プレイレポート
「新サクラ大戦」プレイレポート。 新しくも懐かしい会心の復活劇,これが新章(あらた)なる帝国華撃団・花組だ!
シリーズ第1作「サクラ大戦」がセガサターンにリリースされたのは1996年。あれから20年以上もの間,ファンに愛され続けてきたサクラ大戦シリーズの最新作が,いよいよ発売を迎える。期待に胸を膨らませている読者も多いことだろう。
長い沈黙を経て,リブートを果たした「新サクラ大戦」は何が新しくなったのか。そして,何が変わらないものなのか。大いに気なっているはずだ。今回,発売に先がけて第五話まで遊んでみたのでプレイレポートをお届けする。ぜひ目を通して,「新サクラ大戦」への期待値をさらに高めてほしい。
発売直前「新サクラ大戦」インタビュー。セガのキーマン3名が語る,サクラ大戦 復活への道
セガゲームスは2019年12月12日,PlayStation 4用ソフト「新サクラ大戦」をリリースする。そこで今回,4Gamerでは“復活劇”のキーマンであるプロデューサーの片野 徹氏,シリーズディレクターの寺田貴治氏,デザイン統括の馬立敬一氏にインタビューを実施した。
「新サクラ大戦」公式サイト
時は太正二十九年――
あの華撃団は今……
「新サクラ大戦」の舞台は太正二十九年。「降魔大戦」と呼ばれる壮絶な戦いが行われた太正十九年から10年後の物語が展開する。
帝都,巴里(パリ),紐育(ニューヨーク)といったシリーズファンにおなじみの華撃団は,先の大戦によって消滅。新たに世界華撃団連盟・WLOF(ウルフ)が設立されており,上海(シャンハイ)や倫敦(ロンドン),伯林(ベルリン)といった各都市に華撃団が誕生していた。
そして,長らく空白状態となっていた帝都・東京においても帝国華撃団・花組が復活を遂げる。旧シリーズから歳月が流れたことを,ひしひしと感じさせる背景になっている。
「サクラ大戦」と言えば,個性的なキャラクターの存在が最大の魅力だが,それは「新サクラ大戦」でも健在だ。まずはシリーズの顔とも言える,帝国華撃団・花組のメンバーを中心に登場人物を紹介しよう。
主人公の神山誠十郎は,海軍特務艦艦長を経て転属となり,“新生”帝国華撃団・花組の隊長となった経緯を持つ。
隊長として常に隊員の先頭に立ち,帝都に迫りくる脅威に立ち向かう。誰に対しても誠実で,花組の精神的な支えであることから皆の信頼も厚いが,戦闘シーン以外では少々抜けているところや茶目っ気のある部分も見られる。
メインヒロインの天宮さくらは,旧花組のトップスタァである真宮寺さくらにあこがれて入隊を決意。少々おっちょこちょいなところもあるが,花組への思いは人一倍強い。
落ちぶれてしまった花組を立て直すべく奮闘し,強敵との戦いにおいても決して諦めない気持ちを貫く,熱い闘志を胸に秘めている少女だ。
東雲初穂は伝統ある東雲神社の看板娘であり,巫女でもある。生粋の江戸っ子らしく少々男勝りな部分もあるが,根が真面目でしっかりとしていることから,花組のまとめ役としての活躍も。とはいえ,神山からデートに誘われたときに見せる恥じらいの表情はとても女の子らしく,普段とのギャップが可愛らしい。
望月流忍者一族の末裔である望月あざみは,13歳ながら武芸や戦術,武器の扱いにも長けている天才的な才能の持ち主だ。一方で,神山におやつで買収されそうになったり,大帝国劇場のマスコットキャラ「大帝国ゲキゾウ」に興味津々な様子を見せたりと,幼い少女らしいおちゃめな面も覗かせる。
花組最年長であり,欧州の劇場でトップスタァとして活躍していた経歴を持つのがアナスタシア・パルマだ。冷静でミステリアスな雰囲気を漂わせるが,さくらに演技を教えてあげたり,混乱した状態にも適切なアドバイスを神山に投げかけたりと,優しい一面も垣間見える。時折,どこか物悲しい表情を見せることがあるため,過去が気になるキャラクターでもある。
読書家らしく知的かつ可憐なクラリスは,ルクセンブルクの貴族出身ということもあり,佇まいや言葉使いが上品。ただ,少々冷めた部分もあり,序盤には神山に対して冷ややかな眼差しを向ける場面も。ちなみに,神山のジョークがすべったときに見せる,クラリスのジト目は密かにファンの注目を集めている。
シリーズファンには,帝国華撃団総司令 兼 大帝国劇場総支配人を務める神崎すみれの存在も気になるはずだ。
すみれと言えば,旧シリーズではお嬢様らしい高飛車な性格が特徴だったが,あれから相当な年月が経ったことで,落ち着いた大人の女性らしい物静かな性格になっている。ただし,怒ったら怖いところなどは相変わらず。旧花組の仲間である真宮寺さくらのことを気にかけている描写も多く,その心中が気になるところだ。
