インタビュー
ララ・クロフトが本物の“盗掘師”に成長する時が来た。シリーズ最新作「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」初デモレポート&開発陣インタビュー
本作は日本語版が世界同日となる9月14日にリリースされることが発表済みだが,その内容はほとんど明らかになっていなかった。本稿では,イベント会場で行った開発者への合同インタビューも交えて,シリーズ最新作の情報をしっかりとお伝えしよう。
「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」公式サイト
トゥームレイダーシリーズは1996年から続くアクションゲームの金字塔だが,「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」は2013年にCrystal DynamicsとEidos Montrealの共同開発という形で始まった“リブート”シリーズの第3作だ。ララ・クロフトという一介の若者が“トゥームレイダー”(盗掘師)として成長していく過程を描いた,オリジンストーリー(起源の物語)の完結編といった位置付けになっている。
前作「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」で父の死の真相を解明し,中世期から暗躍を続ける秘密結社「トリニティ」との戦いが避けられなくなったララ。だが,「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」では,メキシコ南部からグアテマラを中心に勢力を持っていたマヤ文明の古代遺跡と,予言されたアポカリプス(終末)がテーマになっている。当面は古代都市「Hidden City」(隠された町)を探して冒険を続け,ララはジャングルという厳しい自然環境の中で覚醒していくことになる。
今回のプレイアブルデモは,メキシコのユカタン半島の外れに実在するコスメル島の村からスタートした。ゲームの開始地点ではないが,かなり序盤であることは間違いなく,まずはカンティーナ(酒場)でララと相棒・ジョナがひそひそと話をしているムービーシーンが展開する。どうやら入手した資料から「Hidden City」の場所に見当が付いているようだ。
マヤ文明のヒエログリフがスラスラと読めるララは,さすがは2代続けての考古学博士といったところで,Hidden Cityは地図に書かれていない「Silver Crown Mountain」という山中にあるらしい。ブラジル北東部のアマゾン川の河口を起点にして,西の方角にあることは判明しているようだが,ララはそれがアマゾンの上流を意味するのではなく,さらにその先のペルー側のアンデス山脈のどこかではないかと推測したのだ。
また,「ピンク色のドルフィン」という謎を解明する必要もあるが,その前にコスメル島の遺跡に眠る“短剣”を見つけ出すというミッションも課せられた。それもトリニティが発見する前に,だ。
こうしたムービーの後,いよいよゲームプレイが開始する。樹木の緑と岩肌のグレーといったカラーが基調になりがちな「トゥームレイダー」シリーズではあるが,今回は非常にカラフルな風景に圧倒された。メキシコの「死者の日」(日本のお盆に相当し,死者の魂が戻ってくると言い伝えられる祝祭)という設定になっているためか,村には多数のロウソクが灯され,屋台や夜店がひしめいている。
このとき,ララはトリニティのギャング達に見つからないようにマスクを付けて隠密行動を取っているため,目立つ行動は取れない状態だったが,それでも村の広場を自由に歩き回り,一部のNPCとは会話もできる。
目指す遺跡はすでにトリニティが地元の考古学者を脅して,発掘に成功している状態だ。ララに残された時間は少ない。村の広場ではジョナと行動を共にしていたが,トリニティのリーダー・ドミンゲスの居場所を突き止めるため,最初の門のところで相棒と別れることになる。
その後,トリニティによって封鎖されている地域に潜入するため,ララは壁をよじ登る。パルクールのような動きで壁を駆けていくアニメーションは,前作以上にスムーズな印象で,「アサシン クリード」や「アンチャーテッド」シリーズの影響が感じられる。
