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印刷2019/03/22 15:38

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[GDC 2019]ゲームデザインで必要なことは,感情のライブラリを充実させること――。「DMC5」の伊津野氏が語るゲームデザイナーのありかた

 北米時間2019年3月21日,アメリカ・サンフランシスコで開催されているGame Developers Conference 2019にて,「デビル メイ クライ 5」PC / PS4 / Xbox One 以下,DMC5)の開発者によるセッションが行われた。お題は「GAME DESIGN BY REVERSE ENGINEERING EMOTIONS」(感情からリバース・エンジニアリングするゲームデザイン)で,同作のディレクターを務めた伊津野英昭氏がメインスピーカーを努めた。
 なお,本稿ではセッションの内容をまとめて紹介いくが,「DMC5」に関するネタバレが多く含まれるため,注意してほしい。

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写真左から,伊津野英昭氏,マシュー・ウォーカー氏,岡部眞輝氏
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セッションのはじめに,本作が累計販売本数200万本を達成したことが発表され,会場から拍手が巻き起こった
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 はじめに伊津野氏は,ユーザーの感情から逆算してゲームをデザインしていくことが基本だと語る。ここでいうユーザーの感情とは,「感動」や「気持ちよさ」など,ゲームをするうえでモチベーションになる気持ちを指しているとのことだ。

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 また,重要なのは,手段と目的を間違えないことだと語る。ユーザーを「A」という気持ちにすることを目的,その感情にするための方法を手段としたとき,手段を達成することが目的にならないよう気をつけなければならないという。目的は1つだが,手段はたくさんあるので,1つの手段に固執してしまうとプロジェクトそのものが混乱してしまうそうだ。
 伊津野氏の場合は,目的と手段が同時に思いつくことが多く,プロジェクトの実現性と確実性の高さにつながっているという。また,手段は,難度や優先順位を自分の中でしっかりと考えて複数用意するといいと語っていた。

 続けて,「ゲームをデザインするうえで必要なことは,感情のライブラリを充実させること」であると伊津野氏は語る。そのためには,定番のイベント,伝統的なイベント,流行のイベント,未経験なイベントを体験し,その時の感情を自分のライブラリにアーカイブしていくことがポイントになるそうだ。

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 そして,それらのイベントを経験,体験する前に,それがどんな体験になり,どのような感情を自分に与えてくれるのかを先に想像しておくことが大切で,想像していたものと経験したものの差分がゲームデザイナーとしての財産となるという。
 伊津野氏いわく,自分が想像していた楽しさを実際の経験が下回っていたら,その差分が自分の力や将来の金銭になり,逆に,自分が思っていたよりも実際の経験が面白かったのあれば,その足りなかった部分が経験値になるとのことだ。

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 また,伊津野氏は,「購入したゲームがクソゲーだと思えたならば,それは開発者にとってラッキーなこと」と話す。ゲームは,面白そうだと思うから買うのであって,それが実際につまらなかったのであれば,それは自分の想像力が勝った証拠であるとのこと。お金を出した分だけ,ゲームデザイナーとしては儲かっていると持論を展開しつつ,「だからみんなゲームをめっちゃ買うべき,もちろん自分のお金で」と,会場にいた開発者の笑いを誘った。

伊津野氏は,心を揺さぶられた経験として,当時放映していたロボット作品をイラストで紹介し,当時の感動を振り返る
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 もし何かで感動したら,なぜ感動したのかを分析する。何があったから感動できたのか,何がなかったから感動できなかったか,というロジックで探すと,感動できた要因を探しやすくなるそうだ。ただし,感動した要素と,それを増幅させている要素が混同しないように気を付ける必要があるという。

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 「DMC5」には,SETBACK&AWAKENING――挫折があるからこそ覚醒が盛り上がる,という明確なテーマがあったと語る伊津野氏。そして,本作の一番の山場として,ダンテとバージルの衝突を覚醒したネロが止めるシーンを挙げていた。とくに,覚醒したネロの髪がふわっと降りてくるシーンが一番の見せ場とのことで,そのためだけに魔神化したネロはロン毛になったそうだ。

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 また,普通のゲームの場合,主人公がフルパワーになるのは中盤くらいで,そのまま終盤まで突っ切っていくのがセオリーとなっているそうだが,DMC5の場合は終盤でフルパワーになる。これは,終盤の盛り上がりにおける感動を最高潮にするためにあえてこうしたそうだ。

結果,調子に乗ってスタッフロールにまで演出を盛り込んでしまったという
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各キャラクターの挫折と覚醒
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 すべての企画には目的があり,それが何かを明確にすることが大切だという。もし,今作ってるシーンの目的が分からなければ,発注してきた人に聞くべきだと,伊津野氏は語る。

 続いてセッションの話題はアクションに。アクションゲームは,クリアしたときに思わずガッツポーズをしたくなるような達成感を味わうためにやるので,その気持ちをしっかりと味わせることが大切だそうだ。そのためには,クリアする方法を自分で見つけ,そのために練習をし,諦めさせないことがポイントとなる。

敵をデザインするときは,見ただけでどういうことをしてくるのか想像できる必要があるという。スライドにはライアットのプロトタイプがいくつか描かれているが,採用されたのは,丸くなって転がってくるものと,立ち上がる(=頭のいい行動をしてくると分かる)デザインのもの
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プレイヤーに練習してもらうには直感的な操作による成功体験が必要とのこと。たとえばネロのMAX-ACTは,操作に対して大当たり,中当たり,小当たりを用意している
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DMC4のときは大当たりのフレーム数が1しかなかったが,DMC5では中当たりと小当たりに幅をもたせ,チャレンジしたときに大当たりに近づけば近づくほど良いフィードバックが得られるようにしたそうだ
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プレイヤーがチャレンジを諦めないよう,ぎりぎり勝ち負けになるようバランスを取り,次の展開が気になる演出が加えられている。また,ハイエンドグラフィックスによって,先を見たくなるようなっている
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 DMC5でとくにこだわったのがコンティニューだそうだ。本作ではゲームオーバーになると,ゴールドオーブかレッドオーブを使って復活できるのだが,レッドオーブで復活できるようにした理由は,どれだけ消費して,どれだけ回復するかをプレイヤーに選ばせるためだそうだ。
 要するにプレイヤーは,敵を倒すのにこれくらいの体力があればいいと自分にベットしているわけで,これでゲームオーバーになっても,ゲームのせいにはしなくなるという。

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 最後に伊津野氏は,「コントローラやゲームを殴るのではなく,自分の顔を殴るように気持ちを持っていくことが大事だ」と話し,セッションを締めくくった。

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