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西川善司の3DGE:GeForce RTX 20はレイトレを使わなくてもGTX 10世代より2倍以上速い? 突然出てきた追加情報を考察する
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印刷2018/08/24 00:00

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西川善司の3DGE:GeForce RTX 20はレイトレを使わなくてもGTX 10世代より2倍以上速い? 突然出てきた追加情報を考察する

 gamescom 2018に合わせて新世代GPUシリーズであるGeForce RTX 20を発表したNVIDIAが,22日になって追加情報を3つ開示した。具体的には,

  1. DLSSのアンチエイリアシングを使うとGeForce RTX 20の性能はすごいですよ
  2. DLSSを活用すれば4K&HDR/60fpsのゲームプレイが余裕ですよ
  3. AnselがGeForce RTX 20シリーズに対応しますよ

というものだ。

 非常に限定的な内容なのだが,今回は,これらの情報開示が何を意味するのかを考察してみたいと思う。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:GeForce RTX 20はレイトレを使わなくてもGTX 10世代より2倍以上速い? 突然出てきた追加情報を考察する


追加情報(1)DLSSのアンチエイリアシングを使うとGeForce RTX 20の性能はすごいですよ


 8月23日掲載の記事でもお伝えしたとおり,「Deep Learning Super Sampling」の略であるDLSSは,深層学習を使ったAI的なアプローチでレンダリング映像にポストエフェクトを仕掛ける仕組みのことを示す。
 機械学習および深層学習向けのGPGPU用途向けGPUアーキテクチャである「Volta」(ヴォルタ)で初搭載となり,「Turing」(テューリング)アーキテクチャベースとなるGeForce RTX 20シリーズでも引き続き搭載することになった「Tensor Core」(テンサーコア)によって実現される機能だ。

 「グラフィックスレンダリングにAI的なアプローチでポストエフェクトを施す」という画期的なアイデアに驚き,楽しみにしているPCゲーマーは多いと思うが,NVIDIAは今回,そんなDLSSの相対性能を開示したのである。
 下のスライドがそれだが,NVIDIAの言い分をそのまま伝えるなら,このスライドにあるグラフは,「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)はPascal世代の「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080」と比べて1.5倍弱〜2倍以上の3Dゲーム性能を持っていることを示すものになる。

4K解像度でRTX 2080はGTX 1080比2倍の性能を発揮できるという趣旨のスライド
画像集 No.003のサムネイル画像 / 西川善司の3DGE:GeForce RTX 20はレイトレを使わなくてもGTX 10世代より2倍以上速い? 突然出てきた追加情報を考察する

 グラフは,著名なタイトルごとにGTX 1080のフレームレートを1.0で正規化したベンチマークスコアとなる。たとえばHDRを有効化した「FINAL FANTASY XV」(※左から2つめ)だと,RTX 2080は深緑のバーがGTX 1080比1.4倍くらいになり,黄緑のバーで2倍を超えてくるのが見てとれるだろう。

 深緑のバーが示す値は,筆者の連載バックナンバー「GeForce RTX 20なぜなに相談室(gamescom 2018版)」でもお伝えした,「CUDA Coreベースの理論性能値」に近い。先の記事から以下のとおりFLOPS値を再掲するが,RTX 2080とGTX 1080の理論性能値には約14%の開きがあるので,グラフはちょっと開きすぎと感じるかもしれないが,まあそれなりに妥当とは言える。

  • RTX 208010.07 TFLOPS
  • GTX 10808.87 TFLOPS

 では,2倍を超えている黄緑のバーは何かというと,RTXのグラフィックスパイプラインでレンダリングした映像にDLSSを適用した場合のスコア比率となっている。
 深層学習ベースのポストエフェクトを加えることでベンチマークスコアがここまで上がるのはなぜだろうか。

 前提となる話をしておくと,GTX 1080の灰色とRTX 2080の深緑,両スコアの取得にあたってNVIDIAは,TAA(Temporal Anti-Aliasing,テンポラルアンチエイリアシング)の適用を行ったとしている。
 TAAでは現在のフレームと1つ前のフレームとの間で相関をチェックし,「同一の位置ピクセルにある」と判断できるピクセルのみをサンプリングして,そこにアンチエイリアシング処理を適用する。TAAのサンプル数がいくつかという情報までは開示されていないが,ともあれ黄緑のバーは,グラフィックスパイプライン側でのアンチエイリアシング処理――すなわちMSAA(Multi-Sampled Anti-Aliasing)――は適用せずに“生フレーム”として描画を行い,それに対してDLSSを適用したときのスコアだというわけだ。