また,道中では金属の破片や薬草の収集が行えるようになっていたが,これはクラフティング要素の抜本的な見直しによるものだという。このあたりの詳細はいずれ明らかにされるはずだ。
ドミンゲスの足どりを追って,村外れの土壁に隠れるように進んでいくと,そこでマヤのピラミッドが記された碑文があり,遺跡の入口が海沿いの洞窟であることを突き止める。遺跡の内部は前作の「預言者の神殿」を彷彿とさせるような,トラップだらけの状況だ。少しでも早く通り抜けようと駆け足を続けていると,足元のトラップに触れてしまって周囲から突き出す槍や落ちてくる岩で絶命してしまう。
とくに今回は“暗さ”が強調されており,従来より陰影表現が圧倒的だ。ホラーな雰囲気が強調されているように感じる。その傾向は効果音にも表れており,死体や野生動物の影などでジャンプスケア(突然,大きな音を発したりすることで驚かせる演出手法)が発生するシーンでは,前作のようなチェロのディープな音ではなく,キュルキュルキュルと音程が上がっていく高音域のバイオリンに変更されている。
両手のピッケルで岩肌をよじ登り,ロープアローで綱渡りをするといったアクションは前作どおりだが,「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」ではラぺリングもスムーズになった印象を受ける。左右のトリガーを使って自在に動けるだけでなく,ピッケルでつかまっている状態からラぺリングの体勢へと移行できるになったことで,移動パターンのバリエーションが広がっている。
今回のデモでは潜水シーンが多かったが,水面の動きや水しぶき,水中の揺れ,魚の群れ,さらにララのアニメーションといったグラフィックスの表現力も進化している。なお,今回のデモでは酸素量のパラメータを確認できなかったが,要所要所で息継ぎをしなければ息絶えることがあるとのこと。
デモの後半,ララは遺跡に眠っていた短剣を見つけ出す。しかし,それを手にしたことで,預言に記された“世界の滅亡”が始まったことを悟る。
その兆しは大洪水だ。遺跡が水没していくなか,ララは懸命に走ったり泳ぎ続けるが,濁流に押し流されいく。やがて,さまざまな障害物を乗り越えて,間一髪のところでジョナが退避している場所に到達するが,ここで自分がやろうとしていることの代償として,“世界の滅亡”をあらためて理解する。果たして,ララはアポカリプスを止められるのだろうか?
開発陣インタビュー
「シャドウ」が意味するものとは?
今回のイベントでは,合同インタビューという形でEidos Montrealの開発陣に話を聞くことができた。インタビューに応じてくれたのは,ナラティブディレクターのジェイソン・ドゾイス(Jason Dozois)氏とリードゲームプレイデザイナーのヒース・スミス(Heath Smith)氏だ。
――「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」はマヤ文明がテーマになっていますが,ロケーションはブラジルやペルーまで含まれるようですね。
ジェイソン・ドゾイス氏:
はい。マヤは史実上,メキシコ南部からグアテマラを中心に栄えた文明ですが,我々のストーリーでは何かの理由で南米大陸にも進出しており,ペルーの山中に遺物を隠したという設定にしました。
コスメルは実在する島ですが,マヤ文明の最東端にあたる場所でした。実際,遺跡も多く存在し,イクシェル(Ixchel)という月の女神が信奉されていたそうです。これまでのシリーズ作品と同様,史実とファンタジーを混在させた世界設定にしています。
――相棒となるジョナの役割はどのように発展していきますか。
ドゾイス氏:
ララとは沈没船の頃からの旧友ですが,シリーズを通して彼も成長を続けてきました。ララが間違っていると思ったときは,それをしっかりと伝える責任感も持っています。
今回のデモでは,最後にララが津波を起こして村を壊滅させてしまったときに,彼女はジョナの助言によって,自分の持つ才能が危険なものであることを悟ります。そして,ララが図らずしてアポカリプスを発生させてしまったにもかかわらず,トリニティを追う姿勢を見せたことに対して,災害から救出するべき残された村人がいるという現実を見せつけたのです。
――つまり,タイトルにもある「シャドウ」(影)には,彼女の取る行動と過去の因果関係の意味を含ませている?
