりキャッチして,運営に役立てるという意味もあります。そうしてプレイヤーさんと緊密にコミュニケーションを取ることは,今後も運営のためにも必要になってくるのかなと。
4Gamer:
1月に開催された台北ゲームショウ2019では,「ジャンプチ ヒーローズ」の海外展開を発表されましたが,その詳細についてお聞かせください。
白井氏:
現在は台湾,香港,マカオのエリアに配信を予定しています。ワンダープラネットさんは「クラッシュフィーバー」で海外でも成功されているので,「ジャンプチ ヒーローズ」でもしっかり運営してくださるだろうと,信頼してお任せしています。
4Gamer:
海外にリリースするものの内容は,国内のものと同じになるのでしょうか?
白井氏:
国内のものをベースにしているので,ゲームそのものが大きく変わることはありません。ただ,海外向けの機能追加と調整は適宜対応する想定ですし,作品の追加タイミングやイベントの内容も,海外に合わせて調整しながら運営していくことになると考えています。
4Gamer:
国内と海外ではプレイヤーの質もかなり違いますからね。ちなみに,欧米でも「週刊少年ジャンプ」作品は人気ですが,そちらの地域での展開は?
白井氏:
まずはリリースした地域の方々に楽しんでいただけるように,安定してサービスを提供するということを最優先に考えているので,現時点では先ほどお話したエリア以外での展開は考えていないですね。
4Gamer:
なるほど。そうした海外展開など,「ジャンプチ ヒーローズ」がこれから2周年に向かっていく中で,すでにさまざまな施策を考えておられると思うのですが,その中からお聞きできることはありますか?
白井氏:
この1年間で,ゲームをリリースしたときと比べるとイベントの内容も変わってきましたし,新たな機能を追加したりしました。今度はその追加した内容の質を上げていくことが必要だと思うので,これから数か月は,まず内容のブラッシュアップに重きを置こうと考えています。
4Gamer:
具体的なアップデートの方向性はどうなるんでしょうか。
現状では“大特集祭”を1か月ごとのペースで行っていますが,“大特集祭”とは別にもう1つ,プレイヤーさんに盛り上がっていただけるようなものを打ち立てたいと思っています。
例としては,これまで季節イベントはあまり大々的に行ってこなかったのですが,そこに力を入れて,夏には“「ジャンプチ ヒーローズ」に夏が来た!”というような感じでやってみたいなというアイデアがあります。そのほかにも,“ギャグマンガ特集”のような感じで,1つのタイトルではなくて,ジャンルでクロスオーバーするイベントもおもしろいかもしれないなと思っています。
まだ構想段階ではありますが,楽しいと思っていただけるような内容を提供していきたいですね。
4Gamer:
現在はアイデアを煮詰めている段階ということですね。
鷲見氏:
ええ。それから,開発面に関して言うと,「パーティ編成が面倒くさい」という意見をいただくことが多いので,それを解決するために,キャラクターのフィルター機能を取り入れたり,過去に使用したパーティをそのまま使えるようにしたりしたいです。
4Gamer:
「ジャンプチ ヒーローズ」のさらなる進化に期待しています。
鷲見氏:
“より楽しく,より遊びやすく”ということを開発&運営のテーマとして掲げているので,プレイヤーさんに「これを待っていたんだよ」と言ってもらえるような改善をしたいと思っています。また,“大特集祭”に並ぶコンテンツに関しても,楽しんでいただけるものを作っていきますので,あと少しお待ちください!
白井氏:
この1年でうまくできたこと,できなかったことはいろいろありますが,これからもプレイヤーさんとコミュニケーションを取り続けて,皆さんとゲームをより楽しいものにしていきたいと思っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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