 DLSSを用いてのアンチエイリアシング処理は,描画結果の複雑性や内容に依存せず,Tensor Coreでアクセラレーションされた推論エンジンベースのポストエフェクトによって,固定時間で処理できる。その所要時間は数msだという。
 「TAAが画面中の全画素に対して複数のサンプリングを行うのに対し,DLSSは推論エンジンに従って,高画質化に必要なところだけ必要な数のサンプリングを行って処理していくため,結果的におよそ2倍近く高速になる」というのが,このグラフでNVIDIAの言いたいことである。しかも映像品質はTAAと同等か,それ以上のものになるにもかかわらず,だ。

 注意する必要があるのは,「DLSS適用で映像品質が上がったかどうか」に対して,AI的な処理が介入する関係でどうしても主観的な判断が介在することになるというところ。なのでその評価は慎重に行うべきだと思うが,少なくとも,DLSS実行だとTAA実行に対してサンプリング数が減って高速になるというのは,納得のできる話である。

 今後,GeForce RTX 20シリーズを搭載するグラフィックスカードで性能評価を行うときには,従来型のアンチエイリアシング処理を適用した状態とDLSSを適用した状態とで,スコアだけでなく映像の品質も慎重にチェックする必要がありそうだ。ただいずれにせよNVIDIAの言い分としては,「GeForce RTX 20シリーズではTensor Coreによるポストエフェクト適用を行うことで,グラフィックスパイプラインがアンチエリアシング処理から解放され,余力が生まれます。なので実効性能が上がりますよ」といった感じになる。

 要するにこれは,先の記事で筆者が述べた「CUDA CoreがPascal世代からあまり増えていないから,レイトレーシング法を活用しない限り,GeForce RTX 20シリーズの魅力って半減しちゃうよね」という指摘に対する,NVIDIAからの早めの反論というわけだ。


追加情報(2)DLSSを活用すれば4K&HDR/60fpsのゲームプレイが余裕ですよ


 「CUDA Coreベースの理論性能値は従来比であまり上がっていない」という指摘にNVIDIAがいち早く反応し,「従来型のゲームグラフィックスでもGeForce RTX 20シリーズの性能が大きく向上する」と強調してきたのには理由がある。
 8月23日掲載の記事で筆者が指摘したとおり,GeForce RTX 20シリーズが搭載するリアルタイムレイトレーシング専用ハードウェア「RT Core」を積極的に活用するゲームが徐々に出てくる可能性は十分にある一方,一気に出揃うとか,続々登場するとかいったことまでは期待できないためだ。

 PCゲーマーの間で,「リアルタイムレイトレーシング対応のゲームが出揃ってからGeForce RTX 20シリーズに変えればいいや」という空気が広まってしまうと,NVIDIAにとっては困った事態となる。
 そこでNVIDIAはもう1つ,潜在的なGeForce RTX 20ユーザーの背中を押すための情報を持ってきた。それが,「既存のゲームを4K&HDR/60fpsでプレイできちゃいます」という情報である。

GeForce RTX 20シリーズなら,リアルタイムレイトレーシングに対応していない従来型のゲームタイトルのうち,最近のものを4K&HDR/60fps以上で動作させることができるというアピールのスライド
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 Pascal世代のGPUでは,最上位モデルとなる「GeForce GTX 1080 Ti」であっても,ビッグタイトルのすべてで4K/60fpsを安定的に実現するのは難しかった。それだけ4Kという解像度の負荷は高いわけだが,その対策として,「TAA対DLSS」においてDLSSによるアンチエイリアシング性能向上を図ったNVIDIAは,DLSSを高解像度レンダリングにおける性能向上にも使うことにしたのだ。