ドゾイス氏:
そのとおりです。「シャドウ」とは,ララ・クロフトというキャラクターがこれまでに受けてきた苦しみや痛み,肉体的なものだけでなく父の死といった心に受けた苦痛を意味するとともに,そこから本物のトゥームレイダーとして成長していくなかでの判断と責任を意味しています。自分がやるべきことを追求するあまり,彼女は世界を崩壊させてしまうかもしれないのです。
それはゲームプレイでも表現しています。今回のテーマの1つに「One with the Jungle」(ジャングルを味方にする者)というものがありますが,ゲームを進めていくうちにララはジャングルの生活に慣れ,敵に対しては神出鬼没なアクションによって「恐怖心」を煽ることが可能です。
こうした影の部分をゲームで追求することもできますが,どこまでダークにプレイしていくのかは注視しなければなりません。……戻ってこられなくなってしまうかもしれませんよ。
――そもそもトリニティとララ・クロフトは,どのような理由で揉めているのでしょうか。
ドゾイス氏:
トリニティもララ・クロフトと同様,盗掘を得意とする組織です。ただ,過去の遺物が持つパワーを掌握するために活動しており,考古学者であるララ・クロフトが遺物の歴史的価値を保存しようとしている姿勢とはまったく異なります。
つまり,ララは父親の死に対する復讐心のみに動かされているのではなく,トリニティという秘密結社が何を目的に活動しているのかを調べ上げようとしているのです。実際,今回のデモでも見られたと思いますが,まだララはトリニティがどのような組織なのか,まるで分かっていません。そのあたりはストーリーが進むにつれて,徐々に解明されていくと思ってください。
――今回のデモの印象では,直線的にストーリーが進んでいくと感じました。
ドゾイス氏:
トゥームレイダーシリーズは,基本的に「ハンティング・グラウンド」と「ハブ」に分かれています。ハンティング・グラウンドはアイテムを収集するのが目的で,ハブではプレイヤーが拠点として自由に散策できるようになっているエリアです。
今回登場する「Hidden City」というハブは,これまで我々が作ったことのないほどの規模になります。前作と比較すると,3倍近い大きさですね。
ただ,完全な自由ではなく,非常にエモーショナルなストーリーを途切れることなく楽しんでもらえるように,ハブに居座っているばかりにならないように心がけています。
――Hidden Cityと聞いて,遺跡のような場所をイメージしましたが,実際に人が住んでいる場所なのですね。それではゲームプレイの面で達成しようとしていることを教えてください。
スミス氏:
先ほど少し触れましたが,ゲームプレイがナラティブと合致するように心がけています。ラぺリングによる下降や潜水,それから閉所恐怖症の演出まで,プレイヤーが心理的に「下向きになる」意図を持ってデザインしています。
――ゲームエンジンは一新されているのでしょうか。グラフィックスやアニメーションが向上していると感じました。
スミス氏:
いえ,オリジンシリーズで使っている「Foundation Engine」を改良したものを使っています。もちろん,Xbox One XとPS4 Proの恩恵を受けられるようにチューンアップを施しています。
とくにアニメーションでは細かい表示が可能になると違和感も生じますので,より感覚的に満足できる状況まで引き上げました。なかでも遊泳のアニメーションには随分と時間をかけましたね。先ほども話しましたが,泳いでいる間もサバイバルや溺れる恐怖を感じてもらおうと苦心しました。
――最後に「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」を我々がプレイすべき理由を挙げていただけますか。
ドゾイス氏:
このゲームは,ララ・クラフトが本物のトゥームレイダーに成長する瞬間を描いています。それが「どれだけ重要なことなのか」をプレイヤーの皆さんに感じ取ってもらいたいと思います。
コンセプトアート
古代マヤ文明とその遺跡がララの新たな冒険の舞台。その周辺ラテンアメリカ諸国で行われる祝祭「死者の日」が行われる街を歩む探検家ララの姿が描かれている。死者の魂が戻ってくると言い伝えられるこの日は,多くの人々が墓地に訪れ,死者の墓をオフレンダと呼ばれる祭壇で彩り,祈りを捧げる
シリーズおなじみの赤いピッケルを両手に持ち,断崖絶壁を登るララ。圧倒的な自由度を誇る,多彩なアクションは本作でも健在のようだ
かつてないほど大きく,奥深い遺跡の数々がララを待ち受ける。だが,古代の遺跡には侵入者を阻む仕掛けや罠が張り巡らされている。地形やエレメントをうまく用いて,直感的に道を切り拓いていこう
極めて高度な文明と優れた技術,さらに天文学や数学についての深い理解を持ち,巨大な都市を築いた古代マヤ文明。今もなお数多く残る謎の数々をララは解き明かすことができるのだろうか
街を襲う膨大な水は激流となり,街もろとも流されていくララ。猛スピードで迫りくる障害物をよけ,生き残る道を瞬時に見出すスピード感あふれるアクションを想起させる
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