各都市の華撃団にも触れておきたい。前述の通り,海外には上海華撃団,倫敦華撃団,伯林華撃団が存在し,それぞれ2人のキャラクターが神山達と接触する。
上海華撃団・五神龍の隊長を務めるヤン・シャオロンは,ストレートな熱血漢だ。やや過激な性格も持ち合わせており,さくら達と衝突することも少なくない。しかし,それは強い正義感の裏返しであり,悪を憎み,人々を守りたいという思いは共通している。
もう1人の上海華撃団隊員がホワン・ユイ。シャオロン同様,熱い正義感を胸に秘めており,華撃団を誰よりも愛している。それゆえ,神山達にキツく当たってしまうことも。華撃団のキャリアとしては神山やさくらより先輩のため,彼らにアドバイスする場面も見られる。
倫敦華撃団・円卓の騎士の団長にして,「神剣エクスカリバー」を受け継ぐ英国騎士がアーサーだ。優雅な立ち振舞いで神山達に接する紳士であり,そのルックスから女性人気も高い。
倫敦華撃団の切り込み隊長と呼ばれているランスロットは,裏表がなく常に明るく元気なタイプ。野性的な性格を持ち合わせており,強い者を見ると血がたぎる好戦的な面も見られる。戦闘では二刀を用いた苛烈な剣技で敵をねじ伏せる。
伯林華撃団・シュヴァルツシュテルンの隊長を務めるエリスは,冷静沈着で何事にも動じない強い精神力を持つ。どんな困難な任務にも鉄の意志で立ち向かう勇猛さを備えている。日本文化に興味を持ち,帝都で歌舞伎を観劇するといった一面もある。
エリスと行動を共にするマルガレーテは,伯林華撃団の隊員として作戦参謀もこなす天才少女。可愛らしい風貌から繰り出される容赦のない毒舌が特徴だ。神山に対しても「あなたたちが勝てる確率は0%(ヌル・プロッツェント)」と言い放つ。
最後に紹介するのは,謎のキャラクター・夜叉だ。華撃団大戦の開会式に突如として現れた上級降魔であり,その素性は一切が不明。ただ,かつての花組トップスタァ・真宮寺さくらに似ており,キャラクターボイスも当時,真宮寺さくら役を担当した横山智佐さんが演じていることから,発表直後から話題になっている。さまざまな憶測を呼んでいるキャラクターだ。
こうした魅力的な登場人物が「新サクラ大戦」ではフル3Dグラフィックスで表現されており,キャラクターの細やかな表情や微妙に揺れ動く感情の変化も伝わってくる。また,要所要所で挿入されるアニメーションや一枚絵も見逃せない演出だ。これらは,かつてのシリーズ作品にも見られた手法であり,往年のファンにとっては懐かしさを感じるポイントになっている。
1980年代の戦隊ものや少年マンガに通じる,血湧き肉躍る演出やドラマチックな展開もサクラ大戦シリーズの魅力だが,そのスピリットは「新サクラ大戦」にしっかりと受け継がれている。
例えば,序盤の一場面。さくらが大きなダメージを受け,仲間から「ここは引け」と言われながらも,「絶対に諦めない!」「何度でも,立ち上がってやるっ!」と言い放つシークエンスでは,シリーズファンであろうとなかろうと胸の高鳴りを抑えられないはずだ。
アクションゲームだから描ける
スピーディかつダイナミックなバトル
「新サクラ大戦」はバトルパートとアドベンチャーパートを交互にプレイしながら,ゲームを進めていく。これはシリーズの伝統と言えるスタイルだ。
しかし,今回はバトルシステムがシミュレーションからアクションへと変わっている。シリーズ作品のシミュレーションバトルは,ヒロイン達の個性が表現されていると共に,奥深い戦略性が楽しめるもので,大いに支持されていた。それだけにファンは大胆な方針転換に驚き,戸惑った。
だが,心配は無用だ。アクションゲームに生まれ変わったバトルパートは,しっかりと爽快感を得られることに加え,アクションが苦手な人も十分楽しめるようになっている。
筆者はアクションが得意なほうではないが,ボタンをポンポンと押すだけでコンボがつながるのはありがたい。空中コンボをはじめとする,難しそうに見えるアクションもシンプルな操作で繰り出せるので,とにかく気持ちいい。ボタン1つで多数の敵を一気になぎ倒せる「必殺攻撃」も,爽快感を後押ししているポイントだ。
ステージを進めると,シールドでガードしてくる敵や体力の多い巨大なボスも登場する。こうした相手には背後に回り込んで攻撃したり,回避を駆使したりといった対策が必要だ。シンプルでありながら,きちんと手応えのあるバランスも魅力になっている。
今回,筆者がプレイした第五話までのバトルパートでは,神山と隊員1名(エピソードによって異なる)が出撃する。プレイヤーは神山機を操作することになるが,戦闘中に隊員とチェンジすることが可能だ。機体によって性能や武器が異なるため,いろいろと試してみたくなる。