 その方法は基本的に,DLSSで超解像処理を行うアプローチとなる。
 たとえば1920×1080ピクセルや2560×1440ピクセルといった解像度なら,Pascal世代やTuring世代におけるハイクラス以上のGPUを使えば平均フレームレート60fpsを維持することもそれほど難しくないだろう。タイトルによっては120fpsを狙うことも可能なはずだ。なら,その映像フレームに対してDLSSで超解像処理を行って「4K化」して出力できれば,4K/60fpsは一気に現実味を帯びてくるではないかというわけである。

特設会場のDLSS機能紹介コーナー。左がTAA,右がDLSSによる。右のほうが「同一品質でフレームレートが高い」あるいは「同一フレームレートで品質が高い」ことをアピールするものとなっていた
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追加情報(3)AnselがGeForce RTX 20シリーズに対応しますよ


 GeForce RTX 20シリーズの登場に合わせ,「GeForce Experience」のゲーム内フォトモード的機能「Ansel」のアップデートが3つ入る。

 1つは,RT Coreを活用したレイトレーシングに対応する「Ansel RT」だ。
 ゲームプレイ中はパフォーマンス(≒フレームレート)の関係などから,1ピクセルあたりに射出するレイ数を限定的にしている場合でも,Ansel RTを使って撮影する場合はレイを多めに射出して,より高品位な描画結果を得ようというのがAnsel RTの考え方になる。

Ansel RTでは,フォトモードに限ってたくさんのレイを射出することで,実ゲーム時よりも高品位なレイトレーシング結果を得ることができるという
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 2つめは,前段と前々段で触れたDLSSの活用に近い機能「Ansel AI Up-Res」で,Anselでゲーム内を撮影するときにDLSSベースの超解像処理を行うというものである。
 Ansel AI Up-Resを活用すれば,実ゲームのプレイにあたってフレームレートを確保するために解像度を低めに設定してあったとしても,Ansel側でDLSSベースの超解像処理を適用することで,最大8K解像度の画像が得られるのだ。

DLSSベースの超解像処理をAnselに持ち込んだのがAnsel AI Up-Res
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 3つめはAnselへの新フィルタ,

  • Greenscreen:ユーザー手持ちの写真とゲームグラフィックスとでクロマキー合成しつつゲーム内撮影を行える
  • Stickers:チャットアプリでお馴染みのスタンプを,撮影した画像に貼れる
  • Letterbox:撮影した画像の上下に黒帯を挿入して映画のフレームのようにできる

の追加である。

Anselに追加となった3つのフィルタ
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 なお,今回明らかになったAnselのアップデートのうち,Ansel RTだけはAnselをゲームプログラム側に新規で統合しないと実現できない。Ansel AI Up-Resと新フィルタは既存のAnsel対応ゲームでも利用可能だ。また,新フィルタはGeForce RTX 20シリーズの特殊機能を活用したものではないため,従来のGeForce GTXシリーズでも利用できるという。

Anselをゲームプログラムと統合するには専用のSDKを用いることになる。統合しない場合でも,Ansel対応タイトルでれば,GeForce Experienceのオーバーレイアプリ的な機能を使って利用可能だと謳う表
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「レイトレ抜きでもGeForce RTX 20は高性能」とアピールする必要があるNVIDIA


 筆者は23日掲載の記事で,「GeForc RTX 20はレイトレーシングアクセラレータであるRT Coreと推論アクセラレータであるTensor Coreの搭載が目玉なのは確かだが,CUDA Core数ベースの従来的なGPU性能指標では,GeForce GTX 10と比べて劇的な性能向上は得られていない」と指摘したが,どうやら同じような指摘は世界中から入ったようだ。

 そこでNVIDIAとしては,「レイトレーシング法を活用しなくてもGeForce RTX 20は高性能である。なぜならTensor Coreによって実現されるDLSSがGeForce RTXのグラフィックスレンダリングパイプラインに余力を与えるからだ」というメッセージをアピールしていく必要があると考えたのだろう。
 確かにグラフィックスプロセッサが推論アクセラレータを搭載することの重要性というのは一般ユーザーからすると分かりにくいので,こうした説明を公式に行うことの意義は大きいはずである。

 ひょっとするとNVIDIAは今後も,北米時間9月20日の発売日に向けて,GeForce RTX 20シリーズの魅力を訴えるために段階的な情報開示を行っていくのかもしれない。

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NVIDIAのGeForce RTX 20シリーズ製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 20,GeForce GTX 16

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