来月は映画
「ソニック・ザ・ムービー」が封切りになるそうですね。ソニックさんの初期デザインが公開されたときは「いっそウーヴェ・ボル監督(※)の方がマシだったのでは?」と思ったり,修正版が出たら出たで「どうしてもオリジナル準拠のデザインにはしないのね……」と思ったりもしましたが,そんな不安を超音速で振り切って,公開済みのアメリカでは大好評なのだとか(
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※「ファークライ」や「ポスタル」,「ハウス・オブ・ザ・デッド」などを実写化した映画監督。筆者的には,「バイオハザード」や「DOA/デッド・オア・アライブ」のポール・W・S・アンダーソン監督,「DOOM」や「ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」のアンジェイ・バートコウィアク監督と肩を並べる,爆笑おもしろゲーム映画化マンという認識。
また,先月はバンダイナムコエンターテインメントから
「アイドルマスター スターリットシーズン」(
PC /
PlayStation 4)が発表されました。765プロだけでなく,スピンオフ3ブランドのアイドルも登場するとのことで大きな話題となりましたね(
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つまり……アレですね。
ソニックで
アイドルなら爆裂ギガヒット間違いナシってことですね? そんなわけで,今回は両方を兼ね備えたゲーム
「ソニックウイングス」でやっていきましょう。
「ソニックウイングス」準拠な「ソニックウィングス・スペシャル」版の真尾まお
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オリジナルの「ソニックウイングス」は,ビデオシステムから1992年にリリースされたアーケード向けの縦スクロールSTGです。遊びやすくテンポのいいゲームデザインでサクサクしたプレイフィールを楽しめる一方,
普通に忍者なパイロットや
猛烈さる爆弾(ラスボスの爆弾が低確率で猿になる)など,急に迫ってくるクレイジーぶりが強い印象を残すタイトルでした。
ただ,どちらかと言うと「スーパーファミコン版を遊んだ」という人が多いかもしれませんね。実のところ,筆者もアーケード版が稼働しているところは見たことがありません。ちなみにアメリカでは専用アップライトキャビネットの出回りが良かったものの,Super NES(北米版スーパーファミコン)のソフトは極端に出荷数が少なかったそうで,けっこうなプレミア価格で取引されているという逆転現象が起こっています。
本作の看板キャラと言えば,
“歌って踊れる超音速アイドル”こと(これを名乗るのは第2作ですが),アイドル歌手の
真尾まお。時間停止能力を持っているため,一日司令官の仕事中に自動操縦のF-15へ載せられて,世界の趨勢を左右する戦役へと投入されます。生きている女性を強制的に無人兵器のモジュールにする……と解釈すると,ちょっとRなタイプの雰囲気を感じますが,基本的にシナリオはコミカルテイストなので,途中から「もうヤケだわ! かかってらっしゃい!」と積極的に敵を攻撃するようになります。青少年のなんかにも安心です。
「ソニックウイングス2」版の真尾まお
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アイドルゲームは,今や「ポリゴンモデルが踊って声優が声をあてる」というのが(いささか乱暴な言い方ながら)当然となっていますが,1990年前後はゲームの表現力が低かったこともあって,
「中山美穂のトキメキハイスクール」「ゆうゆのクイズでGO!GO!」「迷宮のエルフィーネ」「No・Ri・Ko」「みつばち学園」,あるいは清水香織さんを起用した
「サイコソルジャー」など,
“実際のアイドルをフィーチャーしたゲーム”というのが一般的でした。それにしても並べると妙な
“圧”があるラインナップだな……。
「ソニックウイングス3」版の真尾まお
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アイドルをテーマにしたゲームで言えば,1980年代から
「ワンダーモモ」や
「アイドル八犬伝」などがあったものの,ゲームのキャラクター自体がアイドル的な支持を得るようになるのは1990年代から。やっぱり春麗と不知火 舞がデカかったですねえ。そしてセガサターン版
「ソニックウィングス スペシャル」の特典としてシングルCDが作られたほどの(かつてビデオシステムの公式サイトで公開されていた話によると,NEO・GEO版は社員ボーカルだったところ,CD版はセミプロのシンガーで新録されたとか)真尾まおは,ビデオゲーム・アイドルの歴史における,
ひとつのブレイクスルーを象徴するキャラクターと言えるでしょう。
2020年2月16日に東京・小岩ライブシアターオルフェウスで開催された,「ソニックウイングス」シリーズに携わったコンポーザ・細井聡司氏の主催によるライブ「ゲームとテクノがスキ!」(振替公演) では,シンガーの中原 涼さんが真尾まおに扮して出演
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そんな「ソニックウイングス」シリーズのうち,
「ソニックウイングス2」と
「ソニックウイングス3」はNEO・GEOでリリースされたため,ハムスターの
「アケアカNEOGEO」ブランドから発売されています。
「ソニックウイングス」(以下,無印)の真尾まおは軍服に「一日司令官」のタスキでしたが,「ソニックウイングス2」ではアイドルのステージ衣装で参戦。ステージ間のデモでは
「じゃんじゃんばりばりよ♪」「も〜最悪ブリブリババーン!」「全開オラオラ状態(意味不明)よ!」と,はっちゃけ気味。1990年代からしても結構キてる台詞だったので,2020年に見ると軽い目眩や動悸に襲われます。
「アケアカNEOGEO ソニックウィングス2」
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「ソニックウイングス3」では自機が時代がかったレシプロ戦闘機ということもあり,真尾まおも出演映画の衣装である矢絣着物に軍帽というクラシックなスタイルに。正気を取り戻したのか,口調は落ち着いたものになっていますが,“戦うアイドル”を自称するなどパイロット業に馴染んでいる様子が見られます。
「アケアカNEOGEO ソニックウィングス3」
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無印は現行機に移植されていませんが,無印〜「ソニックウイングス3」の総集編的な内容であり,アーケード向けタイトル第4作
「ソニックウイングス リミテッド」の逆移植元(変な言葉だなあ)にあたる
「アーケードヒッツ ソニックウィングス・スペシャル」は,PlayStationアーカイブスで配信されています。なので,今は一応「ほぼ全作」を購入してプレイできる環境がありますね。
とは言っても,「アケアカNEOGEO ソニックウィングス3」が発売されたのも2年前。最近は動きなんて……と思うかもしれませんが,あるんですよ! 最近の動きが!