そして,とある条件を満たすと1回だけ使用可能な「合体攻撃」は,ぜひチェックしてほしい。発動するとショートドラマのようなムービーが挿入されるのだが,これが良い意味でやりすぎている。しかし,とても「サクラ大戦」らしいとも言える。例えば,さくらとの合体攻撃はまるでラブコメのような展開で,「これが攻撃なの!?」と戸惑ってしまう内容だ。
アドベンチャーパートではLIPS(時間制限式選択肢)によって隊員との絆ゲージが上下する。シリーズの伝統的なシステムだが,隊員との絆はバトルパート出撃時のステータスにも影響を与える。これはバトルを攻略するための大切な要素だ。
敵の攻撃をタイミングよく回避すると発動する「ジャスト回避」も攻略の要。ジャスト回避が成功すると一定時間,敵の動きがスローモーションになり,一方的に攻撃し放題だ。また,敵を一刀両断にする特殊な攻撃で大ダメージも与えられる。
ジャスト回避のタイミングを掴むには場数を踏むしかないが,戦略の幅が広がり,バトルが楽しくなるテクニックなので練習あるのみだ。
帝国華撃団の隊員が搭乗する霊子兵器は,新しさと懐かしさを感じさせるポイントだ。神山やほかの隊員は新型の量子戦闘機「無限」だが,さくらだけ量子甲冑「三式光武」に搭乗する(もちろん,ここにはドラマがある)。それぞれ使用する武器が異なり,神山とさくらは刀,初穂は巨大なハンマーといった,キャラクターの個性が表現されている。
なかでも,読書家であるクラリス機の武器はなんと本だ。正確には魔導書と呼ばれるもので,ビジュアルのインパクトもなかなか。遠距離攻撃を得意としており,接近戦がメインとなる神山やさくらとは対照的になっている。
なお,クリアしたバトルパートは「いくさちゃん」と呼ばれるバトルシミュレーターで再挑戦が可能。しかも,キャラクターを変更することもできる。アクションが苦手だという人は,いくさちゃんで練習するのもいいだろう。
ストーリーを進めると,各都市の華撃団が一堂に会する「世界華撃団大戦」が発生する。これは3対3のチーム戦形式となっており,ステージに現れる降魔を倒して獲得ポイントを競うイベントだ。
フィールドが広いうえ,降魔は一定時間経過すると消えてしまう。そのため,やみくもに戦うだけでは効率的とは言えない。また,まれに出現する金色に光る降魔は獲得できるポイントが高い。レーダーを活用して,敵が集中している場所や金色の降魔が現れるタイミングを確認しながら立ち回ることが勝利の秘訣だ。
LIPSなら「時間切れ」も1つの選択肢になる
フル3Dグラフィックスになったことで,アドベンチャーパートも進化した。神山たちの拠点でもある大帝国劇場や銀座の街などを自由に探索できるほか,街の人々との交流が楽しめるのも嬉しい。
キャラクターの位置を簡単に特定できるアイテム「スマァトロン」のおかげで,広いマップの探索も苦にならないようになっている。
シリーズの伝統でもあるLIPSの選択肢は,真面目なものからシュールなものまで幅広い。シリアスなシーンなのにフザケた回答をしたくなる誘惑に悩まされるのは,「サクラ大戦」あるあるだろう。あえて時間切れを待って,「回答しない」ことも立派な回答になり,それが思わぬ展開につながることもある。
左スティックを上下することで,返す言葉のニュアンスを微調整できる「アナログLIPS」も興味深い。もちろん,回答の強弱によって展開が変わり,シーンによっては入力の度合いに応じてカメラ視点が動く,3Dならではの演出も用意されている。
LIPSの選択肢にいわゆる「ハズレ」はないので,自由な選択と展開を楽しめるのだ。
新章(あらた)なる帝国華撃団の戦いを見届けよ
前作「サクラ大戦V 〜さらば愛しき人よ〜」から約14年ぶりとなる「新サクラ大戦」。ブランクが長いだけに,ファンはさまざまな感情を抱いていることだろう。主要スタッフやキャラクターの一新にも,一抹の寂しさがあるかもしれない。
ただ,「新サクラ大戦」は間違いなく,サクラ大戦シリーズらしさを受け継いでいる。太正時代ならではの世界観,蒸気を動力とするメカ,おなじみのゲームシステムには,シリーズファンなら懐かしさを覚えるはずだ。
そのうえで,フル3Dグラフィックスになったビジュアル,スピーディなアクション,多彩なクリエイターが手がけたキャラクターたちは現代的な新しさに満ちている。
14年間,待っていて本当に良かった。心からそう思えたことを,最後に伝えたい。
「新サクラ大戦」公式サイト
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