それというのは,シティコネクションのクラリスディスクによるサウンドトラックCD
「ソニックウイングス -VIDEO SYSTEM ARCADE SOUND DIGITAL COLLECTION Vol.1-」の発売! なんと4作セットで3枚組!
そして,お気づきでしょうか。CDの商品名は「ソニックウイングス -VIDEO SYSTEM ARCADE SOUND DIGITAL COLLECTION Vol.1-」で,アケアカNEOGEO版のタイトルは「アケアカNEOGEO ソニックウィングス3」。そう,オフィシャルで「ソニックウ
イングス」と「ソニックウ
ィングス」の表記ゆれが起きているわけです。おおよそ,家庭用に移植されると(スーパーファミコン無印以外)イが小さくなっています。
さて,どっちが正しいんでしょう。とりあえず本稿はビデオシステムの話をするときは「ソニックウイングス」表記,ハムスターの話をするときは「ソニックウィングス」表記にしていますが,ややこしすぎます。事情を知らない人が見たら誤植としか思わないでしょう。そんなわけで現権利元のハムスターに聞いてみました。
かつて存在したビデオシステム公式サイトでの表記は「ソニックウ“イ”ングス」
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4Gamer:
というわけなんですが,「ソニックウィングス」表記と「ソニックウイングス」表記,我々シューターはどちらを信じるべきなのでしょうか。
ハムスター広報:
どちらが正しいということではなく,弊社としましては,過去の資料(インストカードなど)を見ると,「ィ」と書かれているものが多いため,今後も「ソニックウィングス」と表示していく方針です。
なるほど,ハムスター的には傾向から判断して“ィ”なものの,どちらかが絶対的に正しいというわけでもないと……(ご回答ありがとうございます)。
ファンの間では有名な話ですが,「ソニックウイングス」無印の開発スタッフは独立して彩京(の前進である彩アート京都)を設立したそうです。これもビデオシステムの公式サイトでかつて公開されていた話ですが,1997年時点でビデオシステムに在籍していた無印のスタッフは4人だけだったとか。また,無印の音楽は完全外注(なのでスーパーファミコン移植にあたって楽曲がまるっと変わることに)でしたが,「2」以降は,ほそQ(現・細井聡司)氏&ぴろを氏がシリーズを通して手掛けたことで「ソニックウイングスらしい楽曲」のカラーが築かれました。そんなわけで,「ソニックウイングス」シリーズと彩京シューティングは,異母兄弟みたいな関係と言えるでしょう。
ビデオシステムで無印や
「ラビオレプス」,彩京で
「戦国エース」や
「ガンバード」などを手掛けた中村晋介氏が,Akiba PC Hotline!の「ハル研所長のパソコンミニ対談」で述べたところでは,彩京の
「対戦ホットギミック」はビデオシステムの
「ファイナルロマンスR」に対抗して出したのだとか。バッチバチのライバル意識があったようですね。ちなみにキャラクターデザイン&グラフィッカーの装甲巡洋艦氏は両社のタイトルに関わっていたりもしています。
それから約20年を経た現在では,ハムスターが「アーケードアーカイブス ソニックウィングス2」と「アーケードアーカイブス ソニックウィングス3」,シティコネクションが
「戦国エース for Nintendo Switch」や
「STRIKERS1945 for Nintendo Switch」などを配信しているため(※),Nintendo Switchがあれば当時のバチりみを追体験することも可能です。ついでに中村晋介氏の名前は近年
「すばらしきこのせかい -Final Remix-」や
「キングダムハーツ ユニオンクロス」のスタッフクレジットに確認できるので(同姓同名な別人の可能性もありますが),そういうタイトルも追ってみると,何かエッセンスを感じられるかもしれません。
※ハムスターは2018年にビデオシステムの全権利を取得。シティコネクションはゼロディブを2019年3月に完全子会社化し,ゼロディブが有していた彩京の諸権利を取得。
バチりみを感じる?(画像は筆者私物のNintendo Switch)
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ハムスターからライセンスを得てのシティコネクションによる「ソニックウイングス -VIDEO SYSTEM ARCADE SOUND DIGITAL COLLECTION Vol.1-」あり,シティコネクションからライセンスを得てのハムスターによる
「アーケードアーカイブス シティコネクション」ありですので,両社にビデオシステム&彩京のようなバチりぶりは無いと思いますが,もしバチったらどうなるのかは興味をそそられるところです。こう……シティコネクションの
「ホットギミック コスプレ雀 for Nintendo Switch」や
「スーパーリアル麻雀 LOVE 2〜7!」に対抗して,ハムスターが「ファイナルロマンスR」をNintendo Switchに移植して,それに対抗してシティコネクションが
アーケード版「対戦ホットギミック」をSteamあたりでリリースして,ハムスターもPC版をみたいな,そういうバチりを。バチりがですね。